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高卒就活市場への 受入保留アルゴリズム(DA) 導入の提案 野田 俊也 東京大学大学院経済学研究科 東京大学マーケットデザインセンター

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資料作成者 ◼ 野田 俊也(のだ しゅんや) ◼ 東京大学経済学部経済学科卒(経済学部卒業生総代) ◼ 東京大学経済学研究科修士課程修了 ◼ スタンフォード大学経済学博士 ◼ ブリティッシュコロンビア大学経済学部助教授 ◼ 現職: 東京大学大学院経済学研究科講師  UTMD プロジェクトマネージャー  ERATO小島マーケットデザインプロジェクト 研究総括補佐 兼 社会実装グループリーダー Email: [email protected] Website: https://sites.google.com/site/shunyanoda/

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要約 ◼ 現状の学校斡旋による高卒就活では、生徒1人が企業1社にしか応募できな い「1人1社制」が普及している ◼ しかしこれはマッチング理論の知見によると、望ましくないやり方  就活に悔いの残る、質の悪いマッチングが発生しやすい  応募先の選び方に関して余計な読み合いを生み、不要な労力を生む ◼ これを、DAアルゴリズムを活用した複数応募制へと切り替えることにより、 高卒就活市場のマッチングの質を高め、就活の過程を効率化することができ る 3

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提案の背景

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現行の雇用慣行(1人1社制) ◼ これまでの学校斡旋による高卒就活システムでは、多くの都道府県で推薦・ 選考開始から一定期間(1~2ヶ月)は生徒1人が求人企業1社にしか応募 できない仕組みが採用されている  秋田・茨城・大阪・和歌山・沖縄(2024年6月時点)では当初より複数応 募が可能だが、応募可能な社数はかなり厳しく制限されているため、1人 1社制と状況は大きく変わらない (厚生労働省の高卒就職情報Webサービス「◆都道府県高等学校就職問題検討会議における申し合わせ等(令和7年3月卒業 者の応募・推薦について」 https://koukou.gakusei.hellowork.mhlw.go.jp/doc/r6_koukou_moushiawase01-47.pdf より) ◼ この慣行が一因で、質の悪いマッチングが実現している可能性がある  高卒者のうち23.1%が卒業後入社した会社を10点満点で「0点」と評価  高卒者の5.9%が3か月以内に、9.4%が6か月以内に離職 (専門・短大・高専卒は 3.5% と 6.1%、大卒は 3.8% と 5.9%)  (古屋星斗「『就職後』から見た、高校生の就職活動の課題」第2回 働き方・人への投資WG リクルートワークス研究所提出 資料 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2409_03human/241121/human02_06.pdf より) 5

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1人1社制のマッチング理論的問題点 ◼ 1人1社制のもとでは、真の第一希望の企業に応募するのではなく、受かり そうかどうかを判断して応募先を選ぶ必要がある(耐戦略性を満たさない)  「受かりそうかどうか」の判断を誤れば不採用となり、後半の自由応募の フェーズに回るが、その頃には多くの企業が採用活動を終えている  多くの学校で、教師が応募する企業の選択をサポートしている → どの1社に応募するかを相談・調整する教師の責任が重く、同時に重い 業務負荷となっているのではないか ◼ 1人1社制はミスマッチを引き起こしやすい  「受かりそうかどうか」の判断をもとに応募先が選ばれるため、生徒が不 本意な就職先に行くことになりやすい  本当に受からなかったかどうかは、その後も不明で、納得感が生まれない 6

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1人1社制を擁護する意見 ◼ これまで1人1社制が採用されてきた経緯には、一定の理由がある ◼ 1人1社制にはセーフティネットとして意義がある  複数応募にすると、人気の高い生徒が大量の内定を獲得する  このため、人気のない生徒には内定が回らなくなってしまうかもしれない  結果として、就職できない生徒が出てきてしまうのではないか? ◼ 複数応募にすると、就活が長期化するのではないか?  大卒就活市場のように、就活が長期化すると学業に支障をきたす 我々の提案は、これらの問題を生じさせない複数応募制 (単に複数応募を解禁せよという提案ではない) 7

