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SaaSのプロダクトを 飛躍させるSIerの仕事術 AWS Startup Tech Meetup Online #7 Kazuaki Shibuya Pinnacles, Inc. 2021/08/25

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自己紹介 渋谷 和暁 ピナクルズ株式会社 CTO & Co-Founder 元独立系SIer。 現在はクラウド動画教育プラットフォーム 『tebiki』を開発しています。

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はじめに ・今回はスタートアップに興味のあるSIerの方に向けたお話です。 ・SIerの働き方はイケてない、スタートアップはイケてるぜみたいな話では  ありません。 ・むしろ、SIer出身者はスタートアップで超活躍できるぞ、と背中を押す  ためのお話です。

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SIerとスタートアップ それぞれどんなイメージ?

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スケジュールは絶対厳守そう ガントチャートを 無限にずらしていそう 途中で仕様変更できなさそう 瑕疵担保責任とか大変そう 仕様が固まってないのに 実装始まってそう ユーザーのクレーム対応が大変そう 枯れた技術を使っていそう SIer スケジュールがゆるゆるそう ホワイトボードに 無限に付箋を貼ってそう 新しい技術を使っていそう スタートアップ

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すべてが本当ではないものの 必要なスキルセットは全く違いそう

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認知のギャップ

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認知のギャップ 実は、SIerが想像するスタートアップと実像には大きなズレがある。 実際 SIerでの経験はスタートアップでも役に立つ SaaSでは飛躍の原動力にもなり得る イメージ スタートアップとやっている仕事が違うから SIerでの経験は全く役に立たない SIerの経験がスタートアップではどのように役に立つかを話すことで、 皆さんのギャップを解消するのが本日の目標です。

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SIerの経験で獲得したスキルは スタートアップでどう役に立つのか

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SIerの経験で獲得できるスキルの例 要件を定義する 認識齟齬をなくす 設計書を書く テスト項目を考える アーキテクチャを 設計する 丁寧に仕事をする

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要件を定義するスキル 顧客かユーザーかの違いだけでインターフェースはほとんど一緒 いかに課題を見つけることができるか 業務プロセスや 顧客ヒアリングを元に 要件を定義する SIer スタートアップ ユーザー行動や インタビューを元に 仮説を立てる

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設計書を書くスキル フォーマットは違えど、アウトプットすべき内容は同じ 誰にでも分かるように書くことはすべての基本 要件定義を どうシステムで表現するか Excelに書く SIer スタートアップ ユーザーの課題を どうシステムで解決するか GoogleDocsに書く

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アーキテクチャを設計するスキル アーキテクチャの考え方はどんなシステムでも普遍的 本で学んだ知識はどこでも活かせる 設計書の内容を 顧客のシステム上に どう構築するか設計する SIer スタートアップ ドキュメントの内容を インフラやアプリで どう構築するか設計する

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認識齟齬をなくすスキル タイミングや目的は違えど合意を取る行為は変わらない 細かいコミュニケーションはいつでも大切 手戻りを少なくするため 検収前でも 細かく確認する SIer スタートアップ スプリントで 開発スコープの チーム合意をとる

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テスト項目を考えるスキル 単体テスト・結合テストそれぞれでテストすべき項目は決まっている どんなシステムでもテストの勘所は変わらない 結合テスト後にExcelに スクリーンショットで テスト結果を貼る SIer スタートアップ テストコードを書いて CIで自動実行する

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丁寧に仕事をするスキル 「丁寧」の定義は人・組織で異なるが 丁寧に仕事をすることはいつでもどこでも重要、超重要 検収ドキュメントの整理や 受け入れテストの 段取りとか SIer スタートアップ ボーイスカウトルールで 違和感を感じたら ついでに修正するとか

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本質的なスキルセットは同じ ・いかに課題を見つけることができるか ・誰にでも分かるように書くことはすべての基本 ・アーキテクチャの考え方はどんなシステムでも普遍的 ・細かいコミュニケーションはいつでも大切 ・どんなシステムでもテストの勘所は変わらない ・丁寧に仕事をすることはいつでもどこでも重要、超重要

