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AI哲学マップ – 人工知能と哲学 対話から新しい研究地図を作る - JSAI 2022チュートリアル講演5 2022年6月15日 国立京都国際会館 清田  陽司 (人工知能学会編集委員長, 株式会社LIFULL) 三宅 陽一郎 (人工知能学会シニア編集委員, 株式会社スクウェア・エニックス)

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学会誌「人工知能」レクチャーシリーズ 2001-2002 認知科学(全7回) 2002-2003 哲学とAIにおける対象世界モデリング (全7回) 2003-2004 AI研究者が学ぶ言語学 新展開(全 6回) 2005-2007 脳科学(全9回) 2007-2009 知能コンピューティングとそ 周辺(全 11回) 2009-2010 知能ソフトウェア工学(全5回) 2010-2011 サービスイノベーションとAIと教育(全 6回) 2011-2012 コンピュータ将棋 技術(全 7回) 2013-2015 人工知能と (全11回) 2015-2017 つながりが創発するイノベーション(全 12回) 2017-2018 シンギュラリティとAI(全7回) 2019-2020 人工知能と今(全11回) 2021-2022 AI哲学マップ(全11回を予定)

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レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画 きっかけ ● コロナ禍にあたって、学会・編集委員会として何ができるだ ろうか? ● AIマップβ 新たな発展を図りたい ○ 本日、15:20-17:20に企画セッション「AIマップ 活用とβ3.0へ 展 開」(L会場) ● 故 長尾真先生「情報学 哲学 最前線」(2019) 清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル: レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始 にあたって
 人工知能 2021年1月号, p. 74-78 


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第3次AIブーム そ 先を 描き出せないか?

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レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画 きっかけ ● コロナ禍にあたって、学会・編集委員会として何ができるだ ろうか? ● AIマップβ 新たな発展を図りたい ○ 本日、15:20-17:00に企画セッション「AIマップ 活用とβ3.0へ 展 開」(L会場) ● 故 長尾真先生「情報学 哲学 最前線」(2019) 清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル: レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始 にあたって
 人工知能 2021年1月号, p. 74-78 


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「情報学 哲学 最前線」(2019) 工学博士(京都大学) 京都市名誉市民(2019)、文化勲章(2018)、文化功労者 (2008) 京都大学総長、情報通信研究機構理事長、国立国会図書 館長、国際高等研究所長、京都府公立大学法人理事長を 歴任 機械翻訳国際連盟、言語処理学会 設立者 電子情報通信学会会長、情報処理学会会長などを歴任 (2021年5月23日 ご逝去 享年84歳) 長尾 真 先生 長尾 真: 情報学 哲学 最前線, 
 LRG : library resource guide, 
 Vol. 27, pp. 10-76 (2019) 
 http://hdl.handle.net/2433/244172 


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互恵と寛容 世界へ 21世紀 心 時代である。 科学技術や生命科学 急速な発展にもかかわらず、 人 心 満たされず、人類 ますますいがみあう方向に行きつつある。 これを宗教や科学技術が受け止め、 どうすれ よいかについて考えることが期待されている。 長尾 真 互恵と寛容 世界を構築するプロジェクト 長尾真・村上陽一郎基金 https://nagaomurakami.org/

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なぜ「AIと哲学」な か?

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AIマップβ マップD「AI研究 多様、フロンティア 広大」

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AI分野 特異性 ● 各々 科学分野にあるべき「中心的な基礎理論」が存在しない ○ 「知能」 本質について コンセンサス まだ得られていない ○ 「知能」 捉え方 複数存在する ■ AIマップβ 技術マップだけで 5種類ある ● 方法論として 「構成論的アプローチ」 みが共有されている ○ 「知的なシステムを作って実際に動かす」ことで、知能 本質に迫ろうとしている ● 中空 中心を「哲学」で埋めてきた?

