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ウェブ小説とSF 歴史、 マンガ・海外との比較から考える メディア・ビジネスモデル・ファンダム 1 飯田一史(2023.8.5)

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自己紹介 2 1982年生まれ。ライター 単著 『「若者の読書離れ」とい うウソ』 『ウェブ小説30年史』 『ウェブ小説の衝撃』 『いま、子どもの本が売れ る理由』など

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自己紹介 3 細かい部分は後で SlideShareで 読んでください ここでは 大枠,原理の話を中心に

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4 本日のテーマ ウェブ小説とSF 「作品」ではなく「しくみ」の話 1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸) 2.マンガと小説の比較(横軸) 3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸) →今後SFがウェブで取り組むべきこと を考える

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5 注意 ・本資料内では敬称略で呼称します. ご容赦ください ・「あれがない」「これがない」と思ったら 自分で補完してください こちらに特定のサイトやサービス、団体を 無視する,貶めるといった他意はありません. 単に知らないか,文脈上重要でないと判断した か,分量的に収まらなかったかのいずれかです

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6 本日のテーマ ウェブ小説とSF 「作品」ではなく「しくみ」の話 1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸) 2.マンガと小説の比較(横軸) 3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸) →今後SFがウェブで取り組むべきこと を考える

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7 ウェブは手段であって目的ではない ウェブ小説と言っても提供方法は様々 何のために使うのか? 目的に適した手段は何か? はじめに

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8 日本人の1か月に読む本の冊数 47% 38% 9% 3% 3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上 わからない

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9 38%が買うSFを作るために使うのか? 3%の中のSFファンのために使うのか? 3%内のSFファンを増やすのに使うのか? 目的に応じてふさわしい手段は変わる 47% 38% 9% 3% 3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上

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10 たとえば…SFがウェブを勘案すべき理由 この10余年で文芸市場が半減

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11 SFがウェブ小説を勘案すべき理由 web小説書籍化は安定,文芸市場4割占有 30 50 82 100 105 108 106 102 101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規模 出版科学研究所調べ ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額

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12 ウェブ活用に移らなければ市場縮小は確定 衰退に抗して新規SFファン獲得を目的にする? 30 50 82 100 105 108 106 102 101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規 模 ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額

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13 しかしウェブに どんな役割を求めるかは 時代や立場によって違う

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14 80-90sにウェブ小説に求められていたこと “佐藤亜紀さんは「活字メディアでは、読者の反応 がわからない。読者の反応がわかるインターネット は、かけだしの作家としてはありがたい」。さらに、 「世の中には、数百人だけに読まれる作品というの もある。いまの出版社は規模が大きくなって、小さ なものは本にならない。インターネットなら、そん な先鋭的な作品も可能だ」と語る” 「交差 読者と作家を直結(何が変わる? 電子メディアと文芸:中)」、「毎日新聞」1995年9月18日夕刊 →商業出版では難しい小規模コミュニティに 向けた発信を目指す方向もある(あった)

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15 日本のウェブ小説史とSFの関わり,距離感 どんな目的で何が行われてきたのか? どんな手法が試行され、確立されたか まずは日本のウェブ小説史から考える そのあとマンガ,海外との比較から考える

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16 SFとオンライン小説の関係を整理すると… ・2000年代以前 と ・2016年以降 にトピックが集中 →SF作家・ファンの性質と関係

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17 80~90年代のオンライン小説の規模感 当時パソ通利用者数は総務省発表 1991年110万人、1995年368.9万人 95年時点で全人口に占める割合3% →狭くて先進的な好事家の場 2020年のネット利用率は9割超

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18 2000年代以前 パソ通~90sネット時代 狭くて顔が見える,好事家の遊び場. (夢はあるが)儲けは目的ではない =SF界隈と親和的 多様な実験・試行錯誤が行われた

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19 80~90年代パソ通、初期ネット期 ・85.8-初のオンライン連載長編小説 原田えりか『シシャノミルユメ』 →趣味的な発信,パソ通利用者増.目的達成 ・筒井康隆『朝のガスパール』 朝日新聞91-92, 93-96断筆宣言期「越天楽」等 →商業出版で書けないことの追求.目的達成

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20 80~90年代パソ通、初期ネット期 ・パスカル短編文学新人賞94@ASAHIネット 川上弘美「神様」 全応募作が会議室で読め、対話できた (ゲンロン超・SF作家育成サイトに似てる?) この点以外しくみ/目的は既存文学賞と同じ. 川上は96年芥川賞受賞 (ネット小説出身で初かつ唯一?).目的達成

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21 80~90年代パソ通、初期ネット期 パソ通PC-VAN オンラインマガジン 92第1号 大原まり子「時と空間を超えた恋人たち」 双方向小説.意見を読者募集し,作者が採用する 連載小説.マネタイズ失敗?継続せず,未書籍化 →PBMのパソ通版? 10sまで同種の失敗が反復 リアルタイムで参加しないと楽しめないものに 対して,事前に内容が不明なのに課金は厳しい あとから書籍化しても売れない,つまらない

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22 80~90年代パソ通、初期ネット期 平井和正『ボヘミアンガラス・ストリート』 アスキーネット他94-95 ~2巻新書10万部,電書~00年4.5万部 紙が売れなくなるとネットのみで『幻魔大戦DNA』発売 →紙でできないことの追求&マネタイズ. 一定成功 人気シリーズの続篇のウェブ連載,電書化は 親和性が高い(ただ新人/新作では模倣困難)

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23 80~90年代パソ通、初期ネット期 ASAHIネット94年 堀晃主宰SF同人誌「ソリトン」 創刊号のみ雑誌が先、ネットが後 「オンライン出版は市場が狭いので 本の出版とセットにしてリクープを狙う」 と事業者が発言 →オンラインで収益化が目的なら失敗.日本 のウェブジン収益化問題は約30年未解決

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24 80~90年代パソ通、初期ネット期 P.E.P著,鴻上尚史監修『ペプシマン』96年 ハイパーリンクを使った、展開が分岐する 読者参加型投稿リレー小説 監修・主著矢野徹、著・嬉野泉 『エフ・エス Flight simulator』97年 電撃文庫 フジオンラインシステム(現パピレス)がパソ通と ネット上で矢野作の冒頭掲載, 続きを新人賞形式で公募・選考

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25 80~90年代パソ通、初期ネット期 P.E.P著,鴻上尚史監修『ペプシマン』96年 ハイパーリンクを使った、展開が分岐する 読者参加型投稿リレー小説 監修・主著矢野徹、著・嬉野泉『エフ・エス Flight simulator』97年 矢野作の冒頭掲載, 続きを新人賞形式で選考 →分岐,リレー,公募可能がウェブの特徴と解釈 それ自体が目的なら成功.商業的には微妙?

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26 80-90sにSFはネットで色々やったが ・筒井康隆 断筆宣言期「越天楽」 ・パスカル文学短編賞 川上弘美デビュー ・大原まり子「時と空間を超えた恋人たち」 ・平井和正『ボヘミアンガラス・ストリート』 ・堀晃主宰SF同人誌「ソリトン」 ・矢野徹、嬉野泉『エフ・エス』 継続性がなく,経験が継承されてない? 新しもの好きの悪い面…? 今こそ当事者を呼んで再検証してほしい

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27 2016年以降のウェブ小説とSFの関わり

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28 2016年以降のウェブ小説とSFの関わり 15年柞刈湯葉『横浜駅SF』 →16年書籍化 Twitter→Tumbler→カクヨムWeb小説コンテスト受賞 カクヨム発では 赤野工作 ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム 碌星らせん 黄昏のブッシャリオン 17年書籍化

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29 2016年以降のウェブ小説とSFの関わり 15年柞刈湯葉『横浜駅SF』 →16年書籍化 赤野工作 ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム 碌星らせん 黄昏のブッシャリオン 17年書籍化 00s初頭確立「ウェブで人気の作品を書籍化」+ 00s中盤確立「PFに版元がR&Dをアウトソース」 の組み合わせ(後述) →偶然の産物で目的はない,再現性が薄い

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30 2016年以降のウェブ小説とSFの関わり 16年以降、ウェブ小説歴ある作家の ハヤカワSFコンテスト受賞が常態化 第4回吉田エン『世界の終わりの壁際で』,黒石迩守『ヒュレーの 海』,草野原々『最後にして最初のアイドル』は受賞前ウェブ掲載 第6回三方行成『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』 第8回十三不塔『ヴィンダウス・エンジン』 →SFジャンルでもPFが新人の切磋琢磨, 知名度上昇に一定の効果アリ? 早川からすればコスト負担なしでウェブで 勝手に育って&宣伝してくれればありがたい

