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©WFS LLM翻訳ツールの開発と 海外のお客様対応等への社内導入事例 株式会社WFS マネージャー・リードデータエンジニア 郡司 匡弘 株式会社WFS シニアプロジェクトマネージャー 松井 望 株式会社WFS シニアマネージャー 小野 幸人

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アジェンダ ©WFS 1. 登壇者紹介 2. AI翻訳ツール紹介 3. 海外向け業務の課題 4. AI翻訳ツール導入検討 5. 開発フロー 6. 仕組み・ポイント 7. 費用 8. 評価 9. 成果 10.新たな課題 11.まとめ

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アジェンダ ©WFS 1. 登壇者紹介 2. AI翻訳ツール紹介 3. 海外向け業務の課題 4. AI翻訳ツール導入検討 5. 開発フロー 6. 仕組み・ポイント 7. 費用 8. 評価 9. 成果 10.新たな課題 11.まとめ

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1.登壇者紹介 ©WFS ● 名前:郡司 匡弘(グンジ マサヒロ) ● 所属:スタジオ本部 / 技術室 ● 略歴 ○ 2015年グリー(現:グリーホールディングス)入社 ○ スマートフォンゲームの共通基盤(課金・認証)のエンジニアを担当 ○ ファンコミュニティサービスのFanbeatsの開発責任者 ○ ゲームのログ分析基盤の開発責任者 ○ 生成AI系の研究開発を実施中 ● 講演実績 ○ CEDEC2018:「モバイルゲームのお問い合わせ対応にてAIチャットボットを導入してお問い合 わせ件数を約20%削減した話」 ○ CEDEC2022:「1日10億件のモバイルゲームのログをログ分析基盤で低コストで運用した話」 ○ Google Cloud Next Tokyo '24:「Vertex AI Searchを使った社内向けAIチャットサービスの構 築」 ● ひとこと ○ 生成AIの研究開発を進めて、翻訳面で有効な使い道が見えたので、ご紹介します!

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©WFS ● 名前:松井 望(マツイ ノゾム) ● 所属:World Wide Operations Group ○ WFS 海外向けタイトルの運用・翻訳 ● 略歴 ○ 前職では自動編曲エンジン、動画配信サービスを構築 ○ 2013年グリー(現:グリーホールディングス)入社 ディレクターにジョブチェンジ ○ 2014年からWFS。スクラムマスターを取得 ○ 2017年からWWOに属し、ローカライズ業務に従事 ● 講演実績 ○ CEDEC2023「ヘブンバーンズレッド 海外版」における アプリ1ビルドでの複数カ 国同時運営実現事例 ● ひとこと ○ WWOの存在が大きかった!ネイティブ翻訳者最高!用語集最高! 1.登壇者紹介

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©WFS ● 名前:小野 幸人(オノ ユキト) ● 所属:Customer & Product Satisfaction部(CPS部) CSグループ ○ WFSおよびグリーグループ横断のCS業務を担当 ● 略歴 ○ 前職にて、大手IPのCS対応を担当し、マネジメントにも従事 ■ 人気アニメ、漫画IPにおける国内、海外のCS体制の構築、委託先の管理、運用改 善等を対応 ○ 2019年グリー(現:グリーホールディングス)入社後も、WFSにてCS業務全般 を担当 ■ CSの各種システムやデータ管理保守、自動化などもフォロー ● ひとこと ○ 時間と費用があれば、CSの分析や新しい技術へのトライにもっと充てたい! 1.登壇者紹介

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©WFS AIエンジニア責任者 郡司 翻訳技術責任者 松井 お客様対応責任者 小野 ・LLM翻訳機能化 ・翻訳精度のスコア化(COMET) ・APIサーバ/翻訳・要約機能実装 ・翻訳者窓口 ・翻訳技術サポート ・ゲームタイトル別用語集の提供 ・翻訳精度の目視確認 ・お客様対応改善の要件整理 ・お客様対応の運用フロー調整 ・LLM翻訳の効果測定 1.登壇者紹介

