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藤田 光明 @6km6km AI事業本部 小売セクター データサイエンティスト

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藤田 光明 @6km6km AI事業本部 小売セクター データサイエンティスト

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これまでの経歴 インターネット広告配信プロダクトでの開発 小売の購買データを活用した広告プロダクトの立ち上げ 現在:小売アプリのグロース https://speakerdeck.com/ko_fujita1 https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=24754

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小売企業との”協業DX”を加速中

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小売企業との”協業DX”を加速中 決算資料より抜粋

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データサイエンスの観点で見ると... 小売にも展開したい! データサイエンスで ビジネス貢献した実績

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「インターネットの当たり前」で考えてしまうと 小売企業との協業DXの障壁はたくさんある データが もらえない 店舗オペレー ション AIって 効果あるの? とりあえず PoCだけ... ベンダーとの兼 ね合い 社内調整...

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データサイエンティスト(DS)がよく直面する課題 ● データはある!!(POSデータなど) ● 施策に関するデータはない... ○ 例:クーポン,チラシ,店舗内施策,割引,テレビ広告 ○ あっても不十分だったり,まとまっていなかったり ● 施策は「きれいな」実験がされているわけではない ○ ランダム化(A/Bテスト)など インターネット(=オンライン)と 小売(=オフライン)の大きな違い

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データサイエンティスト(DS)の役割を考えてみると... https://speakerdeck.com/ko_fujita1/how-data-scientists-can-help-startups DSが改善するのは意思決定

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DSが改善するのは意思決定 意思決定の改善...施策の改善 施策のデータがない...施策の改善ができない? DSの役割がない...?

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今日のテーマ DXプロジェクトを推進する二人三脚 プロジェクトマネージャー (PM) 今あるデータで やる! 顧客と目線を 合わせる! データサイエンティスト (DS)

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以降では ある小売アプリグロースの施策の1つとして クーポン配信の改善に取り組んだ話をします

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1. 今あるデータでやる (DSパート) 2. 顧客と目線を合わせる (PMパート) 目次

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1. 今あるデータでやる

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Potential Outcome Framework 我々が改善したいもの Donald Rubin@Harvard 施策を実施したときの アウトカム 施策を実施しなかったときのア ウトカム 施策の効果

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クーポンに置き換えると クーポンを付与 世界線Aのユーザ i さん ユーザ i さん 世界線Bのユーザ i さん 購入:2000円 購入:3000円 効果: 1000円

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根本問題: 改善したいものが観測できない クーポンを付与 世界線Aのユーザ i さん ユーザ i さん 世界線Bのユーザ i さん 購入:2000円 購入:3000円 同時に観測が できない

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ユーザをランダムにグループ分けする = A/Bテストすると... クーポンを付与 Aグループのユーザ ユーザ全体 Bグループのユーザ 平均購入額:2000 円 平均購入額:3000 円 ランダム化

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A/Bテストで平均的な改善の効果を観測できる クーポンを付与 Aグループのユーザ ユーザ全体 Bグループのユーザ 平均購入額:2000 円 平均購入額:3000 円 ランダム化 平均的な効果: 1000円

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A/Bテストで平均的な改善の効果を観測できる クーポンを付与 Aグループのユーザ ユーザ全体 Bグループのユーザ 平均購入額:2000 円 平均購入額:3000 円 ランダム化 平均的な効果: 1000円 施策の改善には A/Bテスト(ランダムな)データがあるとベスト

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ランダムにクーポンが配布される状況...? あまりない 何かしらのルールに従って配布される ● 全員に配布 ● ポイントカード会員に配布 ● 誕生日のユーザに配布 ● 過去に対象商品を購買したユーザに配布 ● ある地域でのみ配布 どうする...?

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よくある失敗:ランダムなデータの必要性を叫ぶ ランダムなデータを集めるために, とりあえずクーポンをランダムに配る 実験をしてみましょう! データサイエンティスト 

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よくある失敗:ランダムなデータの必要性を叫ぶ 試行錯誤して知見が貯まってるのに なぜ今さらランダムに配る...? 必要性を社内に説明できない... ランダムに配ったあとの改善だと 時間がかかる... 顧客

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どうするか? ランダムなデータ とりあえず実験

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どうするか? 今あるデータで何かできないか...? ランダムなデータがないなら 因果推論を活用しよう!

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自然実験とは... ルール・ビジネスロジック・偶然などによって, あたかも施策が実験のように実施された状況を用いて,因果効果を推定する方法 たとえば ● 特定のチャネル / エリアでのみクーポンが配布される ● 過去購買額など閾値以上のユーザにのみクーポンが配布される ● 誕生日のユーザにクーポンが配布される 自然実験的に配られたクーポンを探してみる

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● 特定のチャネル / エリアでのみクーポンが配布される (差分の差分法) ● 過去の購買額などの閾値以上のユーザにのみクーポンが配布される (回帰不連続デザイン) ● 誕生日のユーザにクーポンが配布される (擬似的な “ランダム” データ) 因果推論で施策の効果を推定できるケースがある

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● 特定のチャネル / エリアでのみクーポンが配布される(差分の差分法) ● 過去の購買額などの閾値以上のユーザにのみクーポンが配布される(回帰不連続デザイン) ● 誕生日のユーザにクーポンが配布される(擬似的な “ランダム” データ) 分析の詳細は兵頭さんのセッション 誕生日クーポンの例を紹介 https://ca-base-next.cyberagent.co.jp/2022/sessions/ds-for-app-coupon/

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● 小売が運営するTwitterやポイ活サイトを見まくって,誕生日クーポンの存在を知る ● POSデータ内に使われたクーポンのカラムはあるが,どのIDが誕生日クーポンなのか不明 ● 実際にチームメンバーが店舗で購買してPOSを確認することでIDが判明 まずは,分析できる状態に 誰がいつどこで誕生日クーポンを使ったか &何を買ったのかがわかる →分析できる!

