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小さなチャレンジが生んだ チームの大きな変化 私のふりかえり探求の原点

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自己紹介 リョー 株式会社yamaneco ソフトウェア・エンジニア歴は20年 アジャイル開発歴は14年 アジャイルコーチとして7年 コーチングアジャイルチームス 翻訳 最近は即興演劇や応用演劇が楽しいので、役 者の仕事はじめました Ryo Tanaka

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テーマ 「小さなチャレンジが生んだチームの大きな変 化:私のふりかえり探求の原点」 「たちカエル」 自分がふりかえりに関わって変わった原体験 の共有 本日のゴール 思い出話の共有 チームが変化していくふりかえりのヒント

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本日の流れ 1. 思い出話 2. Lv1 の説明 3. Lv2 の説明 4. Lv3 の説明 5. まとめ

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思い出話

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昔々のチーム事情 混成チーム ふりかえりの感じ 帆船やKPT、starfishなど複数のフレームワークを使ったふり かえり 楽しく笑い声が出てるアクティビティ 徐々に形骸化、「バグを出さないように気をつけよう」等の具 体性のあるアクション

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始まり 2週間スプリントを回しながらも、バグの報告や開発遅延の連絡。作ろうとしてる機能に関する質問がスプリ ントレビューの直前にくるなど、チーム内部のコミニケーションはアジャイルコーチの目から見るとスムーズ でないように見えていた。 「アジャイルコーチ、チーム内でコミニケーションをもっ ととりたいのですが、どうすればいいですか?」 「いいと思います。スクラムマスターがチームの会話を積 極的にファシリテートしてみて下さい」 そうこうしている間に、バグやらインシデントがおこる。プロダ クトオーナーが言ってる内容に対して、開発メンバーはできない ことをできないと言えていなかった。 「スクラムマスター良いタイミングですよ、開発メンバー からプロダクトオーナーに意見を出すように促してみて は?」 新プロダクトオーナーの着任 プロダクトオーナー アジャイルコーチ アジャイルコーチ

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スクラムマスター 「発注元に対しては言えません」

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もやもやの始まり アジャイルコーチから見て、小さな問題に見えたコミニケーションの改善は、根深い問題だとこの時悟りまし た。スクラムマスターはスキルが低い人ではありません。ただ、彼は開発会社チームをまとめるマネージャー としての役割を持っていました。 ふりかえりの時間に コミニケーションに関する話題が出る アクションアイテムは作成されない が繰り返される 「なぜアクションアイテムを作らないのですか?」 「コミニケーションに対するアクションアイテムを作るの が難しいから」 言いたいけど言えない アジャイルコーチ チーム

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堂々巡りの日常 難しいからやらないという答えに対して、こうすれば難しくならないよと明示できないことに対して、フラス トレーションをアジャイルコーチは覚える。 この話題に対してしつこく問うようになる。 ふりかえりの話題にはコミニケーション不足が出るが、アクシ ョンアイテムが作られないことが常態化 問題は起き続ける さらにコミニケーション不足をチームが話すが、実際には動け ない それぞれのスクラムイベントの中でスクラムマスターがフ ァシリテートできてない点を指導 スクラムマスターに対して気にせずやって欲しいとお願い する 受発注関係から固まってしまう。 みんな気づいてるのに動けない アジャイルコーチ プロダクトオーナー スクラムマスター

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ちょっとした試みと小さな挫折 スクラムマスターが動けないことを知って、プロダクトオーナーが動き始める。積極的にふりかえりの時間を 使ってコミニケーションに対するアクションを作ろうと試みる。 ついにふりかえりのアクションアイテムとしてコミニケーションに関わるアイテムが出る。 「ためしにあだ名で呼び合ってみませんか?」 2週間後、ふりかえりの時間。 「あだ名で呼びあえました?」 できませんでした。 結構まじめに、チームは凹む あだ名の失敗 アジャイルコーチ チーム

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プロダクトオーナー 「おれたちって、 あだ名で呼び合うのもできないの?」

