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分離化学⼯学 第13回 2018年7月13日 (⾦) 0 理⼯学部 応用化学科 データ化学⼯学研究室 専任講師 ⾦⼦ 弘昌

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前回の復習 1

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逆浸透法(RO)における膜透過流束 分離対象物が分⼦レベルで⼩さく、溶質による浸透圧の影響が⼤きい 流束 = (係数) × (駆動⼒) 2 ( ) { } ( ) V P M P P J L p L p σ π π σ π = ∆ − − = ∆ − ∆ ( ) S V P M M P M J J c k c c k c = = − = ∆ JV [m3・m-2・s-1]︓体積透過流束 πM [Pa]︓⾼圧側の浸透圧 πP [Pa]︓低圧(透過)側の浸透圧 LP [m・s-1・Pa-1]︓純⽔透過係数 σ [-]︓反射係数 JS [mol・m-2・s-1]︓溶質の透過流束 cM [mol・m-3]︓膜表⾯のモル濃度 cP [mol・m-3]︓透過側のモル濃度 kM [m・s-1]︓溶質透過係数 cRT π ∆ = ∆ (膜透過中の流束 [係数×濃度差]) (膜透過後の流束)

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前回の問題1 3 オーム社『新体系化学⼯学 分離⼯学』p.156【例6.2】にもとづいて作成 ある逆浸透膜を用いて、298 K, Δp = 5.0 [MPa] で実験を⾏った。 純⽔の透過実験での体積透過流束は 8.0×10-6 m3・m-2・s-1 であり、 モル分率 0.0030 の NaCl ⽔溶液を原料としたときの体積透過流束は 5.0×10-6 m3・m-2・s-1、透過⽔の NaCl のモル分率は 0.00015 であった。このときの、純⽔透過係数 LP [m・s-1・Pa-1]、 膜表⾯のモル分率 xM 、⾒かけの阻⽌率 Robs 、真の阻⽌率 Rins 、 溶質透過係数 kM [m・s-1]、物質移動係数 k [m・s-1] を求めよ。 ただし σ = 1 とし、NaCl の浸透圧は π = 255x [MPa] とする ( x は NaCl のモル分率、π= ϕicRT ではない)。

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解説1 4 で純水のとき Δπ = 0 より、 ( ) V P J L p σ π = ∆ − ∆ 6 12 -1 -1 V P 6 8 10 1.6 10 [m s Pa ] 5 10 J L p − − × = = = × ⋅ ⋅ ∆ × より π = 255x [MPa], σ = 1 から、 ( ) ( ) 6 12 6 6 M 5 10 1.6 10 5 10 1 255 255 0.00015 10 x − − × = × × − × − × × ( ) { } V P M P J L p σ π π = ∆ − − M 0.00750 0.0075 x = = ⋯ よって、

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解説1 5 P P int M M 0.00015 1 1 1 0.98 0.00750 c x R c x = − = − = − = P P obs F F 0.00015 1 1 1 0.95 0.003 c x R c x = − = − = − = ( ) S V P M M P J J c k c c = = − より、 6 P P M V V M P M P 7 7 1 0.00015 5 10 0.00750 0.00015 1.02 10 1.0 10 [m s ] c x k J J c c x x − − − − = = = × − − − = × = × ⋅ ⋯

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解説1 6 M P M P V F P F P ln ln c c x x J k k c c x x − − = = − − より、 6 V M P F P 6 6 1 5 10 0.0075 0.00015 ln ln 0.003 0.00015 5.28 10 5.3 10 [m s ] J k x x x x − − − − × = = − − − − = × = × ⋅ ⋯

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膜分離の透過モデル 膜本来の抵抗 透過抵抗 RM として表現 膜の目詰まりによる抵抗 透過抵抗 RP として表現 ゲル層の抵抗 透過抵抗 RG として表現 浸透圧による抵抗 Δp → ΔpーσΔπ として表現 濃度分極による抵抗 透過抵抗 RB として表現 膜が圧縮されることによる抵抗 透過抵抗 RC として表現 膜の劣化による抵抗 透過抵抗 RD として表現 7

