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最⼤流問題と最⼩費⽤流問題 ⼤阪⼤学 ⼤学院情報科学研究科 梅⾕ 俊治 2022年4⽉27⽇
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ネットワークフロー問題 • 交通網,通信網,ライフラインなど現実世界のネットワークで, ⾞両,データ,⽔,ガス,電気などを効率良く流す問題は,ネッ トワークフロー問題に定式化できる. • 多くのネットワークフロー問題は線形計画問題に定式化できるた め,単体法や内点法を⽤れば効率的に最適解を求められる. • ネットワークの持つ構造を利⽤することで,より効率的なアルゴ リズムを開発できる. ü最⼤流問題 → 増加路法,プリフロー・プッシュ法など ü最⼩費⽤流問題 → 負閉路消去法,最短路繰り返し法,ネッ トワーク単体法など ü割当問題 → ハンガリー法など 2
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最⼤流問題 • 有向グラフ ,各辺 の容量 が与えられる. • ⼊⼝ から出⼝ に流れるフローの総量 を最⼤にするには︖ ü⼊⼝ から流出する量=出⼝ に流⼊する量 ü 以外の頂点 から流出する量=頂点 に流⼊する量 ü各辺 の流量は容量 以下 3 * は頂点 を始点とする辺集合, は頂点 を終点とする辺集合. 流量保存制約 辺 の容量(定数) 辺 のフロー量(変数) フロー量 容量
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最⼤流の判定 • 最⼤流かどうかを効率良く判定するには︖ • ⼀部の辺でフローを押し戻す操作でフローの総量が増えることも多い. 4
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残余ネットワーク • 各辺の可能な残りフロー量を表すネットワーク. • 各辺 に対して逆向き辺 を⽤意し,押し戻しが 可能なフロー量を表す. • 増加路︓残余ネットワークの頂点 から頂点 にいたる路. ü増加路が存在する → フローの総量を増加できる ü増加路が存在しない → フローの総量は増加できない(最⼤流) 5 実⾏可能なフロー 残余ネットワーク
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増加路法 • 現在の実⾏可能フローに対する残余ネットワークを求める. • 増加路を1つ求めて実⾏可能フローを更新する*. 6 *グラフに対する幅優先探索などを⽤いれば増加路を求められる.
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増加路法 7 * 辺数, 頂点数, 容量の最⼤値. * 問題例の⼊⼒サイズは なので擬多項式時間アルゴリズムである. 増加路なし 反復回数 総流量の最⼤値 増加路を⾒つけるのに 時間 時間
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s-t カット • 最⼤流を求める際のネットワークのボトルネックは︖ • カット ︓⼊⼝ を含み出⼝ を含まない頂点集合 のカット. • カット の容量︓ から に向かう辺の容量の総和. 8 フローの総量 より フローの総量 カットの容量 カット容量 45
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最⼤フロー最⼩カット定理 • 増加路法が最⼤流を求めることを⽰したい. • 残余ネットワークで頂点 から到達可能な頂点集合を とすると, は最⼩カットで 最⼤フローの総量 最⼩カットの容量 9 *辺の容量いっぱいにフローを流すと残余ネットワークでは逆向きの辺しか残らないことに注意する. 残余ネットワークにおいて から に向かう辺はない* 元のネットワークにおいて から に向かう辺では から に向かう辺では
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最⼩費⽤流問題 • 有向グラフ ,各辺 の容量 ,単位フロー量 当たりのコスト ,各頂点 から流出するフロー量 が与え られる*.総費⽤を最⼩にする実⾏可能なフローは︖ • 最短路問題,最⼤流問題は最⼩費⽤流問題の特殊ケース 10 * 頂点 にフローが流⼊するときは .また, と仮定する. 費⽤ 容量 流出 辺 の容量(定数) 辺 の費⽤(定数) 頂点 の流出量(定数) 辺 のフロー量(変数) 流量保存制約 流⼊
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残余ネットワークを⽤いた最⼩費⽤流の判定 • 最⼩費⽤流かどうかを効率良く判定するには︖ • ⼀部の辺でフローを押し戻す操作で全体の費⽤が減ることも多い. • 残余ネットワークの負閉路に着⽬する. ü負閉路が存在する→フローの総費⽤を減少できる ü負閉路が存在しない→フローの総費⽤を減少できない(最⼩費⽤流) 11 フロー量 /容量 費⽤ 費⽤ 実⾏可能なフロー 残余ネットワーク 容量 費⽤
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負閉路消去法 • 現在の実⾏可能フローに対する残余ネットワークを求める. • 負閉路を1つ求めて実⾏可能フローを更新する. 12 *残余ネットワーク上の負閉路は,最短路問題に対するベルマン・フォード法などで求められる. ⾃明な初期実⾏可 能解を与えるため に頂点と辺を追加
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負閉路消去法 • 現在の実⾏可能フローに対する残余ネットワークを求める. • 負閉路を1つ求めて実⾏可能フローを更新する. 13 原問題の 初期実⾏可能フロー
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負閉路消去法 14 負閉路なし 反復回数 費⽤の最⼤値 負閉路を⾒つけるのに 時間 時間 * 費⽤の最⼤値.
