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「すごくできる人」の講義を聴くだけ では、なぜ「できる人」になれないの か はじめに 話の流れ 「すごくできる人」の講義を聴くのはムダなのか 「すごくできる人」の講義を聴く価値とは 「すごくできる人」は、なぜ”講義”をするのか 講義を聴くだけでは、なぜ「できる人」になれないのか 「できる人」になるためには、どうすればいいのか 「できる人」を育てるためには、どうすればいいのか 読者想定 セミナーや勉強会、研修で「すごくできる人」の講義をよく聴いている方 周囲から「すごくできる人」と思われていて、講義をよく引き受けている方 「すごくできる人」を講師に招き、セミナーや勉強会、研修を企画している方 「すごくできる人」の講義を聴くのはムダな のか 全然ムダじゃない 別に「すごくできる人」の講義を聴く価値がないという話ではない それどころか、たいへんに有意義な体験だと、心の底から思っている 私自身、学びを得ることも多々あるし、感銘を受けることも多々ある 「すごくできる人」を講師に招聘して、クライアントに研修を提供する立場でもある (「講義」以外と連携させることが多いが) ここで言いたいこと:ケンカ売ってない! 「すごくできる人」の講義を聴く価値とは

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自分の死角・思いこみ・思い上がりを排除できる 「これ、知らなかったなぁ」「これ、思い違いしてた」と素直な発見が得られる 「すごくできる人」の話は説得力があり、信頼できる 信用していない人に言われても「自分のほうが正しい」とスルーしていたことを、い とも簡単に改められたりする 知らなかったことを知れる 自分に足りない知識や視点は、自分で発見することが困難 自分が知らないことは、人の話や本から教わることで能率的にGETできる 「話を聴く」のは、「本を読む」より負荷が軽い たいてい話が体系だっている 「すごくできる人」の話は、体系的に整理されていることが多い まずは「学習領域に通底する論理」を学び、足場を作ってから積み上げていくと学習 効率が良いため、体系的な知識は学び始めに最適 着実で有用な「今後の学習方法・実践方法」が得られる 現場に即した実践重視&無理なく段階的に取り入れやすい「今後の学習方法・実践方 法」をアドバイスしてくれる人も多い 役立つ推薦図書、トレーニング方法、段階的な仕事への取り入れ方、職場の環境づく りなど 仕事&学習のモチベーションが上がる 「すごくできる人」はロールモデルの役割を果たし、聴き手を鼓舞するパワーをもつ 直接話を聴くことで「こういう仕事がしたい」「これができるようになりたい」と動 機づけられる 「ものにしたい」という意識、「自分にもできるのでは」という自己効力感は、学習 効果を上げる 確認しておきたい大前提:「すごくできる人」の講義を聴くことは大いに価値がある 「すごくできる人」は、なぜ”講義”をするの か 理由1:「自分の知見を惜しみなく伝授する」行動指針をもつ

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「講義設計、スライド作成、講義そのもの、参加者とのコミュニケーション」によっ て自分の知識や仕事のやり方を体系化したり見直す機会がもて、その活動自体に価値 を見出している その分野における自身や自社のブランディング、営業や採用活動に有効に働く 自分の仕事の社会的価値を認識しており、自身の能力レベルも客観的に評価できてい るため、声がかかれば後進育成に役立とうとする 健全で安定した自己肯定感があり、自分のノウハウを開示することに開放的 「講義」によって自分の市場価値が脅かされないことを分かっている 理由2:「教えること」に割ける余力が限られている その存在は希少で、また実務に忙しく、「講義」以上に手の込んだもの(演習、テス トなど)の準備には、なかなか時間や労力を割けない ごく身近な職場メンバーなどを除けば、「長い時間、同じ場所を共有」して人に教え ることが困難 理由3:必ずしも「教え上手」「育て上手」ではない 「すごくできる」のは特定分野の仕事であって、必ずしも教える/育てることに長け ていない 「体系だった知識を分かりやすく教える」講義は得意でも、人が知識・スキルを習得 したり、パフォーマンスとして習熟していくのを指導・支援する「育て上手」とは限 らない 「イベント講演」に習熟していくと、”参加者の満足度獲得” や ”反響の大きさ” がKPI になり、 ”参加者の学習効果” は必ずしも重視されない、「話し上手」「演者としての 魅力」を追求する人も 仕事が好きなのであって、それを教えるのが好きなわけではない場合もあり、上手い /下手に関わらず、教える/育てる役割を志向していない人もいる ※補足:「すごくできる人」の中にも、教えたり育てたりするのが上手な人はいるし、 「教えたり育てるのが上手な人」の中に、その仕事自体は「すごくできる」に及ばない人 もいる 結果的に:ごく短時間に“1対多“で大人数に働きかけられる”講義”形式が採用されやす い 講義を聴くだけでは、なぜ「できる人」にな れないのか 理由1:講義で話せる内容は「一部」だから

