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BtoBtoC サービスにおいて エンジニアが探るUXの ”勘所” 2020 / 09 / 13 UX MILK All Night @terry_i_ MedPeer, inc. - Engineer

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Agenda 自己紹介 展開するサービス BtoBtoC ”あるある” UXの “勘所” を探る まとめ

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自己紹介

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福本 晃之 Teruhisa Fukumoto MedPeer, inc. Web Developer Gotanda.rb / .js Organizer f-teruhisa @terry_i_

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Twitter #uxmilkallnight

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展開するサービス (not PR)

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特定保健指導

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はァ

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● 定期健診で ”引っかかった”, 40~74 歳までの方が対象 ○ いわゆる “メタボ” の方とか ● “管理栄養士” という国家資格を持つ方などが行う ● 主に食事面から, 生活習慣の改善をサポート ● 食のtoBサービスみたいなイメージ 特定保健指導って??

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DietPlus Pro

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● 特定保健指導のサポートの一環 ● 食事の写真に管理栄養士がアドバイス ● 個人の目標や計画に基づいた支援を行う DietPlus Pro

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弊社BtoBtoCの流れ フィッツプラス(メドピア) Business 健康保険組合 Business 特定保健指導対象者 Consumer

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● BtoBtoCサービス独特の難しさ ● エンジニアが特に力を入れて貢献できること ● さまざまな職種の人たちとの関わり ○ ”管理栄養士( 後述 )” “デザイナー” “エンジニア” ... アプリのUX改善で取り組んだ話をします

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BtoBtoC ”あるある”

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BtoBtoCとは? 前提

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BtoBtoC ( 諸説あり) ● BtoCを支援するビジネスモデルのこと ● サービスにお金を支払うのは企業・法人 ● 企業の顧客がエンドユーザーになる

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サービス例 ※Googleで「BtoBtoC」で検索し出てきたサービス + 自社サービスを載せています

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BtoBtoC “あるある” 難しさ

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1. ユーザーまでの距離が遠い 2. 目先の数字( 売上 / 利益 )を追えてしまう 3. ステークホルダー( 利害関係者 )が多い “あるある”

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1. ユーザーまでの距離が遠い 2. 目先の数字( 売上 / 利益 )を追えてしまう 3. ステークホルダー( 利害関係者 )が多い “あるある”

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ユーザーまでの距離が遠い ユーザーから声が 直接届きづらい 自社メンバーがユーザーの 課題の当事者ではない 2 コンテンツをクライアントが 作成する( ことがある ) 3 1

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ユーザーの本質的な ニーズや課題を掴みづらい

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1. ユーザーまでの距離が遠い 2. 目先の数字( 売上 / 利益 )を追えてしまう 3. ステークホルダー( 利害関係者 )が多い “あるある”

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目先の数字を追えてしまう クライアントの 個別対応 短期的な 数値目標の優先 2 既存市場の誘惑 3 1

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「UX」と「ビジネス目標の達成」を トレードオフの関係にしてしまう

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1. ユーザーまでの距離が遠い 2. 目先の数字( 売上 / 利益 )を追えてしまう 3. ステークホルダー( 利害関係者 )が多い “あるある”

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ステークホルダーが多い 直接の顧客である クライアントの存在 2 代理店などの 複雑な商流 3 1 クライアント別に 社内に”担当者”

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「課題の原因特定」と「解決のプロセス」を 複雑化させてしまう

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ツライ( つらい )

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どう向き合うか?? ユーザーのニーズや課題を 掴みづらい ユーザー体験とビジネスの トレードオフ化 複雑化した 原因特定と課題解決

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UXの ”勘所” を探る

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勘所 物事の重要な部分。肝要なところ。急所。つぼ。 「 -をはずさぬ批評」 「 -を心得ている」 ― ”勘所” weblio辞書

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イメージ

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No content

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 ボウリングの”スパット” ● ピンと平行にマークされている目印 ● スパットを撃ち抜き, 延長上のピンを倒す ● 近い距離のもののほうが正確に狙いやすい ( ”スパット” って呼ぶことをはじめて知りました ...) ➤

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Business Business Consumer Business Business Consumer ➤ ➤ ➤ ➤ ➤ ➤ ♥ ♥ Everyone

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スパットを自分たちでマークする ( NOT KPI ) 基準となり得る 事象か? マークする位置は 正しいか?

