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エンジニア主導の企画立案を可能にする組織とは? RECRUIT TECH CONFERENCE 2025 森本 くるみ 株式会社リクルート プロダクトディベロップメント室 『スタディサプリ小学講座』に新機能がリリースされるまで

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森本 くるみ 海外旅行・カードゲーム・ピラティス・キックボクシング 経歴 / Career 2021年にリクルートに新卒入社。 Android エンジニアとして販促領域の各種プロダクト 開発に携わる。 2022年10月から『スタディサプリ小学・中学講座』を 担当し、ユーザーが学習に辿り着くまでの導線に関する エンハンスに従事。 DroidKaigi 2024 では GraphQL クライアントの実装に ついて登壇。 趣味 / Hobbies プロダクトディベロップメント室 販促領域プロダ クトディベロップメント5ユニット(まなび) 教育支援小中高プロダクト開発部 小中Android開発グループ

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スタディサプリ小学・中学講座 ● 小学1,2年生および中学1~3年生向けの月額制のオンライン学習アプリ ● 『スタディサプリ 小学/中学/高校/大学受験講座』アプリのリニューアル版と して配信

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「きょうもできた!」機能 ● 子どもがお絵描きツールで保護者とコミュニケーションを取れる機能 ● 企画立案から実装・効果分析までをエンジニアの職能を超えて主導 ● 機能のリリースにより「子どものやる気を高める機能や仕組みに満足できな かった」の声が、解約理由1位から大幅減少

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本セッションの目的 「きょうもできた!」機能リリースの経験を振り返り、エンジニア主導の 企画立案を可能にした3つのポイントを紹介する 1. 情報へのオープンアクセス 2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 3. 企画の効果を分析するための仕組み

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1. 情報へのオープンアクセス

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1. 情報へのオープンアクセス 技術的な興味関心・ユーザー価値・事業の方向性の3つをアラインさせること で、技術を表現手段として活用しながら、エンジニアが高いモチベーションで 企画立案を遂行することができる。 この3つの情報を、職種を問わず常にキャッチアップできる環境が大切 01 技術的な興味関心 02 ユーザー価値 03 事業の方向性

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1. 情報へのオープンアクセス 1. 技術的な興味関心 ○ モバイルアプリ分科会 (領域を跨いだ知見共有) ○ カンファレンス登壇・参加の支援 2. ユーザー価値 ○ ユーザーインタビュー(継続者/解約者) ○ VOC(Voice Of Customer)共有会 ○ 解約者アンケート 3. 事業の方向性 ○ オフラインキックオフ・週次のプロダクト定例 ○ ダッシュボード(Looker)の運用 ○ ブランド/デザインコンセプト

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1. 情報へのオープンアクセス 「きょうもできた!」機能の場合 1. 技術的な興味関心 ○ 「アプリならではの凝ったUIを作りたい!」 2. ユーザー価値 ○ ユーザーインタビュー ■ お絵描き・お手紙の機能の人気やトレンドをキャッチ ○ 解約者アンケート ■ 「子どものやる気を高める機能や仕組みに満足できなかった」の声 3. 事業の方向性 ○ 学習を継続してほしい ○ 低学年デザインキーワード(楽しさ/ユニーク/心地よさ/クリア/シンプル)

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1. 情報へのオープンアクセス 「きょうもできた!」機能の場合 企画のストーリー ● 1日の学習の締めくくりに、子どもと保護者が一緒にお絵描き機能を利用 することで、保護者から子どもへの褒めのコミュニケーションが促進さ れ、子どもが「明日も勉強しよう!」と思うようになる

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 思い描いた企画を実際に前に進めていくために、職種問わず誰でも提案できる 場所と、提案が歓迎される心理的な安全性が確保されていることが大切である 01 職種問わず誰でも 提案できる場所 02 提案の心理的な ハードルを下げる コミュニケーション 文化

