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わたしがEMとして入社し た「最初の100日」 の過ごし方 id:daiksy 2025-02-27 Engineering Manager Conference Japan 2025 1

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daiksyの経歴 ● 2001年~2014年 SIとかゲーム開発とか ● 2014年~2021年 株式会社はてな ● 2021年~2024年 他社でEM業 ● 2024年~ EMとしてはてなに出戻り 3

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daiksyの立場 ● はてなの”技術グループ”のマネージャー ● マトリクス組織の専門職グループ ● エンジニア約100名全員が所属する組織 4

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マネージャの入社 5

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6 マネージャー入社をメンバーから見た際のイメージ図

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パラシュート人事 ● メンバーからすると恐怖 の大王が降りてくるよう なもの ● 強い権力を持ち、影響が 大きい人がやってくるが 得体がしれない 7

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パラシュート人事 ● 新しいマネージャーには 組織の変革を期待されて いるので、当然破壊的な 変更も起こり得る ● 人々は当然身構えている 8

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9 新任マネージャーの自分がこうありたいイメージ図

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● 恐怖の大王を演じたいわ けではなく、組織をより 良くする変革者でありた い 10 パラシュート人事

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● 周囲との信頼を築く期間 が必要である 11 パラシュート人事

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最初の100日と は? ● 東京都副知事の宮坂さん ● 新任リーダーの最初の動 き方について 12

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最初の100日で何をすべきで何をすべきではないか? とくにリーダーが劇的な環境変化に異動、転職、抜擢で放り 込まれるとこの法則(引用者注: ピーターの法則)が強烈に作 用する。なぜなら周りの方が知識や経験があり自分がその組 織内で最もそれがない人になってしまうからだ。一方で、こ の人は何かしてくれるのでは?という期待を関係者からは持 たれる。「組織内で最も無能なのに最も期待される」という 特殊状態を過ごすことになる。 13 https://note.com/mmiya/n/n6196c7b18a3f

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最初の100日で何をすべきで何をすべきではないか? 最初の100日でもっともしてはいけないことで共通するのが 「華麗にビジョンを語り戦略を策定して期待値をあげるこ と」はしてはいけない。逆に最初にすべきことはなにか? 「勉強マシーンになること。具体的には資料を読み人に会っ て話を聞きまくる」こと。つまり最初の100日は「口はほど ほどにして耳と目と足を動かせ」ということだ。 14 https://note.com/mmiya/n/n6196c7b18a3f

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最初の100日の要点 ● 成果を急ぎすぎると「恐怖の大王」に見えてしまう ● 最初の100日は現状の理解と信頼の構築に時間を使う ● 100日間はちょうど試用期間の3ヶ月と同程度の期間なの で、「試用期間中の動き方」として説明がつきやすい 15

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daiksyの 「最初の100日」 19

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入社前 20

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期待値を徹底的に揃える ● オファー提示後、承諾までの期間で期待値を揃えるこ とを徹底した ● 仮にdaiksyが「最初の100日」は状況把握を重視した いと思っていても、自分への期待が「最初からどんど ん破壊と変革をしてくれ」だったら期待とズレてしま う 21

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期待値を徹底的に揃える ● Googleドキュメントに自分が考えていることを書い てCTOと人事部長と共有。そこにコメントをもらう 形式で期待を揃えた ● この期待値調整はこちらからお願いした ● 出戻りで、すでに関係性のある相手だったのでやりや すかった 22

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期待値を徹底的に揃える 23

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期待値を徹底的に揃える ● 入社当初の動き方 ○ まずは情報収集から ○ エンジニア全員と1on1 ○ 最初は情報収集だけやっていると、「なにをやって る人なの?」となるのでレポーティングはやる ■ レポーティングの形式について認識あわせ 24

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期待値を徹底的に揃える ● 最初の100日と、その後のある程度の動き方について 合意ができたのでオファーを承諾 25

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そして入社! 26

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入社後の最初の動き ● 事前にドキュメントで調整済みのことを順番に やるので気持ち的に楽だった 27

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入社後の最初の動きや考えたこと ● 「所信表明をしない」という所信表明 ● 毎朝CTOと1on1 ● エンジニア全員1on1 ● タスクリストの作成と公開 ● 何かを変える際は絶対に独断はしない 28

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「所信表明をしない」 という所信表明 29

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「所信表明をしない」という所信表明 ● グループウェアに以下の文章を投稿 ● “daiksyが今技術グループEMとして考えている こと(not 所信表明)” ○ 急いで方針や戦略を策定することはしません ○ 全員と1on1をします ○ 情報を集めます ○ 短期的な成果を積み上げながら、大きい課題を探ります 30

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「所信表明をしない」という所信表明 ● メンバーとの期待値調整をする意図 ○ メンバーの中には新しいマネージャーに期待し ている人もいるだろう ● ここに書いた内容は全員1on1でも改めて1人ず つに説明をする 31

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毎朝CTOと1on1 32

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毎朝CTOと1on1 ● チーム朝会のようなものが無いので、1日のリ ズムをつくるためにお願いした ● 自分の仕事に対するフィードバックを毎日も らって期待値の微調整を行う ● これは現在も継続中(主に朝会代わりに) 33