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勘所を探っていく 推測するな、計測せよ ― Rob Pike( プログラミング言語Go開発者 )

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民主化されたデータを取る

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データ分析の民主主義状態とは 技術者 / 分析者の手を離れて インサイトを得られる システムやアプリケーションから 切り離されて分析できる 分析結果やインサイトに 容易にアクセスし議論できる 分析自体を目的にせず、全員で議論できる姿をめざす

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● ログやDBのテーブル / モデル設計 ● データの収集 ● 分析環境の整備と布教 ➛ 文化にしていく ● インサイトや議論の提示 まずは、エンジニア主体で進める必要がある

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実例

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● 追うデータが不明確 ( ステークホルダーが多い→指標が多い ) ● 曖昧な影響範囲 ( toBマーケ / 営業や顧客の施策etc… ) ● データの偏在 ( パレートの法則: 一部の顧客にデータが集中 ) BtoBtoCならではの分析の難しさ

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1. UXをフローとファネルに落とす 2. toB / toC にデータをわけて考える 3. まずは後ろから 悩んだときの工夫

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● ユーザーがサービスを使う流れ ● フロー間での継続 / 脱落率を見る ● ユーザーの体験を整理できる ● チーム内で合意形成しやすい ○ 手法としてメジャー ○ 作成が容易で時間がかからない ○ 直感的で理解しやすい 1. UXをフローとファネルに落とす ログイン 新規登録 投稿 プラン選択 課金

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● 複数種のユーザーを混同しない ● 誰の何を幸せにしたいのかを明確に ● 優先順位に気をつける ● 自社で解決できる範囲を意識する ● toB ➛ toCと体験が地続きの場合も ○ ex. クライアントがコンテンツを作れ ず、   結果ユーザーが流入しない 2. toB / toC にデータをわけて考える toB toC

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● 優先度決めの方法 ● ファネルのボトムから改善しよう ○ バケツの穴をふさぐ ● 離脱したユーザーはまず戻らない ● アンチパターン ○ ネットワーク外部性と競合 3. まずは後ろから 会員登録 ログイン 「穴あきバケツの成長モデル」の話 : https://note.com/fladdict/n/n6ef647f5cc8b

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DietPlus Proでの気づき... アカウントを発行して渡すので、ユーザーは新規登録しなかった...(猛省)

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データに関するまとめ ● 分析それ自体で満足せず, 議論をしていこう ● BtoBtoC ならではの分析の難しさに注意 ● 困ったらファネルで考えると楽かも...??

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定性的な感覚や判断の導入

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データや指標を過信しない 数値化された指標は, ハックの可能性を内包する 論理的思考や分析の限界 前後関係や相関関係を 因果関係と混同

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人は論理的な生き物ではない ● 人は利己的行動をとらない ○ 酒や肥満, 賭博の存在を説明できない ● 自分の嗜好を理解していない ● 複数の選択肢を比較して判断していない ● 自分の満足度や効用を測っていない ● 思考や効用は不変のものではない 友野 典男 『行動経済学 経済は「感情」で動いている』 (光文社新書)

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人はストーリーにすがる生き物 ● “ストーリー” が人間の認知の枠組み ● 人は前後関係を因果関係と結びつけたがる ● 説明の妥当性や正確性より, その存在を重視 ○ ”公正世界仮説”の信奉 ● 因果関係に納得すると「わかって」しまう ● “報告価値” の客観性にブレ ● 人は ”なぜ?” を無くす権威を必要とする 千野 帽子『人はなぜ物語を求めるのか』 (ちくまプリマー新書)

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分析的・論理的な思考には限界がある ● 正解の “コモディティ化” ● 不確実な世界で問題の構成因子が増加 ● 市場のステージが ”自己実現欲求” に移行 ● ロジックはコピーが容易 ● パターン認識から逃げられない ○ フレームワーク問題 山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ 』(光文社新書)

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定性的な感覚や判断の導入 How??

