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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. サバイバルモード下での エンジニアリングマネジメント 2025/02/27 (木) EMConf 2025 Kyash Inc. @konifar

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©2024 Kyash Inc. 2 自己紹介 小西 裕介 (こにふぁー) 株式会社Kyashで7年3ヶ月プロダクトを作っています ● [1年半] Android ● [半年] iOS、Serverside ● [1年半] Engineering Manager ● [半年] QA ● [2年] VP of Engineering ● [1年3ヶ月] 執行役員 VP of Engineering

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©2024 Kyash Inc. 3 プロポーザル https://fortee.jp/emconf-2025/proposal/d74c0603-765c-401c-b22a-75645aace27a

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©2024 Kyash Inc. 4 前置き マネジメントの話をするのはむずかしい ● 自分だけの失敗/成功ではない ○ 実際に大変な思いをした人もいるし、センシティブな内容になることが多い ● 見えている範囲によって事実の認識が異なる ○ 当事者となるメンバー間でも情報と考え方が違う中で、多角的な側面から必要がある ● 背景のコンテキストを共有しにくい ○ 聞き手にも社内の事情を "ちょうどいい具合に" 理解してもらう必要がある

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 5 5 できるだけ背伸びせずに 振り返りをしていきます

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. Kyashのサバイバルフェーズ 6 6

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©2024 Kyash Inc. Kyashのサバイバルフェーズ (2022〜2023) ● ブランドルールの変更や法律上の制約な どもあり、KPIである決済額の非連続な成 長を果たせず ● ポイント還元や入金手数料などの諸費用 が膨らみ、収益構造は悪化 ● 新たなtoB事業を開始するも、初速は想 定より伸びず事業計画からはビハインド 事業 7 ● 常に目先の問題を何とかする話がほとん どで、全体的に消耗気味 ● 事業の方針変更が相まってエンゲージメ ントも下がり、複数のメンバーやマネー ジャーが退職 組織

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©2024 Kyash Inc. Kyashのサバイバルフェーズ (2024〜) ● PL責任を明確にした事業部制へ移行し、 事業部長のリードのもと 数値目標を達成 できる組織へ ● toC事業の徹底的なコスト見直し、新たな toB事業と与信領域の事業の伸びにより プロダクトの収益性は大きく改善 事業 8 ● 目の前のやるべき施策に取り組みつつ、 少し先の未来を見て目指す姿について話 すことが増えてきた ● 一方で、目下の数値目標の達成に向けて 愚直な開発を長く続けてきたこともあり、 エンゲージメントは改善しきれておらずま だ退職は見られる 組織

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 9 9 まだ完全に抜けたわけではないが 少しずつよくなってきた

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 10 10 あの時こうしておけばよかった という話をします

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©2024 Kyash Inc. 11 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 採用活動を止めない 5. 1年半先の未来を語る 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. コストの見直しはすぐにやる 12 12

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©2024 Kyash Inc. 13 コストの見直しはすぐにやる ● サバイバルフェーズにおいて、積み上げで効く施策はすぐにやるかどうか即検討して意思決定すべき ● コストの見直しは、やれば必ず成果が出るうえに開発チームでコントロールできることが多い ● 2023年4月にタスクフォースプロジェクトとしてすべての開発より優先して2週間実施した 収益構造の改善にダイレクトに効く

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©2024 Kyash Inc. 14 コストの見直しはすぐにやる

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©2024 Kyash Inc. 15 コストの見直しはすぐにやる - 効果 ● 実施した当月に130万円くらい、翌月からさらに120万円くらいの効果 ● お祭り的な感じで 「集中できた」、「楽しかった」、「定期的にやりたい」 という声も多かった ● 結果としてわかりやすく事業にも貢献できて、一時的に士気も上がった 結果として250万円/月くらい改善した

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©2024 Kyash Inc. 16 コストの見直しはすぐにやる - なぜもっと早く実施できなかったのか ● 事業計画上の数字の積み上げを、開発がどう実行するかという考え方に凝り固まってしまっていた ● 実はエンジニアリングチームの中でコントロールできる領域でも短期的に事業計画に寄与できる部分 はたくさんある ● 開発効率を上げる、運用コストを下げるといった領域は積み上げで効いてくるので、まずはプロジェク トとして時間をとって最初に取り組むべき 事業計画に対する提案ができていなかった