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©WFS ➢WFS AI Chatの画面 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS 問い合わせ本文を転記 問い合わせに対する翻訳を表示 問い合わせ内容の要約を表示 転記用の問い合わせ内容の翻訳 問い合わせ本文の翻訳、要約画面 グロッサリーのタイトルを選択 ➢WFS AI Chat の主なCS機能 ● 問い合わせ本文の翻訳、要約 ○ 本文の翻訳に加えて、翻訳内容の要約機能 も実装 ● エスカレーション文章の翻訳 ○ 担当者から管理者等へ説明する文章の翻訳 機能 ● メニュー言語の切替機能 ○ 利用者の母国語(英語、繁体字、韓国語) に応じて、メニュー表示言語を切替可能 タイトル名 2. 翻訳ツールのご紹介

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©WFS ● ゲーム翻訳(CAT導入以前) ○ 翻訳の揺らぎ ○ 誤訳 ● 海外カスタマーサポート(WFS AI Chat導入以前) ○ お客様対応の遅延発生 ○ CS費用の増加見込み 3. 海外対応業務の課題

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©WFS 社内翻訳 協力会社 翻訳チェック 納品チェック 納品前チェック 1次翻訳 2次翻訳 (3次翻訳) LQA 監修 *開発チーム、翻訳マネジャー、LDとの協議 により2次翻訳と兼ねる場合があります 3. 海外対応業務の課題

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©WFS ● ゲーム翻訳(CAT導入以前) ○ 翻訳の揺らぎ ○ 誤訳 ● 海外カスタマーサポート(WFS AI Chat導入以前) ○ お客様対応の遅延発生 ○ CS費用の増加見込み 3. 海外対応業務の課題

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©WFS ● 全社的なAI活用のムーブメント ○ WFS社内で、各職掌にてAIの業務利用への関心が高まる ● 社内文書の検索・要約を行うAIチャットツールを開発 ● 課題 ○ ゲーム開発には仕様書など多様なドキュメントが存在し、必 要な情報へのアクセスが煩雑化 ○ 担当タイトルが決まっているスタッフ、複数タイトルを横断 するスタッフが混在 4. 翻訳ツール導入の検討

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©WFS ● 1. ネイティブ翻訳者向けに多言語化 ○ 英語・繁体字・韓国語に対応 ● 2. 海外言語で回答精度の低下 ○ ゲーム固有の専門用語を使うと回答精度が下がる ● 3. CATツールの用語集を流用 ○ memoQの用語集をAIチャットと連携 4. 翻訳ツール導入の検討

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©WFS 項目 内容 問い合わせ原文 I'm currently encountering a serious issue in the game. I am stuck inside the Phantom Crystal Dimension, and every time I try to exit, the game crashes instantly without any error message. This has made it impossible for me to progress or access the rest of the game. 変 更 前 機械翻訳 現在、ゲームで深刻な問題が発生しています。 ファントムクリスタルディメンションから抜け出そうとするたびに、エラーメッセージも表示されずにゲー ムがクラッシュしてしまいます。 このため、ゲームの進行や残りの部分へのアクセスが不可能になっています。 変 更 後 WFS AI Chat 翻訳 ゲーム内で深刻な問題に直面しています。 幻璃境に閉じ込められており、外に出ようとするたびにエラーメッセージもなくゲームが即座にクラッシュします。 これにより、ゲームを進めたり、残りの部分にアクセスすることが不可能になっています。 ➢タイトル固有の用語翻訳の実例 アナザーエデン:特定条件で発生するエリア名称の翻訳差異 ● Phantom Crystal Dimension(ファントム クリスタル ディメンション)= 幻璃境(げんりきょう) 従来:時間をかけて調査 or そのままの直訳でエスカレーション 現在:時間をかけず、且つ、正しい翻訳でエスカレーション 一次対応拠点 4. 翻訳ツール導入の検討

