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AI・COVID-19時代の
 シティズンシップ
 一般社団法人コード・フォー・ジャパン
 関治之
 2021/06/12
 2021年度一般社団法人社会情報学会(SSI)社員総会シンポジウム
 CC-BY-SA 4.0


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スクエアの写真を
 ここに入れる
 2 自己紹介
 関 治之(Hal)
 ● 一般社団法人コード・フォー・ジャ パン 代表理事
 ● 合同会社Georepublic Japan
 ● 株式会社HackCamp 代表取締役社長/CEO 
 ● 内閣官房 IT総合戦略室 CIO補佐官 
 ● 東京都、神戸市、浜松市、山口県、枚方市、 
 西粟倉村 等のアドバイザー
 


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Agenda
 ● コロナ禍での政府や自治体の課題
 ● 「シビックテック」活動について
 ● 政府への信頼とイノベーション
 ● デジタルエンゲージメントツールによる政策立案

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ともに考え、ともにつくる。


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公共モデルを「行政依存」から
 
 
 
 シビックテック アプローチ
 オープンにつながり、社会をアップデートする
 5 市民 行政 「共創」へ
 行政と市民 (エンジニア、デザイナー、 民間企業、NPO、学生など) Conflicts
 Work together
 社会課題

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6 世界26カ国で同様のコミュニティが活動


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日本国内にも80を超える Code for XX が活動中
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各地で自らの地域を良くする活動を実施中
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コロナ禍の情報連携課題
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● リモートワークへの対応、押印見直し、給付問題、etc
 ● アナログなやり取りの効率が極端に下がったため、急速なデジタル化が必要となっ た
 
 コロナ禍で、自治体のデジタル化が急務に
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● COCOA、HER-SYS、自治体の予約システム、etc
 ● 突貫で作らざるを得ない事態となり、不具合が多発
 
 相次ぐシステム不具合
 11 NHK News Web 
 NHK News Web 
 カナロコ


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デジタル手続き法(令和元年5月31日公布)
 12 情報通信技術を活用し、行政手続等行政手続の利便性の向上や行政運営の簡素化・ 効率化 を図るため、 ①行政のデジタル化に関する基本原則 及び行政手続の原則オンライ ン化のため に必要な事項を定めるとともに、 ②行政のデジタル化を推進するための個別分 野における各 種施策を講ずる ■情報通信技術を活用した行政の推進の基本   - デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する   - ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする   - ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する ■行政手続の原則オンライン化のために必要な事項   - 行政手続のオンライン原則(本人確認(印の見直し)、納付、問合)   - 添付書類の撤廃 (マスターデータ)   - デジタル化を実現するための情報システム整備計画(データ標準化、 API)   - デジタル・デバイドの是正(デジタル支援技術の活用)   - 民間手続における情報通信技術の活用の促進(民間サービス活用)

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国と自治体間のデータがつながっていなかった
 13 自治体から国へタイムリーに情報が伝 達できない
 デジタルIDが使えず、国から直接国民に 給付ができない
 個別に乱立するシステム 
 アナログな業務フローで、とどかないラ ストワンマイル
 届かない現場からの声 


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低下する政府への信頼
 14 2021 Edelman Trust Barometer Spring Update エデルマンの調査によると、 日本政府の信頼は、コロナ 前の43ポイントから36ポイン トに低下。
 調査14カ国中、下から二番 目。
 
 (ちなみに、メディア、NGO、 企業、保健機関などへの信 頼が日本は軒並み低い状 態)
 


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テクノロジーそのものへの信頼も下がっている
 15 2021 Edelman Trust Barometer Tech Sector Report テクノロジーに対しての信頼 も、コロナ前のポイントから 12ポイント低下して56ポイン トに。
 
 


