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1 応用セッション 2024.01.20 Tokyo.R #110 同じデータでもP値が変わる話

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2 統計的仮説検定 同じデータからは同じ検定結果が得られるもの と考えられがちですが 実際には必ずしもその通りではありません。

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3 例えば コイン投げをして24回中7回が表になったという単純 なデータを考えてみましょう。 このようなデータでも、実験の設定や投げる回数の制 約によって、統計的仮説検定の結果が変わることがあ るのです。

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4 コインを1回投げる 𝑝 𝑦 𝜃 = 𝜃𝑦(1 − 𝜃)(1−𝑦) 𝜃 = 0.5 ベルヌーイ分布 θ: 表が出る確率 y: 1 は表, 0 は裏

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5 コインをN回投げる 裏裏表表裏裏表裏裏裏裏裏裏裏裏裏表裏裏表表裏裏表 表が出る確率 θ 投げる回数 N 表の回数 z 二項分布

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6 統計的仮説検定の流れ 帰無仮説をたてる ↓ 標本分布を計算する ↓ データを観測してP値を求める

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7 帰無仮説をたてる ある統計量がある値と等しいということを帰無仮説と して設定します。 例) コインの裏表が出る確率が50%と等しい 平均値が等しい

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8 標本分布を計算する 帰無仮説が成り立つ場合にその統計量が従うであろう 確率分布(=標本分布)を計算します。 例) コインの裏表が出る確率 → 二項分布など 平均値 → t分布など

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9 データを観測してP値を求める 実際に観測された値、もしくはそれ以上に極端な値が 標本分布に占める面積、つまりそのような値が観測さ れる確率(P値)を求めます。

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10 P値があらかじめ設定したしきい値(たとえば5%)よ りも小さければ、そもそも帰無仮説が間違っていたの だと結論づけます。 逆に小さくなければ帰無仮説を棄却せず、判断を保留 します。 P値で判断

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11 コインを24回投げて7回表が出た このコインは公平か。 データ観測者の意図 コインを24回投げると決めていた。結果として7回表 がでた。

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12 標本分布 表が出る確率 θ 投げる回数 N 表の回数 z 二項分布

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13 データを観測 θ = 0.5 N = 24 z = 7 P値 = 0.064 Sample Proportion z/N p(z/N)

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14 Rのコード

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15 Pythonのコード

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16 コインを24回投げて7回表が出た このコインは公平か。 データ観測者の意図 7回表が出るまで投げ続けると決めていた。結果として 24回投げた。 ↓ 23回投げた時点で6回表が出ており、24回目では表が 出た。

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17 標本分布 N-1回投げた時点でz-1回表が出て N回目は表

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18 データを観測 θ = 0.5 z = 7 N = 24 P値 = 0.017 Sample Proportion z/N p(z/N)

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19 Rのコード

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20 Pythonのコード

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21 投げる回数N 表が出る回数 z • Nを固定する意図ではP値=0.064(判断を保留) • zを固定する意図ではP値=0.017(帰無仮説を棄却) 同じデータを観測しても、観測者の意図によって 検定結果が変わる!

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22 意外にも 観察者の意図やデータ収集の方法が、統計的な結果に 影響を与える可能性があるのです。 このような現象は、統計的な検定の限界や留意すべき 要点を浮き彫りにします。単に数値を見るだけではな く、実験の文脈や条件を正しく理解することの重要性 を示しています。

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23 参考書 飯塚修平. ウェブ最適化ではじめる機械学習. オライ リー・ジャパン, 2020 John K. Kruschke. Doing Bayesian Data Analysis: A Tutorial with R, JAGS, and Stan EDITION 2. Academic Press, 2014