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ドメインエキスパート

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● ある領域や分野に多くの知識をもつ ● その専門的な知識を他人に提供できる ● 設計と内容のレビュー能力に優れる ● この人物と伴走し適切な開発モデルを探求 ● ドメインエキスパートの例 ○ 金融サービスの会計 / 経理の経験者 ○ DietPlus Pro は管理栄養士さんが該当 ドメインエキスパートとは(諸説あり) 会員登録 ログイン 一部参考: エリック・エヴァンス『エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計』 (翔泳社)

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なぜドメインエキスパートなのか?? ● BtoBtoC はユーザーの課題の当事者になりづらい ○ 少しでも当事者と関わった方の感覚を注入 ● サービスの仮想空間と現実との乖離の防止 ● システム・デザインありきの先入観を除外

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エキスパートとのUX向上の進め方 チーム全員で 同じ言葉を使う (ユビキタス言語) 1 機能や要件ではなく, 要望を上げてもらう 2 継続して双方向の コミュニケーションを (一方的に教えられがち) 3 共通認識の醸成・・・チーム全員で「いいね」が8割くらい共通する状態を作る

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エキスパートとの向き合い方 ● 好奇心を持ち, 自らドメインを学ぶこと ● エキスパートにシステムからも学べる認識を与える ● 初期のコミュニケーションコストを惜しまない

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( 実例 ) 管理栄養士についての社内勉強会

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その他の裏技 ● CSやtoBユーザーからフィードバックを受ける ● 勉強会やインタビューの場を作る ● ( 予算とって )無理やりドッグフーディングする ○ 僕は健康診断に引っかかったテイでやりました....

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ビジネスとUX / 技術を切り離す

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目先の数字を追える事情を, 不用意にユーザー体験に持ち込まない 一部の顧客やユーザーが 喜ぶ機能を作ってしまう... 他のデザインパーツやコードに 悪影響を及ぼす ステークホルダー増加による, デザイン/開発フローの複雑化

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機能をいつでも捨てられるようにする ● 基本的には, コードやデザインは共通化しない ● 汎用化を見据えた過度な一般化 / 抽象化は避ける ● 捨てる / 撤退タイミングの判断基準を考えておく

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弊チームでの例 一部のコードがmodule間でDRYにならない( しづらい ) 個人的には, ヘンに共通化して罠にハマるくらいなら, メンテナンスするコード量が多少増えても, 影響範囲をmodule内に閉 じ込めておく方が無難なのではないかと考えます。 (※他にも, パーツデザインは類似アプリと完全に分けてます) 『特定保健指導 "フィッツプラス "事業を支えるモノリシック Rails + VIPER Swift アーキテクチャ 』 https://tech.medpeer.co.jp/entry/2020/06/22/121153

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お金の問題は難しいが, ユーザーは無関係 ● 経営状態により, 短期目標の優先は発生し得る ● それをすべて否定せず, 最適解を探す ● ユーザーを巻き込まないような工夫を

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勘所の探り方 まとめ ● 手法に満足せず, 議論できる状態 / チームへ ● エキスパートと支え合える工夫をし, 感覚を養う ● ユーザーを巻き込まない形で経営状態と向き合う 最終的にはチームの問題に帰着する

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健全なUXは, 健全なチームの アウトプットにこそ宿る

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お後がよろしいようで

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まとめ

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● BtoBtoCには独特の ”課題との向き合いづらさ” がある ● 色んな ”勘所” を探って, 狙いを外さない工夫が必要 ● “良いUX” は “良いチーム” から生まれる 全体のまとめ

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Business Business Consumer Business Business Consumer ➤ ➤ ➤ ➤ ➤ ➤ ♥ ♥ Everyone

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みなさん, 来年は きっとお会いしましょう

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We’re hiring ● Webデザイナー ● Webディレクター ● フロントエンドエンジニア ● iOS / Android エンジニア ● マークアップエンジニア ● Rubyエンジニア

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Thank you!! @terry_i_ MedPeer, inc. - Engineer