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なぜ1人1社制にしたかった? ◼ 1人1社制は、単一応募・単一内定制  (-) 単一応募なので、読み合いを招き、達成されるマッチの質が低い  (+) 単一内定なので、内定をもらえない生徒が出ることが回避できる  欲しかったのは単一応募ではなく、単一内定! ◼ 完全な自由市場は、複数応募・複数内定制  (+) 複数応募なので、興味がある企業を多く応募することができ、生徒- 企業双方の希望が尊重されたよいマッチが達成される  (-) 複数内定なので、一部の生徒に内定が集中する恐れがあり、また就職 先の決定が徐々にしか進まず、就活が長期化する傾向がある ◼ つまり、複数応募・単一内定制へ移行すれば理想的な結果が達成できる  DAアルゴリズムはこれを達成する制度 8

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提案の内容 ◼ 現行の学校斡旋の仕組みのマッチング部分に対してミニマムな変更 ◼ マッチングの仕方を、1人1社制(= 単一応募・単一内定制)から、DA方 式(= 複数応募・単一内定制)へと切り替える  市場の統制はしつつ、より良い制度へのアップデートを行う 9 単一応募 単一内定 複数応募 単一内定 複数応募 複数内定 1人1社制 DA方式 完全な自由市場 現行の学校斡旋による 高卒就活市場 研修医の病院配属 保育所の入園調整 海外での大学入試など 秋田等5府県の学校斡旋 自己開拓による高卒就活 短大卒・大卒就活

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類似の事例: 公立高校入試の再設計 ◼ 公立高校入試も現行制度は多くの場合単願制(=1人1校だけ受験できる) ◼ UTMDでは2021年に高校入試へのDA導入を提言 ◼ 2025年4月22日に、石破首相より単願制見直しへの検討指示が下りる 10 UTMDが作成した政策提言レポートおよび 高校入試に対するDA導入の解説動画・記事 はこちらのページに整理 https://www.mdc.e.u-tokyo.ac.jp/news/6531/ (かなり解説が充実しているため、高卒就 活に関心がある方の参考にもなるはず)

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DAとは 11

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DA(受入保留アルゴリズム)とは ◼ DA(deferred acceptance, 受入保留アルゴリズム)は、David Gale と Lloyd Shapley により1962年に発明されたマッチング方式  最も実社会でよく用いられているマッチングアルゴリズムの一つ  Shapley はこの功績で2012年にノーベル経済学賞を受賞 (Gale は受賞確実と言われていたが、それ以前に逝去) ◼ 生徒と企業、研修医と病院、生徒と大学などを、お互いの希望をもとに上手 くマッチさせる方法  希望 = 企業A が第一志望、企業B が第二志望……  上手くマッチ = 安定マッチングを生成する耐戦略的なアルゴリズム ◼ 各生徒は複数の企業に志望順位をつけて応募できる = 複数応募 ◼ 各生徒はたかだか一つの企業としかマッチしない = 単一内定 12

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DAによるマッチングの下準備 ◼ DAによるマッチングは就活の最終段階で実施される ◼ その前の段階で、(i) 生徒がどの企業に何番目に入りたいか、(ii) 企業がどの 生徒を何番目に雇いたいかの希望順位を用意させる  業界の下調べ、職場見学、インターン、説明会、試験、面接など ◼ 企業についてはこれに加え、今回の採用で最大何人まで雇いたいかという 定員も決定する ◼ 例えば希望順位の登録日を9月1日に設定する場合、7~8月に生徒・企業の双 方がこれらの調査を終えて、希望順位を入力できる状態にしておく ◼ 締切が来ると、希望順位をもとにシステムがごく短時間で就職先を調整する 13

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生徒と企業の希望順位のイメージ ◼ 各生徒・各企業は、それぞれ自由に希望順位を作成し、提出する ◼ 希望順位表に記載されていない生徒・企業とは決してマッチしない 14 生徒の希望順位 どの企業が第〇志望か 生徒 第1志望 フレッシュ産業 第2志望 ルミナス工業 第3志望 スマイルサービス 第4志望 ピュアテック 第5志望 クレセント物流 ︙ ︙ 企業の希望順位 どの生徒を何番目に 雇いたいか 企業 1位 根津太一 2位 千駄木美咲 3位 湯島和也 4位 乃木坂早紀 5位 赤坂翔 ︙ ︙