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コロナ禍のシビックテック
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災害×検索機能:
 民間支援情報ナビ
 緊急時対応として立ち上げられた 複数の民間や国の支援策を横断 的に検索できるサイト。データは 経産省が標準化、オープンデータ 化を推進。CfJでもデータ収集を 実施。
 災害×マップ:
 紙マップ
 2018年の広島豪雨で開始し、台 湾・韓国・日本の合同ハッカソン でのバージョンアップを経て、 2019年の千葉水害などにも活用 された災害支援地図。印刷で端 末がない状況にも対応。 
 
 地域の活動・市民の困りごとに対して、素早く手を動かすアプローチ
 17 シビックテックの事例
 教育×オープンデータ:
 おうちで時間割
 臨時休校期間にスマホから動画 コンテンツなどを組み合わせた学 習計画表を閲覧して勉強できる ツール。NHK for Schoolのデータ 提供もあり、実際に千葉など複数 の小学校で導入。
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000039198.html https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000039198.html https://hack4.jp/articles/sd/vol97/ 


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BADオープンデータ供養寺
 データ分析やサービス開発等にすぐ使用可能な形 式になっていないオープンデータを集める 
 データの作り方・使い方、慣習に対する啓発的なアプローチ
 18 シビックテックの事例(オープンデータなど)
 理由なきハンコ
 不要不急な押印を見直し、新しい働き方の事例をわ かりやすく伝える
 https://stamping.code4japan.org/ https://bad-data.rip/

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東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
 オープンソースにしたことで、約300人が開発に参加 (コントリビュート)した。約80地域の派生版が作ら れ、全国的なムーブメントになり、総務省との連携で データの標準化も推進。 
 加古川市 Decidim
 オープンソースの参加型民主主義プラットフォームと して日本初導入。地元高校生も含め200名が参加 し、約300のコメントによりスマートシティ構想の策定 に活用。
 
 市民と行政の連携が進み、災害時の垂直立ち上げに貢献するケースも
 19 シビックテックの事例(地域との取り組み)
 https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/ 
 https://kakogawa.diycities.jp/ 


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20 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
 金賞

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誰でも再利用可能な形で公開
 21 他の団体 他県の対策 サイト 東京都 Code for Japan 委託 COVID-19 対策サイト 開発 外部の開発者 広く協力を依頼 開発協力 他の団体 カスタマイズ 他県の対策 サイト 公開 ・多くの開発者が参加してサイトを改善 ・他県にも展開

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オープンソースとは?
 プログラムのソースコードを、断りなしに自由に使って良いと いう条件で広く公開すること。 公開することで、誰もが中身を確認することができるし、コ ピーして自分の目的に再利用することができる。 更に、東京都では一般技術者から要望を受け付けたり、修 正提案を受け付けたりすることも行った

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世界中から貢献があった
 3週間の間に 224 名が改善に協力 750 件の提案 671 件が取り入れられる 作成数 クローズ数 Issue数 1,364 1,283 Pull Request 数 2,628 2,604 これまでの累計(Bot等を除いた数)

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誰もが自由に開発に参加できるようにした

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全都道府県に波及


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オープンソースへの投資は、社会的な知的資本の蓄積に繋がる
 https://note.com/hal_sk/n/nc9df8b8fd765 行政 事業者 税金 納品 公共財 公開 開発者等 活用 他の事業者 他の自治体 市民 別のサービス 開発 26

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デジタルを通じて、双方向性のやり取りを増やすことができる
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No content

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信頼とイノベーション
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変化の激しい時代 自治体だけでは解決できないことが増えている 課題解決には市民や民間企業との共創が必要 イノベーションには失敗がつきもの=市民の信頼が必要 「信頼」がイノベーションを加速させる

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海外でもシビックテックが活発に
 https://note.com/hal_sk/n/nd5d71fa9ff5d 台湾、韓国ではマスク在庫 APIを公開、多くの民間アプリが生まれた https://www.reallygoodux.io/blog/korean-mobile-apps-coronavirus-covid-19