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5. 開発フロー AIエンジニア 翻訳者 CS担当者 ● AIを使った開発工 程です ● 全員がほぼ全ての 工程に関わります PoC(概念実証) 開発 テスト/評価 リリース/改善

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検証項目 ●アナザーエデンの外国語(韓国語・繁体字)の お問い合わせ文章について、 生成AIを使って精度の高い翻訳ができるか 生成AI API アウトプット 日本語への 翻訳文 海外のお問い合わ せ文章 アナザーエデンの 用語集 インプット I have Tsukiha’s Black Blaze at Lv 11 私はツキハの 黒刀禍焔をLv 11 まで育てており ● 要件を満たせたら、開発 フェーズに進む ● 要件を満たせてないのに 次に進むと、使われない ツールになってしまう PoC(概念実証) 5. 開発フロー

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開発項目 ● LLM翻訳機能 ● APIサーバ実装 ● AI-CHATサービスへ組み込み ● SNS管理ツールへ組み込み ②API サーバ ①LLM 翻訳機能 開発 5. 開発フロー SNS投稿翻訳ツール(Slack) AIエンジニア

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● 機能テスト ○ 画面、操作性、エラー ● 翻訳文章の評価 ○ 目視で確認 ○ 翻訳指標で確認 目視で翻訳 精度を確認 翻訳指標を使 って機械的に 確認 テスト/評価 5. 開発フロー SNS投稿翻訳ツール(Slack) AIエンジニア 翻訳者

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●システムリリース ●運用マニュアル作成 ●効果測定 ●改善 ○ 翻訳精度 ○ UI/UX リリース/改善 5. 開発フロー SNS投稿翻訳ツール(Slack) CS担当者

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AIに対するプロンプト ©WFS ➢仕組み 1.Open AIなどの生成AIのAPIを使って翻訳 1.ゲームタイトル毎の用語集をRAGの方式でAIに渡す 2.用語集は、レーベンシュタイン距離を使って検索 Open AI API LLM翻訳機能 (Python) (AIの回答) 私はツキハの 黒刀禍焔をLv 11 まで育てており (翻訳原文) I have Tsukiha’s Black Blaze at Lv 11 (翻訳原文) I have Tsukiha’s Black Blaze at Lv 11 (用語集か ら検索) Black Blaze 黒刀禍焔 (指示文章) 下記の文章を用語集を使 って翻訳してください 用語集 レーベンシ ュタイン距 離で検索 6.仕組み・ポイント 担当者

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©WFS ● 翻訳原文のLLMによる判定 ● レーベンシュタイン距離による用語集検索 ● ベクトル検索の検討 ● API化 ● 他の生成AIについて ● MCP化・Agent化について ● ゲームシナリオのAI翻訳について 6.仕組み・ポイント

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©WFS ➢翻訳原文のLLMによる判定 ○文章中から単語を抽出 ○検索言語・カテゴリの特定 Open AI API LLM翻訳機能 (Python) (AIの回答) ・単語:Tsukiha’s、Black Blaze ・言語:英語 ・カテゴリ:お問い合わせ AIに対するプロンプト (翻訳原文) I have Tsukiha’s Black Blaze at Lv 11 (指示文章) ゲーム内の用語を抽出 してください。また、 言語やカテゴリも特定 してください 6.仕組み・ポイント ● 事前にLLMに単語を抽出さ せることで、後続の翻訳処 理がやりやすくなる 担当者 (翻訳原文) I have Tsukiha’s Black Blaze at Lv 11

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©WFS ➢レーベンシュタイン距離による用語集検索 • レーベンシュタイン距離とは、2つの文字列を同じにするための最小の編集操作の回数 • 例えば、kittenとsittingの距離は3回の手順が変更になるので、距離は3 ● kittenをsittingのレーベン シュタイン距離は3 ● 距離が少ないほど、文字 が似ていると判断できる k i t t e n s i t t e n s i t t i n s i t t i n g 「k」を「s」に変換 「e」を「i」に変換 「g」を挿入して終了 6.仕組み・ポイント • 用語集の中から該当の単語を検索する時の例: 検索単語:ツキハ 検索結果:(0)ツキハ:Tsukiha、(2)ツキハの母:Tsukiha's Mother、(3)ゴロツキ:Punk • PythonのRapidFuzzライブラリを使用してレーベンシュタイン距離で検索

