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土壌センシングにおける IoT 技術活用
〇眞崎 康平 1),中村 真理 1)
1) 株式会社 B&B Lab. 〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神2丁目5−28 西通りセンタービル 6F
要旨
IoT 技術のコモディティ化により Raspberry Pi などのシングルボードコンピュータ, Arduino 等のオープンプラ
ットホームのスマート農業への活用も大きく進展している. センシング技術に関しても, 気温 / 湿度 / 気圧 /
CO2 などのエアモニタ, 地温, 日照などは コモディティ化された安価なデバイスを用いても再現性が高い情報
が得られやすいため活用が進んでいる. 一方で, 土壌のセンシングはセンサの耐久性や測定の再現性の問題を抱
えており, それ故のデータ活用が難しい課題がある. そのような状況の中, 昔から生産現場で活用されている手法
である pF という測定手法に着目した. コモディティ化により安価に提供されているデバイスと実績のある従来
手法に組み合わせることで, 現場のニーズに即した手法を安価に提供することを目的に手法の開発を行った.
キーワード
pF, 土壌水分, 土壌センシング, スマート農業, ユビキタス環境制御システム(UECS)
緒言
生産性の向上への要求, 人手不足などの社会的背景か
ら DX 化が緊急の課題とされ, 農業分野においてもスマ
ート農業の実現という形で大きな期待が持たれている.
その具体的取り組みとして, ユビキタス環境制御システ
ム(UECS)が挙げられ, Raspberry Pi や Arduino 等のオー
プンプラットフォームの IoT 機器を活用することで低コ
ストのスマート農業の導入やノウハウの横展開が試みら
れており一定の成果に繋がっている.
エアモニタや日射量 地温などの測定や, 測定データ
に基づくビニールハウスの換気窓の開閉等 の応用につ
いては詳細な製作方法が書籍化されており, 比較的高い
再現性で環境制御を構築することが可能である.
土壌のセンシングに関して重要な指標である水分量は,
土壌の誘電率やマイクロ波の伝搬速度といった土壌の電
気的特性から土壌水分を求める方法がよく用いられる.
ただしこれら方法は土壌の種類, 接触状態の再現性, コ
スト等の問題があり, 安定した測定の実現には課題が残
されている. pF は土壌水分が毛管作用や吸着により孔に
引き付けられているエネルギの大きさであるマトリック
ポテンシャルを測定する手法であり, 含水率という物理
量というより植物の水を吸い上げる力という実際に知り
たい情報に近い指標であり, 昔から生産現場で活用され
ている手法である. 実績のある手法である反面, 安価な
機器の測定値はアナログメーターで指示されるため, ス
マート農業への活用が困難である. デジタル測定できる
製品は高価であり生産現場での普及に難がある.
pF はマトリックポテンシャルを負圧に変換して測定
するものであるが, 負圧を電気信号に変換する圧力セン
サは MEMS (Micro Electro Mechanical Systems : 微小電気
機械システム) デバイス技術の進歩で安価に入手可能で
ある. この現状を踏まえ, 安価な pF の測定を実現する
ために従来の pF 計に組み合わせて使うセンサヘッドを
開発し検証を行った. その試作検証について報告する.
pF 測定の概要
以下 pF の測定原理の概要について述べる. 先端に多
孔質のポーラスカップが取り付けられた管に水を満たし
てそれを測定対象の土壌に差し込む. 先端から土壌に水
が染み出すことで管内に発生する負圧をブルドン管式圧
力計または圧力センサで検出する.
圧力値と pF 値の換算については, cm 単位の水柱の
高さの常用対数 ( log10 ) を pF 値と換算する.
換算例として,
pF=0 1cm 水柱
pF=1 10cm 水柱,
pF=2 1m 水柱
pF=3 10m 水柱 である.
なお 1m 水柱 9806.65 Pa であり, 前提条件として水の
密度を 1 g/cm3 (4℃の最大密度)と想定している.