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(被約費⽤)とおくと 最短路繰り返し法 • 最⼩費⽤流問題は線形計画問題に定式化できる. • 主双対法︓双対問題の制約条件と相補性条件を満たしつつ, 主問題の制約条件の違反量を繰り返し減少して最適解を求める. 15 主問題 双対問題 相補性条件 主問題の実⾏可能解 と 双対問題の実⾏可能解 が 最適解となるための必要⼗分条件 反復のたびに違反量を減少
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最短路繰り返し法 最⼩費⽤流問題の最適性条件 最⼩費⽤流問題の実⾏可能なフロー が最適であるための必要 ⼗分は,残余ネットワークの全ての辺に対して となる が存在することである. 16 ある辺 において ならば, より ならば, より ならば, より . これらの条件の対偶より得られる. 最⼩費⽤流問題の相補性条件 最⼩費⽤流問題の実⾏可能なフロー が最適であるための必要⼗分 条件は,全ての辺 に対して となる が存在することである. 残余ネットワークでは逆向き 辺のみ残るので,全ての辺で が成り⽴つ ポテンシャルと呼ぶ
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最短路繰り返し法 • 流量保存制約を満たさない頂点間 の最短路にフローを流す. ⼿続きを繰り返す.ただし,辺 の⻑さを被約費⽤ とする. • 頂点 のポテンシャル を最短路の⻑さ だけ増やす. 17 違反量 容量 AAACvHichVHLSsNAFD3Gd3006kZwIxZFN2UiRcWFFNy4rNZawUpI4lRD8yJJKzX0B/wBF+JCQUX8DDfi3oWfIC4ruHHhTRoQldY7TObMmXvunMlVHUP3fMZeuoTunt6+/oHBxNDwyGhSHBvf8eyqq/GCZhu2u6sqHjd0ixd83Tf4ruNyxVQNXlQr6+F5scZdT7etbb/u8H1TObT0sq4pPlGyOFZSFTfQGjKfL6lmUG8syGKKpVkU03+BFIMU4sjZ4hNKOIANDVWY4LDgEzagwKOxBwkMDnH7CIhzCenROUcDCdJWKYtThkJshb6HtNuLWYv2YU0vUmt0i0HTJeU0Ztkzu2NN9sju2Sv7bFsriGqEXuq0qi0td+Tk6WT+41+VSauPo29VR88+yliJvOrk3YmY8BVaS187OWvmV7dmgzl2xd7I/yV7YQ/0Aqv2rl1v8q3zDn5U8tL+jwXElb/dUhul3037C3YW09JSOrOZSWUzcUMHMIUZzFPXlpHFBnIo0C3HuMANboU14UCoCGYrVeiKNRP4EULtC8m8n6E= ¯ ce (y)
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最短路繰り返し法 • 流量保存制約を満たさない頂点間の最短路に沿ってフローを流す ⼿続きを繰り返す. 18 反復回数 違反量の総和 最短路を⾒つけるのに 時間 時間 更新されたポテンシャル の下での被約費⽤ 最短路の⻑さは三⾓不等式を満たすので したがって,常に が成り⽴つ. 違反なし
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割当問題 • ⼈の学⽣を 個のクラスに割り当てる.各クラス の受講者の 上限を ,各学⽣ を各クラス に割り当てたときの満⾜度を とする.学⽣の満⾜度を最⼤にするクラス編成は︖ 19 学⽣ をクラス に割り当てる(変数) 学⽣ クラス 学⽣ のクラス に対する満⾜度(定数) クラス の受講者数の上限(定数)
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割当問題→最⼩費⽤流問題 • 各学⽣に対応する頂点 ,各クラスに対応する頂点 • 頂点 から各学⽣ への辺 容量1, 費⽤0 • 各クラス から頂点 への辺 容量 ,費⽤0 • 各学⽣ から各クラス への辺︓容量1,費⽤ 20 学⽣ クラス 容量 費⽤ 実⾏可能流 定員を満たす割当て 実⾏可能流の費⽤ 学⽣の満⾜度の合計
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参考⽂献 • 久野誉⼈,繁野⿇⾐⼦,後藤順哉,数理最適化,オーム社,2012. • 繁野⿇⾐⼦,ネットワーク最適化とアルゴリズム,朝倉書店,2010. • R.A.Ahuja, T.L.Mangnanti and J.BOrlin, Network Flows: Theory, Algorithms, and Applications, Peason Education, 2014. 21