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31 ウェブ小説アリナシ論争SFM16.12 ハヤカワSFコンテスト第4回審査委員選評 東浩紀:作品外の情報で選考が左右される から投稿サイト掲載作は対象外とすべき 塩澤快浩:SFコンテストが優れたSFを正当 に評価する場なら出自は問わない →以降,なろう,カクヨム掲載作品や 活動作家の受賞が当たり前に ウェブ小説排除しないで結果よかった

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32 ウェブ出身作家起用,ウェブ活用進む 16 平鳥コウ『JKハルは異世界で娼婦になった』 「超水道」ミタヒツヒト『イマジナリ・フレンド』 ゲンロン大森望SF創作講座「超・SF作家育成サイト」 17 宮澤伊織『裏世界ピクニック』ネットロアネタ Arcadia出身カルロ・ゼン『ヤキトリ』 電書レーベル惑星と口笛ブックス創刊 18年;藤田祥平『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』 七士七海『異世界からの企業進出!?転職からの成り上がり録』 19年; もちだもちこ『ゲームでNPCの中の人やってます!』 緋色優希『ダンジョンクライシス日本』 小野美由紀「ピュア」SFM19.6初出→「HayakawaBooks&Magazines(β)」20万PV

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33 ウェブ出身作家起用,ウェブ活用進む 19 U-NEXT電書サービス開始,20年読み放題.SF作家起用 20 VG+設立,オンライン公募賞かぐやSFコンテスト開始 北野勇作『100文字SF』ハヤカワ文庫JA 電書レーベル・ゲンロンSF文庫 21年;SF短篇アンソロジーに同人誌やウェブ発増え始める 江永泉,木澤佐登志,ひでシス,役所暁『闇の自己啓発』 「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」@pixiv(さ なコン)第1回開催,以降毎年開催 SFM「異常論文特集」公募がTwitterで行われ21.6号掲載 12月同様の手法で「幻の絶版本」特集を提案し炎上,中止 22年;百合文芸小説コンテスト@pixiv「SFマガジン賞」

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34 これらを目的や手法で分けると 1.ウェブで話題の作品を書籍化,作家を起用 2.ウェブで話題を作って特集,書籍化 3.新人発掘・育成 4.紙出版が難しいものをウェブ/電子で刊行

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35 これらを目的や手法で分けると 1.ウェブで話題の作品を書籍化,作家を起用 →一部成功,SF内部からの評価分かれる 2.ウェブで話題を作って特集,書籍化 →SNSでファンダム巻き込み一定成功/炎上 3.新人発掘・育成 →PFとの賞は成果薄? それ以外は一定成果 4.紙出版が難しいものをウェブ/電子で刊行 →出版が目的なら成功.認知拡大には課題

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36 目的や手法を分けると 1.ウェブで話題の作品を書籍化,作家を起用 2.ウェブで話題を作って特集,書籍化 3.新人発掘・育成 4.紙出版が難しいものをウェブ/電子で刊行 →これらだけが最適な手段か, SFがウェブでやるべきことかは疑問が残る たとえば..デジタルのマネタイズは諦め? 既にいるSFファン向け施策に偏ってない?

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37 ともあれ16年~のウェブ小説とSFの関わり 『SFが読みたい!2018年版』 『ザ・ビデオ~』第4位,『横浜駅SF』第6位 柿崎憲「このweb発SFが読みたい!」 「素人が書いた作品だからといってWeb 小説を甘く見ていい時代は終わった」 SFM18.6 柿崎「SFファンに贈るWEB小説ガイド」開始

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38 ウェブ小説の展開からわかるSF者の特徴 Innovator 時間 Early Adapter Early Majority Late Majority 年代 80-90s 2000s ~2015 2016~ ウェブ小説 ビジネスの 成長度 ※イメージ ・新しもの好きと保守層の集まり 軌道に乗せて儲けるところにはいない ・初期参入者の経験が検証/継承されにくい?

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39 ウェブ小説の展開からわかるSF者の特徴 Innovator 時間 Early Adapter Early Majority Late Majority 年代 80-90s 2000s ~2015 2016~ ウェブ小説 ビジネスの 成長度 ※イメージ ・アーリーアダプタやアーリーマジョリティ の気持ちがわかってない可能性が高い ・普通の事業者ならやるところを外しがち

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40 SF界がウェブ小説を甘く見ていた 00-10s中盤にweb発の書籍化市場が爆増 いったい何が起こったのか? なぜこの間、日本SFとウェブ小説の 関係は遠かったのか? ここに今後を考えるヒントがあるかも

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41 日本の ウェブ小説 の歴史

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42 1990年代の特徴 ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・英語・海外展開志向 ・マルチメディア ・集団創作 ・分岐する物語/ハイパーテキスト

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43 1990年代の特徴 ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・英語・海外展開志向 ・マルチメディア ・集団創作 ・分岐する物語/ハイパーテキスト →「紙でできないこと」志向が強い ウェブ自体を目的化しがちだった

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44 1990年代 有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・平井和正、e-NOVELS

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45 1990年代 有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・平井和正、e-NOVELS →電書市場の小ささ, 流通・宣伝(顧客へのリーチ方法), 閲覧端末・ファイル形式問題等で頓挫 10年iPad登場で同型の問題が反復. 中韓は有料ウェブ小説へ,日本は出遅れ

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46 1990年代 ・英語・海外展開志向 村上龍、筒井康隆など 英語に翻訳すれば世界中で読まれる! と意気込む発言が散見される。 が……

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47 1990年代 ・英語・海外展開志向 村上龍、筒井康隆など →地道にずっとやればよかったが 飽きたのか資金難かで途絶 10年代半ば以降ClarkesWorldらが 中韓SFの英語翻訳を進め, 日本もケツに火が付くまでは沈滞?

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48 1990年代 ・マルチメディア 村上龍(坂本龍一音楽)、 堺屋太一『情報楽市』画像付きCD-ROM展開 ・集団創作 『ペプシマン』ほか ・分岐する物語/ハイパーテキスト 井上夢人『99人の最終電車』 「紙でできないこと」を自己目的化

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49 1990年代 ・マルチメディア 村上龍,堺屋太一 ・集団創作 『ペプシマン』ほか ・分岐する物語/ハイパーテキスト 井上夢人『99人の最終電車』 →マネタイズ,閲覧に難ありで一時の産物に. が,忘れた頃に繰り返され必ず商業的に失敗

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50 1990年代の特徴と重要な学び ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・英語,海外展開志向 ・マルチメディア ・集団創作 ・分岐する物語/ハイパーテキスト

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51 1990年代の特徴と重要な学び ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 ・英語,海外展開志向 ・マルチメディア ・集団創作 ・分岐する物語/ハイパーテキスト =パッケージメディアの販売には効果無し →出版界/SF界は評価が紙の書籍偏重 継続性,収益性に難アリ(イノベイターの宿命)

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52 90s→00sでのウェブ小説の変化 ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 →ウェブでは無料だが出版社が紙で有料書籍化 ・英語・海外展開志向→日本語/日本ローカル ・マルチメディア→文字だけ ・集団創作→単一作者 ・分岐する物語/ハイパーテキスト →リニアな物語

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53 90s→00sでのウェブ小説の変化 ・有料化/(出版社抜きの)直売志向 →ウェブでは無料だが出版社が紙で有料書籍化 ・英語・海外展開志向→日本語/日本ローカル ・マルチメディア→文字だけ ・集団創作→単一作者 ・分岐する物語/ハイパーテキスト →リニアな物語 +ランキングと投稿PFの台頭

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54 00年代初頭ウェブ小説(書籍化) 「ウェブでの人気を元に商業出版」が確立 95-97頃「楽園」ランキングシステム登場 オンライン小説リンク集「楽園」が 人気投票システムを導入 ・98年開始の「見届け人」(久保覚)『如何に してソフト会社は崩壊したか!』00年書籍化 ・「楽園」には米澤穂信『氷菓』原型が登録 ミステリランキング1位だった

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55 00年代初頭ウェブ小説(書籍化) 00年アルファポリス設立 01年ドリームブッククラブ開始 DBCは購入予約or出資が一定集まれば商業出版 tac「きみはぼくの」楽園登録00年 →アルファに「VOICE」登録→DBCで02年書籍化 市川たくじ『Separation』→03TVドラマ化 個人サイト&メルマガ連載を元に『いま、会い にゆきます。』03年刊

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56 00年代初頭ウェブ小説(書籍化) ちなみに市川拓司はSF育ち ・ワイリー『地球最後の日』が最初に買った本 ・『Separation』『いま、会い』はNHK少年ドラ マシリーズの影響(タイムトラベル、若返り) ・アシモフ『永遠の終り』 小松左京『果しなき流れの果てに』 フィリップ・ホセ・ファーマー『リバーワール ド』が好き。 出典『きみはぼくの』アルファポリス文庫版26~31p

