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AIで加速するアクセシビリティのこれから 伊原 力也 @magi1125 2025-05-16 1

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伊原 力也 freee デザインリサーチャー、 アクセシビリティスペシャリスト Studio、 CULUMUなどでアクセシビリティコンサルティング 共著 Webアプリケーションアクセシビリティ モバイルアプリアクセシビリティ入門 2

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背景 4月に 「ChatGPT時代のウェブアクセシビリティ」 という内容で登壇 これを踏まえつつ今後について考えてみたという話題提供 未来はこうなるぞ!みたいな予測はありません 4

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AIで加速するアクセシビリティ 5

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提供側:AIアシストでのアクセシビリティ向上 (詳細:ChatGPT時代のウェブアクセシビリティ) 自動チェック範囲拡大&改善提案 axe DevTools, TestParty, Evinced, Stark 一定以上の品質のコード生成 AIとマークアップ, THE UI EXPERTS - AIとMCPの現在地, builder.io 代替コンテンツ生成 画像の代替テキスト、 動画の字幕生成 6

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閲覧側:AIによるアクセス手段の多様化 ブラウザの自動操作 Operator, Browser Use, Playwright MCP 支援技術のAI拡張 AI Content Describer for NVDA ブラウザやサイトのカスタマイズ Chrome拡張機能, Arc Boosts ウェブサイトの変換 (※半分提供側の話ですが) 伝えるウェブ, Uniiy 7

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AIによる情報フォーマットと粒度の変換 よく驚かれているものも、 情報取得の選択肢を増やしている行為 YouTube文字起こし→要約→ニュース記事化 Deep Researchによるウェブ検索とまとめ テキスト⇔イラストや、 記事⇔スライドの相互変換 NotebookLMによるチャットボット化やPodcast化 Suno AIで歌にする Making Content Usable for People with Cognitive and Learning Disabilities (日本語訳) 8

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Before AI, After AI Before AI 提供側がオリジナル (原本) をアクセシブルにする 閲覧側はそれを 「自律的に」 読み取る。 そのリテラシーを高める 作る側の責任と、 使う側の努力で成り立っていた After AI 閲覧者側がAI変換・要約・再構成によってアクセス可能に AIの提案ベースで利用できる=不要な努力の低減 「低品質なサイトでもアクセスできる対抗手段」 が増える 9

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AIで変換し、 AIで閲覧する世界 「情報へのアクセス自体は可能である」 という状況は、 増えていくかもしれない。 それは喜ばしい ならば、 不完全でも 「なんとかなる」 ことで、 提供側の責任は後退する? オリジナルのアクセシビリティは不要になる? Jakob Nielsen氏の記事や発表 Hello AI Agents: Goodbye UI Design, RIP Accessibility Accessibility Has Failed: Try Generative UI = Individualized UX AIにUIデザインの大半を任せる時代が来たら 10

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この 「AIで加速」 でよいのか? 11

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視覚障害当事者かつ専門家の対話 サイトワールド2024特集第17回:有限会社エクストラ 人は結構わがまま:目的を達成できればいいと割り切れるケースと、 そこにたどり着くまでの過程にむしろ意味があるケースに分けられる 「目的ははっきりしてるけど細かいステップがわからない」 みたいな ときはAIオートパイロットが有効だろう 「検索結果をみて、 自分が探していたものとは違うが、 そこから 触発されて横道へ逸れる」 ことも必要 今までは選択肢がなかったが、 今後は 「ショートカットする・しない」 の 選択肢が生まれるかもしれない 12

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AIエージェントだけの世界は逆に不自由? 対象を見てからやることを思いつく、 対象を触りながら考える 何かを見て回っているうちに、 やることが定まっていく 直接操作して、 そのフィードバックをもとにして、 考えが定まる 対象を使ったことがあるからこそ頼める 自分が直接サイトやアプリを使った・あるいは使うところを 想像できるからこそ、 頼みごとが思いつく ちゃんと指示するのは実は難しい 頼むには、 得たい結果や条件を言語化せねばならず、 負荷が高い。 自分で操作するほうが早いケースも多い 13

