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AI導入やプロジェクトでよく見かける 「失敗するパターン」 しんゆう@データ分析とインテリジェンス 2019/10/03 日本情報システムユーザー協会(JUAS)AI研究会

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• 本日の資料は https://speakerdeck.com/shinu/patterns_of_failure に公開済みです。ブログ・Twitterからもリンクがあります • 〇 SNSで話題にすること • × 写真撮影 資料・SNS・写真撮影などについて

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• ここ数年流行しているAIはメディアには成功例があふれて いるように見えるが、一方では導入やプロジェクトが失敗 したという話があちこちに転がっている • それらの失敗を眺めてみると、共通するパターンが見て取 れる • 今回はその「失敗するパターン」をまとめてみた • 対処法にも軽く触れる 前置き

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• 自己紹介 • AI導入やプロジェクトでよく見かける「失敗するパター ン」 • 成功するために次にやること • まとめの前に・・・ • まとめ 目次

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自己紹介

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しんゆう( @data_analyst_ ) 仕事:データアナリストを名乗る何でも屋 ブログ「データ分析とインテリジェンス」を書いてる人 https://analytics-and-intelligence.net/ • 分析に漠然と興味を持って20年ぐらい • 知識は座学中心で深さより広さ 自己紹介

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AI導入やプロジェクトでよく見かける 「失敗するパターン」

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• 失敗する要因は数多いが、その中でも多く見られるパター ンは次の7つにまとめられる これをやったら失敗確実

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1. 目的が不明確 2. 導入が前提になっている 3. 極端に偏った期待感 4. 丸投げ 5. データの不適切な扱い 6. 人材の不適切な扱い 7. 実行できない これをやったら失敗確実

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• 何がしたいのかわからないけれども、とにかく導入したら 何かがうまくいくことを期待する • どんなプロジェクトも目的が不明確だと成功することはま ずない。世の中の失敗で一番多いのは多分これ 1.目的が不明確

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• 目的があっても「売上を上げたい」では大雑把すぎ • 「売上を上げたい」 =「スポーツがうまくなりたい」と 言っているようなもの • どのスポーツでどのレベルにいつまでに到達したいのかも、 使える時間や金もわからないのに目標も立てられない • 何をどのように解決したいのか具体的な目的が必要 1.目的が不明確

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• 目的があっても「売上を上げたい」では大雑把すぎ • 「売上を上げたい」 =「スポーツがうまくなりたい」と 言っているようなもの • どのスポーツでどのレベルにいつまでに到達したいのかも、 使える時間や金もわからないのに目標も立てられない • 何をどのように解決したいのか具体的な目的が必要 • 対処法:何がしたいのかを最初に良く考える 1.目的が不明確

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• メディアに紹介されている話を鵜呑みにして「よくわから ないけどすごいらしい」「何のことだかさっぱりわからな いけれども最先端のことをしていることをアピールした い」が理由になってしまう • 導入することを前提にするのは、速く走るからとF1マシン を買ってからどう使おうか考えるのと同じ。引っ越し屋に 必要なのはトラック 2.導入が前提になっている

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• メディアに紹介されている話を鵜呑みにして「よくわから ないけどすごいらしい」「何のことだかさっぱりわからな いけれども最先端のことをしていることをアピールした い」が理由になってしまう • 導入することを前提にするのは、速く走るからとF1マシン を買ってからどう使おうか考えるのと同じ。引っ越し屋に 必要なのはトラック • 対処法:目的に合わせたツールを選ぶ 2.導入が前提になっている

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• 「導入したらありとあらゆることが実現できる」という過 度な期待感 • 一方で「何でもできるわけではないから意味がない」とい うのも極端 • 目的のために何が必要で、そのためにはどんな道具が必要 かを考えるのがあるべき順番 3.極端に偏った期待感

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• 道具が何かをしてくれるわけではなく、うまく使うのが人 の仕事 • 家の前まで迎えに来ないから飛行機は使えないという人は いないのと同じで全体で考えて有用なのかを考える 3.極端に偏った期待感