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アルファは長期的な増収増益を実現 アルファポリス 「2023年3月期決算説明会資料」 18pより

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58 00年代初頭ウェブ小説(書籍化) Yoshi『Deep Love』00年iモード連載 自費出版で文庫・ハードカバー10万部 →完全版スターツ出版から02年書籍化 03-04年文芸書年間ベスト10入り 『もっと、生きたい…』『恋バナ』 05年のトップ3入り →第一次ケータイ小説ブーム

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スターツ出版は アルファポリス同様に ウェブ小説書籍化を 軸に過去最高益を更新 今は過去2度のケータイ 小説ブーム以上の業績 左図はスターツ出版株式会社 「2022年12月期決算説明会資料」 3pより引用

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60 90s後半から00s初頭に起きた画期 既成新人賞は「作家が作家を選ぶ」(1) 楽園,アルファポリス,スターツ出版が 「読者が直接作品を選ぶ」(2)を開拓 「量が質を担保」(ウェブ人気が出版物 としての商品価値の裏付けになる) →1より2が「売れる」打率高いと発見

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61 「ウェブ人気を元に出版」の意味 千葉大学文学部・石井正人「インターネット文 学が独自の評価の基準として考案したのは、読 者による投票に基づくランキングだった」 石井正人「インター ネット文学の現在 インターネットにおけるセミプロ・アマチュア文学の現状」、「民主文学」2001年5月号、日本民主主義文学同盟、116-118頁 斎藤美奈子「文芸誌主催の新人文学賞とかだっ たら、これ(Yoshi作品)、1次予選で落っこちる と思うのね。だけど、いまはそんな手続きは不 要だし、ネットで流せば読者もつくの」『誤読日記』 →評価する人間と方法,軸が新人賞と違う

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62 3%が3%向けに選ぶのが版元新人賞/企画会議 53%が選ぶことで平均的に好まれる作品を 生み出すのが「ウェブで人気→書籍化」 前者より後者が売れる確率が高いのは当然 47% 38% 9% 3% 3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上

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63 が,「ウェブで人気→書籍化」方式は 3%の人間の感覚と合わないことも多い. 好みが合わない本読みは毛嫌いしがち →誰に/どんな評価軸で本にするかが重要 47% 38% 9% 3%3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上

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64 00s後半 リンク集から投稿PFへ 00 Arcadia開設 03 オリジナル小説投稿板 09 投稿作を改稿『アクセル・ワールド』刊 04 小説家になろう開設 『ゼロの使い魔』二次創作隆盛 07小説を読もう! タグ,ランキング,検索整備 09 活動報告・ブクマ*等 11 『魔法科高校の劣等生』刊 *作家と読者のコミュニケーションを活性化

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65 00s後半 リンク集から投稿PFへ 05年魔法のiらんど発で 第2次ケータイ小説ブーム →ウェブ小説が出版市場で初めて 複数の書き手による 「ジャンル」としてブーム化 07年MobageTown小説投稿機能 09年『王様ゲーム』,エブリスタ開設

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66 00s後半-10s前半のウェブ小説書籍化 07年イースト・プレス レガロ 初のウェブ小説書籍化「レーベル」 梨紗『華鬼』,河上朔『wonder wonderful』 時生彩『つがいの歯車』 →ウェブ小説書籍化初の異世界転移 10年アルファポリス レジーナブックス 如月ゆすら『リセット』 →なろう発初の異世界転生書籍化

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67 00s後半-10s前半のウェブ小説書籍化 10年『まおゆう』刊,11年『はたらく魔王さ ま!』刊 魔王勇者の流行が紙に流入 紙→ウェブだけでなくウェブ→紙の 「環流」が明確に確認される 11年『ログ・ホライズン』刊 13年なろう発,初のTVアニメ化 12年主婦の友社ヒーロー文庫 初の「文庫」なろう系書籍化レーベル

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68 00s後半-10s前半のウェブ小説書籍化 13年MFブックス創刊,14年『無職転生』刊 『イリヤ』の影響を受け『ハルヒ』全盛期に ラノベ新人賞に投稿した作品が原型 14年GCノベルス創刊、『転スラ』刊 ・14,5年頃「なろう系はラノベの一部」 という認識が一般化 ・ウェブ小説→書籍化→マンガ→映像の IP展開モデルが確立

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69 下記に加えてマンガの方が売れる事態に 30 50 82 100 105 108 106 102 101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規模 ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額

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70 ともあれ 2000年代に確立された ポイント,ランキング制の 投稿PF発で人気の作品を 書籍化するビジネスモデルが 2010年代前半までに拡大

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71 ともあれ これらの試みでは 作家もPFも版元も 数字を取る=人気になる を目的にしており,達成 手段が確立され成功した

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作家の 発掘・ 調達 企画の ジャッジ 制作 宣 伝 流通・ 販売 他メ ディア 展開 既成 小説 出版 公募の 新人賞 数人での 編集会議 定性評価 雑誌→ 書籍化 書下し 雑誌 新聞 書店 流通 映像 化など ウェブ 小説 書籍化 PFランキング、 お気に入り などの数 ウェブ → 書籍化 PF SNS 書店 流通 映像 化など 72

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73 00s後半以降の投稿PF時代の重要な点 ・群として投稿される=リテンション増大 特定サイトへの来訪回数増加 ・単発ヒットではなくブーム,レーベル, ジャンル化,タグによる流行/現象の可視化 書き手・読み手の定着。探しやすくなる ・ポイント,ランキング制と書籍化が紐付く 書き手にロールモデルと投稿戦略が生じる 本―ウェブへ相互にユーザーが流入

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74 00s後半以降の投稿PF時代の重要な点 ・群として投稿される=リテンション増大 ・単発ヒットではなくブーム,レーベル, ジャンル化,タグによる流行/現象の可視化 ・ポイント,ランキング制と書籍化が紐付く 書き手にロールモデルと投稿戦略が生じる →本質は流行ジャンルの誕生ではなく 再現性の高いヒットのしくみの形成

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75 00s後半以降の投稿PF時代の重要な点 本質は流行ジャンル誕生ではなく 再現性の高いヒットのしくみの形成 →SFがウェブ活用によって何を 目指すにせよ「しくみづくり」 「エコシステムの全体最適」の 観点からの取り組みが必要

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76 一方,出版社の文芸発の試みはほぼ失敗

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77 一方,出版社の文芸発の試みはほぼ失敗 12年講談社アマテラス→15年終了 13年電子誌「デジタル野性時代」「つんど く!」「yomyom pocket」→15年までに終了 13年ディスカヴァー21×CRUNCH MAGAZINE 新人賞1回で終了 何がダメだったのか?

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78 文芸界は何がしたかったのか? 12年講談社アマテラス→15年終了 投稿サービスなのに編集部目線のみで 賞を選定してユーザーが離れる →有望な新人発掘を目的にしたのだろうが PFと既存新人賞の評価システムは相性悪い. この点に無自覚な文芸×PFの賞は今も多い.

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79 日本の文芸編集部は タグ,ポイント,ランキング制×投稿PFと 組んで作品を公募しても ・編集者や審査員(主に作家)が選ぶ という従来型新人賞と同じしくみで評価 →これのヒット率は紙新人賞と変わらない ウェブ募集する意味は? 目的と合致してる? 本当にその選考方法でいいの?

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80 文芸界は何がしたかったのか? 13年電子誌「デジタル野性時代」「つんど く!」「yomyom pocket」→15年までに終了 →雑誌の機能を電子で代替するのが目的.

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81 文芸界は何がしたかったのか? 13年電子誌「デジタル野性時代」「つんど く!」「yomyom pocket」→15年までに終了 →雑誌の機能を電子で代替するのが目的. 「雑誌の機能」の理解が浅はか EPUBにしただけの電子小説誌はUI/UXがクソ たとえば連載作品を続けて読むのが難 それなら快適な小説PFを普通は使う せめてDマガジンに入れて認知取るべきだった

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82 雑誌メディアの果たすべき機能とは?