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オリジナルがない=意図がない たとえば、 AIで画像認識してフォローするのは、 緊急回避手段としては 優秀かもしれない しかし、 提供側の意図は、 オリジナルがないと示せない 画像で伝えたいことは、 提供側の代替テキストにしか書けない オリジナルの一次情報がAIに伝わらなければ、 AIも学習できない 14

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自律型アクセスと提案型アクセス 「オリジナルに自律的にアクセスできる」 こと 「AI変換や提案のもとアクセスできる」 こと この両方ができることが 「選択肢の拡大」 なのではないか 15

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視点 従来 AIによる拡張 目指す方向 提供側 / 閲覧側 A11yは提供者責任 閲覧者が変換・ 再構成 両者併存の状態 原本 / 変換 原本を直接みる 要約・変換をみる 原本アクセス+ 変換も可 自律型 / 提案型 自分で探す・考える AI提案の中から選ぶ 自律型維持+ AI補助の提案 高リテラシー / 初学者 ブラウジング知識が 必要 AIが推定・ 変換しサポート 自律学習への 橋渡し設計 16

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アクセシビリティのこれから 17

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生成AIによる 「作ることへのアクセシビリティ」 たとえば、 「AIでのフォーマットと粒度の変換」 は、 生成AI活用による 野生のアクセシビリティと言える アクセシビリティを高める道具を 「自分で作れる」 という選択肢が 現れている AIを使ってAIツールを作れる。 少なくとも概念検証はできる アクセシビリティ向上に使う資料も、 AIで作りやすくなっている 18

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未来がどうなるかではなく、 未来をどうするか 19

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私自身の研究開発の方向性 1. オリジナルのアクセシビリティ向上 2. 自律的アクセスの担保 3. ユーザー理解の間口拡大 20

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1.オリジナルのアクセシビリティ向上 マシンリーダビリティは、 自律的アクセスとAIエージェントの両方に必要 (従来通り) 人間が直接操作する際に選択肢を増やせる AIのコンピュータビジョン活用は処理が長くハイコスト 正しいマークアップ=高い自動操作ビリティとなる兆しあり AIでアクセシブルに制作できるなら、 コスパが合う可能性が高まる 「詳しくないスタート」 でもAIと共に一定品質にできるか?の挑戦 21

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具体的な取り組み案 アクセシビリティチェック&改善の自動化範囲を拡張するしくみ作り ノーコードツールの自由演技に対するアクセシビリティ向上ツール化 これまでのアウトプットをまとめた 「アクセシビリティbot (仮) 」 の公開 自動改善では到達しない 「アクセシブルな設計」 を改めてまとめて 書籍化→さらにbotの知識ベースにする 22

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2.自律的アクセスの担保と、 3.ユーザー理解の 間口拡大 ユーザーにとっての望ましいアクセスの形とは何なのか? 自律型と提案型のよいバランスとは何か? 例えばUniiyのような 「自律的アクセスのサポートになる オーバーレイの在り方を考える」 として、 何が必要なのか Nothing about us without us であり、 知らないものは デザインできない アクセシビリティ観点での 「閲覧者の声を取り入れる間口」 を広げたい (具体的にはユーザーリサーチをやりやすくしたい) 23

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そのほかのアプローチもいろいろありそう (適当に思いついた案です。 AIで案出ししましょう!) AI驚き屋芸の 「AIでのフォーマットと粒度の変換」 の一般ツール化 AI系制作ツール利用時のアクセシビリティ向上事例の発信 アクセシビリティ関連記事やショート動画をAIでたくさん作る 障害者当事者のアクセス状況をAIに教える=ウェブに情報を出していく 24

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あなたは、 これからのアクセシビリティを AIでどのように加速してみますか? やってみたいことを #tokyo_a11yconf にポストしてみよう! @magi1125 25