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稼働7年目のリアルタイム コメントシステム改善に向き合う、 地道なSREアプローチ REALITY株式会社 エンジニア 小田 大輔

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小田 大輔 / Daisuke Oda REALITY株式会社 エンジニア 2 ● 主なお仕事 ○ 開発生産性改善 ○ インフラ費用削減・維持 ○ パフォーマンス改善

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目次・アジェンダ ● REALITYのご紹介 ● リアクティブな対応による功罪 ● コメントシステム改善の全体象 ● 改善事例のご紹介 ● 得られた教訓 3

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REALITYについて 4

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● スマホひとつでアバターライブ配信などを楽しめるアプリ ● 12言語対応で63の地域で配信中 5 REALITYのご紹介

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7 売上高 65億円 営利 13億円

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REALITYの 配信コメントシステム 8

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9 ←視聴者のコメント

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コメントシステムについて 10 ● システム構成 ○ GKEで提供 ○ WebSocketでのリアルタイム投稿・表示 ● コメントで投稿されるデータ ○ ユーザのテキスト入力 ○ システムコメント群 ■ ギフティング・フォロー・ミッション達成など ● その他の機能 ○ 裏で同時接続数などの配信属性を記録している システムコメント

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今までのコメントシステム への向き合い方 11

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コメントシステムはリアクティブに問題改善していた 12

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リアクティブな対応により起きていた問題 ● 目指すべき方向を見失いがちで、負債も溜まってきた ○ こういう部分から間接的に経済合理性も損なわれる ● 事前対処の練度が下がる ● 改善の余地がある場合でも、優先度が上がりづらい / 体系的 にどう改善したら良いか把握しづらい ○ コアなシステムなのに 13

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REALITYが10xする前に 体系的に改善する機構にしたい 14

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各分野で目標値を決め、制御工学的に健全性を保つ 例えば ● 障害判定のラインを決める ● トラフィックあたりの目安 料金 / スペック値を決める ● 「テストカバレッジを上げる」のような指針を決める 15

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● これによって目指すべき方向が明らかになり、システ ムの健全性がわかりやすく ● 心理的にも安心感が生まれる ● 体系的にシステムに向き合えることで価値提供がしや すくなるはず 17

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18 (コメントシステムのビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 テストを 書きやすい環境 BlueGreenデプロイ導入 可用性指標 の策定と計測 パフォーマ ンス改善

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取り組み 一挙ご紹介 19

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20 (ビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 テストを 書きやすい環境 可用性指標 の策定と計測 パフォーマ ンス改善 BlueGreenデプロイ導入

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21 コメントシステムのアーキテクチャ 全Podが全配信の コメントを受信 Node.js

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Redis Pub/Subアーキテクチャのボトルネックについて ● 全ユーザのコメントが全Podを経由するようになっていた ○ 視聴者が誰もいない配信でも、全Podがその配信のコメントを Subscribeする ● それにより負荷逼迫。残念ながらややユーザ影響が出ている ● 接続中の最低限のPodのみ経由するようにしたい 22

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Redis Pub/Subアーキテクチャ改善方針 ● ユーザの接続実態があるPodだけ当該配信のRedis Channel にSubscribeするように変更 ● 注意したこと ○ Redisのコマンド計算量の変化を細かく見積もった ■ キャパシティプランニングの意味で 23

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改善後のアーキテクチャ 25 Node.js

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ついでに負荷分散の強化 ● 一定以上のCPU利用率になったらk8s readiness probeを失 敗させて均等に負荷分散するように ○ WebSocketで長時間接続し続ける特性上、このような機 構に ○ 他のWebSocket系サーバで実装している仕組みを輸入 26

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パフォーマンス改善幅 27 PodのCPU 66%DOWN & メモリ90% Down イベントループラグ安定 Pub/Sub用のRedisのCPU負荷半減 さらにPod数も改善前の 3分の1で済むように

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また、Redis Pub/Subも水平分割することで 理論上は無限水平スケールが可能に 28

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29 (ビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 テストを 書きやすい環境 パフォーマ ンス改善 可用性指標 の策定と計測 ※SREプラクティスでいうSLAや エラーバジェットの策定に近い

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可用性指標の策定と計測 ● パフォーマンスの健全性を管理するため策定 ○ デプロイ頻度も上がってきたので事故率を可視化したい という意図がある ● 以下の項目を可用性指標としました ○ 1. WebSocket接続直後のコメントデータレスポンスレイテンシ ○ 2. コメント投稿から他ユーザがSubscribeするまでのレイテンシ 30