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83 雑誌メディアの果たすべき機能とは? 単行本になる連載の原稿を取る 有料で販売して収益化

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84 雑誌メディアの果たすべき機能とは? 単行本になる連載の原稿を取る 有料で販売して収益化 …だけだと思っている人間が 出版界にも多い だから小説誌を電子書籍にした だけのものを出す

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85 雑誌の果たすべき機能は対読者にある ・作家・作品の育成と宣伝 ・リテンション 定期的に届け, 継続的に関心を繋ぎ止める ・顧客エンゲージメント向上 これができないなら 惰性で続けてもやる価値なし

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新人賞 新企画 雑誌 書籍 雑誌の役割=育成,宣伝,関心&関係維持向上 86

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新人賞 新企画 雑誌 書籍 雑誌が売れないと 宣伝・育成力が 減衰 87 定期刊行や販売自体は メディアの目的ではない

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88 文芸界は何がしたかったのか? 13年ディスカヴァー21×CRUNCH MAGAZINE 新人賞1回で終了

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89 文芸界は何がしたかったのか? 13年ディスカヴァー21×CRUNCH MAGAZINE 新人賞1回で終了 →ディスカヴァーは売れるものがほしい、 CMは純文学志向のユーザーを集めていた。 方向性が不一致. &そもそも小説事業は短期で成功しない 作家,作品,しくみ成熟には最低5年はかかる 1年で終了の第3期LINEノベル(19-20)も同様

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90 サイトに小説あげれば万事解決、ではない うちもウェブ小説やるで! ↓ 版元サイトにちょぼちょぼ 小説をアップしても たくさん読者はこない リテンションが弱い 数,人気で競うなら工夫が必要

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91 出版社サイトと投稿PFは何が違う? マシュー・ハインドマン『デジタルエコノミーの罠』(NTT出版) 「アメリカの地方紙発のニュースメディアは大 手ニュースサイト/プラットフォームに絶対に 勝てない。なぜならユーザーがそのサイトを訪 問するかどうか、どのくらいの頻度で訪問する かは記事の『質』以前に記事の『量』とサイト の『更新頻度』で決まるからだ」 AU,リテンションで版元サイトはPFに負ける

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92 数を追わない,3%による3%のためのPF, ウェブ小説サービスは 日本ではいまだ成功事例に乏しい (目的によって「成功」の定義は変わるが) 47% 38% 9% 3%3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上

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93 00-10s前半の日本SFのウェブ活用は?

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94 00-10s前半の日本SFは大きな動き無し 95年パソ通→『福音の少年 錬金術師の息子』03年ぺんぎん書房→07年デュアル文庫 03年はてダ→08年GA文庫 林亮介『迷宮街クロニクル』 05 平谷美樹 角川春樹事務所サイト00-02掲載『時間よ止まれ』 07 松浦理英子 「Timebook Town」04-07年連載『犬身』刊 センス・オブ・ジェンダー賞大賞(辞退) 08読売新聞yorimoヨリモノベル 森博嗣『スカイ・イクリプス』 刊 当時の会員数は21万 10 『ニンジャスレイヤー』Twitter連載開始 11年日本SF作家クラブ「SF Prologue Wave」開始 山本弘『MM9』,Webミステリーズ10-12年隔月連載,11-13年書籍化 12年藤井大洋『Gene Mapper』KDP,13年早川書房刊 ウェブ,電子がしくみ,体制を変えず

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95 北米は10年代前半から着実に変化? 10 米国出版協会発表10年1-8月電子書籍売上は前年 比164%.書籍販売に占める電子書籍の比率は7%↑. 文芸誌は紙と電子を共に販売. Locusが電子版,Podcast開始 11 10年度ネビュラ賞最終候補短篇6/7がオンライン 初出.ノヴェラ,ノヴェレット部門も電子版で読める (買える)ものが大半を占める 米Asimov誌,12年時点で約3割が電子購入で部数増 Hugh Howey”Wool”KDP発でヒット

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96 00-10s前半の日本SFはwebでの動きが少 00s前半はラノベからのリクルート, 00s後半は伊藤計劃・円城塔らが登場 10sはハヤカワSFコンテスト復活,短篇新人 賞も充実など新人に困っていなかった? マンパワーやカネがなく動けなかった? PFからSF人材発掘の方法がわからなかった? ランキング制PFとジャンル小説評価の相性 は悪く,闇雲に動かないのも悪くはないが…

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97 ※「ランキングと 相性悪い」と言うが 星雲賞もSFが読みたい! も投票ランキングでは? …という疑問に応える

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98 PFとSF界のランキングの違い 投稿PF:投票権の持ち主=誰でも 星雲賞:カネ払ってSF大会来る猛者 読みたい:SF関係者 →「誰でも」だとジャンル固有の 価値観で作品が選ばれない. 価値観の共有者に限定するから機能. 評価「方法」は似てても評価「者」が違う

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99 いずれにしろ 日本での00-10年代中盤までの ウェブ小説書籍化ビジネスの 激変に対し 日本SFは積極的ではなかった

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100 10s後半以降も文芸では… 17年上田岳弘『キュー』Yahoo!連載 ジェネラティブアート付 13年~メルマガ連載 村上龍『MISSING』 20年電書版では画像掲載 13年グループSNE のARG"3D小説bell" 14年書籍化 ウェブ内の謎を解く,ニコ動コメントを使い人物 に次にすべき行動を示す,RPGツクールで作られた ゲームをプレイ提示された場所で謎を解く等々

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101 10s後半以降も… 17年上田岳弘『キュー』ジェネラティブアート付 13~メルマガ 村上龍『MISSING』電書版画像掲載 13年グループSNE のARG"3D小説bell" 14年書籍化 →小説に画像,動画や音声,双方向性や リアルタイム性を加えても, 体験性でのマネタイズも, その後の出版物としての販促に繋がらない (90sに判明してた)

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102 2010年代後半以降も 20年春陽堂書店Web新小説 月1100円→23年終了 21年メフィストリーダーズクラブ,年額5500円 の会員制サービスに 「別冊文藝春秋」note版月額800円 →コミュニティをウリに開始

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103 2010年代後半以降も 20年春陽堂書店Web新小説 月1100円→23年終了 21年メフィスト,年額5500円会員制サービスに 「別冊文藝春秋」note版月額800円 →コミュニティをウリに開始 ↓ 入口有料は高いエンゲージメントがないとムリ 入口に他の読者が見えないコミュに入るか? 無料部分が豊富でないと新規流入が停滞 呼び水とジャンル規範共有機能が弱い

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104 日本の文芸,SFは タグ,ポイント,ランキング制×投稿PFの ・作品評価の定量化 ・読者が作品を選ぶ ・マッチング,検索精度の追求 ・リテンション(作品量、更新頻度)最大化 ・コメントを通じての読者の作品参加 ・ウェブで無料で読める敷居の低さ ・ウェブ→書籍化→マンガ→映像のIP展開 といった一連のポイントを外すか無視 有料ウェブ小説への挑戦にもスマホ以降消極的

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105 なぜ文芸,SFは素直に↓ができないのか ・作品評価の定量化 ・読者が作品を選ぶ ・リテンション(作品量,更新頻度)最大化 ・コメントを通じての読者の作品参加 ・ウェブで無料で読める敷居の低さ ・web→書籍化→漫画→映像のIP展開

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106 なぜ文芸,SFは素直に↓ができないのか ・作品評価の定量化 ・読者が作品を選ぶ ・リテンション(作品量,更新頻度)最大化 ・コメントを通じての読者の作品参加 ・ウェブで無料で読める敷居の低さ ・web→書籍化→漫画→映像のIP展開 自己否定になるから

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107 こういう価値観で駆動している 売れるよりもジャンル的な価値を重視 作家は読者より偉い,線引きすべき 紙はウェブより偉い、以下同文 うちのジャンルは他より偉い、以下同 量より質 売り物はタダで見せられない タダで見せたら素人と同列になる

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108 こういう価値観で駆動している 売れるよりもジャンル的な価値を重視 作家は読者より偉い,線引きすべき 紙はウェブより偉い、以下同文 うちのジャンルは他より偉い、以下同 量より質 売り物はタダで見せられない 00s~のウェブ書籍化思想と相性悪い だからできない、やらない オルタナティブな方法論を模索するも 目的と手段が不整合

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109 やらなかった結果がこれ マンガは復活し、文芸は半減以下に 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 日本のマンガ市場 (単位:億円)出版科学研究所調べ 紙のコミックス 紙のコミック誌 電子コミック(雑誌含む)

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110 本日のテーマ ウェブ小説とSF 「作品」ではなく「しくみ」の話 1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸) 2.マンガと小説の比較(横軸) 3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸) →今後SFがウェブで取り組むべきこと を考える

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111 10s以降,漫画と小説の何が違ったのか? マンガは雑誌から ウェブ、アプリ、電書に 主軸を変更 小説はウェブ小説PF以外 うまくDXできたとは言えない

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新人賞 新企画 雑誌 書籍 雑誌の役割=育成,宣伝,関心&関係維持向上 112

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113 マンガアプリの機能 ・育成 ・宣伝 ・リテンション ・エンゲージメント

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114 マンガアプリの機能 ・育成→ジャンプ+他の大量読切, 最新話は出版社系APPでのみ配信 ・宣伝→電書ストアで1~3巻無料,LINEマン ガで無料連載,気軽な作品へのリーチ実現 ・リテンション→23時間待てば1話無料 ・エンゲージメント→出版社APPを連載媒体として 認知、顧客ロイヤルティと客単価を共に上昇 雑誌→デジタルで機能を置換,発展

