非同期処理を活用しながらRust製wasmとJSを連携する方法(wasm-bindgenを使いたくない人向け)
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uhyo
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非同期処理を活用しながら Rust製wasmとJSを連携する方法 (wasm-bindgenを使いたくない人向け) 2024-08-24 フロントエンドカンファレンス北海道
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発表者紹介 uhyo 株式会社カオナビ フロントエンドエキスパート 好きなプログラミング言語は TypeScriptとRust。
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宣伝 株式会社カオナビはフロントエンドカンファ レンス北海道のゴールドスポンサーです 午前中にスポンサーLTもありました
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このトークのテーマ: WASM JavaScriptエンジンに処理系が組み込まれており、 フロントエンドからも利用可能な実行可能形式。 多くの言語からコンパイルターゲットとして 利用可能であり、JS以外で書いたコードを フロントエンドで動かす有力な手段である。
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WASMの進化 WASMは基本機能がすでに標準化されて各処理系 に組み込まれているが、 さらなる進化が提案・検討されている。 WebAssembly proposals https://github.com/WebAssembly/proposals
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WASMと非同期処理 非同期処理に関する機能はまだ完成していない。 関連するプロポーザル: • Threads • Stack Switching • JS Promise Integration (JSPI)
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現状のWASMは同期処理である 現状のWASMの実行モデルは単純であり、 呼び出し側(JS側)から見たら同期関数に見える。 つまり、JSとWASMでコールスタックを共有する。
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コールスタック共有の例 WASM側のコードはRustで示します 呼び出し
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コールスタック共有の例 JS→WASM→JSのように関数呼び出しをした場合、 このように同じコールスタックに混ざる。 JSの関数もWASMの関数も 同期関数として振る舞っている。 JS JS WASM
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現状のWASMと非同期処理の問題 JS側で非同期処理が発生した場合、 WASM側が「待つ」方法が現状存在しない。 WASM JS これやって (関数呼び出し) ちょっと待ってね (Promise返し) え? 何これ
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このトークの内容 JS側で非同期処理を使いつつ、 WASMと連携する方法を2つ解説。 ① JSPIを使う方法 用意されたAPIを使えば簡単にできる ② 自前のイベントループを用意する方法 WASM側でRustのasync/awaitを使える! 「JS側の非同期処理を.awaitする」とかできる
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補足: wasm-bindgen このトークではwasm-bindgenは扱いません。 Rustに組み込みのWASM対応のみ使用。 wasm-bindgen不使用 wasm-bindgen使用 WASM Rust コンパイル WASM Rust コンパイル JS Promise対応とかもあるらしい
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JSPI (JS Promise Integration)
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JSPI JS側の非同期処理が完了するまで、WASM側を 止めておくことができる仕様。 実験的機能としてChromeに実装されている。
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JSPIの例 WASM側は、JS側から getA, getB, getCを インポートする。 runが実行されると、 3つの関数を実行して 結果を足した値を 返す。
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JSPIの例 getAとかは実はJS側では非同期関数になっている。 WebAssembly.SuspendingでラップしてWASM側に渡す ことで、WASM側から同期関数に見える。
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JSPIの例 WASMのエントリーポイントとなる関数を、 WebAssembly.promisingでラップする必要がある。 ラップしたら返り値がPromiseになる。
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JS JSPI図解 WASM サスペンド可能な世界 JS promisingでラップ した関数を呼出 Suspendingでラップした関数が Promiseを返した場合、 解決するまでWASMの実行が止まる (非同期処理がWASM側からは同期に見える) Promiseが返る (処理が全部 終わったら解決)
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JSPI図解 promisingを介してWASMを実行することで、 WASMがasync関数みたいになる。 JS側が返したPromiseは自動的にawaitする。 JS WASM JS async await await await
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WASMの並行実行 promisingを介して実行した場合、 WASMを複数並行して実行することができる。 (JSのasync関数を複数同時に実行するのと同じ) 複数同時に並列実行され ることはない。 JSと同じ実行モデル。 JS WASM JS
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JSPIの利点・欠点 利点 WASM側に非同期処理の知識は一切不要。 WASM側では従来通りの同期的な処理を書きつつ、 JavaScript側では非同期処理を利用できる。 欠点 WASM側から複数の非同期処理を並行的に開始す ることはできない。(複雑なアプリの実装に不向き)
