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プロダクト改善の方法論 1

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目次 1. ルートコーズ分析 2. 優先順位付け 3. ユーザー行動の観察 4. 大通りの改善 5. データ分析とユーザーインタビュー 6. 意思決定の三要素 7. 組織規模と改善手法 2

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想定読者 プロダクトマネージャー ▶ UX/UIデザイナー ▶ ソフトウェア開発者 ▶ スタートアップ創業者 ▶ ビジネス戦略立案者 ▶ 3

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用語辞書 ルートコーズ分析:問題の根本原因を特定するための分析手法 ▶ 大通り:多くのユーザーが必ず通る、核となる機能や画面 ▶ スプリットテスト:2つ以上の変更案を比較検証するテスト手法 ▶ ドッグフーディング:自社製品を自ら使用して評価すること ▶ コンバージョン率:目標達成(購入など)に至った割合 ▶ n=1:サンプル数が1であること。個別の事例や意見を指す ▶ 4

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1. ルートコーズ分析 5

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ルートコーズ分析 問題の根本原因を特定するための分析手法 ▶ 表面的な現象ではなく、その背後にある本質的な問題を見極める - 例:コストが高いという現象の背後にある真の原因を探る - 複数の問題が絡み合う複雑な構造を理解する ▶ 問題同士の関連性を把握し、スパゲッティ状の構造を解きほぐす - 一つの根本原因が複数の問題を生み出している可能性を考慮する - 6

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ルートコーズ分析(続き) 分析の実施タイミングと頻度 ▶ プロジェクト開始時に徹底的に行うことが最も効果的 - 定期的なメンテナンスよりも、初期の徹底的な分析が重要 - 一度実施すれば、その後の問題解決の地図として活用できる - 分析手法 ▶ 階層構造を作成し、問題を細分化していく - 各層の問題に対応するタスクを紐付ける - 常に最上位の問題に紐づいているかをチェックする - 7

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ルートコーズ分析(続き) 分析結果の活用 ▶ 優先順位付けの基礎資料として使用 - チーム内での共通理解を促進する - 長期的なプロダクト戦略の立案に活用 - 8

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2. 優先順位付け 9

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影響力に基づく優先順位付け ▶ 最も影響力の大きい問題から取り組む - リソースの制約を考慮しつつ、効果的な改善を目指す - 評価基準 ▶ 数値データ:ユーザー数、売上、コンバージョン率など - 定性的評価:ユーザーの声、自身の体験、チームの直感 - コストを考慮せず、重要性のみで優先順位をつける - 10

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優先順位付けの手法 ▶ スプリットテストを活用し、効果を定量的に検証する - プロジェクトの規模や性質に応じて、優先順位付けの方法を調整する - 例:メルカリのような大規模サービスでは、データドリブンな意思決定が重要 - 「大通り」の改善を最優先する(後述) - チーム内でのコンセンサス形成 ▶ エンジニアや他の部門からの要望も考慮する - 優先順位付けのプロセスを透明化し、チーム全体で共有する - 11

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3. ユーザー行動の観察 12

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実際のユーザー行動の重要性 ▶ データ分析だけでは把握できない洞察を得る - ユーザーの文脈や感情を理解する - オフライン行動の観察 ▶ プロダクト使用前後の行動も含めて理解する - 例:メルカリの場合、物を処分したいタイミングなど - 観察手法 ▶ ユーザーインタビュー:直接的な声を聞く - フィールドワーク:実際の使用環境で観察する - ドッグフーディング:自らプロダクトを使用して体験する - 13

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観察結果の共有と活用 ▶ レポートだけでなく、直接体験を組織内で共有する - 観察結果をプロダクト改善のアイデアに結びつける - 長期的なユーザー理解の基盤として活用する - 観察の限界と注意点 ▶ サンプル数の少なさに注意する - 観察者のバイアスを認識し、客観性を保つ - データ分析との組み合わせで、より包括的な理解を目指す - 14

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4. 大通りの改善 15

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「大通り」の定義と重要性 ▶ 多くのユーザーが必ず通る、核となる機能や画面 - 例:メルカリの商品一覧表示、検索機能 - 大通り改善の効果 ▶ 小さな改善でも大きな効果が得られる - 例:メルカリの商品一覧を2列から3列に変更 - ユーザー全体に影響を与えるため、数字に反映されやすい - 16