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• 道具が何かをしてくれるわけではなく、うまく使うのが人 の仕事 • 家の前まで迎えに来ないから飛行機は使えないという人は いないのと同じで全体で考えて有用なのかを考える • 対処法:特別扱いではなく1つの道具と同じように扱う 3.極端に偏った期待感

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• 自分に知識がないからと部下に丸投げしても、部下にも知 識がなければ他の誰かに丸投げするだけ • ベンダーやコンサルタントに丸投げはいいようにされる • 下請けに丸投げしても欲しいものが手に入らない • 技術者に丸投げしても高度だが必要ない技術にリソースを 費やすリスク 4.丸投げ

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• 自分に知識がないからと部下に丸投げしても、部下にも知 識がなければ他の誰かに丸投げするだけ • ベンダーやコンサルタントに丸投げはいいようにされる • 下請けに丸投げしても欲しいものが手に入らない • 技術者に丸投げしても高度だが必要ない技術にリソースを 費やすリスク • 対処法:主体性を持ってコントロールする 4.丸投げ

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• システムは入れたがデータがない • 必要なデータが足りていないが、追加で収集する予算が出 ないので今あるデータだけでやるしかない • データはあるが目的に合わないので役に立たない • データはあるが収集や整備に膨大な時間とリソースを費や してしまう 5.データの不適切な扱い

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• システムは入れたがデータがない • 必要なデータが足りていないが、追加で収集する予算が出 ないので今あるデータだけでやるしかない • データはあるが目的に合わないので役に立たない • データはあるが収集や整備に膨大な時間とリソースを費や してしまう • 対処法:目的に合ったデータを適切に集めるようにする 5.データの不適切な扱い

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• とりあえずお試しなので、社内の人を適当に担当に充てて も知識も経験も何もないからさらに部下や外部に丸投げす るしかない • とりあえずお試しなので、若いか実務経験が少ない(ある いは両方)安い人を雇ってもスキルや経験が伴わないから うまくいかない • ごく一部に特化した専門スキルをもつ人を先に雇っても環 境が悪すぎてすぐ逃げられる 6.人材の不適切な扱い

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• データ、環境、上司、文化のすべてを事前に用意できれば いいがそれは現実的ではない 6.人材の不適切な扱い

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• データ、環境、上司、文化のすべてを事前に用意できれば いいがそれは現実的ではない • 対処法:運任せでなく現状を隠さずに伝え、その上で覚悟 と幅広いスキルがある人に適切な報酬を出してきてもらう 6.人材の不適切な扱い

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• 結果は出たけれども意思決定に使われない • 意思決定はしたけれども実行されない • 実行しているけれども徹底されない 7.実行できない

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• 結果は出たけれども意思決定に使われない • 意思決定はしたけれども実行されない • 実行しているけれども徹底されない • 対処法:やる(要リーダーシップ) 7.実行できない

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成功するために次に必要なこと

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成功するために次に必要なこと • 「失敗するパターン」を挙げたが、これらの全部とは言わ ずとも多くがうまく行ったとしても成功するわけではない

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成功するために次に必要なこと • 「失敗するパターン」を挙げたが、これらの全部とは言わ ずとも多くがうまく行ったとしても成功するわけではない • この後にさらに課題、データ、予算、環境、文化など個別 の事情がありそれを乗り越えなければならない

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成功するために次に必要なこと • 「失敗するパターン」を挙げたが、これらの全部とは言わ ずとも多くがうまく行ったとしても成功するわけではない • この後にさらに課題、データ、予算、環境、文化など個別 の事情がありそれを乗り越えなければならない • ただ、今回挙げた内容の大半、特に「目的の明確化」がう まくいかないと必ずと言っていいほど失敗する

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成功するために次に必要なこと • 「失敗するパターン」を挙げたが、これらの全部とは言わ ずとも多くがうまく行ったとしても成功するわけではない • この後にさらに課題、データ、予算、環境、文化など個別 の事情がありそれを乗り越えなければならない • ただ、今回挙げた内容の大半、特に「目的の明確化」がう まくいかないと必ずと言っていいほど失敗する • これなしに成功した話は偶然に過ぎない、は言い過ぎだろ うか?

