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四元数がどうやって発見されたか kinankomoti

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四元数 Quatanionとは 虚数単位が3つあるとして虚数単位 について以下の関係がある 実数 で定義される。ここでは 𝟜 と表記 𝟜 複素数の拡張として考えられている 3DCGとかだと回転とかに使われるアレ

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四元数 Quatanionとは ハミルトン(William Rowan Hamilton)さんが見つけたとされている 1843年ぐらいに発見、嬉しすぎて橋の欄干に式を彫ったらしい 物理学では昔使われてたらしく、ベクトルの基礎となった

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複素数の次? 実数(一元数)、複素数(二元数)ときて次は四元数 虚数単位の関係もなんかキモい感じある どうやって見つけたん? 三元数的なのは存在しないの? 実は三元数は存在しない(できない) だが、四元数の根底には三元数の考え方がある 虚数単位の変な関係もそれに基づいている

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三元数 虚数単位が二つあるとして、虚数単位 を導入する 実数 を用いて、三元数 𝟛 を次のように導入する 𝟛

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三元数 三元数は複素数の拡張であってほしい なので少なくとも次のような性質が欲しい 1. 加法と乗算で閉じている 2. 任意の元 に対して絶対値について次のような式が成立

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三元数 三元数は複素数の拡張であってほしい なので少なくとも次のような性質が欲しい 1. 加法と乗算で閉じている 2. 任意の元 に対して絶対値について次のような式が成立 実はこれはどうやっても三元数は満たせない そのため、三元数は存在しない

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1. 加法と乗算で閉じている 加法はOK 𝟛 乗法は?

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1. 加法と乗算で閉じている 加法はOK 𝟛 乗法は? -> はどう扱えばいいの?

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簡単な証明(A) 実は三元数が存在しないことの証明は を使えば簡単 は1の要請から何らかの三元数であるべきである ここで左側から をかけるとします (後々非可換の話が出るのでわざわざ左といっています)

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このような方程式が得られる 各係数は0であるべき、だが の係数から これは が実数であるという仮定と反する 少なくとも は三元数ではない 乗法は閉じなくなってしまう

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ほんとか? 簡単すぎる・・・ なんか変な処理入れてない?(ゼロ割とか) ここで二乗した値を調べると...? そのルートを取ったら...?

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は or でもいいのでは! こうしたら乗法を閉じれる 一旦 を として話を進めてみる (間違ってたらどこかで破綻するはず)

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2.絶対値の関係式 絶対値の定義は複素数からそのまま拡張して次の定義とする 以下の関係式が成り立ってほしい 二乗して次のようにしても良い(ルートがあるとややこしいので)

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一旦、 の場合を考える(ルートを取って話したいので二乗) 右辺はノルムの定義から 左辺は先に を計算してから求めれば が ということを思い出すと

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?

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? 式が合わない!!!!!! の項が邪魔すぎる!!!!

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三元数はやっぱ無理では...?

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三元数はやっぱ無理では...?

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整合性を合わせるため、 は非可換( )と考える をひっくり返すとマイナスが付く、そういう数にしよう! そうすると は...? の項が消えた!

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非可換の時の が非可換になった時、二乗の値はちょっと変わる 従って、 の値は 𝟛 少なくとも三元数であるので(1)の条件は大丈夫そう (A)は未だに成り立つけど

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任意の絶対数の関係 自分同士の絶対値の矛盾は何とかなった このまま任意の三元数同士やってもいけるのでは? 左辺を計算

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右辺は...?

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比較すると 展開しても一致しない の項がまた邪魔に...

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比較すると 展開しても一致しない の項がまた邪魔に... だけど、位置が違うだけで似たような式になってない?

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三元数は無理そう... 三元数はやっぱり自然な(?)拡張ではやっぱり無理そうだ...

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だけど以下のように を定義するとうまくいきそうだった

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を新しい元 としたらうまくいくのでは!と閃いた 四元数の発見となった

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四元数の発見 新たな元 を導入、 との関係式を以下のように定義 また の非可換性を導入 の二乗が となるのも自然に導かれる

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絶対値の関係 絶対値を四元数 𝟜 にも導入 𝟜 先ほど話していた三元数 の積は四元数の範疇では

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これは右辺と一致する! 四元数の範疇では三元数の積を取り扱えるようになる!

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四元数 四元数の各元の性質は と の関係から導くことができる これを使って調べてみると四元数はちゃんと以下を満たす 加法、乗法に対して閉じている 絶対値の法則が成り立つ (その他、複素数に成り立つ法則も) 複素数の次の数として四元数が考えられた!

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余談 四元数の次は八元数octonionがあるらしい しかし結合則が成り立たなくなるとのこと 更に高次のものもある(十六元数sedenion) ただしどんどん法則が失われていくらしい まともに扱えるのは4元数まで 2の累乗の元で考えられる

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まとめ 少なくとも自然な(?)拡張で三元数は定義できなかった 積がどうしても閉じない( が定義できない) うまく式が合わせるように元を導入したら四元数が出てきた 虚数単位の関係性も三元数の考察を見れば順当 追記 9/1 今回話していた「数の条件」というのはノルム多元体というもの

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参考資料 矢野 忠 (2014). 四元数の発見 海鳴社 物理のかぎしっぽ 七次元の外積 数学活用塾「数(KAZU)」 三元数 木村 真琴 複素数と四元数 茨城大学オープンキャンパス模擬授業