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プロダクトマネージャーの 良い意思決定についてQuestする 2024年 12月 曽根原 春樹 X: @haruki_sonehara

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ABOUT ME

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About me 曽根原 春樹 現在米Microsoft社傘下のLinkedIn米国本社にてシニアプロ ダクトマネージャー。シリコンバレーに在住 18年目。 LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/harukisonehara/ X: @haruki_sonehara

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Confidential - No copy. No redistribution 130億円 BtoB 大企業 BtoC 大企業 BtoB スタートアップ BtoC スタートアップ シリコンバレーでのプロダクトマネジメントを BigTech企業・スタートアップ・ BtoB・BtoCの全方位で経験 今ココ US市場向け 30億円 2兆円 Part of 売上規模 5000億円 Acquired by

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受講者数3万人超え!! Udemyプロダクトマネジメント 10講座 入門編 KPI編 PRD編 UX編 DX編 BtoB編 ロードマップ編 海外PM・導入編 海外PM・基礎編 リーダーシップ編 bit.ly/sonehara_udemy_pm_courses

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No content

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今年は「意思決定」の話

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Confidential - No copy. No redistribution 消え去ったシリコンバレーの「ユニコーン企業」

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各企業とも優秀な人材を集めていたのに ... なぜ失敗してしまうのか?

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Confidential - No copy. No redistribution なぜ失敗するか? ● 実はPMFしてなかった ● キャッシュがなくなった ● ビジネスモデルが貧弱で収益が 作れない ● 競合に出し抜かれた ● 利益率低すぎ ● マーケティングしなさすぎ ● ピボットに失敗した ● 情熱を失った ● List goes on…

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Confidential - No copy. No redistribution なぜ失敗するか? ● 実はPMFしてなかった ● キャッシュがなくなった ● ビジネスモデルが貧弱で収益が 作れない ● 競合に出し抜かれた ● 利益率低すぎ ● マーケティングしなさすぎ ● ピボットに失敗した ● 情熱を失った ● List goes on… 意思決定に失敗している

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Confidential - No copy. No redistribution 予実管理?- 理想

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Confidential - No copy. No redistribution 予実管理?- 現実

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Confidential - Do not redistribute 何が起こっているのか? 予 実 アウトプット

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Confidential - Do not redistribute 何が起こっているのか? 予 実 アウトプット 実

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Confidential - Do not redistribute 何が起こっているのか? 予 実 アウトプット 実 意思決定

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プロダクトのインパクトは自分達の 意思決定レベル以上に上ブレすることはない。

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Confidential - No copy. No redistribution なので、 ● 年度収支ターゲット? ○ → 自分たちが意思決定したレベルの戦略に収束する ● OKRを達成できるか? ○ → 自分たちの実行に関わる意思決定のレベルに収束する ● 多くのチームの施策インパクト ○ → 自分たちが決めた優先度レベルに収束する

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何が意思決定を難しくするか? 意思決定にまつわるバイアス (偏見・不公平な判断)

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プロダクトに関わる意思決定で 陥りがちな、バイアスと対処法

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Confidential - No copy. No redistribution 1. 間違ったこだわり ユーザーヒアリングの結果、今 度営業活動を支援する機能をリ リースします。 1件あたりの営業にかかる 時間を大幅に減らせます! 待ってました!! βテストに参加しま す! 早く使いたい!

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Confidential - No copy. No redistribution その後

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Confidential - No copy. No redistribution その後

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Confidential - No copy. No redistribution わかりました。分析ありがとうございま す。 それで進んでみましょう。何かあればす ぐいってください。 その後 ユーザーアダプションが思ったより低い です。 ただv1にはユーザーが求める機能がい くつか足りていないのが理由だと思いま す。 なので、X,Y, Zの機能を作ります CPO

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Confidential - No copy. No redistribution その後

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Confidential - No copy. No redistribution PMFまでもう少し粘ってみるか その後 ユーザーアダプションがまだ低いです ね。 ユーザーヒアリングを相当積み重ねて のことなので、正しいプロダクトを作って るはずです。 GTMをもっと強化しましょう。

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Confidential - No copy. No redistribution その後

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Confidential - No copy. No redistribution その後 今回の施策の学びをまとめてプロダクト チーム全体に共有しました。 色々学べたのはよかった 次に生かさないと

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ちょっと待て これで終わっていいわけがない!

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完全に意思決定に失敗している どこで失敗していたかわかりますか?