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信頼の構築には透明性が必要

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台湾政府の3つのF(Fast, Fair, Fun) マスクがどこで手に入るかわかる API を迅速に公開し、様々な民間アプリ が生まれる デマを封じ込めるために、 ユーモアを交えた広報で情報 を拡散させた マスクの購入枚数を制限するととも に、不要なマスクを他の人に譲れる システムを構築した

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オープンガバナンスの時代 透明性 参加 協働 情報公開 政策形成プロセスの公開 意思決定根拠の公開 選挙以外の参加機会 納得感のある語りかけ 多様な世代の参加 ともにつくる 多様な主体との協働 課題を公開し問いかける

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ここまでのまとめ
 35 ● コロナ禍で、自治体のデジタル化が急務に
 とはいえ、デジタル化の流れは元々進んでいた
 国から現場まで、データを「繋げる」ことが重要に
 ● 市民との協働を通じて課題を解決する「シビックテック」という活動がある
 オープンデータをうまく活用することで、市民が主体的に関与できる
 オープンソースソフトウェア/オープンデータは社会の公共財である
 ● 「信頼」がイノベーションを加速する
 信頼を構築するには、透明性が重要
 プロセスを公開し、参加の機会を作り、協働する事で主体的な市民が増える
 


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デジタル時代の市民エンゲージメント
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デジタルな市民エンゲージメントツールが注目されている
 37 コロナ禍において、議会傍聴、募金 活動、集会や公聴会、ワークショッ プといった機会が制限され、市民と 公共の間の関係性向上や、新たな 市民のイニシアチブの創出などの 活動に支障がでてきている
 特に新たな関係づくりが難しく、デジ タルな市民エンゲージメントツール が注目されている
 
 https://civichall.org/civicist/next-generation-engagement-pla tforms-and-how-are-they-useful-right-now-part-1/

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パブリックコメントとの違い
 38 政策実現までのプロセ スを明示し、政策の初 期段階から成立までを 公開、雑多なアイデアを 集めるフェーズから 徐々に精緻化していく 過程に市民を巻き込ん でいく形を取ることが多 い。
 成立過程で、対立する ステークホルダーの意 見を可能な限り集める ための工夫も。
 https://civichall.org/civicist/next-generation-engagement-platforms-and-how-are-they-useful-right-now-part-1/

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 バルセロナやヘルシンキ などで使われている参加 型民主主義プロジェクト。 政策に関する意見収集の 他、参加型予算編成や市 民発の協働草案づくりな ど、様々な機能を備える
 代表的な市民エンゲージメントツール
 39 decidim
 
 
 decidim同様、政策づくりや市 民提案、参加型予算編成な どの機能を備える。
 プラットフォームの開発を主 導したマドリッド市議会始め、 欧州、南米で多く使われてい る
 
 
 台湾のシビックテックコミュ ニティ、g0v が手動して開 発。CONSULやdecidim と 違い、様々なツールをつな ぎ合わせて活用するプラッ トフォームとなっている。
 decidim
 CONSUL
 vTaiwan


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Decidimについて
 Decidimは、「我々で決める」を意味するカタルーニャ語 にちなんで、 2016年にバルセロナで誕生 したオープンソースの参加型民主主義プ ラットフォームです。このソフトウェアは、さまざまな方法で ボトムアップ の参加をオンラインでサポート します。
 バルセロナで2016年にスタートしたのち、 世界各地に広がり、スペイ ン、フィンランド、台湾などをはじめとして180以上の組織、32万ユー ザー、160以上のプロジェクト が立ち上がっています。
 日本においては、2020年10月に兵庫県加古川市で初めて導入 され、 以来横浜や兵庫県のプロジェクトをはじめ、国のスマートシティガイド ブック策定にも用いられたほか、民間部門の取り組みでも活用がはじ まっています。
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Decidimの特徴
 オンライン・オフラインを融合させた
 熟議のためのプラットフォーム
 ● オフラインでのやりとりをDecidim上での共有し、 
 集約することで、透明性の向上を実現する 
 ● 情報共有により意思決定を進めるプロセス設計 
 ● 言い合いではなく、積み重ねる議論を可能とするユー ザーインターフェース 
 ● 参加することでまちへの解像度が上がる 
 ● 多様な人が参加できる開かれたシステム 
 
