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©2024 Joystruct Inc. 「時」と「場」を捉える、 プロダクトづくりのための リーダーシップ はいぱーエンジニアサミット #1 株式会社Joystruct 佐藤大典

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©2024 Joystruct Inc. 2 自己紹介 スタートアップ企業や大手Eコマース企業で、 開発部部長やVP of Engineeringなどを務め た後、株式会社ジョイストラクトを創業。同社 にて、技術組織の支援や顧問及びソフトウェ ア開発を行っている。著書に『エンジニアの ためのマネジメント入門』がある。 佐藤大典/Daisuke Sato 株式会社Joystruct 代表取締役

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©2024 Joystruct Inc. 3 『エンジニアためのマネジメント入門』 『エンジニアのためのマネジメント入門』で は、具体的なリーダーシップ論に触れている ので、併せてご紹介。 本セッションでは、リーダーシップに関する抽 象的なテーマを扱う。 エンジニアのための マネジメント入門 著者: 佐藤大典 出版: 技術評論社

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– ©2024 Joystruct Inc. 4 本セッションのゴール スコープ 「時」と「場」という要素から考察したリーダーシップの抽象論 ゴール リーダーシップの土台になるマインドセットを手に入れる 対象者 プロダクト開発のチームに所属しているエンジニアの方々

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「時」と「場」を捉えることで プロダクトづくりのための リーダーシップを発揮しよう! 伝えたいこと 時の流れ 場のゆらぎ

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– ©2024 Joystruct Inc. 6 アジェンダ さまざまなリーダーシップ なぜリーダーシップが必要か 「時」の流れと「場」のゆらぎ 「時」と「場」を繋げる 「時」と「場」をソフトウェアに収斂する 皆がリーダーシップを発揮する組織 まとめ

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©2024 Joystruct Inc. さまざまな リーダーシップ

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– ©2024 Joystruct Inc. 8 リーダーシップの歴史 リーダーシップには多くの理論があり、時代と共に進化してきた 特性理論 リーダーシップは生まれつき の特性や性格に基づくとする 理論。 1900年代初頭 行動理論 リーダーシップは特定の行動 やスタイルに基づくとする理 論。 1940-50年代 状況理論 リーダーシップの有効性は状 況や環境に依存するとする理 論。 1960-70年代

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©2024 Joystruct Inc. コンティンジェンシー 理論 リーダーシップの成功はリー ダーの特性と状況の相互作 用に依存するとする理論。 1960-70年代 トランスフォーメー ショナル・リーダー シップ リーダーはビジョンを示し、変 革を促すことでフォロワーを動 機づけるとする理論。 1980-90年代 サーバント・リーダー シップ リーダーはまずフォロワーに 仕えるべきだとする理論。 1970年代-現在

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©2024 Joystruct Inc. シェアード・リーダー シップ リーダーシップは組織全体で 共有されるべきだとする理 論。 2000年代-現在 さらなる研究 今なおさまざまなリーダーシッ プ論が研究されている。 現在- リーダーシップ理 論は時代背景を反 映している 一つのリーダーシップ理論に囚わ れてはならない

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©2024 Joystruct Inc. リーダーシップ理論は実践的なリー ダーシップを支えるための有益なツー ルと考える。理論と実践のバランスを 取りながら、具体的な行動に落とし込 むことで、より効果的なリーダーシップ を身につけられる。 イラスト: DALL-E by ChatGPT リーダーシップ 理論はツール

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12 リーダーシップとは 01 ビジョン 将来のビジョンを明確に示し、実現に 向けて組織を動かす 02 目標達成 特定の目標を達成するために、集団 をまとめ、導いていく 03 影響力 他者の行動、思考、感情に影響を与 え、目標達成に向けて動機づける リーダーシップの定義は文脈によっても変化し、多様な解釈が存在する。 包括的なリーダーシップを定義すると: リーダーシップは、将来のビジョンを明確に示し、その実現に向けた目標達成を促すた めに、他者に影響を与えて動機づける能力といえる。

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©2024 Joystruct Inc. なぜ リーダーシップが必要か

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©2024 Joystruct Inc. 14 リーダーシップが発揮されない組織 リーダーシップが発揮されない組織では、組織は方向性を失い、目標の不一致が生じ て、意思決定が遅れる。 リーダー 特定の役割やポジションを持つ人 肩書きや役職に基づいてリーダーシップを発揮する ことが期待される 方向性の喪失 組織は長期的なビジョンや 具体的な目標を失い、 チームは一貫性のない動きになる 意思決定の遅れ 優先順位の設定ができず、 重要な判断が遅れるため、 プロジェクトの進行が滞る

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©2024 Joystruct Inc. 15 リーダーシップはリーダーだけのものではない リーダーにはリーダーシップが必要だが、リーダーだけがリーダーシップを発揮すれば 良いわけではない。プロダクトに関わる全ての人がリーダーシップを身につけることで、 プロダクト開発が促進される。 リーダー 特定の役割やポジションを持つ人 肩書きや役職に基づいてリーダーシップを発揮する ことが期待される リーダー 特定の役割やポジションを持つ人 リーダーシップを発揮することが期待される リーダーシップ 行動や影響力を通じて 他者を導く能力や行動 ポジションに関わらず誰もが発揮できる。