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可用性指標の計測方針 ● OpenTelemetryでレイテンシ計測していく ○ メトリクスはGoogle Cloud Monitoringに保存 ● まず当時、Node.jsのバージョンを12から18に上げた。 ○ OpenTelemetry JavaScript SDKの安定版が当該Node.jsバージョンに 対応していなかったので。 31

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可用性指標の計測の実装 ● 接続時の初期データレスポンスレイテンシの計測方法 ○ WebSocket handshake完了時のtimestampを記録 ○ レスポンス直前のtimestampとの差分をレイテンシとして記録 ● コメント投稿レイテンシの計測方法 ○ コメント投稿時のpublishデータにtimestampを記録 ○ Redis subscribeでデータを受け取った時点との差分をレイテンシとする 32

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可用性ダッシュボード 一定値以上になるとアラートが飛ぶ。 「一定の閾値に保つ」というフィードバックループを回せるようになった 33

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34 (ビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 テストを 書きやすい環境 パフォーマ ンス改善 可用性指標 の策定と計測 BlueGreenデプロイ導入

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WebSocket + GKE + IstioでのBlueGreenデプロイ ● リリース時にGreen環境を作成 ● HTTPヘッダーベースで、開発者のみGreen環境にアクセス して動作確認できるように 35

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具体的には ● WebSocketハンドシェイク時の HTTPリクエストのヘッダの値を元 にIstioのVirtualServiceでトラ フィック振り分け(つまりL7) 36

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イメージ図 37

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● 使い方を細かくドキュメント化し、不安感をやわら げながら展開 ● GKE + IstioでWebSocketサーバをトラフィック制 御している事例が少ない ○ 国内でも有数の事例になった 38

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39 (ビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 パフォーマ ンス改善 可用性指標 の策定と計測 テストを 書きやすい環境 BlueGreenデプロイ導入

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● 人によってテストを書いたり書かなかったり まちまち ● テストカバレッジ不明 ● データストアと通信するテストが書きづらい 40 コメントシステムのテストの課題点

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1. Jestの導入 2. コンテナでテスト実行するように 3. Redisをテストコンテナで動かすように ○ モックではなく実物で動かしたい 41 [やったこと1]まずテストを実行しやすい環境づくり

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[やったこと2]テストカバレッジの可視化 42

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[やったこと2]テストカバレッジの可視化 43 1. Github Actionsでカバレッジデータ生成 2. Cloud Storageにアップロード 3. Looker Studioで2をデータソースにして グラフとしてダッシュボード化

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44 (ビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 パフォーマ ンス改善 可用性指標 の策定と計測 テストを 書きやすい環境 ソフトウェア アーキテクチャ改善 BlueGreenデプロイ導入

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コメントシステムのコードベースの課題 ● 起きていた現象 ○ ロジックが入り組み肥大化 & 凝集度が低下してきている部 分が多々ある ● 生じた課題 ○ ドメイン知識が把握しづらい / 開発に時間がかかる 45

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コードベースの改善の進め方 ● 改善に興味のある有志メンバーでキックオフした ○ 課題の炙り出し / 優先度付 / 目線合わせの実施 ○ 有志メンバー = DevOpsチーム + サーバチーム ● 優先度が高い & 抽象度の高い課題は ○ 特に関心が高いメンバーで話し合って詳細方針を決めた 46

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良い改善は良い問いから Q.ソフトウェアアーキテクチャを なぜ改善するのか? 47

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良い改善は良い問いから A. 機能ドメインが整理され、価値 提供しやすくなるから 48 さらに言うと この改善幅が大きいから

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キックオフ実施 49 実際の議事録

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チケット化してみんなで消化 51

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“コードベース改善の取り組み”で得られた効果 ● コメントサーバの機能開発がしやすくなった ○ APIハンドラをRESTのリソースごとにファイル分割した ○ APIハンドラと同じ場所に定義されていたドメインロジック群も 専用の層に分離した、など ● コメントサーバについて詳しいメンバーが増えるという副次 効果も 52

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全体像まとめ 53

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54 (コメントシステムのビジネスオーダー) 信頼性維持 素早く価値提供 ソフトウェア アーキテクチャ改善 テストを 書きやすい環境 BlueGreenデプロイ導入 可用性指標 の策定と計測 パフォーマ ンス改善

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全体を通して得られた教訓 ● 相変わらず銀の弾丸は無いが、SRE文化が発展してきたこと により参考にしやすい事例が増えた ● 最初に抽象的なものをコアメンバーで潰し、協力者に具体タ スクとして展開していく方法がワークした ● ついでにNode.jsのランタイム知見が得られた 55

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Goodbye, Silver Bullet! 56

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ご清聴ありがとうございました 57

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