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 1. 職種問わず誰でも提案できる場所 ○ 会議体 ■ UXよもやま : 企画の壁打ちができる場 ■ 案件エントリー : 開発の承認を得る場 ○ Slackチャンネル ■ dogfooding-ja : アプリの感想を気軽に投稿できるチャンネル 2. 提案の心理的なハードルを下げるコミュニケーション文化 ○ WOL(Working Out Loud) ■ 思考や作業の過程をSlackで呟きながら働くことが推奨されている ○ ポジティブなSlackのリアクションの豊富さ ■

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 「きょうもできた!」機能の場合 プロトタイプをSlackチャンネルに共有し、協力を呼びかける

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 「きょうもできた!」機能の場合 テンプレに沿ってGitHub Issueを記載し、案件エントリーの会議体に持ち込む

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2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 「きょうもできた!」機能の場合 案件エントリーでの数回のリジェクトを経て、MVP(Minimum Viable Product)を 定義し、開発承認をもらう MVPの定義 ● 1日の学習のサマリが視覚的に表現されている ● 子どもが自発的に使いたくなる ● 保護者が手軽なアクションで褒められる

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3. 企画の効果を分析するための仕組み

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3. 企画の効果を分析するための仕組み MVPを満たす状態で小さくリリースして、ユーザーのリアクションを見たのち、 エンハンス判断をする。そのために、BigQueryを中心としたデータ分析基盤 と、A/Bテストを実現するFeature Toggles基盤がある。また、先述のVOCや ユーザーインタビューからも示唆を得ることができる 01 BigQueryを 中心としたデータ 分析基盤 02 自前の Feature Toggles 基盤

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3. 企画の効果を分析するための仕組み 1. Platon : BigQueryを中心としたデータ分析基盤 ○ Firebase Analyticsを介してクライアントログを送信 ○ 企画立案者がBigQueryで分析する運用 ○ ログ設計や分析をデータエンジニアに相談できるSlackチャンネルも用意 2. Darklaunch : 自前のFeature Toggles基盤 ○ クライアントはGraphQLのクエリでA/Bの値を取得できる ○ 利用者に対してサーベイが実施され改善が進められている

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3. 企画の効果を分析するための仕組み

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3. 企画の効果を分析するための仕組み 「きょうもできた!」機能の場合 クリックログとお絵描きの総画数をBigQueryに送信し、利用日数や活用度を分析 ● 機能を1度でも利用したユーザーの割合が50%超え ● 毎日継続的に利用しているユーザーも確認できた ● 「きょうもできた!」機能利用ユーザーの方が、継続学習の傾向あり VOCや解約者アンケートの結果から定性的な効果も確認 ● 「きょうもできた!」機能に関するユーザー問い合わせをいただく ● 「子どものやる気を高める機能や仕組みに満足できなかった」の声が、解約 理由1位から大幅減少 => 企画の効果が確認できたので、全ユーザーに展開しエンハンスを実施

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さいごに

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まとめ エンジニア主導の企画立案は 1. 情報へのオープンアクセス 2. 提案が歓迎されるコミュニケーション設計 3. 企画の効果を分析するための仕組み によって実現することができた

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技術を活かす現場力 組織文化や開発基盤を維持・成長させながら ユーザーの声に技術で応えていきたい

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Appendix

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参考記事 ● Jetpack Compose の Canvas でお絵描き機能を実装する ○ https://blog.studysapuri.jp/entry/2024/12/7/compose-drawing-canvas ● Working Out Loud 大声作業(しなさい)、チームメンバー同士でのトレーニ ング文化の醸成 ○ https://blog.studysapuri.jp/entry/2018/11/14/working-out-loud ● リクルート『スタディサプリ』のデータ分析基盤を支える技術と活用事例 ──RECRUIT TECH MEET UP #3 ○ https://techplay.jp/column/1551 ● AWS Dev Day 2023 Tokyo で スタディサプリのDarklaunch について発表し てきました ○ https://blog.studysapuri.jp/entry/2023/07/05/090000