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©WFS 6.仕組み・ポイント ➢翻訳原文と検索した用語をLLMに渡す Open AI API 担当者 (翻訳原文) How can I use 'Class Scrolls' to increase a character's experience points? I want to level up the character I met in the Gallery of Dreams. LLM翻訳機能 (Python) 用語集 レーベンシュタイ ン距離で検索 ・Gallery of Dreams -> 星の夢見館 ・Low Class Scroll -> 下級秘伝巻子 ・Medium Class Scroll -> 中級秘伝巻子 AIに対するプロンプト (翻訳原文) How can I use 'Class Scrolls' to increase a character's experience points? I want to level up the character I met in the Gallery of Dreams. (指示文章) 下記の文章を用語集を使 って翻訳してください (用語集) ・Gallery of Dreams -> 星の夢見館 ・Low Class Scroll -> 下級秘伝巻子 ・Medium Class Scroll - > 中級秘伝巻子 (AIの回答) ● 翻訳文章:「秘伝巻子」を使 ってキャラクターの経験値を 上げる方法を教えてください。 星の夢見館で出会ったキャラ クターをレベルアップしたい です。 ● 翻訳キーワード①:Class Scrolls:秘伝巻子 ● 翻訳キーワード②Gallery of Dreams:星の夢見館 ● 完全一致の用語と レーベンシュタイン距離 が近い用語を複数抽出 ● AIのすごいところ ● 完全一致ではない単語につ いて、適当な用語を使って 翻訳してくれる ● 表記揺れがあっても、適当 に翻訳してくれる

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➢ベクトル検索の検討 • 開発当初は、クラウドベンダのベクトル検索サービスを利用 • しかし、思っていた以上に費用がかかることが判明 • そのため、レーベンシュタイン距離の検索に変更 ©WFS 6.仕組み・ポイント No 方式 1翻訳当たり 月平均 (約1.9万件の翻訳) 年平均 (23万件の翻訳) 1 ベクトル検索 + 生成AI 約3.6円 約7万円 約83万円 2 レーベンシュタイン検索 + 生成AI 約0.07円 約1300円 約1.6万円 ● 他社の機械翻 訳が1件0.2円な ので、 0.07円であれば お得感が出る

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©WFS ➢API化 • お客様からの問い合わせ内容の応対ツール(WFS-AI-CHAT) • お客様からのSNS投稿の管理ツール(slack) SNS投稿翻訳ツール(Slack) API サーバ LLM翻訳機能 (Python) 用語集 レーベンシュタ イン距離で検索 6.仕組み・ポイント ● サーバはGCPのGKE (k8s)上に立ててい るが、AWSのEC2など、 何でもOK 担当者

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➢他の生成AIについて • 生成AIは、Open AI、Gemini、Claudeなど色々な種類があるが、 今回は、Open AIのGPT 4o miniを使用 • 生成AIの種類によって、韓国語・繁体字・英語など得意な言語が分かれるが、 そこまで優劣はつかない • 最近は他の生成AIの方が精度が良い話もあるが、 切り替えに時間がかかるため、GPT 4o miniで固定 • 簡単にLLM翻訳をするなら、Google NoteBook LMなども良い • ただ、下記の点で翻訳精度が上がりにくい • 検索ロジックを触れない • データの入れ方やデータ量にコツがある ©WFS 6.仕組み・ポイント

