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感染症の数理 セミナー(8) Oct 4, 2024 @NIID 国立感染症研究所 第12室長 米岡 大輔

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目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5. 人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48

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はじめに 本セミナーシリーズは数理重めです。 簡単な微分/積分、線形代数が出てきます。 なるべく平易に解説しますが、完全に数学アレルギーの方はここ で終わられることをおすすめします。 セミナー終了時にはある程度次のパンデミックに向けて、 (ある程度) 数理モデリングができるようになることを目標としてます。 自由参加なので、もし無理そうならお気軽に休んでください。 3/20

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HIV感染者数をAIDS患者数から逆計算 AIDS患者数が全数報告されているとして、HIV感染者数は何人か? Notation a t : 流行開始t年後のAIDS患者数(正確にはその期待値) h t : 流行開始t-1年目からt年目までの新規HIV感染者数 w(): HIV感染からAIDS発症までの潜伏期間のpdf w t : w()を離散化させてt-1年目のAIDS発症確率 52 1年目のHIV感染者数h1 に1年以内の発症確率w0 をかけたもの 1年目のHIV感染者h1 が2年目での発症確率w1 をかけたもの + 2年目のHIV感染者h2 が1年目での発症確率w0 をかけたもの 今、at は観察されていて、wは既知とする 欲しいのはht ! Backcalculation!!

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連続だと こっちで表現されることも Backcalculationしなくてもパラメトリックを仮定するとhは求まる?(当たり前のギモン) aが二次exponential (流行初期は指数的に増えるから合理的) wがγ分布 wがWeibull分布などだと数値計算するしかない現状。。。 53 はa 1 による偏微分演算子 明確に求まるケースも!

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推定は? 一般的には 1. 最尤法: aかhのどちらかにパラメトリックなモデルを仮定 • 例えば、 を仮定して、θの最尤推定量を求めればOK • しばしば負のhになっちゃうので難しい 2. ノンパラ: hのポワソン過程を仮定するとaもポワソン過程 3. EMS (EM algorithm + smoothing) • EMでhを作ってそれを最大化する。ただし、各iterationの間でhがある程度 smoothになるようにペナルティをかける 54

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逆計算による短期予測 1期先予測 2期先予測 Note • 青い箇所は、全く無情報なので、自分で考える • 短期的な将来予測に対してのみ有効とされている • 潜伏期間がiidを仮定しているので、今はかなり古い手法 • AIDSの全数把握を仮定しているため、日本ではムリ 55 t時点では もう知っ ている ちょっとトリッキー 全体のHIV感染者のうちの何人がまだ AIDSを発症してないか、を知っているか のように推定する。

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もうちょっとだけ複雑にしよう1 (Cui and Becker, StatMed, 2000) (競合リスク)Competing risk model (ex. がん死亡のハザードを知りたいときに、脳卒中死亡は競 合リスク) まず、ある個人は時間uにHIV感染 HIV感染からAIDS発症までの時間をD その時間の密度関数(incubation period)をf(x)、その累積密度関数をF(x)とする ある時点xのハザード関数は 同様に、HIV感染からHIV診断までの時間をD’とし、そのハザード関数を とする 2つの関係は のように定める 56 ρ’はρをγだけ定数倍 +vだけ定数移動

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もうちょっとだけ複雑にしよう2 (Cui and Becker, StatMed, 2000) (競合リスク)Competing risk model (ex. がん死亡のハザードを知りたいときに、脳卒中死亡は競 合リスク) 時刻 zのHIV感染者h(z)を加法ハザードモデル 感染からHIV診断 or AIDS発症までの時間の早い方 (i.e., min(D, D’)):Induction period の報告期間ごとの差分を とすると 57 Induction period ρたちが定数 とする