Slide 1

Slide 1 text

安全にプロセスを停止するために シグナル制御を学ぼう! NE株式会社 やまもとひろや

Slide 2

Slide 2 text

先に注意 ● 本スライドにはサンプルコードがいくつか登場し ます。 ● 文字が小さく読みにくい場合があります。 ● 気になる方はお手元でスライドを開いて視聴す ることをオススメします。 2

Slide 3

Slide 3 text

自己紹介 ● NE株式会社のやまもとひろやです。 ● PHPerKaigi2022 ○ ベストフィードバッカー殿堂入りしました。 ○ PHPerチャレンジは4位でした。 ● プロポーザル採択のレギュラーセッションは初です。 ● PHP歴約10年です。 ● 右の写真はPHPerKaigi2021の ベストフィードバッカー賞でもらった Oculus Quest 2です。 ● よろしくおねがいします! 3

Slide 4

Slide 4 text

アジェンダ ● ターゲット ● 「プロセス」とは ● 「シグナル」とは ● 「シグナル制御」とは ● 「安全に」とは ● 活用例 ● まとめ 4

Slide 5

Slide 5 text

ターゲット ● PHPの処理を ○ Ctrl+Cで止めたことがある人 ○ killコマンドで止めたことがある人 ● PHPの処理が途中で死んで困ったことがある人 ● プロセス/シグナルが何となくしか分からない人 ● 同僚や後輩に「シグナル制御って何?」って聞かれた時に答えに困る人 ● 是非持ち帰って共有してください! 5

Slide 6

Slide 6 text

それではスタート! 6

Slide 7

Slide 7 text

プロセスはすぐ死ぬ 7 よーし今から処理するぞー! プロセス君

Slide 8

Slide 8 text

プロセスはすぐ死ぬ 8 よーし今から処理するぞー! プロセス君 シグナル君 あ、処理やめてください

Slide 9

Slide 9 text

プロセスはすぐ死ぬ 9 よーし今から処理するぞー! プロセス君 シグナル君 やっぱり処理やーめた あ、処理やめてください

Slide 10

Slide 10 text

プロセスはすぐ死ぬ 10 よーし今から処理するぞー! プロセス君 シグナル君 やっぱり処理やーめた あ、処理やめてください ● どこまで処理されたか分からない! ● 最初から処理をやり直さないと!  ● ゴミデータが残ってしまった!  

Slide 11

Slide 11 text

● 本講演においてはPHPの処理のことをプロセスと呼びます。 ● 例えば以下のtest.phpを実行したとして、psコマンドに載ってくるものがプロセスです。 プロセスってなに? test.php

Slide 12

Slide 12 text

シグナルって何? ● 本講演においてはプロセスに対して与える命令のことをシグナルと呼びます。 ● 例えば先程のtest.phpの実行を停止するためにCtrl+Cで止めたとして、内部的にはプロセ スに対してSIGINTというシグナルが送られて停止しています。 ● Ctrl+CがSIGINTというのは以下で確認ができます。 ○ ^CがCtrl+Cの意味 ○ intrがSIGINTの意味 12 $ stty -a cchars: discard = ^O; dsusp = ^Y; eof = ^D; eol = ; eol2 = ; erase = ^?; intr = ^C; kill = ^U; lnext = ^V; min = 1; quit = ^\; reprint = ^R; start = ^Q; status = ^T; stop = ^S; susp = ^Z; time = 0; werase = ;

Slide 13

Slide 13 text

どういう時にシグナルが送られてくるの? ● PHPスクリプト実行中にCtrl+C ● PHPスクリプトのプロセスに対してkillコマンド ● PHPが動いているDockerコンテナに対してdocker stop ● PHPが動いているAWS/コンテナに対してデプロイ/コンテナ切替など ● etc 13

Slide 14

Slide 14 text

シグナル制御ってなに? 14 よーし今から処理するぞー! プロセス君

Slide 15

Slide 15 text

シグナル制御ってなに? 15 よーし今から処理するぞー! プロセス君 シグナル君 あ、処理やめてください

Slide 16

Slide 16 text

シグナル制御ってなに? 16 よーし今から処理するぞー! プロセス君 シグナル君 ちょっと待ってくださいね。 この処理が終わってから停止しますね。(キリッ) あ、処理やめてください