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エンジニア全員1on1 34

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エンジニア全員1on1 ● およそ100人のエンジニア ● 150人とされるダンバー数の内側に収まる ● 全員の顔と名前を覚えられるはず! 35

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エンジニア全員1on1 ● マネージャーとしての自己紹介 ● 自分がやりたいと思っていることを説明 ● 個人ごとの現状把握 36

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エンジニア全員1on1 ● 1on1の話題テンプレート ○ 自分の自己紹介 ○ 今の仕事を教えて下さい ○ やりがいのあった仕事 ○ ちょっと嫌だった仕事 ○ 興味のある技術トピック ○ 3年後のイメージ 37

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エンジニア全員1on1 ● 1日におよそ3人ずつ ● 1回30分 ● 5月8日にスタート ● 7月9日に終了 ● 9週間で完走 38

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エンジニア全員1on1 ● 1つのチームや事業の状況について複数人から話し を聞くことで、理解が立体的になった ● ある程度みんなの個性を知ることができた ○ iOSが得意な人、Androidが得意な人、のような 仕事上把握しておきたい個性 39

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エンジニア全員1on1 ● 「一度話をしたことがある」という状態は強力 ○ なにかを相談をしたいときにこちらから声をかけるハー ドルが圧倒的に低くなる ○ 自分に対しても相談しやすくなったと思ってもらえたら (願望) 40

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タスクリストの作成と公 開 41

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タスクリストの作成と公開 ● 「あの人は今なんの仕事してるの?」の防止 ○ 自分がかつてパラシュート人事でやってきた上長に対し てそう思っていたので、それを反面教師に 42

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タスクリストの作成と公開 ● タスクリストの登録や、進捗状況は連携機能で Slackのtimes_daiksyに流すようにした ● エンジニア全員が入っているチャンネルで日報 を書くようにした ○ これは徐々に公開できない仕事内容が増えてきたので書 きづらくなり、現在はやっていない ○ 内容をぼやかして書いてもいいかなと悩み中 43

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最初にやるタスク ● 右の4象限にあてはめて 発見した課題を整理 ● 短期的な成果を獲得する ために右上の範囲のもの に取り組む 44

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最初にやるタスク ● 難しいものは影響が大き かったり、各所への調整 が必要だったりするの で、100日を経て信頼を 構築してから着手するこ とにする 45

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実際にやったこと ● 採用業務 ● CTO主催の一部の定例の運用を巻き取り ● 期末評価の運用 いずれも既存プロセスのまま実施主体を自分に 寄せ、運用しながらプロセスの一部を改善 46

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何かを変える際は 絶対に独断はしない 51

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何かを変える際は絶対に独断はしない ● 過去の経緯やカルチャーを最大限リスペクトする ● 事情を知らない自分が安易に手を出すべきではない 52

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何かを変える際は絶対に独断はしない ● 「変えたい」という提案をした際に、議論が ワッと盛り上がるものがある ● それは過去の組織を作ってきた人たちが大事に していることの証拠 ● そういったものに対しては絶対に独断をせず全 員が納得するまで耳を傾けて調整し続ける 53

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100日が経過したその後 54

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100日間の結果を 採点する 55

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100日間の結果を採点する ● 「エンジニア世論調査」 ○ はてなの技術組織で半期ごとに実施しているアンケート ○ 異動希望やキャリア希望、扱いたい技術などをみんなか ら集める 56

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100日間の結果を採点する ● 「エンジニア世論調査」 ○ このアンケートに、自分に対する評価を尋ねる質問を入 れた 57

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100日間の結果を採点する ● 「エンジニア世論調査」 ○ 「技術グループマネージャ」の就任によって技術グルー プがどのくらい良くなったと感じますか? ■ 5点満点 ○ 上記回答の理由を教えて下さい (自由回答) 58

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結果は... 59

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100日間の結果を採点する 60

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100日間の結果を採点する 61 食べログだったら高得点だが... 優・良・可で言うと可よりちょっと良いくらい?

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100日間の結果を採点する ● AIによる自由回答欄の要約 ○ 技術グループ全体の動きが可視化され、以前よりスムーズに仕 事が進むようになったと感じる人が多くいます ○ 特に、採用活動やチームビルディング、メンターへのサポート といった分野で、具体的な改善を感じている人が複数います ○ また、技術グループマネージャーが様々な問題を把握しようと 努め、積極的に行動していると感じている人もいます 62

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100日間の結果を採点する ● AIによる自由回答欄の要約 ○ 自分自身に直接関わる範囲では変化を感じていない、まだ影響 が及んでいない、または活動内容がよくわからない、という意 見も一定数見られます ○ 特に、シニアエンジニア以外は変化を感じにくい可能性がある という指摘もあります 63

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100日間の結果を採点する ● 良くなった実感を持ってもらえたがその影響の範囲 は限定的 ○ 自分と接点の多い人は実感してもらえている ○ 半数以上は「よくわからない」「なにをしている のかまだ見えていない」という状態 64

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101日目以降 ● いよいよ本丸へ着手する ● 図の右下の仕事 65

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hatena.co.jp/recruit 66 66