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異分野 人どうしが対話する意義 ● お互い 分野 枠を超えて、新たなフロンティアを切り開ける可能性がある ● 異分野 人と 対話から得た視点を持ち帰り、自ら コミュニティに投げかけること で、コミュニティ 発展につなげられる可能性がある ● cf. 対話研究会(2021年9月号 長尾先生追悼記事集を参照)

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第2次AIブームまで AIと哲学 ● 学際研究活動「サイバネティクス」 ○ 数学者ノーバート・ウィーナーを中心に推進( 1940年代) ○ 脳と アナロジーにより知能を計算機で実現するアプローチを探求 ○ フォン・ノイマン、アラン・チューリングにも影響を与えた? ● 第1次AIブーム収束時 動き ○ ALPACレポートによる基礎研究 必要性 指摘 [ALPAC 66] ○ フレーム問題 定義 [McCarthey 69] ● 第2次AIブームが喚起した哲学 議論 ○ 中国語 部屋 [Searle 80] ○ 一般化フレーム問題 [松原 90] ○ シンボルグラウンディング問題 [Harnard 90] ○ 記号主義とコネクショニズム [Russel 02]

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片桐恭弘先生 回想 …しかし、「現代思想」 議論 全くかみ合わなかった。哲学側 「コンピュータで人間 知能が説明でき るなどあり得ない、そもそもそんなことを考える が不遜だ」という論調。 AI側 「できるかどうか やって みなけれ わからない、コンピュータを使う 研究 方法論であって、方法論を頭ごなしに否定する 理解できない」という論調。なんでこんな議論になる だろうと不思議に思った記憶がある。こ 座談会 が掲載された「現代思想」が出版されてすぐに著名な経済学者に新聞紙上で「頭 固い計算機学者」 よ うに評されてしまった。 もっともAIと哲学 「感情的」すれ違い 日本だけ 現象で ないようだ。 John McCarthyとともにフレー ム問題を提唱したPat Hayes フレーム問題に関する論文を集めた本 中で哲学者がフレーム問題を全 く違う問題にすり替えてしまったと「怒って」いる。 斉藤 康己, 中島 秀之, 片桐 恭弘, 松原 仁 : アーティクル : AIUEO じまりからお わりまで, 人工知能, Vol. 35, No. 5, pp. 257-261 (2020), doi:10.11517/jjsai.35.2_257

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本レクチャーシリーズ 挑戦 ● 現代社会が直面する諸課題に向き合い、哲学者とAI研究者 建設的な対話 場 をつくる ● 人間と世界に関して細分化を重 た学問 諸課題を、AI研究というテーブル 上 で再構築する ● 第4次AIブーム、さらにそ 先で参照され得る議論をアーカイブとして残す

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「AI哲学マップ」 対談ゲストとテーマ 回数 哲学ゲスト AIゲスト テーマ 第1回 堤富士雄 中島秀之 人工知能と哲学の“これまで” と“これから” 第2回 田口 茂 谷  淳 哲学者の眼差しと科学者の目が交差する,新たな場所へ 第3回 第4回 平井靖史 谷口忠大 ベルクソン的「時間スケール」を軸に新たな知能と意識の構成 可能性を探る[前編][後編] 第5回 杉本 舞 松原 仁 コンピューティング史の流れに見る「人工知能」という研究分 野 第6回 伊藤亜紗 西田豊明 人とAI のコミュニケーション 第7回 日比野愛子 江間有沙 「社会の中の AI」という視点 第8回 村上陽一郎 金田伊代 辻井潤一 変容する社会と科学、そして技術 第9回 石田英敬 坂本真樹 (2022年7月号 刊行予定)

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AI研究 新たな フロンティアを 切り開くために

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「危機に直面して」(2020年4月24日) YouTube動画 ご講演原稿

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AIに関わるひとりひとりができること ● 現代社会 さまざまな危機へ 関わり方 ○ 社会から さまざまな要請に、受け身でなく主体的に「あるべき姿」を語る ● 異分野 人々と 対話を積極的に行う ○ 哲学 すべて 学問 基盤であり、異分野 人々と 対話を促す ○ 対話によって得られた視座を持ち帰り、新たな分野を切り開く糧とする