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ドメイン知識を活用した、薬局における患者の来局予測 2024.02.24 株式会社カケハシ 機械学習エンジニア 藤本佳宏

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© KAKEHASHI Inc. 1. 自己紹介 2. 株式会社カケハシの紹介 3. 薬局における需要予測の特徴 4. まとめ 2

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© KAKEHASHI Inc. 自己紹介 藤本 佳宏 株式会社カケハシ AI在庫管理 MLエンジニア ● 2005 - 2021 日本コントロールシステム株式会社 ○ 半導体マスク描画の効率化に関する研究 ○ Web業務アプリケーションのフロントエンド、バックエンド開発 ○ あいまい検索システムの開発 ○ 工場における検査プロセスへのMLモデル導入、自動化 など ● 2021年より現職 経歴 専門 ● MLが絡むアプリケーション開発 ● 製品に搭載されているモデル運用(精度改善、パフォーマンス改善) 趣味 ● ピアノ、酒 3

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株式会社 カケハシの紹介 4

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© KAKEHASHI Inc. https://handbook.kakehashi.life/mission 日本の医療体験を、しなやかに。 https://handbook.kakehashi.life/values バリュー ミッション 創業7年で正社員300人超 患者だけでなく医療従事者を支える サステナブルな仕組みを実現する 5

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© KAKEHASHI Inc. 医薬品発注
 管理最適化
 https://handbook.kakehashi.life/service 6 本日は Musubi AI在庫の話をします

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© KAKEHASHI Inc. https://handbook.kakehashi.life/vision カケハシの目指す未来 7

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薬局における需要予測の特徴 8

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© KAKEHASHI Inc. 薬局の需要予測では患者毎の来局予測が必要 急性疾患に関する処方 25% 75% 慢性疾患に関する処方 - 風邪やインフルエ ンザのような急な 来局により発生す る処方 - 生活習慣病のような疾 患により発生する処方 患者の来局予測ができない と需要予測ができない 処方箋の割合 薬局で管理する医薬品の中には患者毎の来局予測を行う必要がある 9

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© KAKEHASHI Inc. 来局予測タイミングは様々な理由でずれる 毎日服用するのが面倒になってきた 1回2錠と書いてあるけど 1錠でも良いと 主治医も言っていたし 1回1錠で服用しよう 来週忙しいので薬飲み切る前に 早めに薬をもらおう 新しく通う病院が増えたので 薬は一緒にもらうようにしよう 薬が切れたけど調子も良いし 行くのはもう少し後にしよう 患者の習慣や状況の問題で、ルールベースでの予測は難しい (再来患者の55%は処方日数通りに来局しない) MLで予測を行うアプローチを取った 10

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© KAKEHASHI Inc. 処方箋の情報を使った来局予測 掛橋 太郎 xxxx呼吸器内科 カケハシ タロウ サンプル 各医薬品の処方日数の最大値が 次来局の目安になる事が多いので 最大処方日数と実際の来局の差分が 特徴量として使える 11

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© KAKEHASHI Inc. 良くなかった顧客体験 処方日数通りに来局する患者の予測がたった1日2日ずれるだけでも 違和感を持たれていた この患者さん処方日数通りに来局しているのに 何で処方日数の翌日に予測が出るんですか? MLによる予測でこうなっています。。。 薬剤師 カスタマー サクセス 薬剤師 カスタマーサクセスが背景を説明できないと フィードバックも得られなくなる… 12

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© KAKEHASHI Inc. 顧客体験を改善するために 処方日数通りに来る患者かどうかの判定を入れたい 処方日数通りに 来局する患者 処方日数通りに 来局しない患者 薬を飲み切るタイミングで いつも来局しています 薬を飲まない事もあるので 1週間遅れで来局する事が 多いです 処方日数で予測したい MLで予測したい 13