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Confidential - Do not redistribute 予 実 アウトプット この意思決定で 意思決定レベル以上の インパクトになってない こうなった

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Confidential - No copy. No redistribution え、でも・・・ “Fall in love with the problem. Not the solution.” ソリューション(プロダクトそのもの)ではな く、問題を愛せ Marty Cagan氏

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その問題、「本当に」 解決に値する インパクトありますか? 問題に集中している、問題に深入りしているときは、 それが実際の重要性以上に大きな意味を持っているように感じてしまう (=PMが陥りやすい固着バイアス )

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Confidential - No copy. No redistribution どうしたらインパクトを大きくできるか、 問題の定義自体を試行錯誤しながら決めて冷静に見極めよう インパクト インパクト インパクト 問題A 問題B 問題C インパクトサイジングは PMの重要なスキル

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Confidential - No copy. No redistribution こんな声が社内で聞こえたら要注意 ● ユーザーは試したがっているが、どうやら〜の理由で今期ではないようだ。 ● 導入方法を簡素化したらユーザーが社内展開の優先度を上げてくれるのではないか? ● ユーザーがもっと使ってくれるようにインセンティブを加えよう。使ってくれれば価値がわ かるはずだ。 そもそも問題が解決に値するくらいのインパクトがない可能性が高い。

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Confidential - No copy. No redistribution バイアスチェック項目 ❏ 今取り組んでいる問題は「本当に」ユーザーにとって重要な課題か?何をもって「重要」と決 めている? ❏ この問題にこだわっているのは、自分の仮定に基づいた主観的な判断ではないか? ❏ このプロダクトの目標は、ユーザーに具体的なインパクトを与えられるか? そのインパクトはどのくらいか? 自分のこだわりから一歩引いて、その問題が本当に解決に値するかを問い直す

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Confidential - No copy. No redistribution 2. IKEA効果

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Confidential - No copy. No redistribution 2. IKEA効果 自分で組み立てることは楽しい ↓ 楽しかったので愛着がわく ↓ 愛着がわくので他より推してしまう

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Confidential - No copy. No redistribution ● 現在のプロダクトに関する決定を、過去の実行に基づいて 行っている。 ● なぜなら、自分たちが過去やってきたことに対する強いプライドや愛着、こだわりのせ いで、「なかったこと」にできない。 ● 過去の行動のバイアスによって、現在の事実に基づいた意思決定が歪められている 2. IKEA効果 既存プロダクトで成長できていない場合、だいたいこのバイアスが働いている

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Confidential - No copy. No redistribution こんな声が社内で聞こえたら要注意 ● 既にある程度機能しているものがあるから、それを応用できるはずだ ● この機能を作るのに1年かけたのに、それがもう正しい方向でないなら、なぜ作ったのか、 と詰められる ● 〜の機能が追加されれば、ユーザーの満足度も自然と上がるはずだ IKEA効果によって事実が歪められている可能性が高い

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Confidential - No copy. No redistribution データの見方にPMとしての冷静さが問われる 新規機能アダプション : +15%! タスク完了率: +18%! アプリ滞在時間: +14%!

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Confidential - No copy. No redistribution データの見方にPMとしての冷静さが問われる 新規機能アダプション : +15%! タスク完了率: +18%! アプリ滞在時間: +14%! 1度もしくは数回だけ 使って終わってない? 3クリックで終わるものに 15クリックしている 10分で8回もFAQサーチしてる 5分で終わるタスクに なぜ15分もかかるのか? (なぜ往復クリックが多い?)

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Confidential - No copy. No redistribution バイアスチェック項目 ❏ 自分が手がけたことで、このプロダクトや機能に対して過剰な愛着を持っていない か? ❏ データやユーザーからのフィードバックに基づいて、このプロダクトが現状に適して いるといえるか? ❏ 過去の努力やリソースの投入が、客観的な判断を妨げていないか? 問うことを常にあきらめない・端折らない。

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Confidential - No copy. No redistribution 3. とりあえず作ってから考える キックオフしてから2週間PRDが ないのでエンジニアが浮いてい る。 早くPRDを出してください EM PM まずい...このままだとで きないPMとみられてし まう...