 戦略立案
 参加型予算編成
 住民参加型
 計画立案
 署名活動・
 市民相談受付
 討論
 コミュニ
 ケーション
 Decidimが備える機能
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Decidimの利用イメージ ※意見募集を例に
 Decidimが用意する機能を利用して、参加者がコミュニケーションする場を設定していきます 
 ①場の設計
 ②管理画面で設定
 ③ページ公開
 ④参加者同士の
  コミュニケーション 
 ⑤意見集約内容をDecidimに投稿 
 オ
 フ
 ラ
 イ
 ン
 オ
 ン
 ラ
 イ
 ン
 リアル開催のワークショップ 
 も実施することが有効です 
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Decidim導入事例
 兵庫県加古川市(2020年10月〜)
 日本初導入。地元高校生も含め200名が参加し、約300のコ メントによりスマートシティ構想の策定に活用。
 内閣府等(2021年1〜3月)
 スマートシティガイドブック策定に際して現場の取組事例・課 題・知見などを収集し、ガイドブックに反映。
 官民問わず幅広い分野でのコミュニケーションプラットフォームとしての活用がはじまっています 
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Decidim導入事例
 他の導入事例(予定含む)
 ● コロナ禍において、自治会役員との懇談会を オンライン化するとともに多様な住民の意見 収集を図る
 ● 都市部におけるまちづくりプロジェクトでの活 用
 ○ 大学生のフィールドワーク調査を集約しオンラインで ディスカッションする場として運営 
 ○ コミュニティFM番組とのWebコンテンツを連動させるメ ディアミックスのフロントページとして活用 
 ● 参加型展覧会での利用
 兵庫県(2021年3月〜)
 県ビジョン策定に向けて、将来構想試案・骨子案にそれぞれ に対する意見を聴取していく予定。
 官民問わず幅広い分野でのコミュニケーションプラットフォームとしての活用がはじまっています 
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加古川Decidimイベント一覧(2020年度)
 スマートシティ構想策定に際し、オンライン・オフラインを組み合わせて議論
 10月 11月 12月 1月 2月 3月
 オンライン
  アイデア収集
 意見収集
 
 
 オフライン
 ● 地元高校ワークショップ 
 ● 市民参加ワークショップ 
 パブリック
 コメント
 構
 想
 策
 定 議
 会
 報
 告 45

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Decidim活用に関する加古川市の考え方
 岡田市長(写真右)
 
 ● コロナ禍でオンラインを活用するタイミング 
 ● SNSもやっているが、市政に関心を持っている人 としかつながれない
 ● 最初はパブコメの拡大版として始め、まずはいろ んな声を拾っていきたい
 
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加古川市版Decidimの概況 2021年1月5日現在 (68日間)
 登録者数
 196
 10代参加者
 約4割
 
 コメント総数
 261
 市内:市外参加者
 40:60
 
 最大コメント数
 39
 スマホアクセス
 60%
 
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登録者数の推移
 10月30日公開
 11月27日
 アイデア収集 フェーズ終了
 11月21日
 オフライン
 ワークショップ
 12月18日
 意見収集
 フェーズ終了
 12月7日
 意見収集
 フェーズ開始
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コメント数の推移・時間帯別(平日・土日祝)
 10月30日公開
 11月27日
 アイデア収集 フェーズ終了
 11月21日
 オフライン
 ワークショップ
 12月18日
 意見収集
 フェーズ終了
 12月7日
 意見収集
 フェーズ開始
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時間帯別コメント数(平日・土日祝)
 191
 
 
 