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115 なぜリテンションが大事なのか 人は書店に行かないと本を買わない. 昔は定期的な来店動機を雑誌が作った. 複合店はレンタルビジネスでも作った. ↓ リアル書店は習慣的な来店装置を喪失 →マンガAPPは時限式無料で毎日来店 →→小説はPF以外リテンションが弱い

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発掘 育成 アプリ web 単行本 他 アプリ,web=育成,宣伝等々 116

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117 各種電子書店 自社APP,web+PF 自社APP,web 誘導 ・ 投資 分業

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118 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APP,webで 新作育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 分業

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119 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APP,webで 新作育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 詳しくは拙著 『マンガ雑誌は死んだ。』参照

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120 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 マンガは 出版社系とストア系で役割分担

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121 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 出版社系とストア系で役割分担 小説はこれができてない

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122 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 理想 特にファネルの設計に難あり. 間口広く呼び込み+濃い方へ誘導 の施策が小説では弱い(後述)

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123 ただ小説とマンガでは市場規模が違う マンガ…6770億円 小説…700億程度 紙の推定;単行本ラノベ100億が販売金額で全体の 37.2%→小説全体では268億 文庫ラノベ108億から 108/37.2%=290億 単268+文290億+新書+雑誌=600億? 電書の推定;22年書籍新刊推定発行金額約3418億円の うち日本文学小説物語約641億円で全体の18.8% 文字もの電子書籍市場446億→小説446×18.8%=83億 紙+電子で小説市場は良くて700億円台 出版科学研究所「出版月報」2021.9,『出版指標年報2023年版』を元に計算および参照

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124 ただ小説とマンガでは市場規模が違う マンガ…6770億円 小説…700億円程度 →マンガ同様の投資は 期待できない…?

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125 ただしウェブ小説の市場規模は 韓国…21年6000億ウォン以上 韓国コンテンツ振興院調べ 中国…ネット文学全体で230億元, 中国作家協会ネット文学センター『2022中国ネット文学青書』 SFの電子書籍 (書籍・雑誌の電子版,ネットオリジナル) 13.7億元 新華網日本語2023.6.3「中国SF産業、22年の売上高877億5千万元」 ウェブ+電書小説市場だけで 日本の小説市場全体に匹敵(韓国),凌駕(中国)

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126 ただしウェブ小説の市場規模は 韓国…21年6000億ウォン以上 韓国コンテンツ振興院調べ 中国…ネット文学全体で230億元, 中国作家協会ネット文学センター『2022中国ネット文学青書』 SFの電子書籍 (書籍・雑誌の電子版,ネットオリジナル) 13.7億元 新華網日本語2023.6.3「中国SF産業、22年の売上高877億5千万元」 日本も投資で伸びる余地大

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127 ウェブ小説の市場規模は 韓国…21年6000億ウォン以上 中国…ネット文学全体で230億元, 日本も投資で伸びる余地大 もっとも3%向け小説がIP展開可能 か,ビッグビジネスになるかは疑問 (とはいえ何もしないとジリ貧)

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128 本日のテーマ ウェブ小説とSF 「作品」ではなく「しくみ」の話 1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸) 2.マンガと小説の比較(横軸) 3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸) →今後SFがウェブで取り組むべきこと を考える

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129 米中韓との比較でわかること

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99 キングRiding the Bullet,The Plant50万部直販 →DL後振込方式で課金率48%に低下,00年12月停止 ジョン・スコルジー"Agent to the Stars” シェアウェア公開、収益4000$→書籍版05年 02 『老人と宇宙』サイト公開→Torから05年書籍化、 ヒューゴー賞最終候補作。 「ぼくは長篇をオンラインで発表して大手出版社か らオファーを受けた最初のSF作家だと思う」 00s前半 多数のウェブジンが作られる 03 ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』無料公開 北米

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99 キングRiding the Bullet,The Plant50万部直販 ジョン・スコルジー"Agent to the Stars” 02 『老人と宇宙』サイト公開→Torから05年書籍化、 03 ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』無料公開 この時代からウェブでSFを読む/評価する/買う が芽生えていたからこの後につながる →日本SF作家ウェブに小説あげなさすぎ? SF版元が保守的なせい? 新作も出版契約切れの作品もUPしては? 人気作家,新人,中堅皆ウェブ公開してる

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132 北米は10年代前半から着実に変化? 06 Clarkes World創刊.10sには世界のSFを翻訳 09年Andy Weir"The Martian"個人サイト連載,11年KDP, 14年ランダムハウス刊,15年映画化 10年発表ヒューゴー賞ゼミプロジン部門Clarkes World(06 年創刊)がウェブジン初、ファンジン部門StarShipSofaが ポッドキャスト初の受賞.CW誌は月$2.99の定期購読販売電 子雑誌.掲載作品はウェブで無料で読める オンラインマガジンLightspeed創刊,ウェブ版無料,号ごと 電子バラ売りと定期購読. 11-13Hugo賞最優秀セミプロジン賞最終候補,14-15年受賞 ※CWやLSあたりがVG+などのロールモデル?

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133 北米は10年代前半から着実に変化? 10 米国出版協会発表10年1-8月電子書籍売上は前年 比164%.書籍販売に占める電子書籍の比率は7%↑. 文芸誌は紙と電子を共に販売. Locusが電子版,Podcast開始 11 10年度ネビュラ賞最終候補短篇6/7がオンライン 初出.ノヴェラ,ノヴェレット部門も電子版で読める (買える)ものが大半を占める 米Asimov誌,12年時点で約3割が電子購入で部数増 Hugh Howey”Wool”KDP発でヒット

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134 北米は10年代前半から着実に変化? 09年Andy Weir"The Martian"個人サイト,11年KDP 10年Hugo賞ゼミプロジン部門CWがウェブジン初, ファンジン部門StarShipSofaがpodcast初の受賞. →日本も各種賞でウェブ(発)部門を設けるべき SFのpodcast番組を増やすべき (音声メディアによるリーチ) 小説とともに解説や議論もウェブで提供 →これが「SFのファンにする」には重要

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135 北米は10年代前半から着実に変化? CW誌等は定期購読電子誌. だが、掲載作品はウェブで無料閲覧可能 ポッドキャスト制作も並行 (北米ウェブジンはこれがよくある形態?) →電子小説誌の不便さ, 読者の新規流入のなさをウェブや音声で補完 日本のプロジン,ウェブジンも導入してほしい

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136 北米は10年代前半から着実に変化? 12年Tor.com顧問編集者にWeird Tales編集長07-11 年Ann VanderMeerが就任,Hugo賞Fancast部門創設 13年Amazon.com Kindle World,ヴォネガットの 二次創作小説の電子書籍販売を可能に →紙雑誌は部数低減,賞の短篇部門にも紙発が減少 14年オンラインマガジンUncanny Magazine創刊,16- 20年Hugo賞最優秀セミプロジン賞受賞,16年ハオ・ジン ファン著、ケン・リュウ訳『折りたたみ北京』Hugo賞最優秀 中編小説賞受賞.同誌はウェブで掌編や記事を無料 公開,短篇含む雑誌全体は有料電書のみで読める

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137 北米は10年代前半から着実に変化? 17 TumblrでAlexandraRowland"Hopepunk"提 唱,19VOX,20WSJ,Merriam-Webster等紹介→Mary Robinette Kowal”The Calculating Stars” won the 2019 Hugo Award for Best Novel , the 2018 18年アリクス・E・ハーロウ「魔女の逃亡ガイ ド」18年作Hugo賞受賞,Apex Magazine初出 Apex誌は電書隔月発行+最新号2か月かけ無料 ウェブ公開,短編podcast毎月制作

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138 北米は10年代前半から着実に変化? このへんの整理・解説は詳しくは 橋本輝幸,鳴庭真人らの発信を参照 (本稿制作にあたり私も参照しました)

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139 日米の差は何故?

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140 日米の差の理由は不明だが推定すると ・定期購読文化の有無が 有料Webzineへの抵抗の強弱と関係? ・書店数の多寡? 面倒だから電書率高い? ・出版社のTechへの取り組みの違い? ・超大手と零細版元が二分化した中では オルタナティブな方法論の模索が必須? ・平均年齢の違い? ・国民的な気質? ・ウェブ小説とそのPFへの忌避/嫌悪の有無

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141 日米の差の理由は不明だが推定すると もろもろの違いの考察も重要だが 日本であまりやられていないが 有効そうなことは、とりあえず やってみたほうがいいのでは

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142 中国の場合

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143 中国の場合(黒=PFの話,青=SFの話) 98 台湾でBBS連載の蔡智恒『第一次的親密接触』 書籍化,大陸でも大ヒット。ウェブ小説書籍化時代 中国最初のオンラインSFファングループ登場 無料で良質なウェブジンが10s前半まで制作される 03 起点中文網、ウェブ小説に課金モデル導入. 成功→作家に専属契約金払って連載するように. 郝景芳『1984年に生まれて』登場の毎日1万字書く 最高収入ネット文学作家はたぶん起点出身・唐家三少 晉江原創網(晉江文學城)創設,女性向けで人気に. 顧適(グーシー)ら一部SF作家もデビュー以前に投稿.