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Confidential - No copy. No redistribution 3. とりあえず作ってから考える EM PM とりあえずv1というこ とで出そう... 残りはv2で... 正確なPRDを作るのにあと2週 間かかりますが、ブロッカーにし たくないのでv1スコープとして出 します。

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Confidential - No copy. No redistribution 3. とりあえず作ってから考える ● “Move fast and break things”(素早く動いて壊せ)に傾倒しすぎて、プロダクトに対 する考えが浅いまま進んでいる ○ これは2009年の言葉であり、もはや時代は変わった。ザッカーバーグも 2014年以降使わなくなっている。 ○ 様々なテクノロジーや手法・ツールが進化した今、動きが早くても稚拙なプロダクトはかえって命取りに。 ● Lean Startup本の影響もあり「イテレーションこそ全て」と考えてしまっている ○ リーンとアジャイルに、速さ (Speed)を上げる力はあっても方向性を加える力はない。ビジョンと戦略があって初 めて速度(Velocity)に意味がでる。 バンドワゴン効果によって本当にすべきことが見えなくなっている

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Confidential - No copy. No redistribution こんな声が社内で聞こえたら要注意 ● この部分ちょっと使いづらいけど、デザイナーいないのでリリースしてしまおう ● もうすこし戦略部分を考えたいけど、目の前のタスクに追われて時間がとれない ... ● チーム全体がなんとなく賛成しているから、それが正しいはずだ まずは社内でビジョン・戦略のアラインを目指すのが先。 全体のスピードを上げるのは方向性が決まってから。

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Confidential - No copy. No redistribution バイアスチェック項目 ❏ この意思決定は、誰かが言っている流行や VCの意見に影響されていないか? ❏ 本当にこのアプローチがプロダクトのビジョンや戦略に合致しているのか? ❏ スピードや流行に流されず、最適な方針を立てるための時間が確保できているか? 声の大きい人の意見やトレンドに流されず、 プロダクトにとっての最善策を選択する

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Confidential - No copy. No redistribution 4. ロシアンルーレット 「どうせそんなこと起こらない」 の油断が引き金を引く 正常性バイアス(Normalcy Bias)

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Confidential - No copy. No redistribution こんな声が社内で聞こえたら要注意 ● 下半期はインフラ・セキュリティーには手をかけない。それ以上にカスタマーに X, Y, Zの機能をリ リースするのが先だ。 ● 大変でも楽観的であることがチームのバリュー。なので悲観的な Pre-mortemはしたくない。 ● このプライバシーコントロールは意味があるが、 OKR的にXをローンチするのが先。 ユーザーに見えないが価値提供への影響が大きい部分やエッジケースに対する考 慮が足りない。 → これは経営・リーダー層の姿勢の現れとして組織の問題でもあり、 PMだけの問題 ではない。

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Confidential - No copy. No redistribution いや、でも差別化しないと... 他社と明確に「違う」ことはあたりまえ。 その上で「さらに良い」を目指さないと選ばれない時代に。 (高い価値として認識されない)

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Confidential - No copy. No redistribution バイアスチェック項目 ❏ 最悪のケースに備えたリスク対策は十分か? ❏ 『今は問題ないから』という理由だけで重要なリスクを見逃していないか? ❏ エッジケースや隠れたリスクも考慮に入れているか?

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Confidential - No copy. No redistribution 仕組みで解決する - LinkedInでの例 ● Horizontal Initiative (HI)枠の設定 ○ 全社的に取り組む必要があると経営陣が判断したもの ○ 一四半期ごとに全Engチームが10%のワークを必ずHI枠に当てる ○ PMはその領域は不可侵 ● HeroだけでなくUnsung hero(縁の下の力持ち)もちゃんと表彰する ● PMに対するProduct Quality Barの設定 ○ 各BUのPMチームに対してProduct Qualityを向上させる施策Top10を義務づけ ○ BUごとにProduct Quality KPIを設定し、Execレベルでトップラインをモニタリング ○ Premortemによるリスク洗い出しとリスク最小化の議論は必ず PRDに。

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Confidential - No copy. No redistribution ● vs 固着バイアス ○ 顧客の距離近くで問題について熟考していると、大局を見失う可能性がある。 ○ 問題の定義は、十分なインパクトを導くのに適切な切り口で設定されているか? ○ 顧客の言っていることをそのまま問題においていないか? ● vs IKEA効果 ○ 問うことを常にあきらめない・端折らない。 ○ クリティカルシンキング力を常に磨く ● vs バンドワゴン効果 ○ 焦らない。ビジョン・戦略部分にしっかり時間を使う。 ○ 時間がないなら、どうすれば時間が取れるかを考える。(昨年紹介したLNOフレームワーク) ● vs 正常性バイアス ○ 個人の努力ではどうにもならない部分は仕組みで解決する 本日のまとめ

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プロダクトのインパクトは、自分達の意思決定レベル以上に上ブレすることはありません。 良い意思決定を Questして、 より強いプロダクトを作っていきましょう!

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Confidential - No copy. No redistribution 今年もやります - Udemy半額クーポン PMCONF2024 で検索

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bit.ly/questpm