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©2024 Kyash Inc. 17 コストの見直しはすぐにやる - 教訓 ● サバイバルフェーズにおいては、トップダウンでやることを決めてやりきることが大事 ● プロダクトまわりのコストの見直しでどの程度成果が出せるのか試算したり、とりあえずやってみる期 間を取るという提案をしたりするのは、エンジニアリングがわかるマネージャーにしかできない ○ 実際1週間あれば洗い出しも調査もできて、成果を出すところまで対応可能だった ○ 利用サービスのアカウント数の見直しだけでも意外と効果が出る 経営の言葉に翻訳して提案し、トップダウンでやりきる

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©2024 Kyash Inc. 18 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 採用活動を止めない 5. 1年半先の未来を語る 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 19 19

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©2024 Kyash Inc. 20 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 2022年当時何が起きていたか ● 2022年に VPoE になった時にはエンジニア5人の退職が決まっていた ○ それ以降も退職は継続的に続いてしまった ● 退職理由は以下のような内容が多かった ○ 「今のプロダクトの方針に共感できない」 ○ 「事業の状況に不安を感じる」 ○ 「経営を信用できなくなった」 ○ 「ビジョン/ミッションに対して直近やっていることがリンクしていないと感じる」 組織が安定せず退職が続く

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©2024 Kyash Inc. 21 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 当時考えていたこと ● エンジニアリングマネジメントだけでどうにかなる範囲を超えているし、組織上も役割分担がある ○ プロダクトの方針 => プロダクトマネージャーやプロダクト責任者が担う領域 ○ 資金調達を含む事業の状況 => 経営が担う領域 ● メンバーの退職が続く中で、とにかく丁寧にフォローしないと不安を感じるようになっていた ● まずはとにかくエンジニアリングチームの状況の把握に集中することに ○ 1on1の対象と頻度を増やして一次情報をキャッチ ○ プロダクトと事業の方針を直接伝えてフォローアップしつつ、経営にもエスカレーション 何とかしたいけれど、どうすればいいのかわからない

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©2024 Kyash Inc. 22 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 当時を振り返ると ● プロダクトや事業という根っこの課題解決を他者に委ねていた ● マネジメントの不安を減らすためのメンバーとの1on1は無意味 ○ メンバーの不満や不安をキャッチしてその場でフォローしても根本解決にはならない ○ 実はメンバーの課題意識は十分に理解できていたのに、答え合わせを繰り返していただけ ● 本来時間と頭を使うべきは過度な観察ではなく課題の解決 自分の不安を紛らわすような動きをしていただけだった

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©2024 Kyash Inc. 23 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 教訓 ● 1on1をいくら繰り返してもサバイバルフェーズの根本的な課題が解決することはない ○ 退職が続くとフォローが必要だと感じてしまうが、そこに時間を使いすぎるべきではない ● 自分が考えていることと、そこから何をするかの "約束" を宣言し続けることに時間を使う ● 不安解消目的の 1on1 依存症にならずに、マネジメントの引き出しを増やすこと ○ 直接コミュニケーションを取らなくとも、全社のミーティングで話す、週報や月報を出す、 フィードバックアンケートを取るというやり方もある ○ 自身の不安と比較してメンバーは自立しているので、過保護にならず信じるほうがいい 自分の考えを共有して、何をするかを宣言し続けること

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©2024 Kyash Inc. 24 自分の不安を紛らわす1on1をしない - フィードバックアンケート抜粋

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©2024 Kyash Inc. 25 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 退職について ● 経験上、「退職を考えてます」と言われてから引き止められたことはほとんどない ● なんとなく退職リスクが出てきそうな雰囲気は、1on1じゃなくても察知できる ○ Slackの反応だったりミーティング中の発言だったり ● 1on1では、「ちょっとモチベーションが下がっている」くらいのタイミングで早めに共有はしてくれる ○ そこから何をするかが重要で、時間と頭を使うべきところ ○ 状況把握だけで安心して課題解決から逃げないこと 退職を切り出されたらもう遅い

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©2024 Kyash Inc. 26 自分の不安を紛らわす1on1をしない - 退職について ● 退職のリスクが高くなる前に、できることを経営に提案して進める ○ グレード/給与レンジの見直し ○ 役割とチャレンジの設定 ● どれも簡単には進められないが、「やったほうがよい」と考えたら放置をしないのが大事 ○ 放置さえしなければ前に進む ○ 結果として、「やらない」という意思決定をすれば放置していない ○ 「退職した際の事業へのインパクト」に翻訳して、経営と人事を巻き込むとよい 放置せずに先手を打つ