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144 中国の場合 98 台湾でBBS連載の蔡智恒『第一次的親密接触』 書籍化,大陸でも大ヒット。ウェブ小説書籍化時代 →03 起点中文網、ウェブ小説に課金モデル導入. ウェブの方が紙より規制が少ないこともあり 有料ウェブ小説の試行,移行,隆盛が早期に発生 作家が無料自由連載で人気を得る →契約作家になり作品の有料販売可能へ という二階建てモデル(NAVER挑戦漫画等と同様)

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145 中国ウェブ小説はIPビジネス化 15『マスターオブスキル全職高手』(起点12-16)邦訳刊 19 Douyin番茄小説でウェブ小説参入.完全無料 でユーザー拡大→IPビジネスで収益化. MAU9000万 21 墨香銅臭『魔道祖師』(晋江15-16)邦訳刊. 中国ウェブ小説が日本で初めてヒットする →映像やウェブトゥーン化して各国に輸出 SFも外販&IPビジネス化への流れに乗る

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「中国の出版に関する市場調査2023年度更新版」2023年3月,日本貿易振興 機構(ジェトロ)デジタルマーケティング部上海事務所より引用

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147 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 00-10s ウェブで穿越Chuanyue小説が隆盛・定着 06 郭敬明「最小説」創刊.紙雑誌だがwebにもup 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 郝景芳作品なども掲載 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 storycom,ClarkesWorldと提携,中国SFの翻訳促進 16 ファンダム母体に法人「未来事務管理局」設立, 毎日更新「不存在日報」開始,若手短篇集出版

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148 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 storycom,ClarkesWorldと提携,中国SFの翻訳促進 16 ファンダム母体に法人「未来事務管理局」設立, →SFに企業参入,企業として働きかけアリ 日本はここが弱い.投資対象と見られてない 市場規模やSFのIPとしての期待値が違うが…

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149 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 ただPFでウケる穿越のようなジャンルもあるが, 中国でも有料ウェブ小説PFでジャンルSFが 爆売れしていたわけではなさそう. PFでは高頻度更新の大長編がウケる. SF界では知的満足と構成力が重視される

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150 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 とはいえBBSやブログであっても 「投稿したらSFファンが読む」場 がPFと別に存在してることは重要?

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151 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 また,日本ではPFでウケる,穿越的な 高頻度更新,大長編連載が可能な 娯楽SFウェブ小説のサブジャンルが 開拓不足とも言える

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152 韓国

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153 韓国:パソ通時代から大ヒット輩出 89 イ・ソンスがパソ通PC-SERVE(のちのChollian) にSF『アトランティス狂詩曲』連載、91年書籍化 92 既成文壇作家の卜鉅一(ポク・コイル)らの連 載作がパソ通発で生まれ、「ハイテル文学館」設立 デュナDjuna,パソ通にSF短篇発表開始 98年には3カ月間毎日原稿紙8枚書くプロに月100万 ウォン支払うモデルを採用。商業的には成功せず 93 ハイテル掲示版にて累計1000万部ヒットとなっ たイ・ウヒョクのSFホラー『退魔録』連載開始

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154 韓国:パソ通時代から大ヒット輩出 89 イ・ソンスがパソ通PC-SERVE(のちのChollian) にSF『アトランティス狂詩曲』連載、91年書籍化 デュナDjuna,パソ通にSF短篇発表開始 93 ハイテル掲示版にて累計1000万部ヒットとなっ たイ・ウヒョクのSFホラー『退魔録』連載開始 →エンタメSFもジャンルSFも投稿. 日本より書籍化早く,パソ通発ヒットの規模も大

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155 韓国:パソ通時代から大ヒット輩出 92 既成文壇作家の卜鉅一(ポク・コイル)らの連 載作がパソ通発で生まれ、「ハイテル文学館」設立 98年には3カ月間毎日原稿紙8枚書くプロに月100万 ウォン支払うモデルを採用。商業的には成功せず →これ自体は失敗したが 契約作家に一定の頻度と枚数に対して 支払うモデルは中国や韓国では一般化. 日本はプロ作家の契約ウェブ連載の蓄積, 試行錯誤,ノウハウ共有が少ない

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156 韓国:00sにウェブ小説映像化権ビジネス成立 97 ハイテルにイ・ヨンド『ドラゴンラージャ』 連載、大ヒットでファンタジーブーム起こる。 99 パソ通ナウヌリにキム・ホシク『猟奇的な彼女』連載 01~ 小説カフェでクィヨニ作品が大ヒット 03 ウェブ小説PF「JOARA」,06 MUNPIA設立(改称) 04 この頃ウェブジン鏡(ゴウル)始まる アマチュ アも自由に掲示版に小説掲載可,優秀短篇は執筆陣 に参加できた.既成文壇とは別にウェブ発SFが継続 05 科学ウェブジャーナルCROSSROAD設立,キム・ボヨン等掲載 00s? ジュブナイルSF叢書「アイディア会館」がpdfでDL可能に

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157 韓国:00sにウェブ小説映像化権ビジネス成立 97 ハイテルにイ・ヨンド『ドラゴンラージャ』 99 ナウヌリにキム・ホシク『猟奇的な彼女』連載 01~ 小説カフェでクィヨニ作品が大ヒット 03 ウェブ小説PF「JOARA」,06 MUNPIA設立(改称) ↑読者が作品を選ぶ,↓作家/編集が作家を選ぶ 04 鏡(ゴウル) 掲示版に誰でも小説投稿可 ウェブ人気→書籍化モデルでは ジャンルSFに適した作品が出づらい問題に 鏡らが取り組み,これが十数年後に結実?

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158 韓国:10年代に有料課金モデルが一般化 07和氣,08ブックキューブ電書ストア,JOARA有料化 …このころはあまり軌道に乗らず 10年 既存文壇作家もブログで小説連載しているこ とが日本の新聞記事になるも,その後webと疎遠に 13NAVERWeb小説,KakaoPage開設…Portalが参入 MUNPIA有料化 14 レジンがwebtoon,web小説部分有料化成功. Kakao「待てば無料」導入で売上2倍AU平均20倍 →中国同様,有料ウェブ小説が当たり前に

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159 韓国SF 10s半ばから外販に積極化 15~ ClarkesWorldにキム・ボヨン翻訳掲載 韓国文学翻訳院の助成金を利用して英訳 17 ゴウルが中国の未来事務管理局と提携し 「不存在日報」に韓国SF14編を掲載 (中国への韓国SFの本格的な初紹介)

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160 韓国SF 10s半ばから外販に積極化 15~ ClarkesWorldにキム・ボヨン翻訳掲載 17 韓国SF作家連帯(SFWUK)設立 ゴウルが中国の未来事務管理局と提携し 「不存在日報」に韓国SF14編を掲載 →海外進出にあたり無料ウェブ媒体を選択? まずリーチして認知とる→後で収益化 というファネルモデルでは 日本は有力な無料SF媒体なくSFMや文藝に?

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161 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 好きになってもらった あとで有料販売 誘導 ・ 投資 理想 日本では無料で間口広くアクセス, 商用利用できる非「小説PF」系の 有力ウェブ小説サービスが不足

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162 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 好きになってもらった あとで有料販売 誘導 ・ 投資 理想 日本では無料で間口広くアクセス, 商用利用できる非「小説PF」系の 有力ウェブ小説サービスが不足 がゆえに、日本から外販する際も どこにどうアプローチすべきかが, 紙ベースの発想になっていないか 顧みてもいいかもしれない

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163 韓国:10年代半ばから作品,BMの輸出 17 キム・イファン『絶望の玉』双葉社でマンガ化 SFというよりデスゲームだが 18 ピッコマ「待てば無料」でノベル本格配信開始 19 チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』邦訳刊 ※非ウェブ発 20 ピッコマ、韓国ウェブ小説の翻訳配信開始 19年SFアワード中短篇部門大賞シム・ノウル 「世界を終わらせるのに必要なジャンプの回数」 RIDIでwebtoon化 22 韓国の新興ウェブ小説PFノベルピア日本進出

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164 韓国:10年代半ばから作品,BMの輸出 17 キム・イファン『絶望の玉』双葉社でマンガ化 18 ピッコマ「待てば無料」でノベル本格配信開始 20 ピッコマ、韓国ウェブ小説の翻訳配信開始 22 韓国の新興ウェブ小説PFノベルピア日本進出 →日本の小説事業者はBM輸出して 海外で横展開するとか, 現地で他メディアに二次展開する という発想が希薄

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165 韓国:10年代半ばから作品,BMの輸出 17 キム・イファン『絶望の玉』双葉社でマンガ化 SFというよりデスゲームだが 19年SFアワード中短篇部門大賞シム・ノウル 「世界を終わらせるのに必要なジャンプの回数」 RIDIでwebtoon化 → 日本もSFのマンガ化を組織化,積極化すべき. 以前より増えたがまだまだ少ない. マンガは小説の10倍市場がある.