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– ©2024 Joystruct Inc. 16 リーダーシップ を発揮する ビジョンの共有 組織やプロダクトの長期的な ビジョンを明確にし、それを チーム全体に共有する。 01 マイルストーンの設 定 重要な中間目標やマイルス トーンを設定し、それを達成す るための計画を立てる。 02 方向付けと支援 定期的に状況を確認して、 チームを支援をする。また、目 標に向かって進む過程での障 害や問題に対処する。 03 他者に影響を与え、動機づけるた めに、ビジョンを示して未来にピン を打ち、チーム全体を方向付ける。

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リーダーシップは組織にとって不可 欠であり、特に不確実な未来に対し て明確な指針を示すことが求めら れる。 未来にピンを打つ 時の流れ

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目指す場所が明確でも、一直線に 進むことはできない。これは、未来 が不確実であり、予期しない変化 や障害が頻繁に起こるため。 時の流れ ピンを打っても 一直線に進まない

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©2024 Joystruct Inc. 19 不確実な未来 「時」の流れと「場」のゆらぎが、不確実な未来の因子になっている。 市場の変動 技術革新 事業指標の 変化 顧客ニーズ の変化 競合他社の 動き 新しい 法規制 雇用の流動 化 場のゆらぎ 時の流れ 組織文化の 変化 事業成長

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– ©2024 Joystruct Inc. 20 リーダーシップは 「時」と「場」に 依存する 本セッションでは、リーダーシップは「時」と「場」に 依存するという考えをもとに、プロダクトづくりに必 要なリーダーシップを考察する。 時 「時」の流れ リーダーシップは時間の経過や状況の変化に応じて適応する必 要がある。時の流れとともに変わるニーズや目標に対して、柔軟 にリーダーシップを切り替えることが重要。 場 「場」のゆらぎ リーダーシップは組織の文化、チームの特性、顧客や市場の状 況など、環境やコンテクストに強く影響される。組織の内部や外 部の「場」に応じて、適切なリーダーシップスタイルやアプローチ を選択しなければならない。

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©2024 Joystruct Inc. 「時」の流れと 「場」のゆらぎ

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©2024 Joystruct Inc. 「場」のゆらぎ 市場・事業・組織という「場」は、内部/外 部環境の影響を受けて変化する(ゆら ぎ)。 「場」がどうなっているか理解することで、 適応力を高められる。適応力は、ビジョン の到達を目指すために不可欠。 市場 事業 組織 内部環境 外部環境

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©2024 Joystruct Inc. 23 「時」の流れ ● 市場: 市場規模の変動、ターゲット市場の 変更、セグメントの多様化 ● 競合: 新しい競合の登場、競争優位性の変 化 ● 顧客: 顧客ニーズの変化、消費者行動の変 化 ● 技術: 技術革新の速度、既存技術の廃れ ● 規制: 規制環境の変化、コンプライアンスの 強化 市場 ● ビジネスモデルの進化 : 新しいビジネスモ デルの導入や既存モデルの改良。 ● パートナーシップの形成 : 新たなビジネス パートナーの確保や既存パートナーとの関 係強化。 ● 収益構造の変化 : 収益源の多様化やコス ト構造の最適化。 ● 事業のピボット : 市場や顧客ニーズに応じ た事業内容の大幅な変更。 事業 ● 人的資源: 従業員スキルの進化、人材の 流動性 ● 物的資源: 設備投資の変化、資源の有効 活用 ● 財務: 資金調達の状況、収益構造の変化 ● 情報資源: データの利活用、情報システム の進化 ● 文化: 組織文化の進化、内部プロセスの改 善 組織 「場」のゆらぎ加えて、「時」の流れを鑑みると変化しないものはない。

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ピンまでの道のりは、時の流れで場 のゆらぎが大きくなり、不確実性が 高くなる。 道のりは 変化するもの 時の流れ 場のゆらぎ

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©2024 Joystruct Inc. 変化しないと思い込んでしまうと、す べてが後手に回ってしまう。あるい は、変化に気づかないまま、明後日 の方向に進んでしまう。 私たちは、「変化すること」を信じよう。 不確実を期待しよう。 イラスト: DALL-E by ChatGPT 不確実性を 信じる

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©2024 Joystruct Inc. 26 リーダーシップに必要な行動 市場の動向やトレンドを常に把握 し、顧客は誰で競合はどのような 活動をしているのかを理解する 市場 ビジネスモデルや収益構造を理 解し、プロダクトビジョンが何か、 何のために何を作っているのか を明確にする 事業 ヒト、モノ、カネ、そして情報がどう なっているのか、この先どうなる べきかを把握する 組織 リーダーシップとして必要なのは、まずは自分たちの環境を深く知ること。 そして、これらを有機的に繋ぐ、主体性のある行動をする。

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©2024 Joystruct Inc. 「時」と「場」を繋げる