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©2024 Kyash Inc. 27 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 採用活動を止めない 5. 1年半先の未来を語る 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 収益構造を理解して提案する 28 28

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©2024 Kyash Inc. Kyashのサバイバルフェーズ (2022〜2023) ● ブランドルール変更や法律の制約もあり、 KPIである決済数の非連続な成長を果た せず ● ポイント還元や入金手数料などの諸費用 が膨らみ、収益構造は悪化 ● 新たなtoB事業を開始するも、初速は想 定より伸びず事業計画からはビハインド 事業 29 ● 常に目先の問題を何とかする話がほとん どで、全体的に消耗気味 ● 事業の方針変更が相まってエンゲージメ ントも下がり、複数のメンバーやマネー ジャーが離職 組織

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©2024 Kyash Inc. 30 収益構造を理解して提案する - 2022年当時の動き ● クレジットカードを作れない外国人労働者向けにKyashを利用してもらうことでユーザー数、決済数 を伸ばすという施策 ● 企画段階から開発コストに対して効果が本当に見合うのかという疑問の声がエンジニアからも上がっ ていた ● 効果を検証するためにも短期間で最低限の外国人向けの対応をしてリリースしたものの、大きな成果 にはつながらなかった 外国人労働者向けの訴求施策

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©2024 Kyash Inc. 31 収益構造を理解して提案する - 当時の自分が考えていたこと ● 月の決済額、決済人数、その達成に向けた開発ロードマップと人員計画あたり ● とにかく自分は「どう遂行するか」に責任を持つと考えていた ● 「想定どおりに効果が出るかわからない」と考えることは自分もあったが、懸念の先に代替案の提案も できず遂行責任を全うすることに振り切っていた ○ アウトカムはエンジニアリングチームだけではコントロールできないこともあるので、アウト プットの質と量を高めることにフォーカスしていた 共有された事業計画の目標数字だけを追っていた

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©2024 Kyash Inc. 32 収益構造を理解して提案する - 今考えると ● 「この施策の目的を満たすにはこっちのほうがいいんじゃないか」という提案は、事業計画の前提とな る現状の収益構造を深く理解しないと絶対にできない ● 今取り組んでいることに対するインパクトの大きさも、全体を理解することで初めて説明できる ○ 逆に理解できていないと、納得のいかない方針に対して「なぜ今それをやるべきなのか」を 自分の言葉で説明することができない 背景となる収益構造をもっと深く理解をするべきだった

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©2024 Kyash Inc. 33 収益構造を理解して提案する - 責務の分担 ● それはプロダクトマネージャーや事業責任者の責務じゃないの?という意見もある ○ 責務はそのとおりで、PLに対する責任を最終的に誰が担うのかは明確にすべき ○ Kyashでも事業部制に分けて事業責任者を置く組織体制変更はうまくワークした ● 一方で、サバイバルフェーズにおいては、あまり責務を分けて考えすぎないほうがいい ○ 実際に責務を分けて考えて傍観してしまった結果、根本的な課題解決に手が届かず、サバイ バルフェーズが長引いてしまった ○ お互いの責務範囲は理解しつつ、経営は上の隣接領域、プロダクトマネジメントは横の隣接 領域として成果の最大化のためにはみ出していく方がよかった エンジニアリングマネージャーの責務なのか

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©2024 Kyash Inc. 34 収益構造を理解して提案する - こうすればよかった ● 事業責任者、プロダクトマネージャー、経理担当者が確認している場に突っ込んでいくのがよい ○ 情報を自分から取りに行くスタンスが大事 ● 収益とコストの数字を直接確認してみると、海外決済の収益性が非常に悪いことや、不正対策にかけ る費用がかなり大きいことなどが見えてくる ○ 実際にそのあたりは2024年に手を入れて劇的に改善した ● わかったフリをせず、わからないことをすべて聞いて自分でも説明できるかを確認するとよい ○ エンジニアのメンバーに対して説明の場を作って強制的に説明していくとか 会計とKPIシートの生のデータを見る場に入っていく