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➢MCP化・Agent化について • 今回、API化したが、最近流行っているMCPサーバやAgentにするのも可能 ©WFS Claude Desktop Gemini CLI Cline Cusor Claude Code MCPサーバ 用語集検索 用語集 レーベンシュタ イン距離で検索 github copilot Agent 用語集検索+ LLM翻訳 機能 用語集 レーベンシュタ イン距離で検索 6.仕組み・ポイント ● レーベンシュタイン距離 で検索ができれば、 MCPサーバの検索費用 がかからない

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➢ゲームシナリオのAI翻訳について • 実は、PoCの期間は1年半ぐらい実施して、検証項目も当初は異なり、 うまくいかず、その中でも一番実用的なものが今回の施策だった ©WFS 6.仕組み・ポイント PoC(概念実証) 今回の内容 ● アナザーエデンの外国語のお問い合わせ文章について、 生成AIを使って精度の高い翻訳ができるか 1年半前の検証項目 ● アナザーエデンの日本語のゲームシナリオをAIを使って、 英語・韓国語・繁体字に翻訳(ローカライズ)できるか 1年半 ● ゲームシナリオなどのロ ーカライズにAIを使うの は、難易度が高すぎた

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➢ゲームシナリオのAI翻訳:できていたこと • ゲーム内用語を使って翻訳 • ゲームキャラクターの口調で発言 • 文脈を考慮して翻訳(シーン毎に) • 感情を踏まえて翻訳(怒り・驚き) ©WFS 6.仕組み・ポイント ➢ゲームシナリオのAI翻訳:できなかったこと • 誤訳がないレベルで翻訳できなかった • 良い時は80%ぐらいの文章はOK。残り20%の精度を上げるのが難しい • 日本語と英語の文法の違いで、AIが勝手に判断(主語・代名詞がないとか) • AIに翻訳させる情報が足りない。(時代・背景・風景・キャラクターの関係性) • 同じ文章でも毎回、翻訳結果が微妙に違う • AIの翻訳結果が信用できないと、翻訳者側の確認工数が増えてしまう ● ゲームシナリオの様な、 翻訳者のクリエイティブさが 求められるものには、 AIはあまり向いていなかった ● その過程で、お問い合わせ 文章の翻訳に向いてること に気付いた! 1年半分の成果!

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©WFS ➢LLM翻訳の1ヶ月間の翻訳件数と費用 ○ 翻訳件数:19,000件 ○ 費用:1,300円(サーバ費用除く) ■ 内訳 ● Open AI API費用:1,300円 ● 用語集検索:0円 ○ ※ベクトル検索の場合は、+70,000円ぐらいかかる ○ ※他社の機械翻訳が1件0.2円で月3,800円 7.費用 ● そのため、今回の方が 安くて、翻訳精度も良 くおすすめ

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©WFS ➢翻訳文章の機械的評価について • 外国語に精通している方は、翻訳した文章の精度を評価できるが、 そうでない方は翻訳文章の意味が分からず、 毎回機械翻訳をすることになり、正しく評価ができない • 外国語に詳しくなくても、機械的に翻訳文章を評価できる指標がある ➢評価指標の種類 • BLEU • ROUGE • METEOR • COMET ● 今回は、COMETを採用し ており、次のページで説明 します 월드맵 ワールドマップ ● 韓国語->日本語に翻訳して も韓国語が分からないと 評価できない 8.評価

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©WFS ➢COMETとは • AIを使って翻訳の品質をより深く評価する指標 • 翻訳がどれだけ「自然な言い回し」や「適切な表現」になっているか • 人間が評価するような基準を参考にして、点数をつける • 原文と翻訳文の2つの文章を比較して 0~1のスコアを出力。スコアが高ければ翻訳の品質がより高い • 正解例がある場合と正解例がない場合の両方に対応可能 • pythonのCOMETライブラリを使用 https://github.com/Unbabel/COMET ● 毎回正解データを 用意するのは大変 なので、 COMETを採用し ています 8.評価