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© KAKEHASHI Inc. 処方日数通りに来るかどうかをどう判断するか 問い合わせにも対応できるよう「解釈性の高い決定木」※を 作成するというアプローチを取ることにした ※ 以後Interpretable Decision Treeと表現します 判定方法 メリット デメリット ルールベース 判定した背景について解釈ができる 来局間隔は習慣や状況の変化で変 わる為、正確に判定できるルールを 作るのが難しい LightGBM 判定条件を自動で作ってくれる 解釈性が低い 決定木 判定条件を自動で作ってくれる できるツリーによっては解釈しにくい ものも出来てしまう 14

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© KAKEHASHI Inc. 解決すべき課題1 - 葉の多い決定木 葉の数が多い木は分岐も多くなり最終的な判断に至る解釈が難しくなる 分岐が多すぎてわかりにくい… カスタマー サクセス 15

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© KAKEHASHI Inc. 解決すべき課題2 - 同じクラスに分類されるノード 同じクラスに分類されるノードは分類する上では意味がない 処方日数の分岐は何であるのだろう…? カスタマー サクセス ML ML 処方日数 >= 32 Yes No 16

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© KAKEHASHI Inc. 葉が多い決定木の解消 - ランダム試行による枝刈り ● 指定した葉の数になるまで枝切りをランダム試行で行い、スコアの良い決定 木を作成する ● スコアの算出方法はf1_scoreを利用 ● スコアが同じだった場合は葉の数が少ない方を採用する 枝切りを行う処理 枝切りを行った箇所 全試行の中で最も良い精度の Treeを採用する … 1回目 2回目 n回目 17

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© KAKEHASHI Inc. 同じクラスに分類されるノードの解消 AとBに分類する部分木の評価を行う処理 左右の葉の予測値が同じクラスに 分類されるノードを枝刈りして 意味のないノードを減らす。 A B A A 18

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© KAKEHASHI Inc. 目的変数 説明変数 変数名 内容 これまでの処方箋数 今までに何回来局していたか 処方日数 前回来局時に処方された医薬品の中で最大の処方日数 平均来局間隔 今までの来局間隔の平均値 来局間隔標準偏差 今までの来局間隔の標準偏差 処方日数に対するブレの平均 前回来局からの処方日数と実際の来局日の絶対誤差の平均値 処方日数に対する遅れの平均 前回来局からの処方日数と実際の来局日との誤差の平均値 処方日数予測とML予測のどちらがlossが小さいか 決定木を解釈できるよう処方日数に対するブレや来局間隔等、 比較的シンプルな特徴量を採用した 19

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© KAKEHASHI Inc. 実際に作った決定木の可視化例 ● 葉が16以下になるように作成している(今回作成された木は9になっている) ● 同じクラスに分類されるノードは作成されていない 20

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© KAKEHASHI Inc. 処方日数の方が良いと判定されたケース 処方日数通りに来局する患者については 処方日数に基づいて予測するようになった 期待通りに来局予測が出るようになった! 薬剤師 処方日数通りに 来局する患者 21

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© KAKEHASHI Inc. ML予測の方が良いと判定されたケース MLを予測するまでの過程を説明できるようになったため、 フィードバックを得られる機会も増えた この患者さん処方日数通りに予測してほしいけど 何で処方日数の翌日に予測が出るんですか? 処方日数より遅れる傾向があるので MLで予測しています なるほど!ただ、ここ2,3回は処方日数通りに 来るようになったので処方日数で予測してほしいです 薬剤師 カスタマー サクセス 薬剤師 少し前まで 処方日数通りに 来局しなかった患者 最近薬をちゃんと服用 するようにしました 22

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© KAKEHASHI Inc. まとめ ● ドメイン知識が活用できるシーンでは、シンプルにドメイン側の情報を使う 事で解釈性が上がる ● 解釈性が上がると顧客からの納得感やフィードバックが得られやすくなる ● Interpretable Decision Treeのような解釈性の高いモデルを使うとMLの恩恵 を得つつ解釈性を高く持つことができる 23

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© KAKEHASHI Inc. 24 ドメイン知識をフル活用すると良い顧客体験 が提供できるのでとても充実感がある! カケハシでは全社員中9%も薬剤師がいて、顧 客体験を第一に考えたプロダクト開発をして いるので、ご興味あればぜひお声がけを!

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