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自前のイベントループを 用意する
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背景 Rust製のCLIツールをWASMにコンパイルして Node.js経由で実行する形でnpmで配布している。 一部の処理をNode.js側に移譲しており、Node.js 側の処理を待つ間もWASM側を実行し続けたい。 (JSPIでは難しいユースケース)
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WASM側中心のアーキテクチャ WASMがメインのアーキテクチャ(WASIも活用) なので、非同期処理もWASM側で取り扱いたい。 具体的には、Rustのasync/.awaitを使いたい。 JS側の非同期処理をRustのFutureとして扱いたい。 (FutureはJSのPromiseみたいなやつです)
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Rustの非同期処理の例 JSの実行をNode.jsに任せているところ 非同期処理
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自前のイベントループ コード実行 非同期処理発生 Node.jsに処理を発注 結果受け取り処理 タスクを 登録 Node.js側で処理完了 JS WASM
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コード実行 自前のイベントループ(別視点) コード実行 非同期処理 発生 Node.jsに処理を発注 結果受け取り 処理 Node.js側で処理完了 起動 非同期処理 発生 Node.jsに処理を発注 同期実行 同期実行 WASMの同期実行は、 できるタスクが無くなったら returnしてJSに制御を戻す。 非同期処理が完了したら、 JS側からWASMを呼び出して できるようになった タスクを走らせる。 JSのイベントループ (マイクロタスク)と 考え方は同じ。 関数呼び出し return 呼出 return
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Rustの非同期ランタイム Rustでのasync/.awaitの実務は 非同期ランタイムが担当する。 Tokioなどが知られており、 WASM対応もされている。 https://tokio.rs/
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Rustの非同期ランタイム WASM含むシングルスレッドの環境では、 非同期ランタイムの実態はイベントループになる。 しかし、今回の要件にはTokioは採用できなかった。
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Tokioを採用できない理由 Tokio(のようなハイレベルなランタイム)では、 イベントループを回すイベントが 決め打ちされている。 (ネットワークIO、ファイルIO、タイマー) 「Node.js側で非同期処理が終わったとき」 のようなイベントは作れない。
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ローレベルな非同期ランタイムを使う 今回はasync-executorを採用。 「タスクを積む」「イベントループを1週回す」 というローレベルなAPIを提供しており、 Node.js側で非同期処理が完了したらイベント ループが再開する挙動を実装できる。 https://github.com/smol-rs/async-executor
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JS側とWASM側の通信 ① WASMからJSにコード実行を依頼 WASM JS execute_node コード文字列とハンドル(i32)を JS側に渡す JS側で非同期的 にコードを実行
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JS側とWASM側の通信 ② JSからWASMに実行結果を渡す WASM JS execute_node_ret ハンドルと実行結果を渡す そのままWASM側の イベントループ再開 タスクが無くなったら 制御が戻る
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JS側とWASM側の通信 コード実行 非同期処理発生 Node.jsに処理を発注 結果受け取り処理 タスクを 登録 Node.js側で処理完了 execute_node execute_node_ret
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JS側のイベントループとの統合 この構成は、JSのイベントループの一部として WASMのイベントループを動かしているという見 方もできる。 コード実行 非同期処理発生 結果受け取り 処理 JSイベント ループ 非同期処理
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実際のコード (JS側) やっていることは、 渡された文字列を読む →非同期的に 実行する (w.run) →結果が出たら WASM側に送る (execute_node_ret) 単純!
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WASM側のコード(Rust)もチラ見せ 非同期処理を表す構造体に Futureを自前実装
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WASM側のコード(Rust)もチラ見せ JS側から非同期処理の 結果を受け取る 結果をメモリに記録 イベントループを回す この処理を待っている Futureを起こす
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今後の展望 現在、Node.js側に非同期処理として任せている のはJSの実行のみ。 ファイル読みこみなどはWASIで行っている。 (=非同期にはなっていない) ここも非同期化できたら面白そう。 しかし独自実装が増えるので大変。
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まとめ Rust製のWASMでJS側の非同期処理を待つ、 しかもそれをRustのasync/.awaitで表現する ためには、 ローレベルな非同期ランタイムを用いて自前の イベントループを実装し、 WASMのイベントループをJSのイベントループの 一部として扱えばいい。 ※2024年8月現在の情報です。
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宣伝 今回お話ししたアイデアが実際に実装されている ソースコードはこちらで見ることができます。 https://github.com/uhyo/nitrogql