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©WFS - 原文 今回のLLM翻訳 A社翻訳サービス B社翻訳サービス 原文と翻 訳文 몽견 가챠를 할시 계 속 강제 종료가 됩니 다. 夢見ガチャを行うと、ずっ と強制終了されます。 夢犬ガチャをする時、強制 終了になります。 夢見るガチャを行うと、継 続的に強制終了となります。 COMET スコア 0.6250994205 (1に一番近く、翻訳精度が高い と判断できる) 0.5807853937 0.6170871853 - 原文 今回のLLM翻訳 A社翻訳サービス B社翻訳サービス 原文と翻 訳文 이정표 무료인줄알고 구매햇으나 결제되서 결제취소부탁드립니 다 導証が無償だと思って購入 しましたが、決済されまし たので、決済のキャンセル をお願いします。 マイルストーンは無料だと 思います。購入日ですが、 お支払いいただきます マイルストーンが無料だと 思い購入しましたが、決済 されたので決済キャンセル お願いします。 COMET スコア 0.638774752 0.3764190375 0.6529706716 (1に一番近く、翻訳精度が高い と判断できる) ➢翻訳文章とCOMETスコアの例 8.評価 ● LLM翻訳とB社の スコアは誤差の範 囲。用語が適用さ れていないだけで、 意味は同じ ● 逆にA社は目視で も逆の意味になっ ていてスコアが低 い

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©WFS • 海外のお客様からのお問い合わせ文章300件について、 LLM翻訳と他社翻訳サービスの翻訳結果をCOMETでスコア化し比較 • 300件のうち、一番COMETスコアが高かった • 今回のLLM翻訳機能(54%) • A社翻訳サービス(16%) • B社翻訳サービス(30%) • 300件のうち、一番COMETスコアが低かった • 今回のLLM翻訳機能(12%) • A社翻訳サービス(51%) • B社翻訳サービス(37%) ● 左記から、今回のLLM翻 訳機能は、翻訳品質が高 い傾向であると言える 8.評価

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©WFS ➢成果 1. アサイン費用の抑制 2. 工数改善、応対スピードの向上 3. 品質向上への向き合い強化 9.成果

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©WFS ➢1.アサイン費用の抑制 担当者 翻訳/管理者 一次対応拠点 外部パートナー 二次対応 WFS CS 導入 前 WFS CS スタッフ エンドユーザー お客様 9.成果 現地言語での エスカレーション 日本語翻訳での エスカレーション

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©WFS ➢1.アサイン費用の抑制 担当者 翻訳/管理者 一次対応拠点 外部パートナー 二次対応 WFS CS 導入 前 WFS CS スタッフ エンドユーザー お客様 9.成果 現地言語での エスカレーション 日本語翻訳での エスカレーション

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©WFS ➢1.アサイン費用の抑制 担当者 翻訳/管理者 一次対応拠点 外部パートナー 二次対応 WFS CS 導入 前 WFS CS スタッフ 現地言語での エスカレーション 日本語翻訳での エスカレーション 業務集中 エンドユーザー お客様 9.成果 対応遅延

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©WFS ➢1.アサイン費用の抑制 担当者 翻訳/管理者 一次対応拠点 外部パートナー 二次対応 WFS CS 導入 前 WFS CS スタッフ 現地言語での エスカレーション 翻訳管理者の追加要請あり エンドユーザー お客様 費用が2倍 9.成果 業務集中 対応遅延 日本語翻訳での エスカレーション

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©WFS ➢1.アサイン費用の抑制 二次対応 WFS CS 導入 後 WFS CS スタッフ 日本語翻訳での エスカレーション 担当者から直接エスカレーション 増額予定だった「翻訳管理者」のCS費用を抑制 遅延解消 追加アサイン不 要 9.成果 翻訳/管理者 一次対応拠点 外部パートナー エンドユーザー お客様 担当者 現地言語での エスカレーション

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©WFS ツール調査及びエスカレ完了までの平均時間 変更前 変更後 効果 87.9H 59H 約29H減 (33%Down) 最終返信までの時間 変更前 変更後 効果 58.1H 37H 約21H減 (36%Down) ※エスカレ起票した案件のみ対象 ※データ調査などの時間含む A:拠点のオペレーション工数 B:お客様への回答時間 ➢2.工数改善、応対スピードの向上① 9.成果

