Slide 1

Slide 1 text

国際仲裁総合研究所 第5回 裁判と仲裁の比較

Slide 2

Slide 2 text

全体像 この回でまとめている裁判と仲裁の相違点は、次の表のとおりです。 裁判 仲裁 期間 各国の裁判制度ごとに様々 上訴による紛争解決の長期化 手続には一定の期間がかかるが、 上訴はなく、紛争を一回的に解決可能 費用 申立手数料等は必要であるが、国 申立手数料等に加えて、仲裁機関の管 家が運営する制度であるため、当 理費用、仲裁人報酬・費用、審問場所 事者負担の費用項目は少ない。 の費用などの負担が生じる 中立性 裁判官の腐敗・汚職が問題となる 制度上、中立性・公平性が担保された 国では、中立性・公平性を期待で 仲裁人を当事者が指名することが可能 きない 秘密性 原則、公開 原則、非公開 強制力 承認・執行が難しい場合がある ニューヨーク条約を締結している国に おいては、承認・執行が裁判より容易 2

Slide 3

Slide 3 text

1.期間 1. 裁判 裁判手続にかかる期間は各国の裁判制度ごとに異なります。日本の裁判所 の民事訴訟の第一審で対席判決で終了した事件の平均審理期間(平成30年) は、13.2か月とされています(参照、裁判所データブック2019) ただし、裁判所の判決には、上訴が可能であり、紛争の解決までに複数の 審級を重ねなければならず、解決に至るまで長期間かかる場合があります。 2. 仲裁 仲裁手続でも、紛争解決に相当の期間を要する問題が指摘されています。 日本商事仲裁協会では、2013年から2017年に終結した事案の平均手続所要期 間が18.8か月とされています(参照、JCAA 西村俊之氏「国際仲裁制度の基 礎知識」(2018年) 他方、仲裁手続には上訴はありませんので、一回的に事案を解決すること ができます。この上訴がないことを考えると、仲裁手続の方が裁判手続より も紛争を迅速に解決できる可能性があります。なお、不利な仲裁判断が出て も上訴ができない点は、手続選択の上で慎重に考慮する必要があります。 3

Slide 4

Slide 4 text

2.費用 1. 裁判 裁判所で訴訟を提起する場合、当事者は、申立手数料等(日本の民事訴訟 の場合、民事訴訟費用等に関する法律に従います)を支払う必要はあります が、裁判所は国家が運営する紛争解決機関であるため、裁判官の報酬や事件 管理費用、法廷の利用料等を、当事者が負担する必要はありません。 2. 仲裁 仲裁に要する費用としては、一般に、次の項目があります。 ① 申立料金 ② 仲裁機関の管理費用 ③ 仲裁人報酬・費用 ④ 仲裁手続に要する費用(審問場所の費用等) 仲裁手続は当事者の合意により選択した仲裁機関が運営することから②、 ③、④を当事者が負担するところに、仲裁手続の特徴があります ※なお、①から③の費用の額・計算方法は、各仲裁機関の仲裁規則や料金体系をご 確認ください。 4

Slide 5

Slide 5 text

3.中立性 1. 裁判 わが国の裁判官は、制度上独立を保障されており、一般に、中立かつ公平 といわれています。しかし、裁判官の腐敗・汚職が問題となる国もあり、こ のような国では、裁判の中立性・公平性を期待することができません。 なお、裁判手続においては、当事者は裁判官の選定に関与することはでき ません。 2. 仲裁 仲裁手続において仲裁人は、中立性・公平性であることを誓約した上でこ れに就任し、疑義を生じさせる事由が生じた場合はこれを開示する義務を負 います。このように、仲裁手続では、仲裁人の中立性・公平性を担保する制 度的な仕組みが整えられています。 また、仲裁では、当事者が合意や指名によって、仲裁人を自ら選定するこ とができます。例えば、3名の仲裁人により構成される仲裁パネルの場合は、 当事者が1名ずつ仲裁人を指名することができます(第三仲裁人については、 例えば、両当事者の指名仲裁人が合意により選定します)。 5

Slide 6

Slide 6 text

4.秘密性 1. 裁判 裁判の手続及び判決は公開で行われるのが原則です。また、わが国の裁判 手続では、民事裁判の記録は原則として誰でも閲覧することができます(民 事訴訟法91条1項)。 そのため、紛争を訴訟手続を通じて解決する場合、当事者にとって秘密に したい情報が第三者に明らかになる可能性があります。 2. 仲裁 これに対し、仲裁には、公開原則はあてはまりませんので、当事者の合意 又は仲裁機関の規則に基づき、手続及び仲裁判断並びに記録を非公開とする ことができます。また、当事者及びその代理人、仲裁機関の関係者は、当事 者の合意又は仲裁機関の規則に基づき、仲裁事案を通じて入手した秘密につ いての秘密保持義務を負います。 6

Slide 7

Slide 7 text

5.強制力 1. 裁判 裁判手続の判決は、これに基づき、強制執行を行うことができる効力を有 しています(例えば、わが国の裁判所の確定判決は、債務名義となりこれに 基づき強制執行することができます)。しかし、当該判決は、外国では承 認・執行できないこともあり、例えば、相手方の財産が外国にある場合など、 当該外国での判決の承認・執行ができない場合に、承認・執行が不可能又は 難しいことが問題になります。 2. 仲裁 ある国を仲裁地とする仲裁判断は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する 条約(通称「ニューヨーク条約)を締結している外国においても、当該外国 の裁判所を通じて、強制執行することができます。この理由から、仲裁手続 の方が裁判手続よりも、承認・執行が容易だといえます。 なお、ニューヨーク条約の締結国は、本資料作成日現在、160か国を超え ています。 7