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画像生成で学ぶ日本語と英語の 「好まれる言い回し」 -認知言語学の主観的把握を知ろう- 2024年2月16日(金) 東京AI祭 太田博三(usagisan2020)

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川端康成の『雪国』で学ぶ主観 •川端康成の『雪国』を題材に、日本語、英語、フランス語の比較をし ながら、各言語の認知モードのありかたを把握します。 ・題材:川端康成の『雪国』 「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」 エドワード・サイデン スティッカーの英語訳 “The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop.”

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1.(日本語原文) 日本語でText-to-Image •川端康成の『雪国』を題材に、日本語、英語、 フランス語の比較をしながら、各言語の認知 モードのありかたを把握します。 ・題材: 川端康成の『雪国』 「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であっ た。」 https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3A 71bfd06e-32ad-47be-96ea-dcf8a3c77f01&ff_channel=shared_link&ff_ source=Text2Image

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2.(英語訳経由) 英語→日本語訳でText-to-Image エドワード・サイデン スティッカーの英語訳 “The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop.” 列車は長いトンネルを抜け、雪国に入っていった。 列車は長いトンネルを抜け、雪原へと入っていった。 列車は長いトンネルを抜け、雪国へと向かっていった。 ↓ 列車は長いトンネルを抜け、雪原へと入っていった。 https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3A6dcdd6e4-359e-409e-81cf-c1f6cd568e0f&ff_channel=shar ed_link&ff_source=Text2Image

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3.(仏語訳経由) 英語→日本語訳でText-to-Image •DeepLによる日本語からフランス語 →日本語訳 Après un long tunnel à la frontière, le pays est bloqué par la neige. •国境で長いトンネルを抜けた後、こ の国は雪に閉ざされる。

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4. 比較考察:主観(日本語)と客観(英語訳) • 日本語の原文では、語り手が主人公島村と同じ視点、すなわち汽車 の中で窓の外を眺めるような視点で情景を描写している。 「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」 →主観的把握 • 英訳版では、トンネルから抜けて雪国に入っていく汽車を、外の視点 から俯瞰するかのように描写している。 「列車は長いトンネルを抜け、雪原へと入っていった。」 →客観的把握 • 仏語訳経由では、英語訳の客観視に加えて、トンネルを抜けた後の 雪国の景色も明確に表されている。 「国境で長いトンネルを抜けた後、この国は雪に閉ざされる。」 →客観的把握+事象の明確な把握

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5. 各言語での好まれる言い回し •日本語:主観的に話すと、ネイティブみたいな話し方にな る。 •英語:上から眺めた全体像を眺めて、客観的に話すように すると英語のネイティブみたいな話し方になる。 •仏語:事象を2つか3つに分解して、客観的かつ事象を 明確に述べると、ネイティブみたいな話し方になる。 ※日本語→英語→仏語の順で、主観から客観的かつ事象 の前後の明確化が強くなってゆく。 →フランス語は自己と他者を踏まえた事象も明確に話す必 要がある。

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5. 各言語での好まれる言い回し • 日本語:主観的に話すと、ネイティブみたいな話し方になる。 • 英語:上から眺めた全体像を眺めて、客観的に話すようにすると英語 のネイティブみたいな話し方になる。 • 仏語:事象を例えば因果関係で、客観的かつ事象を明確に述べる と、ネイティブみたいな話し方になる。 ※日本語→英語→仏語の順で、主観から客観的かつ事象の前後の明 確化が強くなってゆく。 →フランス語は自己と他者を踏まえた事象も明確に話す必要がある。

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参考文献・URL① • Adobe Firefly • 原文:日本語 • 「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」 • 国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。 • https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3A71bfd06e-32ad-47be- 96ea-dcf8a3c77f01&ff_channel=shared_link&ff_source=Text2Image • 日本語→英語→日本語訳 • The train came out of the long tunnel into the snow country. • 列車は長いトンネルを抜け、雪国に入っていった。 • 列車は長いトンネルを抜け、雪原へと入っていった。 • 列車は長いトンネルを抜け、雪国へと向かっていった。 • ↓ • 列車は長いトンネルを抜け、雪原へと入っていった。 • https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3A6dcdd6e4-359e-409e -81cf-c1f6cd568e0f&ff_channel=shared_link&ff_source=Text2Image

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参考文献・URL② • 日本語→フランス語→日本語訳 • Après un long tunnel à la frontière, le pays est bloqué par la neige. • 国境で長いトンネルを抜けた後、この国は雪に閉ざされる。 • https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3A8abb0310-1a6b-4930-b903-0db 6aa84e926&ff_channel=shared_link&ff_source=Text2Image • https://firefly.adobe.com/public/t2i?id=urn%3Aaaid%3Asc%3AAP%3Afea60951-3cd6-4ed7-afb6-aaeaa 66167f3&ff_channel=shared_link&ff_source=Text2Image 視点配置と文脈情報 -認知文法からみた『雪国』とその英訳テクスト- 長谷部 陽一郎 https://hyogen-gakkai-official.org/pdf/100/100_21-30.pdf  • 言語によって好まれる視点のとりかた、すなわち、「認知モード」が違っていることの反映であるという考えかた がなされます。 • 日本語、英語、フランス語の比較にもとづき、これらの言語に特有の認知モードのありかたを、さまざまな現象 に即して説明することを試みます。