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©2024 Joystruct Inc. 28 市場と事業と組織を繋げる 自分のチームだけを見ていては、リーダーシップは発揮されな い。描くビジョンが市場や事業と同じ方向を向いているか確認し よう。 ● 市場や事業に詳しい人とコミュニケーションを取り、自分の 言葉で説明できるようになる。 ● 事業のビジョンを理解し、チームのビジョンと結合する。そし て、チームメンバーと同じビジョンを共有する。 これにより、チーム全員が共通のビジョンを持ち、目標達成に 向けた一貫性と協力を生み出す。 市場 事業 組織 接続

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©2024 Joystruct Inc. 29 組織と組織を繋げる 自分のチームのビジョンを他のチームや別部署とアライン メントする。 ステークホルダーと長期的な目標と短期的なタスクの両方 を調整し、一貫した進捗を維持する。抽象度の異なる目標 やタスクを調整し、全員が同じ理解を持つようにする。 組織 組織 組織 組織 調整

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©2024 Joystruct Inc. 30 現在と将来を繋げる 事業はプロダクトロードマップや予算で目標を具体化して いる。 これらの背景を見落とさないようにする。チームは事業達 成のための目標を掲げるだけでなく、市場と事業の将来を 見据え、どのようなチームであるべきかを考える。 市場 事業 組織 市場の将来 事業の 将来 組織の 将来 考 察

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「時」と「場」を繋げるために、目指 すビジョンに向き直り、進むべきス テップ(目標)を具体化する。 「時」と「場」を繋げ る 時の流れ 場のゆらぎ

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©2024 Joystruct Inc. 「時」と「場」を ソフトウェアに収斂する

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©2024 Joystruct Inc. 33 「時」と「場」とソフトウェア 「時」と「場」を繋げることは、ソフトウェア開発にも同様に重要で ある。 市場と事業を理解することは、業務知識の獲得を意味する。時 と場の変化に対応できるようにソフトウェアを設計し、市場と事 業に効果が高いものにリソースを集中させる。 市場 事業 組織 ソフトウェア

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©2024 Joystruct Inc. 競合優位性が高く、複雑な業務ロジッ クをソフトウェアのコアとして開発す る。 コアは、「時」の流れと「場」のゆらぎを 受け入れられるように設計をする。 出典: Vlad Khonov『Learning Domain-Driven Design』(O’Reilly Media Inc., 2021) ソフトウェアの コア

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テックリードなどのキャリアを目指す とき、市場、事業、組織を技術と結 びつける能力が求められる。 エンジニアの リーダーシップ 時の流れ 場のゆらぎ

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©2024 Joystruct Inc. 皆がリーダーシップを 発揮する組織

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©2024 Joystruct Inc. 全員がリーダーシップを発揮できると、非常 に強力な組織になる。そのためには、時に フォロワーシップが必要。 チームの誰かがリーダーシップを発揮した 時こそ、フォロワーシップを発揮する。お互 いにリーダーシップとフォロワーシップを発 揮することで、自走するチームが生まれ る。 イラスト: DALL-E by ChatGPT リーダーシップと フォロワーシップ

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©2024 Joystruct Inc. 3 8 Left Picture Box Slide 皆がリーダーシッ プを発揮する組織 個々の自立した行動が全体として秩序ある 組織を自己組織化した組織という。皆がリー ダーシップを発揮する組織は、自己組織化し た組織でもある。 リーダーシップとフォロワーシップを発揮する ことで、共有されたビジョンに向かって、チー ムは自走するようになる。 イラスト: DALL-E by ChatGPT

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©2024 Joystruct Inc. まとめ

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©2024 Joystruct Inc. 40 まとめ 「時」と「場」を捉えることで、プロダクトづくりのためのリーダーシップを発揮できるように なる。 ● リーダーシップの必要性 : リーダーシップは、目標達成に向けたビジョンを示し、他者を動機づけるた めに不可欠。誰か一人が発揮すればいいというものではない。 ● 「時」の流れと「場」のゆらぎへの対応 : リーダーシップは、時間の経過や環境の変化に柔軟に対応 する能力が求められる。 ● 市場、事業、組織の連携 : チームのビジョンを市場や事業と連携させ、一貫性と協力を生み出すこと が重要。 ● ソフトウェア開発への適用 : 市場と事業の変化に対応し、効果的なソフトウェア開発を行うために、 リーダーシップを発揮する。 ● 皆がリーダーシップを発揮する組織 : リーダーシップとフォロワーシップのバランスを取り、自己組織 化した強力なチームを作る。

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©2024 Joystruct Inc. 41 小さなことからはじめる 明日から小さなことからでも、はじめてみよう。 ● 予算や目標の意図や背景を聞いてみる ● 市場と事業に詳しい人と雑談をする ● チームの未来を考えてみる

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「時」と「場」を捉えることで プロダクトづくりのための リーダーシップを発揮しよう! 伝えたいこと 時の流れ 場のゆらぎ

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©2024 Joystruct Inc. ご清聴ありがとうございました 佐藤大典/Daisuke Sato