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©2024 Kyash Inc. 35 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 採用活動を止めない 5. 1年半先の未来を語る 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 採用活動を止めない 36 36

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©2024 Kyash Inc. 37 採用活動を止めない - 2023年当時の状況 ● 事業計画の変更に伴う予算の見直しにより、新規のエンジニア採用のヘッドカウントを大幅に削減 ● 事業を推進するチームのほか、CSや経理チームと伴走するようなチームの強化を考えていたがストッ プすることに 新規のエンジニアの採用を止めることになった

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©2024 Kyash Inc. 38 採用活動を止めない - 当時自分が考えていたこと ● 「経営で議論して全体最適を考えた意思決定なのであれば、その中で何とか実行していく方法を考え ていこう」 ● 「採用活動自体も時間と労力がかかるものだし、むしろ切り替えて今の事業推進に集中しよう」 予算で上限が決められているなら仕方ないか...

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©2024 Kyash Inc. 39 採用活動を止めない - 前提を疑ってみるべきだった ● 財務経理の方針にもよるが、実は事業部や部門で決まった予算はその科目の中である程度調整もで きる ● 人件費は金額が大きく調整はしづらいが、たとえば採用の方針としてエージェントや媒体を利用しな い、業務委託費用を見直すといった形でコントロールは可能 ● 予算全体を把握して調整できないかを丁寧に確認すれば、完全に新規採用を止めることもなかった 予算はトップラインを守ればある程度調整可能

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©2024 Kyash Inc. 40 採用活動を止めない - こう考えるべきだった ● サバイバルフェーズにおいて、採用活動はマネジメントの強力な武器のひとつ ○ 自分たちのチームを自分たちで作っていくというメッセージングは非常に重要 ● ブログの発信や面談や面接の中で、自チームの課題やいいところを直接話していくことが言語化と未 来志向を促しモメンタムを生み出す ● 採用を一度止めてしまうと、もう一度やっていくぞという時に「採用活動を皆でやるのが当たり前」と いう文化をまた構築していかねばならない 仮に採用を止めても、採用"活動"は止めない方がいい

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©2024 Kyash Inc. 41 採用活動を止めない - こう考えるべきだった ● ファイティングポーズを取らず、経営や人事を孤立させない ○ 経営とメンバーをつなぐことが仕事なので、対立しても意味がない ● 変だと思ったら必ず伝えること ○ 提案ではなく懸念レベルでもいい ○ そのうえで、「自分が見えていない情報や観点」を教えてもらうスタンスで対話する 経営意思決定に納得できない時の動き方

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©2024 Kyash Inc. 42 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 予算を理解して調整する 5. 考える時間軸を伸ばす 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 考える時間軸を伸ばす 43 43

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©2024 Kyash Inc. 44 考える時間軸を伸ばす - 2022〜2023年当時考えていたこと ● サバイバルフェーズでは、今目の前で起きている問題を何とかして生き抜かなければならない ● 3ヶ月〜半年先の目標達成のために何をするかを常に考えて動いていた ○ 自分が直接手を動かして対応することも多かった とにかく目の前の課題を解決する

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©2024 Kyash Inc. 45 考える時間軸を伸ばす - 何が起きたか ● その時々に必要なことをやっているのは理解していても、次第に何を目指しているのかわからない状 態になり意義を語れなくなってくる ● 「なんだか最近面白くない」、「ちょっとモチベーションが下がってきた」といった声が散見されるよう になる ● 目の前の問題にばかり向かっていると、サバイバルフェーズが当たり前になる中毒症状や何も変えら れないと考える学習性無力感が蔓延してしまう ○ 何も言ってくれなくなるのが一番まずい 1年くらい経つとメンバーが消耗してくる

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©2024 Kyash Inc. 46 考える時間軸を伸ばす - 今振り返ると ● マネジメントという役割を全うするなら、マネジメントにしかできないことをやらないと意味がない ○ 直近の課題についてはある程度放っておいても各々が考えてくれる ● マネージャーは経営より長い時間軸で考えることはないし、メンバーはマネージャーより長い時間軸で 考えることはない ● 特にエンジニアリングは将来どうなるかを想定することがとても大事なので、マネージャーから率先し て未来の話をしなければならない 少し先の未来を示す役割はマネジメントにしかできない