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アジャイルコーチ 「あなた達はどうなりたいの?」

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転機 チームの転機となりそうだったアクションは達成されていなかった。アジャイルコーチは切り替えて次のアク ションに移ろうとする。対してチームメンバーはアジャイルコーチが思っていたよりもショックを受けてい た。 「今日はどんなフレームワークでやりますか?」 アジャイルコーチとしては元気がなくなっているチームに元気が 出るような明るいフレームワークを提供する予定だった 「今日はフレームワークなしで、僕らだけで、話し合って もいいですか?」 「どうぞ(内心残念な気持ち)」 チームに任せ、40分程静かな対話を遠くからアジャイルコーチは 見ていた。 車座で話し合い続け、終わってアジャイルコーチをチームが呼ん だ。 「今日は私たちだけで」 アジャイルコーチ チーム アジャイルコーチ

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チーム 「slack名を変えます」 「やっぱ変えたくないです、だって他の部署の人から見えますもん」 ※ slackは発注元会社で使っているところに他の会社のメンバーが招待されていた) 「いや...変えます...」 slackの表示名を各自のあだ名に変更 プロダクトオーナー プロダクトオーナー

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あの日から始まった その後チームの雰囲気は一気に変わり、発注元や会社間の関係 性は残ったが、コミニケーションは密になった。 チーム内部では、「じゃあBBQしよう!」や、「神社にお祓い にいこう!」などのアジャイルコーチからは予想もつかないア クションが湧き出てくるようになった。 チームはその後189の二週間スプリントを回し、7年半の活動を 経て、今年3月に最後のスプリントレビューを行った。 ここで生まれた文化はまだ残っており、チームを去ったメンバ ーも多い中定期的に集まって飲み会にいったりしている 7年半続いたチームの物語

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思い出話のふりかえり解説

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Lv.1 簡単解説 良いふりかえりだったのか?

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Lv.1 簡単解説 Scrum Guideより レトロスペクティブとは? スプリントレトロスペクティブの⽬的は、品質と効果を⾼める⽅法を計画することである。 スクラムチームは、⾃分たちの効果を改善するために最も役⽴つ変更を特定する。 スクラムチームは、個⼈、相互作⽤、プロセス、ツール、完成の定義に関して、 今回のスプリントがどのように進んだかを検査する。多くの場合、検査する要素は作業領域によって異なる。 スクラムチームを迷わせた仮説があれば特定し、その真因を探求する。 スクラムチームは、スプリント中に何がうまくいったか、どのような問題が発⽣したか、そしてそれらの問題がどの ように解決されたか(または解決されなかったか)について話し合う。 最も影響の⼤きな改善は、できるだけ早く対処する。 次のスプリントのスプリントバックログに追加することもできる。

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Lv.1 簡単解説 「最も役立つ変更の特定」が出来ていること 最も役立つ変更は、ケースバイケース。 ただしチームの効率性が悪い時、チームの適応が求められることが多い。 変化適応がなくても解決できる問題を技術課題といい、 適応が求められる課題を適応課題という。 技術課題: 明確に定義可能な問題 既知の解決策や専門知識で対応できる 原因と結果の関係が明確 比較的短期間で解決できることが多い 例:システム障害、製品の欠陥、効率性の問題 適応課題: 既存の知識や方法だけでは解決できない 人々の価値観、信念、習慣の変化を必要とする 関係者全員の関与と学習が必要 長期的なプロセスを要する 例:組織文化の変革、社会的な問題、持続可能性の課題 良いふりかえりとは?

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Lv.1 ふりかえり この視点から、チームが会社混成チームで、会社の毎の境界を大事にしていた状態から。 それを超えてワンチ ームになれたことは適応課題に向き合い、チームの「変更の特定」ができているといえる。

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Lv.2 アジャイルコーチ向け解説 アジャイルコーチのふるまいに焦点を当てる

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Lv.2 アジャイルコーチ向け解説 チームにまかせる チームを課題に向き合わせ続ける(チームの羅針盤になる) パワークエッション チームはアジャイルコーチが持っていない知恵を持っているの で、アイディアが出てくることを信じる アドバイスを出さない チームを信じてアイディアを出してみる ジェネレーターをしてみる チームをサポートする 小さな一歩(アクション)を作ることをサポート SMART なアクションアイテム SMARRT なアクションアイテム チームを失敗への向き合わせ続けるために、失敗の捉え方を教 育し続ける 懲罰的世界観より修復的世界観 Prime Directive リフレーミング 些細な変化でも反映し、認知していく フィードバックの多様さ アジャイルコーチ/スクラムマスターとしてやること