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まとめの前にネタばらし

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習・ データ分析・データサイエンティスト・データサイエンス

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習・ データ分析・データサイエンティスト・データサイエン ス・マーケティングオートメーション・ビックデータ

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習・ データ分析・データサイエンティスト・データサイエン ス・マーケティングオートメーション・ビックデータ・ BI・CRM・SFA

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習・ データ分析・データサイエンティスト・データサイエン ス・マーケティングオートメーション・ビックデータ・ BI・CRM・SFA • その他、過去の流行した言葉でも同じことが言える

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ネタばらし • 今回の話の「AI」は、次の言葉に変えても当てはまる • 人工知能・機械学習・ディープラーニング・深層学習・ データ分析・データサイエンティスト・データサイエン ス・マーケティングオートメーション・ビックデータ・ BI・CRM・SFA • その他、過去の流行した言葉でも同じことが言える • 将来現れる別の言葉も同じだろうことは容易に想像がつく

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ネタばらし • 実は自分はAIのプロジェクトにほとんど関わっていない

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ネタばらし • 実は自分はAIのプロジェクトにほとんど関わっていない • 今回の資料はデータ分析のプロジェクトやツール導入、活 用には関与してきており、その時の知見をまずまとめた

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ネタばらし • 実は自分はAIのプロジェクトにほとんど関わっていない • 今回の資料はデータ分析のプロジェクトやツール導入、活 用には関与してきており、その時の知見をまずまとめた • その上で「AI研究会」での講演なので話の主語を「AI」に 変えただけ。実は本文中に「AI」という言葉を出来るだけ 出さないように書いた

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ネタばらし • 実は自分はAIのプロジェクトにほとんど関わっていない • 今回の資料はデータ分析のプロジェクトやツール導入、活 用には関与してきており、その時の知見をまずまとめた • その上で「AI研究会」での講演なので話の主語を「AI」に 変えただけ。実は本文中に「AI」という言葉を出来るだけ 出さないように書いた • つまり、最近流行の「AI」は過去から同じことを繰り返し ている中での一コマに過ぎない。

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ネタばらし • 次の最有力はRPAか。来年か再来年あたり「RPAが失敗す る」でも同じ話をしても違和感はほとんどないはず

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ネタばらし • 次の最有力はRPAか。来年か再来年あたり「RPAが失敗す る」でも同じ話をしても違和感はほとんどないはず • 流行りのツール、手法、そのほか幅広く使えるので、無茶 な要求が来たら過去に起きた別のツールを例にして「同じ ことになりますよ」と説得するのにも使える

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ネタばらし • 次の最有力はRPAか。来年か再来年あたり「RPAが失敗す る」でも同じ話をしても違和感はほとんどないはず • 流行りのツール、手法、そのほか幅広く使えるので、無茶 な要求が来たら過去に起きた別のツールを例にして「同じ ことになりますよ」と説得するのにも使える • おかしなことになる前に、過去の失敗から学ぼう

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まとめ

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まとめ • 「AIに任せれば何でもできるんでしょ、とにかくうまく やって」と知識ゼロの部下に丸投げ、データは足りないが 追加で取る予算なし、部下はコンサルの言いなりになって 外注にさらに丸投げ、出てきた結果はまともに使えないの でPoCで終わり」では失敗するのは当然 • 所詮道具なので、その道具が生きるかは使い方次第 • 言い尽くされているようにまずは「何がしたいのか」を考 える。道具をどうするかははその後のこと

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ご清聴ありがとうございました しんゆう@データ分析とインテリジェンス https://analytics-and-intelligence.net/ Twitter:@data_analyst_