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限られた時間に、複雑な専門分野に必要なすべてを話し尽くせるはずもなく、基礎を なす「ごく一部」を話すことになる 講義では基礎固めに焦点をしぼるため、実務を遂行する上では必要だが話をややこし くする現実的なあれこれ(「一概には言えませんが…」というケースバイケース)に は大概、言及できない 理由2:話を聴けば、自動的に脳内インプットされるわけでは ないから 問い:次の方法で学んだことは、記憶に何%残るか? 読んだこと…( %) 聞いたこと…( %) 見たこと…( %) 見て聞いたこと…( %) 発言したこと…( %) 発言して行動したこと…( %) 正解:次の方法で学んだことは、記憶に何%残るか?

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インプット方法によって記憶に残る比率が異なるという研究がある。読んだことは10%、 聞いたことは20%、見たことは30%、見て聞いたことは50%、発言したことは70%、発 言して行動したことは80% 人間は忘れやすい生き物。話を聴いたら、そのまま脳内にインプットされ定着するの ではない 理由3:話を覚えているだけでは、戦力として使えないから 「それ、聞いたことがある」「それ、知ってる」レベルの記憶では、現場でさして役 立たない 「◯◯は、こういうものである」という定義や方法論を説明できても、実践できなけ ればビジネス上は無風 「こういうときは、こうする」「これの後は、これをやる」というルールを覚えてい るだけだと、ルーチン作業しか対応できない 今が「こういうとき」に該当するか、「これはきちんと終わったか」が判別できない ため、現場でルールを適用できない。あるいは、誤った状況でルールを適用してしま う

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状況に応じた調整・変更を加えられない。応用がきかない、ケースバイケースに対応 できない . できる 状況を調査・分析して、やり方を調整したり応 用できる ○単独で遂行できる . 一応で きる 言われたタイミングでルールを適用できる △指示にそって作業で きる . わかる 理解している/説明できる ×仕事にならない . 知る 聞いたことがある/意識している ×仕事にならない . 無意識 知らない/意識していない ×仕事にならない 理由4:静的な情報をもっただけでは、なかなか実践活用に至 らないから 「自分の現場で使い出す」初動が、なかなか取れない どんな下準備をして、誰に働きかけ、どのタイミングで、どう取り入れたらいいかわ からない 現場の理解を得るまでの働きかけが重荷で、「職場にそういう環境が整ったら自分も やろう…」に落ち着く 結果として:話は良かったが、翌日からの自分の仕事/業務環境に何の影響も及ぼし ていない 「できる人」になるためには、どうすればい いのか 大人の学習は「セルフマネジメントできるかどうか」が肝 まず「すごくできる人」の話は有意義だが、学習において「万能ではない」ことを心 得る 「講義」の効用と限界を理解して、「講義」を新しい学習の足場づくりに有効活用す る 講義で「知ったこと」を「やってみる」→「使いこなせる」ようになるまでを射程に 入れて学習をセルフマネジメントする

