Slide 1
Slide 1 text
グスコーブドリは、イーハトーヴの大きな森のなかに生まれました。おとうさんは、
グスコーナドリという名高い木こりで、どんな大きな木でも、まるで赤ん坊を寝かし
つけるようにわけなく切ってしまう人でした。
ブドリにはネリという妹があって、二人は毎日森で遊びました。ごしっごしっとおと
うさんの木を挽ひく音が、やっと聞こえるくらいな遠くへも行きました。二人はそこで
木いちごの実をとってわき水につけたり、空を向いてかわるがわる山鳩やまばとの
鳴くまねをしたりしました。するとあちらでもこちらでも、ぽう、ぽう、と鳥が眠そうに
鳴き出すのでした。
おかあさんが、家の前の小さな畑に麦を播まいているときは、二人はみちにむし
ろをしいてすわって、ブリキかんで蘭らんの花を煮たりしました。するとこんどは、も
ういろいろの鳥が、二人のぱさぱさした頭の上を、まるで挨拶あいさつするように鳴
きながらざあざあざあざあ通りすぎるのでした。
ブドリが学校へ行くようになりますと、森はひるの間たいへんさびしくなりました。
そのかわりひるすぎには、ブドリはネリといっしょに、森じゅうの木の幹に、赤い粘土
や消し炭で、木の名を書いてあるいたり、高く歌ったりしました。
ホップのつるが、両方からのびて、門のようになっている白樺しらかばの木には、
「カッコウドリ、トオルベカラズ」と書いたりもしました。