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品質よもやま話 #21:道の真ん中をきれいにする LOVE会スピーチ 2021年2月18日 中野康雄

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今回の「品質よもやま話」

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中野 ヤスオ(ARI) @yasuoyasuo 道の真ん中をきれいにする プロジェクトマネジメント 2021.1.30 JBUG広島#7 × Agile Japan 先日コミュニティで 発表しました

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江戸下町はなぜ 道の真ん中がきれいなのか? それは お互いが真ん中より向こうまで 掃き合うから 江戸小話

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Copyright ©A.R.I. All Rights reserved. 5 システム開発における悲劇は 「道の真ん中が汚れること」

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6 コミュニケーションや合意形成の問題の例  当初合意した内容から仕様がふくらむ  「どうせならついでにこれもやって」  運用担当や現場を巻き込めていない  「今回はトップダウンで改革だ」  機能同士、サブシステム同士が繋がらない  「うちは悪くない」「だから言いましたよね?」 ほんの一例:

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7 さらに難易度を高める要素が関係者の多様さ 最終的に目指しているものは同じ だが、皆役割が違う 役割が違うから、価値観も 優先順位も違って当たり前 インフラ エンジニア アプリ エンジニア デザイナー システム 担当者 経営者 業務部門 担当者 情シス部門 担当者 システムの ゴール 業務成果 費用対効果 機能・要件 UIデザイン アプリ ケーション インフラ 基盤 システム 利便性 社内ITの 最適化/運用

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8 みんなが自分のことだけ考えたら それぞれ自分の範囲だけを考え 始めたらうまくいくわけがない インフラ エンジニア アプリ エンジニア デザイナー システム 担当者 経営者 業務部門 担当者 情シス部門 担当者 業務成果 費用対効果 機能・要件 UIデザイン アプリ ケーション インフラ 基盤 システム 利便性 社内ITの 最適化/運用 分断

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9 なぜ道の真ん中が汚れるのか? 見えないものへの本質的な不安 お互いの理解不足からくる不信 ビルドトラップを生みやすい業界商流構造 PM個人に対する押し付け、孤立

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Copyright ©A.R.I. All Rights reserved. 10 ではどうすれば 道の真ん中がきれいになるのか?

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11 プロジェクトをコンピューターシステムに例えると 各参画メンバーやステークホルダの ソフト/ハードスキルや経験値 合意形成の生産性を高める チームとしての行動指針・原理原則 ウォーターホール、アジャイル/Scrumなど 各種プロジェクト方法論 成果物 HW OS F/W Code 問題があるPJは F/WやHWの問題が 指摘されがち だが問題の真因は 「チームのOS」 がバグっている ことが多い 内容 レイヤー

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12 道の真ん中をきれいにする「チームのOS」とは?  「異文化」を知り受け入れる  「意思決定ルール」を明確にする  「見えないもの」を可視化する  「与党」を増やす  「変更」に備える  「のりしろ」を設計する  「約束」を尊重する  「問題」を前向きに解決する  「最悪」に備える  「目標」を明確化する

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13 「異文化」を知り受け入れる • 自発的に相手を知る努力をする  相手の組織や文化を知る  業界とそのお約束ごとを知る • 勝手に期待し過ぎない  立場や役職に勝手に期待を抱かない  明確にリクエストする • 自分と違う価値観を拒否しない  何が違うかを可視化するのも手(Appendix参照) まず自分からはじめよう 自分を知ろうと努力してくれる人に、人は心を開きやすい

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14 「意思決定ルール」を明確にする • 意思決定ルールとは?  まずそのチームの意思決定者は誰かを決めて合意する  メンバーは、自身が思う最適なアイデアを全力で提案する  各アイデアの人気投票をしてもよいが、最後は意思決定者が決定する • NGルール  一度意思決定したら、メンバーは結果を正しくする方向に全力を尽くす  もしうまくいかなければ、また別の意思決定をしてもよい  たとえば、昼飯を選ぶ際、「カレー屋に行ってから、やっぱりラーメン食 べたかった」というのはなし チームの意思決定のルールが明確になっていると 自分の管轄外のことでも積極的に提案しやすい

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15 「見えないもの」を可視化する • 議事録、議事メモは必ずとる  言った「つもり」、合意した「つもり」、理解してもらっている「つもり」は厳禁  本当の効果は安心感(いざという時に立ち戻れる場所がある) • チケット管理システムを使う  迷ったらBacklogがおすすめ • チャットやチケットには既読段階でリアクションする  他者への関心を表現する  前向きな雰囲気を意図的に作る 安心と関心を見える化しよう

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16 「与党」を増やす • 所有感の原則を知る  人は、所有感のない事柄に対して、問題が起こった時に自発的に助けようとしない(自分の子供と他人の子供) • カギとなる会議には所有感を持たせたい面子を必ずアサインする  キックオフの人選にこだわる  現場部門からアンバサダーを選定してもらう  業務のヒアリングにエンジニアメンバーも同席してもらう(嫌がるけど) • 会社や契約形態という垣根をとりはらう  正社員とパートナーさんを区分けするのは、道徳倫理ではなく経済合理性の上で得策ではない  コンプライアンスには逆らえないが、性悪説にならざるを得ないとしたら、パートナー選定時点で間違っている  コミュニケーションの黄金律は「自分がそうしてもらいたいように振る舞う」 • コミュニケーションの回数と頻度を増やす  ステアリングコミティの有効活用  プロジェクト状況レポートの定期発信 当事者意識は勝手には生まれない 当事者意識を意図的に生むような仕掛けを考えよう