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「知る」から「できる」までは、一足飛びにいかない。知って、わかって、うまくやるコ ツがわかって、自分の欠陥がわかって、一通りを乗り越えた先に「しっかりできる」自分 がある 「講義」を起点に、習熟プロジェクトを始動する 話を聴いて何か知ったところで、「実践できる状態が整ったわけではない、これから 学習して習熟していくスタート地点に立ったのだ」として、自分の現在地を鳥瞰して 認識することが大事 「知る/わかる」の後「やってみ」ない人は、一向にできるようにはならない。自分 がまず「やってみる」ためには、どういう方法があるかを考えて計画(仕事現場でチ ャレンジできるよう上長に交渉する、難しければ仕事時間外で試作して仕事仲間にみ てもらうなど)、活動に組み込む 「スキル習得」と「業務環境づくり」は連動する。そのスキルを発揮できる仕事環境 をどう作りだすかも、会社や環境のせいにしないで、自分で働きかけ作り出す必要あ り 「経験学習サイクル」をまわす

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やりっぱなしにせず、経験を糧に学習するサイクルをまわすことが大事 練習したり、仕事の機会を作ることで、経験を起点にして学習するサイクルをまわす。や りっぱなしにせず、経験を振り返り、成功・失敗要因を考えて教訓を導き出し、得た教訓 を活かして実践するサイクルが有効 経験:チャレンジ課題を作るか、与えてもらうかして用意し、やれるところまでやっ てみる 省察:何ができて、何ができなかったか、ミスしたこと、できてもいまいちだったこ とを振り返り、他の人からも評価をもらう(評価してもらう人の力量次第で、有効性 が変わる) 概念化:なぜできたのか/できなかったのか、どうやり方を変えたり注意して次回や ったら改善するかを、自分で考えたり、人からアドバイスをもらって、修正方針を立 てる 試行:修正方針に基づいて、またやってみる 結論:「すごくできる人」に話を聴いたら、そこをスタート地点に学習・実践に取り かかる

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「できる人」を育てるためには、どうすれば いいのか 講義をする方へ 自分の講義では「誰をメイン対象に」「何にフォーカスし」「何は話さないのか」を 伝える 自分の講義を聴いた後、「どんな学習をしていくとよいか」「どんなふうにすると段 階的に取り入れていきやすいか」など、「この後どうするか」のアドバイスを、締め に用意する 研修を企画する方へ 本人が単独で「経験学習サイクルをまわす」のは難しい。やってみる課題づくりも一 苦労だし、その機会を学習に活かせるかも本人次第。ひとりでコツコツ練習を重ねれ ば習熟するわけでもない 本人にとってリアリティある、ちょうどいい難易度のチャレンジ課題を用意し、練習 の機会を作って、優秀な実務エキスパートから個別に評価フィードバックを得られる 「講義+演習プログラム」など、組織的な支援があるかないかで学習効果・効率は大 きく変わる

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学習とは、受け身では終えられない「生産活動」。ガニエの9教授事象でも説かれる通 り、インプット後に練習し、指導者からフィードバックを得ていかないと、学習はいっこ うにゴールにたどりつかない 社内に「話せる講師」はいるんだけど、いかんせん「講義以上のこと」ができていな い。結果、研修や勉強会は開いているものの、「やっておしまい」「あとは本人次 第」で社員が伸び悩んでいる。「一緒に、その後につなぐための研修プログラムを作 ってくれない?」みたいなご相談がありましたら、ぜひお声がけくださいませ 営業トークでした。 書き手プロフィール 主に「講師」以外の、仕事の学び方や教え方をデザインする裏方仕事(インストラク ショナルデザイン、及びプロジェクトマネジメント)を生業とする ネット/広告/メディア業界のクライアントを中心に、デジタルマーケティング/ク リエイティブ領域の学習テーマで実務スキルを習得する研修プログラムを、オーダー メイドで提供

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外部講師をコーディネートする研修でも、課題分析や学習者分析を踏まえた講義設 計、ワークショップ課題や筆記テスト・シミュレーション課題の開発は当方で行い、 それを講師(実務のエキスパート)が監修して仕上げることも多い Facebook(hysmrk) / Twitter(marimari) / 詳細プロフィール 関連スライド紹介 効果が出る「仕事の教え方」 https://www.slideshare.net/hysmrk/ss-56231539 https://www.slideshare.net/hysmrk/ss-56231539