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©WFS ➢2.工数改善、応対スピードの向上② ● タイトル固有の用語確認に費やされていた工数減少 ● エスカレーション文章作成時の工数低下 A:「拠点のオペレーション工数」の削減 ● 拠点工数の削減による全体工数の短縮 ● 担当分散によるエスカレーションの経路増加 B:「お客様への回答時間」の短縮 9.成果

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©WFS ➢3.品質向上への向き合い強化 ● 応対拠点 ○ 翻訳精度向上によるエスカレーション内容の品質アップ ○ 「翻訳管理者」工数の削減による「担当者」育成等への時間拡大 ● WFS CS ○ エスカレ内容の質UPによるCS側の判読工数の減少 ○ 改善検討へのバッファ創出 9.成果 品質向上への寄与

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● グロッサリーの充実度による翻訳精度差 ○ 固有ワードの登録差、ネットスラング未登録による直訳が一部散見。頻度の高い更新が重要 ● 参照情報の誤り ○ 参照元データの入力間違いの可能性もあるため、チェックの仕組み化も要検討 ● ハルシネーション ○ 誤った内容を提示することがあるため、参照元の表示などを推奨 ©WFS 10.新たな課題 WFS AI Chat 利用を通じての課題

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課 題 対 策 成 果 翻訳業務の効率化、翻訳品質の安定化 海外お問い合わせ対応の工数削減、費用の抑制 LLM翻訳のAPI開発、社内サービスと繋ぎこんだ高精度の翻訳機能展開 ● COMETスコアの評価で、LLM翻訳の精度が他社の翻訳サービスを上回る結果 翻訳の揺らぎの是正、誤訳発生の抑制 ゲーム翻訳 CS 対応工数/返答時間の向上、CS費用増の抑制 ゲーム翻訳 CS 様々な可能性が広がるため、今後も生成AI活用をよりチャレンジ予定 ©WFS 11.まとめ

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ご清聴ありがとうございました! ©WFS

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WFSセッション一覧 WFSはCEDEC 2025で全8セッション登壇いたします ©2024 Magica Quartet/Aniplex,Magia Exedra Project ©WFS ©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS © VISUAL ARTS/Key 7/22 第4会場 13:40-14:40 レギュラーセッション LLM翻訳ツールの開発と 海外のお客様対応等への社内導入事例 郡司 匡弘 / 松井 望 / 小野 幸人 BP 7/23 第1会場 09:30-10:30 レギュラーセッション ヘブンバーンズレッドにおける、 世界観を活かしたミニゲーム企画の作り 方 菊岡 大夢 GD 7/23 第1会場 10:50-11:50 レギュラーセッション ヘブンバーンズレッドの レンダリングパイプライン刷新 野口 顕弘 ENG 7/23 第2会場 13:20-14:20 レギュラーセッション 「魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra」の グローバル展開を支える、開発チームと翻訳チームの 「意識しない協創」を実現するローカライズシステム 原田 大志 / 篠原 功 PRD 7/23 第2会場 13:20-14:20 レギュラーセッション 「魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra」 の必殺技演出を徹底解剖! -キャラクターの魅力を最大限にファンに届けるためのこだわり- 新谷 雄輝 / 金子 俊太朗 / 佐々木文哉 VA 7/24 第5会場 15:00-15:25 ショートセッション ライブサービスゲームQAのパフォーマ ンス検証による品質改善の取り組み 小野 粋哉 / 勅使川原 大輔 BP 7/24 第5会場 18:00-18:25 ショートセッション ヒューリスティック評価を用いた ゲームQA実践事例 山本 幸寛 PRD 7/24 第8会場 18:00-18:25 ショートセッション 「魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra」での負荷試験の実践と学び 悦田 潤哉 ENG

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