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● 誕生日は擬似的なランダムイベント(=A/Bテストをしている状況) ○ クーポンの効果が推定できる! ○ アカデミックな分野でも効果の推定に誕生日が使われる(Angrist(1990)など) ● クーポンの効果の分析(全体の効果,ユーザ属性 / RFMごとの効果) ● ユーザに対するクーポンの効果を予測するアップリフトモデルを構築 分析・予測モデルの構築 Angrist, J. D. (1990). Lifetime Earnings and the Vietnam Era Draft Lottery: Evidence from Social Security Administrative Records. AER 兵頭さんスライドより

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この分析・予測モデルは完璧ではない 予測できるもの 予測したいもの 介入の定義 クーポンを使ったときの効果 クーポンを配ったときの効果 対象ユーザ (共変量シフト) 誕生日クーポンを使うユーザ アプリを利用するユーザ 割引方式 X%割引 Y%ポイント付与 たとえば 予測できるもの ≠ 予測したいもの

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● 完璧じゃないけど大間違いでもないはず(❌:完璧じゃないとやらない) ● 定式化して,自分たちがどういう仮定を置いているのか整理 ○ その仮定の妥当性をデータから検証できないか? ○ 顧客の肌感として妥当か? が,やらないよりはマシ データから施策を提案する第一歩!

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● 事前に期待値をすり合わせる ● できれば,施策の適用はランダムに ○ 施策の因果効果を評価しやすい ○ 新しい施策なので顧客にとっても受け入れやすい 施策の実施と振り返り ● 実験の結果を集計してレポートするだけでなく, ランダムなデータを使ってたくさんの 知見を提供する ● 次回の施策のための仮説を洗い出す 施策の実施 施策の振り返り

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● 施策の改善のための理想はランダムなデータ(A/Bテストデータ) ● 理想のデータがなくても,自然実験を見つけて因果推論で施策の効果を推定する ● 完璧ではないが,データを使った施策の第一歩が踏み出せる ● 一度施策のPDCAを回して,データから知見が出てくると,今後の施策の幅も広がる 「今あるデータでやる」パートのまとめ

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2. 顧客と目線を合わせる

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網谷 龍太朗 2017年度 新卒入社 AI事業本部 アプリ運用センター プロダクトマネージャー @Ryutaro Amiya

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2017年 ・ビジネス新卒として入社 ・広告配信プロダクト立ち上げ×2     2018年 ・ロボット事業 立ち上げ ・AI企業との合弁会社 立ち上げ 2019年 ・AI×広告クリエイティブ最適化プロダクトPM ・AI関連の新規事業 立ち上げ(〜2021年) 2021年 ・アプリ運用センター(〜現職) 経歴

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取り組み初期から A/Bテスト!因果推論! サイバーエージェント 顧客

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A/Bテスト!因果推論! サイバーエージェント 取り組み初期から 顧客

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A/Bテスト ユーザからのクレーム経験 慎重にならざるを得ない

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因果推論 長年の試行錯誤による 独自分析・評価方法の確立

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他にも、、、 店舗オペレーション の調整 販促スケジュール への影響 反実仮想?? マスのほうが 効果ある、、

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インターネットの当たり前は小売 の当たり前じゃない A/B! 因果推論! 話が合わない ルールを知らない

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A/B! 因果推論! 話が合わない ルールを知らない インターネットの当たり前は小売 の当たり前じゃない ドメイン知識を持っている小売と 目線を合わせる必要がある

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・小売の分析を完全トレース ・効果の定義の違いを把握 ・効果の定義を擦り合わせ ・オペ上実行可能なA/B提案 そのためにやったこと

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小売の分析を完全トレース 目の前で分析をしていただき 分析結果を再現

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効果の定義の違いを把握 因果推論 前後比較 同じ施策を 因果推論した場合の効果と比較

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効果の定義を擦り合わせ

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オペ上実行可能なA/B提案 例えば... A  |  B なし 割引 割引 ポイント倍 A  |  B

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A  |  B なし 割引 割引 ポイント倍 A  |  B オペ上実行可能なA/B提案 例えば...

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・小売の分析をトレース ・効果の定義の違いを把握 ・効果の定義を擦り合わせ ・オペ上実行可能なA/B提案 そのためにトライしたこと

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A/Bテスト スタート! 我々目線では初速 うまくいってそう...!

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と思いきや,,,

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施策後のフィードバック 効果が小さくないか? 今までのマーケティング施策と比較すると 成果を出すのに時間がかかりそう 小売側でも出来そうではないか? CA側にお願いする意味は今のところ薄いかも 顧客

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・小売の分析をトレース ・効果の定義の違いを把握 ・効果の定義を擦り合わせ ・オペ上実行可能なA/B提案 そのためにトライしたこと

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・小売の分析をトレース  ◎ そのためにトライしたこと

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・小売の分析をトレース  ◎ ・効果の定義の違いを把握 ◎ そのためにトライしたこと

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・小売の分析をトレース  ◎ ・効果の定義の違いを把握 ◎ ・効果の定義を擦り合わせ △ →全く足りなかった。評価基準の変更は大変 そのためにトライしたこと

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・小売の分析をトレース  ◎ ・効果の定義の違いを把握 ◎ ・効果の定義を擦り合わせ △ →全く足りなかった。評価基準の変更は大変 ・オペ上実行可能なA/B提案 ✖ →オペを変えるレベルの提案じゃないと意味ない そのためにトライしたこと

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● 効果の定義を擦り合わせる    効果の評価方法を更新しにいく気概 ● 小売と協力してルールを学び, ルールを変える提案をする 協業DXでは

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