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166 韓国:版元発PFが版元的な方法論確立 19 チョン・ソンラン、小説PF「BritG」で19年3月 から『崩れた橋』連載、SF部門1位→9月書籍化 BritGは17年『ドラゴンラージャ』書籍化の会社が 設立。編集部で毎週推薦作を選定しメインに露出、 推薦作から4半期ごと出版契約。他のウェブ小説PF より利用者数は少ないがSFアワード大賞受賞。 SF作家シム・ノウル,チョン・ソンラン,パク・ハルらが輩出・活動

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167 韓国:版元発PFが版元的な方法論確立 19 チョン・ソンラン、小説PF「BritG」で19年3月 から『崩れた橋』連載、SF部門1位→9月書籍化 BritGは編集部で毎週推薦作を選定しメインに露出、 推薦作から4半期ごと出版契約 →「ウェブで人気→書籍化」でない ジャンル小説に適した方法論・場として ベンチマークすべきもののひとつ ただ韓国は事業社間の競争も流行の変遷も激しく, 持続可能なBMなのか注視は必要.

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168 韓国:SF作家がK-POPのIP展開に起用 22 キム・チョヨプ,LE SSERAFIM“ANTIFRAGILE” 特典小冊子にHYBEオリジナルストーリーの「プロ ローグ」に参加。「本編」はLINEマンガで読める カカオ代表「今後両社がシナジーを出せる分野は ウェブトゥーンとウェブ小説」 NAVERはHYBEと手を握り、BTSなどを主人公にした ウェブトゥーンを10ヵ国言語で同時公開。カカオも SMの主要歌手で同様の試みをするとみられる 「SM+カカオ、どんなシナジー効果を出すのか…···ウェブトゥーン、海外進出、協業に力を入れる見通し」,「ハンギョレ」23.4. 2

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169 韓国:SF作家がK-POPのIP展開に起用 22 キム・チョヨプ,LE SSERAFIM“ANTIFRAGILE” 特典小冊子にHYBEオリジナルストーリーの「プロ ローグ」に参加。 日本もLDH×深見真で追随しているが XGとSF作家が組む等々してほしい (雑な提言)

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170 韓国 「ウェブトゥーン·ウェブ小説トレンドレポート2023」 ・ウェブ小説の85.0%が有料利用経験アリ。 ウェブトゥーン読者の有料決済経験率は67.6%。 ・ウェブ小説読者の月平均支出額は1万7370ウォン、 ウェブトゥーン読者は1万2150ウォン。 ・最近1ヶ月以内の利用経験はウェブ小説21.4%、 ウェブトゥーン51.6% 聯合ニュース「ウェブトゥーンよりウェブ小説に 有料決済『チンパン』が多い」23.4.10

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171 北米,中国,韓国と比較してわかること 日本の「当たり前」は 他の国でも 「当たり前」ではない. 日本でも試すべき施策が色々

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172 本日のテーマ ウェブ小説とSF 「作品」ではなく「しくみ」の話 1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸) 2.マンガと小説の比較(横軸) 3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸) →今後SFがウェブで取り組むべきこと を考える

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173 課題の整理 ※あくまで個人的に感じている課題 目的によって課題もふさわしい施策も変わる

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174 16年~のSF×ウェブは悪くない成果だが… 1.ウェブで話題の作品を書籍化,作家を起用 2.ウェブで話題を作って特集,書籍化 3.新人発掘・育成 →偶然頼みや目的と手段が不整合の事例が散見 ウェブ人気→書籍化はSF界の評価軸と不一致 4.紙出版が難しいものをウェブ/電子で刊行 →リーチが課題 そもそもこれらだけが今のSFの課題なのか? 既にいるSFファン向けに施策が偏ってない?

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175 Goal: ①SFコミュニティの価値観を堅持 したまま市場規模を維持・拡大 とくに新規のSFファンを増やす ②その手段としてウェブに雑誌の 機能を置き換え、進歩させる 作家,作品を発掘,育成,宣伝,リテン ションし読者と関係性を深める

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176 38%が買うSFを作る為の露出も大事だが ジャンルの営為継続には 本を読む人の中に「SFファン」を 維持・増加するしくみが不可欠 47% 38% 9% 3% 3% 0% 文化庁「国語に関する世論調査 平成30年度 読まない 1,2冊 3,4冊 5,6冊 7冊以上

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177 話題作でSFに興味 を持つ 新規が増 新作,新人を読んで SNS等で 話題に にわかからハマって SFファンになる 誘導 理想

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178 目立つ場所に 露出して 認知獲得 Webも使って新作, 新人育成 好きになってもらった あとで有料販売 導線 ・ 投資 事業者 目線

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179 現状:ゴールとのギャップ ①SFファンの規模を維持・拡大 ファンの新規流入がヒット作頼み, ジャンル愛向上の体系的な施策がない ②雑誌からウェブへ機能の置換 CW,不存在日報,鏡,BritGの日本版的な 有力SFウェブ媒体がまだ不足 育成,宣伝,リテンションも要検討

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180 「そこになければないですね」

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181 スマホ時代のコンテンツは 「そこになければないですね」 ウェブになければ「ない」と同じ ①作品や情報をネットに置き、 ②発見されるようにし、 ③読者の関心を維持し、 ④ジャンル愛を育てる必要あり

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182 すでにわかっていること① PFを使わず小説をウェブに出す場合、 ・更新頻度が低いので読者が来ない ・コメント機能なく読者と距離が遠い ・拡散/バズ誘発のしかけがない ・ポイントやランキングがない ・タグがなく誰向けか不明 ・ジャンルの価値規範の提示/共有がない といったアンチパターンを回避すべき

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183 すでにわかっていること② もし投稿PFを使うなら ランキング×投稿PFと ジャンル固有の評価軸・制度の 相性の悪さを乗り越える必要あり 「人気」「売れ」とSF界の「評価」は別

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184 ウェブを使うにあたり考えるべきこと どんな読者層にどんな作品が評価されるかは ・評価者の属性,資格;読者なら誰でも/作家 ・評価指標;アクセス/売上/投票 ・評価軸;感情の揺れ動き/知的満足 ・連載方法;無料ウェブPF/有料の紙雑誌 ・販売方法;無料/有料/部分有料、単話/書籍 等々によって変わるし、違う SFに適した付き合い方を設計,模索すべき

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185 すでにわかっていること③ 価値観共有者に顧客を限定して ・入口有料にすると新規流入が生 じない (有料会員制サービスの問題) ・電子書籍(EPUBやPDF)の小説誌も 微妙

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186 これらを踏まえての打ち手案

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187 これらを踏まえての打ち手案 …の前に、そもそも SF固有の価値はどう共有されて きたか

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188 SFファンはいかに形成されるか SFの価値はどう共有されてきたか 作家…日本SF作家クラブ,各種賞 読者…SF雑誌,SFハンドブック他, イベント(SF大会等),SF研 →対読者が他の文芸ジャンルより 優れている

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189 SFマガジンでよく組まれる特集 ・周年,追悼,サブジャンル,年間ベ スト合わせ ・誌面に年表,ガイド,評伝 →読者に歴史や評価軸を刷り込む こんな小説誌は日本でほかにない

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190 SFのリアルイベント 日本SF大会,京フェス,SFセミナー, はるこん 年何回も複数日/宿泊ありの リアルイベントを開催 作家と読者が直接交流できる →こういうジャンルもほかにない

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191 つまりSFジャンルは いったん中に入ると 非常に強力な ・ジャンル規範の刷り込み機能 ・ファン同士の交流可能な場 が存在 → がゆえに離脱率は比較的低い?