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「企業提案DA」の流れ ◼ 各企業は、自分の希望順位に沿って上から順に定員まで仮内定通知を送る ◼ 生徒は、複数の仮内定通知を受け取った場合、その中で一番希望する企業の 仮内定通知のみを保留し、他の企業に対しては内定辞退する ◼ 辞退を受けた企業は(その分、定員が空くので)、企業の希望順位に沿って さらに仮内定通知(補欠合格)を送る ◼ このプロセスを、どの企業も新しく仮内定通知を出さなくなるまで続行、停 止した段階ですべての仮内定を本内定へと変更する ◼ 上のプロセスを文字通り実施すると時間がかかるので、提出された希望順位 を使って仮内定通知 → 内定辞退の作業を自動化する → これが企業提案DA  企業提案 = 企業が能動的に内定を出し、生徒が辞退の判断をする 15

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企業提案DAの中での生徒・企業の動き 企業提案DAの中で、 ◼ 企業は採りたいと思う生徒に順に仮内定を出し、断られたら次に採りたいと 思う生徒に仮内定を出している ◼ 生徒は、獲得した仮内定の中から、最も志望度が高い企業のものをキープし、 それ以外の仮内定を辞退している ◼ 大卒就活のような自由市場でもこのような過程で就職先は決まる ◼ 最終的に出力されるマッチングは、安定マッチングとなっている  ある生徒がある企業に就職できないとき、その企業の定員はすべてその生 徒よりもその企業が採りたい生徒で埋まっている  ある企業がある生徒を採用できないとき、その生徒はその企業よりも就職 したい(志望度が高い)企業に就職している 16

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DAアルゴリズムの本質 ◼ つまりDA は、各生徒が自由にたくさんの企業に複数応募できるときに、生 徒たちが最終的に行き着く就職先を高速に計算する方法  あらかじめ生徒と企業が自分自身で決めた希望順位を使い、生徒の内定辞 退の判断と、企業の追加内定の判断を自動化しているだけ  複数内定が出た後の処理の過程がコンピュータで効率化されている ◼ 「アルゴリズム方式」「マッチングを自動的に計算」といっても、「よくわ からないAIのようなもの」を使う突飛なマッチングの決め方ではない  むしろ調整の過程は非常に透明 17

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「生徒提案DA」 ◼ 実際には、労働市場などでは、(企業ではなく)生徒が能動的に「応募」し、 企業が生徒の応募を「保留」するか「不採用」とするかを決める「生徒提案 DA」のほうが望ましい性質が多いので、生徒提案DAがよく用いられる  アルゴリズムの構成は、企業提案DAから生徒と企業の役割を反転させる だけ 18

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生徒提案DAの進み方 ◼ 各生徒は、自分の希望順位に沿って上から順に企業に応募する ◼ 企業は、現在応募・保留している生徒の中から、最も採りたい生徒を定員 いっぱいまで保留し、それ以外の生徒に対しては不合格の通知を行う ◼ 不合格となった生徒は、これまで不合格になっていない中で、最も希望順位 が高い企業に応募する(すでに希望順位表に書かれている企業がなければ、 どこにも就職しないまま就活を終了する) ◼ このプロセスを、どの生徒も新しく応募しなくなるまで続行し、応募が行わ れなくなったら、企業はその時点で保留している生徒に正式に内定を出す ◼ 上のプロセスを文字通り実施すると時間がかかるので、提出された希望順位 を使って応募 → 保留・不合格の作業を自動化する 19

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耐戦略性 ◼ 生徒提案DA のもとでは、生徒は自分の希望順位をそのまま提出するのが必 ず最適となる → マッチング理論で耐戦略性と呼ばれる望ましい性質  「生徒Aが、自分の希望順位表をそのまま提出して企業Xに就職できな かったとすると、その生徒はどのように希望順位表を書いても企業Xに就 職できることはない」ということ  例えば「受かりそうな企業を第一希望とする」というような、 偽りの希望順位を提出することで得できる可能性がない  教員は「あなたはどの企業なら受かりそうか」を指導する必要がない ◼ 高卒就活市場では、この生徒提案DAによりマッチを行うべきではないか? 20

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DAの活用事例 21

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保育園の入園調整 ◼ 日本ではどの子供がどの認可保育園に通園するかは、市町村が調整している ◼ 多くの自治体で、保護者は自分の子供をどの保育園に入れたいか(どの保育 園が第〇希望かを書いたリスト)を提出 ◼ 全員のリストと、子供の優先順位(調整指数)に基づいて入園先を決定 ◼ 使われているアルゴリズムは自治体によるが、多くの自治体でDAやその簡 易版・類似版をベースにした方法が採用されている 22 森下保育園 両国保育園 蔵前保育園 春日保育園 飯田橋保育園 月島保育園