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Lv.2 ふりかえり 1. チームにまかせる 結果としてできていたことでチームの変化変容を強く支えた。 「もっと」な箇所は、この行動は意図的ではなかった。 またチームを信頼しきれていないので、アドバイスを出したり、 ジェネレーターとして動けていない時が多かった。 2. チームをサポートする SMARTアイテムやPrime Directiveは提示していた箇所はよくできていた。 「もっと」な箇所は、言動に懲罰的な箇所が多かった。それによってスクラムマスターが孤立してしまった。 プロダクトオーナーが積極的に変化を前に進めていなかったらどうなっていたかわからない。 今回のケースに関してのアジャイルコーチの動き

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Lv.3 理論を使った解説 成功するふりかえりの再現性を上げるための理論からの理解

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Lv.3 理論を使った解説 チームが適応する時には、変化変容がおきている。 「変化」って何? 「エッジ理論」(アーノルド・ミンデル) 一次プロセスと二次プロセス: 「一次プロセス」とは、私たちが意識的に認識している自分の側 面です。自分だと認めている考え方、行動、感情などが含まれま す。 「二次プロセス」とは、普段は意識していない、または認めてい ない自分の側面です。抑圧された感情や気づいていない可能性な どが含まれます。 エッジ: 「エッジ」は、一次プロセスと二次プロセスの間の境界線を表し ています。人はエッジに近づくと抵抗を示します。 参考: プロセスワーク入門 チームが適応するとは?

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エッジ理論からふりかえる スクラムマスターが出した、1次プロセスからの声を考えると、チームはあのタイミングからエッジに触れて いた。 エッジを超えるプロセスは、既に始まっていた。十分な話し合いの後、2次プロセスへと移行した後 は、スクラムマスターは十分な仕事をしている。 1次プロセスの声を出したのは個人ではなく、その時のシス テムだっと考える。

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Lv.3 理論の解説 ルーマンの社会システム理論では、システムの構成要素は人ではなく、コミニケーションそのものになる。コ ミニケーションそれ自体が自己再生的に次のコミニケーションを作成するため、システムでは固有の二元コー ド(物事の判断軸)を人は使用して、コミニケーションに参加している。 二元コード:: 物事の判断軸(開発会社として受注関係を維持する/しないなど) 一次観察:: 物事をそのまま観察すること、無意識に二元コードを使用する 二次観察:: 物事をどのように観察しているかを観察すること、二元コードの観察 ルーマンの社会システム理論からシステムを考える

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社会システム理論からふりかえる 変化とはシステム内の使用されている二元コードが変化するものと捉えることができます。 アプローチとしては、ふりかえりの場を使ってプロダクトや作業から距離を取ることで、元々のシステムが持 っていた二元コード、つまり発注元や受注先に関わる言語から距離をとってあげること、コミニケーションを 新たに生み出して成功体験を作ることで新たな二元コードによるコミニケーションの自己再生を促すことが出 来る。 また、ふりかえりのファシリテーションによっては、自分たちの二次観察を促すこともできる(ムービークリ ティークのようなふりかえり)。二次観察から、自分たちの最適な動きを見ることができれば新たな一次観察 の意図的な獲得も可能になる。

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Lv.3 理論の解説 小さなアクションが作れない。 小さなアクションを作ったが効果がない。 「創造プロセス」(ロバート・フリッツ) ステップ1:現状(Reality)を正確に観察的に認識する。 ステップ2:結果(Vision)を明確に描く。 ステップ3:現状とビジョンのギャップ(tension)から生まれる エネルギーから、Actionを起こす 大きなVisionと小さなVision この創造プロセスを回すためには、大きなVisionを作り、その道 を小さなVisionを作りながら進めていく。 うまくいく小さなアクション、うまくいかない小さなアクション

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創造プロセスからふりかえる 結果としてチームを変えることができた、小さなアクション。 この小さなアクションを作るために必要だったのは、小さなアクションではなく、小さなビジョン。 小さなビジョンを渡すことに、アジャイルコーチは成功していたけども、それは意図的ではなかった。

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まとめ 思い出話 うまくいかない状況から、小さなアクションをきっかけにチームは変わった 重要なのは「壮大なアクション」ではなく「本気で変わろうとする小さな一歩」 ふりかえりは単なる手法ではなく、チームと自己の在り方を問い直し、変革を生む強力なツール 原点から現在へ: 7年前の体験が、自身のふりかえり探求の基礎になっている。 現在はより身体的な表現や理論的な側面の補強を行い。チームの変革に加速を持たせるために努力して います。

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Thank you

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Q&A