 70
 コメント数 50

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ユーザー地域属性と閲覧時間の関係
 ※Googleアナリティクスより(地域正確性が不明確とされる大阪、横浜、東京23区などは除外している) 
 2020年10月30日〜2021年1月5日 
 尼崎市
 三木市
 明石市
 神戸市
 姫路市
 加古川市
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コメント数の多かったもの
 GIGAスクールの推進(デジ タル教育)
 
 ● 最大コメント数
 39を記録
 ● 高校生らしき参加者か ら質問・意見
 災害に強いまちづくり
 
 
 ● 提案型の投稿が多い
 ● 他のコメントを見て投 稿する人がある(投稿 したい層が多数いる模 様)
 
 にぎわいのあるまちづくり
 
 
 ● オフラインワークショップ 後に、それを発展させる 意見が多く寄せられる
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印象的なやりとり
 (おそらく)在校生の主張と感想
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印象的なやりとり
 GIGAスクールの推進に関して、
 アイデア収集フェーズで多数意見が
 寄せられる
 
 
 
 「視力への負担軽減策や子どもたちの 
 健康面に配慮した環境整備」について 
 基本方針へ反映
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印象的なやりとり
 役所目線と市民目線の出会い
 高齢者をサービス提供先と見るか社会参加の主体と見るか
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印象的なやりとり
 いわゆるカタカナ言葉の多用に関する市民感覚
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神戸新聞社説(2021年1月4日)
 加古川市は昨年10月、インターネット上で市の施策に市民が意見を投稿 する仕組みを立ち上げた。住所と氏名などを登録すれば、市民以外でも ニックネームで投稿でき、投稿者同士も意見交換できる。スペイン・バルセ ロナ市などは導入済みだが国内自治体では初の試みだ。
 デジタル教育や快適に移動できるまち、インフラ整備など17の項目を設 け、意見を募った。学校へのパソコン支給では「目に優しいブルーライト対 策を十分に」などの意見が出た。公衆無線LAN網の整備では、市民の質問 に別の市民が答える場面もあった。
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現時点での所感
 58 ● やりとりの特徴
 ○ 当初は参加者同士のディスカッションは一部にとどまり、議論が深まっている感じがあまりなかったが、オフラインWS 後に活発な意見が出てきたテーマもある
 ○ アジェンダに対する情報提供方法
 ■ 数値や根拠を示す必要があるが、説明しにくい
 ■ 参考資料の提示はあるが、そこから何を読み取ればいいか不案内
 ○ 「いいね!」ボタンの使い方が浸透していない
 回答に対する感想「いいですね!」「がんばってください!」といったものやコメント内に記載するケースの方が多い
 ● 入力コメントが長くなる傾向
 ○ 自分の意見を丁寧に書こうとする姿勢が見受けられる
 ○ 書き方のテンプレート(見出し・強調など)があれば、読みやすいのではないか
 ● いわゆる「荒らしコメント」は、ほぼない 
 ○ 連続投稿などはあるものの、「通常のやりとり」がなされている分、一定の抑止効果があるものと推測
 


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59 今期はより具体的な政策への意見を公募中


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今後の課題
 60 ● 参加者数をどう増やすか
 ○ バルセロナ市の自治体行動計画(PAM)の提案書を提出するプロセスには、12万人(バルセロナの人口の7.5 %)が参加した。
 ○ あまり人数が少なすぎると意見の質も上がらないだけでなく、ここで決まったことをそのまま政策にしてよいの か?という反対に繋がる
 ● 職員側の負担感
 ○ やる気のある職員に依存している状況。現場の職員にとって良い体験を積み重ねる必要がある。 
 ● ワークショップからの意見をプラットフォームにシームレスにつなぐ工夫 
 ○ アウトリーチ及び意見の質を高めるためにも、ワークショップは重要。そこで出た意見を、オンラインプラット フォームに取り込む最適解を模索中 
 ● 市民発の意見を政策に落とし込む方法 
 ○ 雑多な意見がありすぎていたり、荒れている状態の意見はそのままでは政策にはならない。職員が取りまとめ られると良いが、職員も忙しい。市民側である程度論点整理できると、より市民ニーズを取り入れた政策ができ るのでは。(党派を超えた市民ロビイングの可能性) 
 