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SaaSではSIerの経験が もっと刺さる

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SaaSとは ・その前に、改めて説明すると… ・Software as a Service ・クラウドアプリケーションをサービスとして顧客に提供するビジネスモデル。 ・今回はBtoBの業態での話。  例)

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SaaSの飛躍に結びつくポイント ・営業/CS職種との協働 ・業務プロセスの理解 ・ITに不慣れな顧客への共感

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営業/CS職種との協働 ・SaaSでは営業職が顧客と最初に接点をもち、契約後の顧客に対しての  接点はCS(カスタマーサクセス)職と呼ばれる職種が担当する。 ・つまりエンジニアは顧客との直接的な接点は持たず、営業/CS職が間に挟まる  ことが多い。 ・顧客が求めていることを上手くヒアリングしてもらう必要がある。 ・SIerと構造がかなり似ているので、どうコミュニケーションを取ればいいかを  すでに分かっている強みがある。

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業務プロセスの理解 ・SaaSのビジネスモデルとして、既存の業務プロセスをデジタルリプレイスする  パターンが多い。 ・一方で、業務プロセスはとてもイメージしにくく、かつエンジニアがそれを  経験することも難しい。 ・SIerが受け持つ案件は業務プロセスと常に密結合したもの。つまり業務プロセ  スのイメージをすでに持っている。 ・既存のシステムから逆算して作ることに慣れているので、デジタルリプレイス  という文脈にも強い。

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ITに不慣れな顧客への共感 ・エンジニアと異なり、世間はITにそんなに慣れていない。パソコンを使えない  ことは当たり前だったりする。 ・そういった顧客にもSaaSはサービスを提供する。 ・一方、SIerはレガシーな業界の顧客でも分かるUI/UXを求められてきた。 ・この分かりやすい製品を提供するという考えが生きてくる。

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SaaSの飛躍に結びつくポイント(再掲) ・営業/CS職種との協働  → ビジネスの進め方 ・業務プロセスの理解  → ビジネスの構造 ・ITに不慣れな顧客への共感  → ビジネスの対象 SIer出身者はこの ビジネスモデルへの解像度 がすでに高い

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新たに獲得しなければならない スキルが1つだけある

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自己決定するスキル

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自己決定するスキル ・スタートアップでは誰も正解を知らない。 ・顧客と違って、ユーザーが仕様を判断してくれるわけではない。 ・受託体質と言われるやつがコレ。 ・強い気持ちで自分たちが決める必要がある。 (個人的には顧客に判断を仰ぐことにストレスを感じていたので、そう思う人は  向いていると思います)

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つまり、SIerではしてはいけなかった 「自分で決断」しないとむしろダメ

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弊社で実際にあった例 ・ITに不慣れな顧客はiMovieなんて難しくて使えないという課題があった。 ・そんな顧客でもかんたんに動画が編集できるようにしたいというニーズ。 ・ネイティブアプリでやるという方法もあるにはあった。 iMovieってなんか難しくて使えないんだよね でもみんなが分かりやすい動画は作りたいなぁ ネイティブだとインストールして もらえないとか絶対あるよなぁ

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弊社で実際にあった例 ・全ての動画編集作業がブラウザでできるようになることは、顧客にとっては  最高の体験になるはず、とエンジニアたちが判断し実装した。 ・結果として新たな価値を生み出した。 → 正しい判断かは分からなかったが、自分たちで決断したからこそ実装できた そうそう、こういうの欲しかったんだわ いろいろ考えたけど ブラウザで全部できるようにしたよ

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"「この判断は正しそうか?」「私は自分に正直になってい るか?」「自分がなりたいと思っている理想の人物は同じ ように考えるだろうか?」「私はこの世界の役に立ってい るのだろうか?」" ティール組織 ― フレデリック・ラルー;鈴木立哉;嘉村賢州

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まとめ ・認知のギャップがある。  ・要件定義をする / 設計書を書くなどのスキルセットはスタートアップでも   十分活かせる。 ・SaaSはSIerの経験がもっと活かせる。  ・業務プロセスの理解などの強みがそう。 ・一方で、自己決定するスキルは新たに獲得する必要がある。 ・キャリアのスタートがSIerで良かったと改めて思う。

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SIerで培ったそのスキルを発揮して SaaSを飛躍させよう!

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