Slide 17

Slide 17 text

シグナル制御ってなに? ● 本講演においてはプロセスにシグナルが送られてきた際、処理を終了する前に何らかの処 理を実施することをシグナル制御(シグナルハンドリング)と呼びます。 ● 例えば先程の無限ループにプロセスにて終了する前に echo ”hoge”;する、みたいなことが できるようになるのがシグナル制御です。 17

Slide 18

Slide 18 text

「安全に」とは ● 本講演においては「後片付け・後処理をしたうえで終了すること」を安全にプロセスを停止す る、と定義します。 ● 例えば以下のようなステータスをデータ管理しているとして ● 10: 未着手→20: 着手中→30: 終了 ● これらは一連の処理で30になり20で止まることが基本的にないものの場合、異常終了した 際には10に戻して終了する、などが安全に処理を終了するということになります。 18

Slide 19

Slide 19 text

シグナル制御のコード解説 19

Slide 20

Slide 20 text

シグナル制御 20 ● pcntl_async_signals(true); ○ シグナルハンドラを有効にする。 ○ とりあえず最初に宣言しておけば OK。 ● pcntl_signal(SIGINT, "hoge_handler"); ○ シグナルハンドラの設定をする。 ○ SIGINTが来たらhoge_handlerというハンドラ (関数)を実行するという意味。 ● hoge_handler ○ 今回の制御処理。以降ハンドラと呼ぶ。 ○ hogeを出力して処理を終了する。

Slide 21

Slide 21 text

シグナル制御 21 ● pcntl_async_signals(true); ○ シグナルハンドラを有効にする。 ○ とりあえず最初に宣言しておけば OK。 ● pcntl_signal(SIGINT, "hoge_handler"); ○ シグナルハンドラの設定をする。 ○ SIGINTが来たらhoge_handlerというハンドラ (関数)を実行するという意味。 ● hoge_handler ○ 今回の制御処理。以降ハンドラと呼ぶ。 ○ hogeを出力して処理を終了する。

Slide 22

Slide 22 text

シグナル制御 22 ● pcntl_async_signals(true); ○ シグナルハンドラを有効にする。 ○ とりあえず最初に宣言しておけば OK。 ● pcntl_signal(SIGINT, "hoge_handler"); ○ シグナルハンドラの設定をする。 ○ SIGINTが来たらhoge_handlerというハンドラ (関数)を実行するという意味。 ● hoge_handler ○ 今回の制御処理。以降ハンドラと呼ぶ。 ○ hogeを出力して処理を終了する。

Slide 23

Slide 23 text

pcntl_signalについて ● 第1引数signal: シグナルの種類(1とか2とか) ● 第2引数handler: 後述 ● 第3引数restart_syscalls: ※説明を省略 23

Slide 24

Slide 24 text

pcntl_signalについて ● 引数に渡すhandlerについて ● 公式リファレンス 24 ● signo, siginfoが送られてくるか受け取らなくても良い ● returnはvoidでなくても良い(何でも良い)

Slide 25

Slide 25 text

余談: callableについて ● callableについて ○ 関数名そのまま渡す場合 ■ 単純に文字列で’hoge’を渡せば良い ○ staticメソッドを渡す場合 ■ 配列でarray(‘class_name’, ‘method_name’) ■ 文字列で’class_name::method_name’ ○ インスタンスメソッドを渡す場合 ■ array($obj, ‘method_name’) ■ array($this, ‘method_name’) ○ その他selfやparentも使える 25

Slide 26

Slide 26 text

シグナルの種類 $ kill -l 1) SIGHUP 2) SIGINT 3) SIGQUIT 4) SIGILL 5) SIGTRAP 6) SIGABRT 7) SIGEMT 8) SIGFPE 9) SIGKILL 10) SIGBUS 11) SIGSEGV 12) SIGSYS 13) SIGPIPE 14) SIGALRM 15) SIGTERM 16) SIGURG 17) SIGSTOP 18) SIGTSTP 19) SIGCONT 20) SIGCHLD 21) SIGTTIN 22) SIGTTOU 23) SIGIO 24) SIGXCPU 25) SIGXFSZ 26) SIGVTALRM 27) SIGPROF 28) SIGWINCH 29) SIGINFO 30) SIGUSR1 31) SIGUSR2 26

Slide 27

Slide 27 text

よく見るシグナル ● SIGINT: キーボードからの割り込みシグナル( Ctrl+C) ● SIGTERM: 終了シグナル(killコマンドのデフォルト) ● SIGKILL: 強制終了シグナル ● それぞれ意味が異なる 27