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61 議論を高度化するためにAI活用ができないか?
 多様な人が意見を出し合う場での 合意形成は難しい。
 オンラインで議論が展開されれば、 オフラインでのワークショップよりは AIが扱いやすくなる。(テキスト化さ れており、非同期に議論できる)
 AIであれば、認知的不協和や意思 決定バイアスを指摘しやすい
 


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vTaiwan(台湾)
 62 ● vTaiwanのプロセスは2014年の台湾 のひまわり抗議運動から生まれた。 ● この活動家コミュニティは、著名なハッ カーであり、g0vコミュニティのメンバー でもあるAudrey Tangを、台湾の執行 内閣のデジタル大臣に任命したこと で、正式な権力を獲得した。 ● 台湾政府の各省庁はvTaiwanプロセス を選択することができ、UberXの規制 やアルコールのオンライン配信などを めぐる対立に対処してきた。
 Source: https://civichall.org/civicist/vtaiwan-democracy-frontier/

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複数のプロセスからなるが、Pol.is の利用が特徴的
 ● pol.isと呼ばれるツールを使い、AIがファシリテー トする会話ツールをFacebook広告や関係者の ネットワークを通じて配信する。 ● 次に、会話の中で出てきた問題に対して学者や 関係者が回答する公開会議を放送する。 ● その後、市民社会と政府が共同で進行役を務め る直接のステークホルダー・ミーティングが行わ れ、遠隔地の参加者に放送される。 ● 最後に、政府は、合意に達した点に行動を拘束 することに同意するか、あるいは、合意に達した 点が(まだ)実現可能ではない理由をポイントごと に説明する。 ● 63 Source: https://civichall.org/civicist/vtaiwan-democracy-frontier/

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● Uber が台湾に参入しようとした時に、タクシー事業者が大規模なデモ活動を行い、政 府は規制についてのありかたを検討するためにvTaiwanを利用した。 ● 「最低料金を値下げしてはならない」、「アプリベースのライドサービスは、路上ではなく アプリから派遣された乗客だけをピックアップしなければならない」、などの規制がコン センサスとなった。 ● 決定はその後政府機関に送られ、政府側で文章化を行い、明確化のために元の請願 者にフィードバック、法的な実行可能性を検討した。 ● このケースでは、一連の規制に31,115票が投票され、すぐに政府によって採用され た。 ● 同様のプロセスは、台湾のAirbnb規制や、電動スクーターの規制、リベンジポルノに 関する罰則などにも活用された。 64 UberXの規制の事例
 Source: https://civichall.org/civicist/vtaiwan-democracy-frontier/

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65 日本政府によるアイデアボックス
 政府においても、国民から広 くアイデアを募る「アイデア ボックス」を運用中
 6月12日現在で6244人が登 録し、7091のアイデアが投稿 されている。
 他のツールとの違いは、政 策実現までのプロセスが明 示されていない点


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まとめ(という名を借りた所感)
 66 ● コロナ禍で、自治体のデジタル化が急務に
 ● 市民との協働を通じて課題を解決する「シビックテック」という活動がある
 ● 「信頼」がイノベーションを加速する
 信頼関係を生むためにも、オープンなガバナンスが必要
 市民/国民の声を聞き、やり取りを健全化するには、ただ声を聞くだけでなく、参加者の 意見が整理されるためのプロセス定義やユーザ体験の向上が必要
 オフラインコミュニケーションを軽視するのではなく、オフライン/オンラインの融合が重 要。
 政策立案のデジタルトランスフォーメーションとは?
 連絡先
 [email protected]