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大通りの改善の焦点 ▶ マニアックな機能よりも、基本的な機能の改善に注力 - UI変更よりも、バックエンドの改善が効果的な場合が多い - 例:検索アルゴリズムの改善、レコメンデーションの精度向上 - リソース配分 ▶ プロダクトのリソースの90-95%は大通りの改善に充てるべき - 例外:プロダクト外で完結している大きな仕事をプロダクト内に取り込む場合 - 具体的な改善アプローチ ▶ ユーザーの行動速度を上げる(例:商品詳細画面への遷移速度向上) - 単位時間あたりの情報処理量を増やす(例:一画面に表示する情報量の最適化) - コア機能の使いやすさを向上させる(例:検索機能の改善) - 17

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5. データ分析とユーザーインタビュー 18

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データ分析の役割と限界 ▶ 定量的な傾向や大規模な行動パターンを把握できる - ユーザーの感情や文脈を理解するには不十分 - ユーザーインタビューの重要性 ▶ 質的な洞察を得る - ユーザーの潜在的なニーズや不満を発見する - 19

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インタビュー結果の共有と活用 ▶ 組織内での共有の難しさ(特に大規模組織) - 経営者や意思決定者にn=1の声を効果的に伝える方法 - インタビューを他者に依頼し、その結果を吸い上げる手法 - インタビューアーの感情や印象も含めて共有 - データ分析とインタビューの統合 ▶ 定量データと定性データの相互補完 - 仮説の生成と検証のサイクルを回す - 20

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組織規模に応じたアプローチ ▶ 小規模組織:直接的なユーザーフィードバックが有効 - 大規模組織:データ分析とフォーマルなプロセスの重要性が増す - 21

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6. 意思決定の三要素 22

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意思決定の三要素 1. 正しいこと データ分析や市場調査に基づく客観的な判断 - 長期的な戦略との整合性 - 2. 早いこと 市場の変化や競合に迅速に対応する能力 - 意思決定プロセスの効率化 - 3. 皆が納得すること チーム内でのコンセンサス形成 - ステークホルダーの理解と支持を得る - 23

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意思決定の三要素(続き) 各要素のバランス ▶ 組織の規模や文化によって最適なバランスが異なる - 状況に応じて柔軟に調整する必要がある - 「正しさ」の追求と限界 ▶ データ分析は「正しさ」を担保する手段として重視される傾向 - しかし、完璧な「正しさ」の追求は意思決定の遅延を招く可能性 - 24

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意思決定の三要素(続き) 「早さ」の重要性 ▶ 特に競争の激しい市場では、素早い意思決定が競争優位につながる - 不確実性がある中での決断力が求められる - 「納得感」の醸成 ▶ データ分析だけでなく、ストーリーテリングや共感性も重要 - チーム全体の士気と方向性の一致につながる - 25

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7. 組織規模と改善手法 26

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小規模組織の特徴と適した手法 ▶ 直接的なユーザーフィードバックが有効 - 意思決定のスピードを重視できる - フレキシブルな改善プロセスが可能 - 大規模組織の課題と対応策 ▶ データ分析やフォーマルな意思決定プロセスの必要性 - チームの動きや人員の無駄を減らすための工夫 - 部門間のコミュニケーションと情報共有の重要性 - 27

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組織の成長に伴う改善手法の進化 ▶ スタートアップ期:直感的で迅速な改善 - スケールアップ期:データドリブンな意思決定の導入 - 成熟期:体系的なプロセスと長期的な戦略の重要性 - 現場視点の重要性 ▶ 現場と直接対峙している人ほど、正しさと納得感のバランスの重要性を感じる - トップダウンとボトムアップのバランスを取る - 28

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継続的な学習と適応 ▶ 市場環境の変化に応じて改善手法自体を見直す - 他社や他業界の成功事例から学ぶ - チーム内でのナレッジ共有と能力開発を促進する - 29

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まとめ 1. ルートコーズ分析で問題の本質を見極める 2. 影響力に基づいて優先順位を付ける 3. ユーザー行動の観察で深い洞察を得る 4. 「大通り」の改善に注力する 5. データ分析とユーザーインタビューを組み合わせる 6. 意思決定の三要素(正しさ、早さ、納得感)のバランスを取る 7. 組織規模に応じた改善手法を選択し、進化させる 30