Slide 28

Slide 28 text

シグナルの種類 28 ● SIGKILLは制御できません。 ○ これができてしまうと永遠にkillできないプロセスができあがります。

Slide 29

Slide 29 text

安全にするための 事例/活用例紹介 29

Slide 30

Slide 30 text

活用例(データをキレイにしてから終了する) 30 通常パターン プロセス停止パターン プロセスを制御せずに停止した場合 20で止まる可能性がある。 DBレコードの場合はシグナル制御ではなくトランザクション -ロールバックの 方が良い。

Slide 31

Slide 31 text

活用例(データをキレイにしてから終了する) 31 通常パターン プロセス停止パターン プロセスを制御せずに停止した場合 20で止まる可能性がある。 DBレコードの場合はシグナル制御ではなくトランザクション -ロールバックの 方が良い。

Slide 32

Slide 32 text

活用例(データをキレイにしてから終了する) 32 通常パターン プロセス停止パターン プロセスを制御せずに停止した場合 20で止まる可能性がある。 DBレコードの場合はシグナル制御ではなくトランザクション -ロールバックの 方が良い。

Slide 33

Slide 33 text

活用例(どこまで終わったかを通知してから終了する) 33 通常パターン プロセス停止パターン 通知の部分はメールとか slack通知とかのイメージです

Slide 34

Slide 34 text

活用例(処理が終わるのを待ってから終了する) 34

Slide 35

Slide 35 text

活用例(受けたシグナルによって処理を分岐) 35

Slide 36

Slide 36 text

活用例(受けたシグナルによって処理を分岐) 36 kill -2(SIGINT)を送る シグナルを検知してプロセスが停止する様子

Slide 37

Slide 37 text

活用例(受けたシグナルによって処理を分岐) 37 kill -15(SIGTERM)を送る シグナルを検知してもプロセスが停止しない様子

Slide 38

Slide 38 text

活用例(受けたシグナルによって処理を分岐) 38 kill -3(SIGQUIT)を送る 意図しないシグナルなので例外が起こる様子

Slide 39

Slide 39 text

NEでの活用事例 ● AWSへコンテナをデプロイ ● デプロイするとコンテナが停止=バッチ処理がデプロイのタイミングで終了してしまう ● タイミングによっては意図しない状態になってしまう ● その度にエンジニアが裏から対応する必要があった ● 何とかバッチを「安全に」停止させられないものか … ● ↓ ● シグナル制御しよう! 39

Slide 40

Slide 40 text

NEでの活用例(before) デプロイ時にすぐにコンテナが停止し、中のプロセスが停止してしまう。 バッチが途中で死んでしまうため中途半端なデータができてしまう可能性があった。 40 バッチ ver1.0 デプロイ 命令 バッチ ver2.0

Slide 41

Slide 41 text

NEでの活用例(after) バッチを最後まで走らせてからコンテナを閉じるように制御を入れた。 その結果処理途中で死ぬことがなくなりデータの整合性が保たれるようになり 安全にデプロイできるようになった。 41 バッチ ver1.0 デプロイ 命令 バッチ ver2.0

Slide 42

Slide 42 text

その他時間が余った時用 ● PHPの中身について ○ https://github.com/php/php-src/blob/php-8.2.3/ext/pcntl/pcntl.c#L593 ○ この辺に定義されてる ○ 試しにsignoに1より小さい数を渡すと以下のエラーが出た ○ a ○ 42

Slide 43

Slide 43 text

その他時間が余った時用 ● SIGUSR1, SIGUSR2について ● これらはユーザーが自分で定義して使うことのできるシグナルです。 ● SIGINTでもSIGTERMでもないんだよなーという場合に、ユーザー固有の用途で自由に使 うことができます。 43

Slide 44

Slide 44 text

参考 ● PHPとシグナル その裏側 ○ めちゃくちゃ参考になります。 44

Slide 45

Slide 45 text

付録 ● サンプルコード ○ https://github.com/yamamoto-hiroya/phperkaigi2023 45

Slide 46

Slide 46 text

まとめ ● 本講演では安全にプロセスを停止するためのシグナル制御を解説しました。 ● 仕組みを理解して正しく使っていきましょう。 ● Discordやtwitterでフィードバックお待ちしております! ●  @HiroyaYamamoto1 46

Slide 47

Slide 47 text

47