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研修医の病院配属 ◼ DA の最も有名な導入事例 ◼ 医学部卒業生(研修医)と臨床研修病院のマッチング ◼ 米国では1952年より病院提案DAと等価な制度が用いられており、1997年に 医師提案DAをベースとした方法に切り替え ◼ 日本では2003年よりDAが採用される ◼ 同様の研修医マッチングは、カナダ、イギリスなどでも導入済 ◼ 米国では医師以外にも、薬剤師・看護師・歯科医など、様々な専門職研修の マッチングプログラムにDAが用いられている 23

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ニューヨーク市の公立高校入試 ◼ 自由市場(複数応募・複数内定)が機能せず、DAに移行して成功した事例 ◼ 2003年までの旧方式では、生徒は5つまでの高校に応募し、高校は生徒に対 してバラバラに内定を出していた(= 複数内定)  入学辞退 → 補欠合格のプロセスが高速化されず、3万人もの生徒が調整 が上手くいかなかった結果、どの高校ともマッチできず(希望を無視した 自動配属に回る) ◼ 2003年より、生徒提案DAをベースとした方法へ移行  どの高校ともマッチしない生徒の数は90%削減された ◼ これ以外でも、入試にDAを導入する事例は増えてきている  詳細は高校入試へのDA導入の提案の解説ページ等を参照 24

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よくある質問と それに対する回答 25

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26 Q. ◼ 1人1社制が使われるのは冒頭だけで、すぐに複数応募は解禁されるので、 制度変更の必要はないのではないか? A. ◼ 我々の提案は、単なる複数応募の導入ではなく、DAの導入  調整に時間がかかり、デメリットの多い「複数内定」は避けるべき ◼ 1人1社制のフェーズで多くの企業の採用枠が埋まった後に複数応募を許す のと、最初から複数応募を許すのとでは帰結が大きく異なる  複数応募が解禁されるタイミングでは、多くの場合「もともと希望順位が 高かった企業」は採用活動を終了してしまう  最初の1社の選択が重要なので、駆け引きの要素は緩和されていない

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27 Q. ◼ DA のような複雑な仕組みは、高卒就活者にとって難しすぎるのではない か? A. ◼ DA やその簡易版は高校入試・大学入試や、保育園マッチングなどにも活用 事例があり、参加者に対して特別なスキルは要求しない ◼ 「自分の希望順位を正直に申告することが得になること」さえ伝わっていれ ば、DA がどのような挙動を取るのか、なぜ望ましい性質を持つのかについ て、すべての参加者が理解している必要はない  対照的に、1人1社制はルールとしては単純だが、制度下で生徒や企業が 何をするのが得か割り出すのは専門家でも難しい

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28 Q. ◼ 複数応募にすると、面接対策指導などで教員の手間が増えるのではないか? A. ◼ 複数応募、特にDAにすると面接の件数が増えるという意見は正しい  しかし、生徒-企業のマッチの質の悪さが問題になっている現状を鑑みる と、面接の回数が増え、生徒が多数の企業の情報を得られるのは良いこと ともいえる  そもそも教員はすべての面接機会に対して個別に対策指導を行うべきか? ◼ DA を導入すると、教員が校内選考を行う手間や、受かりそうな企業を検討 する手間は削減することができるため、この点に関して教員の手間は減る

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29 Q. ◼ 複数応募しなくとも確実に就職できるほど人材が売り手市場なので、複数応 募は需要されていないのではないか? A. ◼ 売り手市場であってもマッチングの質の重要さは変わらない  全員が就職できていればどんなマッチングでも等しく望ましいわけではな く、マッチングの質を高めれば離職率等を改善できる可能性もある  売り手市場となっているのは高卒就活市場に魅力がないことも要因であり、 その原因の一つはマッチの質の悪さではないか

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まとめ 30

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まとめ ◼ 高卒就活市場における雇用慣行である「1人1社制」は、マッチング理論の 観点からみて弱点が多い制度  どの企業に応募するかの読み合いが重要となってしまう  応募の仕方によって、後悔が生まれる結果となる ◼ DAアルゴリズムは、「1人1社制」が果たしていたセーフティネットとし ての機能を損なわず、複数企業への応募を可能とするやり方  たくさんの企業に応募し、受かった中から最も志望度が高い企業が就職先 となるシステム  内定は1社だけなので、特定の生徒への内定の集中は発生しない  希望順位を巡る駆け引きは一切生じない