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192 逆に言えば… 1.ジャンルの規範を媒体が示す 2.価値共有する作家とファンが集う場 がないと読者コミュニティ維持は困難 1がないと新規参入もしづらい (何をどう読めばいいかが不明) 2はジャンル愛と当事者意識を増幅

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193 逆に言えば… 1.ジャンルの規範を媒体が示す 2.価値共有する作家とファンが集う場 がないと読者コミュニティ維持は困難 ほかの小説ジャンルは これら機能の構築自体も課題 SFは「入口・裾野から沼落ちまで」に 注力すればよい

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194 SF愛が煮詰まる SF者が新作,新人 を応援 ライトユーザーが 話題作,古典SFに 出会う 理想

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195 SF愛が煮詰まる SF者が新作,新人 を応援 ライトユーザーが 話題作,古典SFに 出会う 現状 出会い→規範獲得が弱い いきなり SFM買わないし SF大会来ない

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196 (やっと)打ち手案 新規ファンを増やすには ウェブで無料で触れられる ①作品自体 ②SF固有の規範を伝える記事,資料 の両方を増やし,誘導する必要アリ →新作読んでもらえばOK,ではない

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197 (やっと)打ち手案 SFファンが増える =古典,名作,各時代の象徴的作品 の読書体験と それらの位置づけ・意味づけを 共有する読者の増加 →読み方,評価軸の伝達も必須

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198 「SF読もうかな」と思ったときに 検索でヒットする投稿PF作品 (か青空文庫の海野十三くらい) しかタダでアクセスできない のは極端&機会損失. 仮にSF系サイトに新作があっても 「読み方」がある程度示されないと SF初心者には取っかかりがない

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199 SF沼への入口をウェブに作る たとえば… ①日本SFの代表的短篇をウェブに ②関連する解説,年表, ブックガイドと共に無料で置く ③海外SFは②だけでもやる ※これ自体でマネタイズは目指さない

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200 SF沼への入口をウェブに作る SFWJ,早川,創元が蓄積した記事を ウェブに移し,体系的に知識, ジャンル規範が学べる環境を作る ※膨大な資産を元に毎日更新する ※今も発信はしているが非体系的. 未整理で検索性・網羅性に難あり

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201 SF関係サイトのSEOも重大な課題 現状「SF」「SF 小説」で検索すると 「おすすめSF○冊」の記事が上位に. SFWJ,早川,創元,SF大会は5p以降に登場. これでは発信しても適切に届かないし, SFファンが望む形の新規流入は厳しい? オーガニックな上位表示が難なら 検索連動広告を買った方がいい気が…

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202 SFサイトは初心者の方を向いていない 既にSFファンである人向けになってる. それはそれで重要だが,もう一方では SFに興味を持った初心者がする行動, 欲している情報/提供方法/伝え方を 考えてSF系サイトは構築,発信すべき. 現状では検索で辿り着くのは厳しそう..

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203 SFファン増には小中学生市場への参入も要検討 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 1,700 1,800 1,900 2,000 2,100 2,200 600 650 700 750 800 850 900 950 1000 1050 1100 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 児童書販売額と14歳以下人口 販売額(億円) 14歳以下人口(万人)

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204 00s以降,小中学生の書籍の読書冊数は倍増 6.8 6.3 7.1 5.8 6.5 6.4 6.7 5.4 6.4 6.3 6.8 7.6 6.1 6.2 7.5 8 7.7 7.7 9.7 9.4 11.4 8.6 10 9.9 10.5 10.1 11.4 11.2 11.4 11.1 9.8 11.3 12.7 13.2 1.9 2.1 2.1 1.9 2.1 1.7 1.7 1.8 1.9 1.6 1.8 1.7 2.1 2.1 2.5 2.8 3.3 2.9 2.8 3.4 3.9 3.7 4.2 3.7 4.2 4.1 3.9 4 4.2 4.5 4.3 4.7 5.3 4.7 1.3 1.3 1.5 1.4 1.3 1.3 1.3 1.2 1.1 1 1 1.3 1.3 1.1 1.5 1.3 1.8 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.9 1.8 1.6 1.7 1.6 1.5 1.4 1.5 1.3 1.4 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.6 2.2 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.3 1.4 1.4 1.5 1.7 1.5 1.4 1.6 1.6 1.8 1.6 1.3 1.2 1.2 1.1 1.5 0 2 4 6 8 10 12 14 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 2022 書籍の月間平均読書冊数 学校読書調査、読書世論調査をもとに作成 小学生 中学生 高校生 日本人全体

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205 00s以降,小中学生の書籍の読書冊数は倍増 6.8 6.3 7.1 5.8 6.5 6.4 6.7 5.4 6.4 6.3 6.8 7.6 6.1 6.2 7.5 8 7.7 7.7 9.7 9.4 11.4 8.6 10 9.9 10.5 10.1 11.4 11.2 11.4 11.1 9.8 11.3 12.7 13.2 1.9 2.1 2.1 1.9 2.1 1.7 1.7 1.8 1.9 1.6 1.8 1.7 2.1 2.1 2.5 2.8 3.3 2.9 2.8 3.4 3.9 3.7 4.2 3.7 4.2 4.1 3.9 4 4.2 4.5 4.3 4.7 5.3 4.7 1.3 1.3 1.5 1.4 1.3 1.3 1.3 1.2 1.1 1 1 1.3 1.3 1.1 1.5 1.3 1.8 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.9 1.8 1.6 1.7 1.6 1.5 1.4 1.5 1.3 1.4 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.6 2.2 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.3 1.4 1.4 1.5 1.7 1.5 1.4 1.6 1.6 1.8 1.6 1.3 1.2 1.2 1.1 1.5 0 2 4 6 8 10 12 14 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 2022 書籍の月間平均読書冊数 学校読書調査、読書世論調査をもとに作成 小学生 中学生 高校生 日本人全体 詳しくは拙著 『「若者の読書離れ」というウソ』 『いま、子どもの本が売れる理由』 参照(ド宣伝)

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206 SF沼への入口をウェブに作る ファンダムが中心になり, 分担して,初心者が 体系的に知識,ジャンル規範が 学べる環境をウェブに作る ※既にあると言えばありますが どちらかというと同好の士向けなので…

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207 投稿PFの使い方・組み方 ①各種SFアワードにウェブ発部門を設ける 新人,新作発掘やウェブでの活動を促進 投稿PF上のランキングではSF的 価値に基づく評価は期待できない SF的に外から評価するしかない ここは北米の模倣で十分かと

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208 投稿PFの使い方・組み方 ②SF名作短篇 二次創作コンテスト 続篇,長編化,スピンオフ等を募集 (PF内でカノンに触れる機会を増) 選考の投票権を星雲賞,日本SF大賞 を参考に設計 賞の発表はSFイベントで実施

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209 投稿PFの使い方・組み方 作家が作家を選ぶ(既存新人賞) でも 読者が作品を選ぶ(小説PF) でもない、 ジャンルのファンが作品を選ぶ というしくみは試す価値アリでは

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210 投稿PFの使い方・組み方 作家が作家を選ぶ(既存新人賞)でも 読者が作品を選ぶ(小説PF) でもない、 ジャンルのファンが作品を選ぶ というしくみは試す価値アリでは (VG+等でちょっとやっているが) ※具体的なアイデアは煮詰めていない

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211 ほかにも考えるべきことは多いが.. 暫定まとめ

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212 まとめ:「なろう使え」では解決しない SFがnet小説に積極的:~90sと16年~ 小規模な好事家の世界が成立するため その間にランキング×投稿PFが隆盛 →SF固有の価値評価とは相性悪い. が,紙雑誌と同様の方法論ではウェブ, 電子はうまくいかない 死屍累々 が,「紙でできない」を追求も悪手

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213 まとめ:初心者を沼らせる経路を SFはただ「新作を読んでもらえばOK」 「売れればOK」なジャンルではない そもそも売れる事を最優先にしてない →価値規範の共有者を増やす事が課題 中に入ればSFMもファンダムも強固 入口から沼落ちまでの道づくりが重要 →ここにウェブを活用すべき

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214 まとめ:ウェブにないのは世にないと同じ ・新作の宣伝以上にSFに関する体系的 な解説,歴史,ガイドがウェブに必要 ・雑誌衰退で定期的な書店への導線喪失 リテンション不足が書籍販売にも影響 →ウェブ小説PFとマンガはこれを克服 →SFもウェブで小説,情報に日々触れる 回路,関心喚起のしくみ,タッチポイント必要

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215 まとめ:賞と集合知で才能を掘る ウェブから新しい才能,作品を 発掘,評価していくことも課題だが, PFのランキング任せでは不可能 →ウェブ発作品までSF者の視野に入る ようなしくみ・制度づくりが重要 諸々にファンダムとウェブと賞を活用

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216 まとめ ・ウェブ小説と言うと 「中身」の話になりがち 「しくみ」を考えてSFも取り組むべき ・既存の小説PFのしくみではジャンル 小説の営みに不整合.安易な策では失敗 ・何のためにどんな狙いでウェブ使う かは歴史と他国との比較から考える

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おわり ぜひslideshareで資料を 「読んで」「考えて」いただければ