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17 「変更」に備える • 要件とは絶対的ではなく相対的なもの(ある時点のスナップショット)  要件定義とは、要件という「正解」を顧客から聞き出す作業だと思ってい るとしたら大きな誤解。誰かが正解を持っているわけでもない。 • 色々な変更を記録管理する仕組みを用意する  一番大切なのはスコープの変更の管理  投資稟議の際は、追加修正や継続開発費用も含めて予算を考えておく  要求の前提となる仮説の変化も記録しておく。 変更管理は変更を抑制するためではなく 安心して変更できるようにするための仕組みであることを知ろう

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18 「のりしろ」を設計する • 体制の「のりしろ」 • マネジメントが楽をするだけの組織のシンプル化は必ず部分最適を生む • 「横断チーム」や「兼任」をうまく活用する • 工程の「のりしろ」 • 工程と工程の間に計画準備フェーズを設ける (短期間でも良い) • コミュニケーションの「のりしろ」 • 情報提供は過剰気味に行い、発信側の判断で絞り過ぎない 「余裕」は「余剰」ではなく、チームを円滑に回し品質を高めるための 「必要コスト」だと捉えよう 計 画 準 備 B工程 A工程

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19 「約束」を尊重する • 目標とは「約束」である • 大きな「約束」を守るために、まず小さな「約束を」守る • 小さな約束を守れなければ大きな約束も守れない • 課題、ToDo、ルール、会議の開始終了時間 • 約束の前では上司も部下もない • 約束の遵守について、役職や立場を超えて率直にフィードバック・コミュ ニケーションしてもよいことを合意する • 誰にでも忖度せずリクエストできる権利とNo/交渉権利を合わせて認める コミットメントの文化を作ろう

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20 「問題」を前向きに解決する • 問題=目標ー現実 • 問題を忌み嫌わない(問題と仲良くなる) • 問題は目標達成にむけて前進中であることの証 • チームに問題解決の仕組み(問題を受け付けて解決する)を導入する • 問題を整理し解決するためだけの会議を定期的に開催する • 必要最小限の人数で招集し、意思決定者を明確化しておく • 解決策を議論して対策を決め、タスク化して約束を尊重する • 正しいレビューの文化を定着させる 安心して問題を投げこめ、日常的に解決される仕組みを作ろう

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21 「最悪」に備える • 平たく言えば「リスク管理」 • しっかり機能せるのは意外に大変 • 重く運用せず、リスク管理を日常化する • 多くのチームではリスク管理プロセスはオーバーヘッドになりがち。 • 「今チームに起こったら一番困ることは何か?」という問いを全員が日常 的に持つようにする • 自分で解決できるならそれでOK。解決できないことは上司に相談する。 • 日報・週報にコーナーを設ける リスク管理は仰々しくせず、日常に織り込もう

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22 「目標」を明確化する • 全ステークホルダーにとってぶれない目標を言語化する • 日付と達成したかどうかがわかる事柄、ワクワクするフレーズも • 例「2021年8月31日までにECサイトをオープンして月商1000万、メンバー が各自の知り合いから使いやすかったよというコメントを聞けるようにす る!」 • 所有感を大切にする • 最後は意思決定者が決めるが、その目標を生み出す場にいたか 意見をだせたかどうかが、所有感の醸成に非常に重要 全員が共有できる「北極星」を定めよう

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23 道の真ん中をきれいにする「チームのOS」とは?  「異文化」を知り受け入れる  「意思決定ルール」を明確にする  「見えないもの」を可視化する  「与党」を増やす  「変更」に備える  「のりしろ」を設計する  「約束」を尊重する  「問題」を前向きに解決する  「最悪」に備える  「目標」を明確化する

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24 システム開発に関わる全ステークホルダーの理想像 “我々は、技術的な経験もさることながら、 チームとして活動できる能力、そして誰と でも仲良くなれる資質、また、必要な時は 指導力を発揮し、場合によっては誰かに従 う能力のある人を探しています。“ 宇宙飛行という究極のPJでは 全員が日常的に リーダーシップとフォロワーシップを 同時に発揮することが求められる

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25 マネージャーの勝負所 当事者意識の欠如を 個人の道徳心/親切心や ホスピタリティの問題にしたら マネージャーとしては負け 自分のチームや組織に 「イケてるOS」をインストールするのは マネージャーの仕事

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26 ひとりひとりの勝負所 チームの成功のために 自分が正しいことをしないのを 人(上司や部下)や環境のせいにしない チームに足りていないことがあれば 自分の出来る範囲で自分から補う

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メンバーもマネージャーも 双方が 真ん中より向こうまで掃く

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お客様やパートナーさんとも 同じ関係を目指したい

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ご興味ある方はこちらの資料と動画をご覧になってみてください。 資料 https://speakerdeck.com/yasuoyasuo/dao-falsezhen-nzhong-wokireinisurupuroziekutomanezimento 動画 https://www.facebook.com/watch/?v=3958433044187965

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早く行きたいなら、一人で行け 遠くまでいきたいなら、みんなで行け by アフリカのことわざ

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品質よもやま話 #21:道の真ん中をきれいにする LOVE会スピーチ 2021年2月18日 中野康雄 今日の感想など 遠慮なく気軽に ChatWorkもらえたら うれしいです