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参考資料: マーケットデザインに ついて 32

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マーケットデザインは 制度設計の科学

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これまでの社会 経験・前例・試行錯誤を もととした手探りの制度設計 制度 帰結(配分)

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マーケットデザイン 望ましい配分から 最適な制度を逆算 新たな制度の創出 実社会の課題を解決 制度 帰結(配分) インセンティブ 参加者の行動 従来の経済学 数理モデルとゲーム理論で 参加者のインセンティブと 行動を分析 制度の帰結としての 配分を予測

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こうして設計された制度は実用化され、成果を挙げている  研修医の病院配属のほか、学校選択制など  ドナー交換型の生体腎移植  フードバンクに対する寄付された食糧の配分  周波数帯の利用権・Web広告枠などのオークションによる配分 a 社会科学の理論を工学的に応用する という、 かつては夢のまた夢と思われていたことが実現しつつある 社会の情報化に伴い、マーケットデザインが有効な場面が急増&増え続けている

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従来の 社会科学研究 理論研究 優れた制度を デザイン 制度設計の科学は理論研究だけでは完結しない 実社会での実用 社会実装で得られた知見を理論研究へ還元 理論研究の知見を社会実装し、実社会の問題を解決 従来の 社会科学研究 理論研究 優れた制度を デザイン 社会実装 フィードバック

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待機児童問題の解消 組織内の人材配置 の効率化 コロナワクチンや 災害時の資源の 配分 リサイクル市場の 再設計 暗号資産市場の 改善と発展 入試制度の改革 さまざまな社会問題の解決が、 制度設計の科学のフィールドワークに

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参考資料: 東京大学 マーケットデザイン センター (UTMD)

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UTMDのご紹介 研究理念: 「科学の力で制度をアップグレード」 名称 東京大学マーケットデザインセンター(UTMD) 設立 2020年秋 所属 東京大学経済学研究科附属 研究員数 研究員:49名、リサーチアシスタント:34名 ※2025年3月時点 研究内容 金銭的なやり取りを伴わずに適材適所を目指すマッチング理論と、 価格メカニズムを活用した適材適所を目指すオークション理論の研究、 およびこれらの社会実装と効果検証 特徴 社会実装と理論研究の両輪を回す体制を整備している 本提言の 理論的基礎

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メンバー(専任の研究員のみ) センター長 小島 武仁 分野:マーケットデザイン、 マッチング理論、ゲーム理論 副センター長 松島 斉 分野:ゲーム理論、ミクロ経済学、 メカニズムデザイン、実験経済学 副センター長 山本 裕一 分野:ミクロ経済学、ゲーム理論 特別教授 神取 道宏 分野:ミクロ経済理論、 ゲーム理論 プロジェクトマネージャー 野田 俊也 分野:マーケットデザイン、 マッチング理論、 ブロックチェーン 研究員 今村 謙三 分野:マーケットデザイン、 マッチング理論、ミクロ経済学 研究員 大谷 克 分野:実証産業組織論、 実証マッチング 研究員 小田原 悠朗 分野:ゲーム理論、 メカニズムデザイン 研究員 久野 寛 分野:実証ミクロ経済学 研究員 横手 康二 分野:マーケットデザイン、 ゲーム理論 研究員 塚田 憲史 分野:ゲーム理論 研究員 堀越 啓介 分野:ポジティブ心理学、 挑戦研究 研究員 前田佐恵子 分野:公共経済学

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主な社会実装プロジェクト 労働市場 企業内人事配置へのマッチング理論利活用 スポットワーク市場におけるマッチングに関する実証分析 教育・保育 自治体における保育園入所決定アルゴリズムの改革・実証実験 講師と生徒の相性を考慮した最適なマッチング手法の開発 災害・医療 自治体におけるCOVID-19ワクチン接種制度の改善支援 原子力災害時避難計画におけるマッチング理論活用検討 その他 PETボトルリサイクル入札の再設計に関する政策提言 修士論文報告会スケジューリングツールの開発 マッチングアプリにおけるアルゴリズム改良の実証研究 協力企業名一覧 ◼ シスメックス ◼ ブリヂストン ◼ サイバーエージェント ◼ ビズリーチ ◼ タイミー ◼ MiDATA ◼ ネクストビート ◼ つくば市 ◼ 郡山市 ◼ 渋谷区 ◼ 千代田区 ◼ 多摩市 …ほか