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©2024 Kyash Inc. 47 考える時間軸を伸ばす - こうすればよかった ● マネージャーは3年先までは見なくてもよいと思う。そこは経営に任せる ● 1年半くらい先を想像し、プロダクトと組織をどうしていくかを描いて語り続けるのが大事 ● その中で各メンバーに適切な役割とチャレンジを担ってもらう ● 時間軸を伸ばして考えることで、「あの問題重いけどすぐにはできないしなあ」という類の"難しいが いつかは取り組むべき問題"が放置されることもなくなる 1年半先を考えてプロダクトと組織の方針を更新する

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©2024 Kyash Inc. 48 考える時間軸を伸ばす - こうすればよかった 未来を描いて共有すると、メンバーの熱量が解放される

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©2024 Kyash Inc. 49 考える時間軸を伸ばす - 未来の話をする場を作る ● サバイバルフェーズにおいては、未来の話を考える優先順位は下がりがち ● しかし目の前のことばかりに集中するといつか消耗戦になる ● 強制的に未来の話をする場とそれを共有する場を最初に設定しておくこと ○ 3ヶ月か半年に1回長めのミーティングを入れて方針を固めるとか ○ 共有は全社ミーティング、トラッキングはマネージャー同士の定例のような感じで先にセット しておくことで強制力を働かせる 1年半先の未来の話を考える優先順位は下がりがち

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©2024 Kyash Inc. 50 考える時間軸を伸ばす - 自分のコミットメントと人生 ● 未来の話を決めて語るということは、一定期間実行する覚悟が必要になる ● 自分はVPoEになる時に2年はやりきると決めていた ○ 執行役員になった2024年に更新したので、少なくとも2025年末までは全力でやりきる ● サバイバルフェーズは正直しんどいことも多いので、自分で期間を設定してここまでは頑張ってみると 決めたのは覚悟ができてよかった ● このあたりはマネジメントを担うハードルを上げたくはないので悩ましいが、それでも少なくとも1年 くらいはやってみないとなかなか成果にはつながらないと思う ある程度長い期間コミットする覚悟も必要

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©2024 Kyash Inc. 51 教 訓 1. コストの見直しはすぐにやる 2. 自分の不安を紛らわす1on1をしない 3. 収益構造を理解して提案する 4. 予算を理解して調整する 5. 考える時間軸を伸ばす 5 Learnings

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 52 52 サバイバルフェーズの マインドセット

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©2024 Kyash Inc. 53 サバイバルフェーズでのマインドセット ● 自分のエンジニアリングチームの管掌範囲以外に根深い問題があることも多い ● 何かの結果に対して、自分に理由があると思うのはいいが、自分の責任だとは思わなくていい すべてが自分の責任だと思わないこと

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©2024 Kyash Inc. 54 サバイバルフェーズでのマインドセット ● 正直 「もっと前にこういう動きや考えができていれば...」 と考えることは何度もある ● そう思うということは何かしら前進している ● 問題を放置さえしなければ少しずつよくなっていく。それでいい もう遅いと思わないこと

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©2024 Kyash Inc. 55 サバイバルフェーズでのマインドセット ● 今日話したような話はマネジメントの本にも書かれている内容だが、自分は"心"で理解できておらず 失敗を踏み抜いてメンバーにも迷惑をかけてしまってきた ● ビスマルクの格言で言えば「完全に愚者やんけ」と思っていたが、この言葉は「愚者は経験 (自分の失 敗) から学び、賢者は歴史 (他人の失敗) から学ぶ」ということで、学習よりも自分の経験が先にくる ことを否定するものではない 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

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©2024 Kyash Inc. ● PL責任を明確にした事業部制へ移行し、 事業部長のリードのもと 数値目標を達成 できる組織へ ● toC事業の徹底的なコスト見直し、新たな toB事業と与信領域の事業の伸びにより プロダクトの収益性は大きく改善 事業 56 ● 目の前のやるべき施策に取り組みつつ、 少し先の将来に目指す姿について話すこ とが増えてきた ● 一方で、目下の数値目標の達成に向けて 愚直な開発を長く続けてきたこともあり、 エンゲージメントは改善しきれておらずま だ直近も退職は見られる 組織 失敗も成功も振り返り、 未来を考えて伝えながら、残る課題を解決して 最高のプロダクトと組織を作っていく

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©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc. 57 57 皆さんの「増幅」と「触媒」 になれば嬉しいかぎりです