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膜分離の透過モデル 全透過抵抗 RA = RM + RP + RG + RB + RC + RD 実験で JV , Δp, μ を得れば、抵抗を計算できる • RM ︓純⽔の透過実験 • RB ︓溶液の透過実験と純⽔の透過実験との差 • RG ︓膜表⾯をスポンジなどで洗浄する前後の透過実験の差 • RP ︓膜を薬品で洗浄する前後の透過実験の差 • RC +RD ︓抵抗の時間変化を観察 8 ( ) V A M P G B C D p p J R R R R R R R σ π σ π µ µ ∆ ∆ = = ∆ + ∆ + + + + - -

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今回の達成目標 回分(バッチ)式濃縮プロセスを理解する 連続濃縮プロセスを理解する いろいろな分離⽅法があることを知る 9

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回分(バッチ)式濃縮プロセス 原液タンクにある分だけ膜分離法で濃縮する 原液タンクの液量や液濃度の時間変化を知りたい 10 V [kg]︓原液タンクにある液量 cB [kg-溶質・kg-溶液-1]︓原液タンクの液の濃度 JV [kg・m-2・h-1]︓平均透過流束 Δp [Pa]︓膜間差圧 A [m2]︓膜の⾯積 原液タンク V, cB 分離膜 A JV Δp 透過液

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回分(バッチ)式濃縮プロセス 物質収支 時間を t [h] としたときの液量 V についての物質収支式 阻⽌率 R=1 とした(膜で完全に阻⽌される)ときの溶質の物質収支式 11 V d d V AJ t = − ( ) B d 0 d Vc t = タンクで減った量 膜から出ていった量

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回分(バッチ)式濃縮プロセス cB 12 ( ) B d 0 d Vc t = 0 B0 B V c c V = 式変形すると、

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回分(バッチ)式濃縮プロセス 逆浸透操作 逆浸透操作において、R = 1 としたことから πP = 0 このとき、JV を cB を使って表してみる 13 ( ) { } ( ) ( ) V P M P P M P B J L p L p L p iRTc σ π π σπ σφ = ∆ − − = ∆ − = ∆ − q iRT σφ = とすると、 ( ) V P B J L p qc = ∆ − (厳密に言えば、cM と すべきだが、とりあえず cB ≒cM と仮定)

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回分(バッチ)式濃縮プロセス 逆浸透操作 逆浸透操作として、 14 ( ) V P B J L p qc = ∆ − 0 B0 B V c c V = V d d V AJ t = − より、 ( ) 0 2 0 1 log aV b a V V b t a aV b     +   − − =     +       P P 0 B0 , a AL p b AL qV c = − ∆ = ただし、 ・・・ V の時間変化が 分かる

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連続濃縮プロセス 問題設定 原液を連続的に供給して膜分離法で濃縮する 必要な濃縮を⾏うための膜⾯積を知りたい 15 F0 [kg・h-1]︓供給する液流量 cB0 [kg-溶質・kg-溶液-1]︓供給液の濃度 F [kg・h-1]︓膜装置内の液流量 cB [kg-溶質・kg-溶液-1]︓膜装置内の⾼圧側の液の濃度 JV [kg・m-2・h-1]︓平均透過流束 Δp [Pa]︓膜間差圧 A [m2]︓膜の⾯積 F0 , cB0 分離膜 A JV Δp F cB 透過液

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連続濃縮プロセス 膜装置内の微⼩区間における供給液の物質収支式 阻⽌率 R = 1 とした(膜で完全に阻⽌される)ときの 膜装置内の微⼩区間における溶質の物質収支式 16 V d d F J A = − ( ) B d 0 d Fc A = V d d F J A = − 液流量の 微⼩変化 面積を少し大きく したときに、膜から出る量の変化

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連続濃縮プロセス cB 17 ( ) B d 0 d Fc A = 0 B0 B F c c F = 回分式濃縮プロセスと同様にして、

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連続濃縮プロセス 逆浸透操作 逆浸透操作において、R = 1 としたことから πP = 0 このとき、回分式濃縮プロセスと同様にして、 18 q iRT σφ = ただし、 ( ) V P B J L p qc = ∆ −

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連続濃縮プロセス 透過モデル 膜分離の透過モデルにおいて、R = 1 としたことから πP = 0 このとき、回分式濃縮プロセスと同様にして、 19 B V p qc J R µ ∆ − =

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連続濃縮プロセス 逆浸透操作 FとAとの関係 逆浸透操作として、 20 ( ) V P B J L p qc = ∆ − より、 0 B0 P d d F c F L p q A F   = − ∆ −     P P 0 B0 , a L p b L qF c = − ∆ = よって回分式濃縮プロセスと同様にして、 0 B0 B F c c F = V d d F J A = − ( ) 0 2 0 1 log aF b a F F b A a aF b     +   − − =     +       ・・・ F と A との関係が 分かる ただし、

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問題1 21 逆浸透膜モジュールによりショ糖⽔溶液に対して回分濃縮操作を⾏う。 初期原液料 V0 = 400 kg、初期濃度 cB0 = 0.020 kg・kg-1、 膜⾯積 A = 10 m2、膜間差圧 Δp = 1.5 MPa、 Lp = 23.3 kg・m-2・h-1・MPa-1、q = 10.0 として、 液量 V と濃縮度 (cB /cB0 ) のそれぞれ経時変化を求めよ。 [Googleフォームに⼊⼒する必要はない] 朝倉書店『分離プロセス⼯学の基礎』p.204【例題8.3】にもとづいて作成

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解説1 22 0 B0 B V c c V = ( ) 0 2 0 1 log aV b a V V b t a aV b     +   − − =     +       P P 0 B0 , a AL p b AL qV c = − ∆ = に、V の値を⼊れて t の値を計算することを繰り返す。 ただし、 より、 0 B B0 V c c V = なので、 上の V の値に対応する (cB /cB0 ) の値も計算しておくと、 (cB /cB0 ) と t との関係も得られる

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解説1 23

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いろいろな分離⽅法 平衡分離(蒸留・ガス吸収の仲間) • 抽出、晶析、吸着、イオン交換 速度差分離(膜分離の仲間) • 遠心分離、沈降濃縮、ろ過 (固液・固気分離) 24

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抽出 分離したい成分を、溶剤を用いて溶かし出し、溶液2相間における 溶解度の差を利用して分離する⽅法 • (例)酢酸とベンゼンの混合物から、⽔を溶剤として酢酸を分離 • 酢酸は⽔によく溶ける、ベンゼンは⽔にほとんど溶けない ⁃ 混合物に⽔を⼊れて混ぜる ⁃ ベンゼンと混ざっていた酢酸が⽔にとける (平衡状態) ⁃ 比重の軽いベンゼンが上に、比重の重い⽔が下に 繰り返し実施することで、純度が⾼くなる 液液抽出(溶媒抽出)︓分離したい成分が液体 固液抽出(浸出)︓分離したい成分が固体 • コーヒー、お茶、だし、植物から微量成分を取り出す、 ウランの分離 など 25

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晶析 溶解度の温度依存性に差があることを利用し、 冷却や加熱により溶液から分離したい成分を結晶化させ、 選択的に分離 • 結晶化、再結晶 繰り返し実施することで、純度が⾼くなる • 医薬品製造、廃液の減容化 26

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吸着 固体-液体、固体-気体、液体-液体、気体-液体などの相と相との 界⾯に成分が集まり、界⾯の成分の濃度が流体中の成分の濃度より ⼤きくなることで分離 • 吸着剤、吸着材、吸着媒︓吸着する⽅ • 吸着質︓吸着される⽅ • 吸着 ⇔ 脱着 物理吸着︓ファンデルワールス⼒、静電気⼒などの相互作用⼒が 働き吸着 化学吸着︓吸着サイトの官能基と化学結合 • アミンによる⼆酸化炭素の分離、活性炭 27

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これまでのまとめ 28