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1 緩和時間と相関長の話 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 渡辺 2021/01/28

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2 二つの変数の間の関係を表すもの Xが増えた時にYが 増える(正の相関) 減る(負の相関) 変化しない(無相関)

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3 緯度 平均気温 ※因果関係のある例

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4 アイスの売り上げ 水難事故の件数 ※典型的な疑似相関

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5 二つの確率変数X, Yの、ある時刻 s, tにおける相関 , = () 相関がs,tの差にのみ依存するなら = 0 (0 + ) 自分自身との相関(自己相関関数) = 0 (0 + ) 確率に関する平均

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6 ≈ −/ 自己相関関数は指数関数的に減衰することが多い 緩和時間 概ねτの時間の間は似たような値を保つ 自己相関関数:自分の状態をどれだけの時間覚えていられるか 緩和時間:「状態の忘れやすさ」を特徴づける時間スケール

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7 ランジュバン方程式 = − + ෠ 抵抗による減衰 溶媒による揺動力 揺動力に関して平均を取ると ҧ = − ҧ = / ҧ ~−/ ≈ −/ 質量が大きいほど、抵抗が小さいほど「ゆっくり」動く

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8 速度 時刻 一次元ランジュバン方程式のシミュレーション例 緩和時間 「いま右に動いている」という状態が、概ね緩和時間の間だけ続く

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9 ෤ () 2 ෤ () 2~ 1 −2 + 2 時間相関がある→ゆっくり動いている→慣性を感じている ウィーナー・ヒンチンの定理: 自己相関関数とパワースペクトルは互いにフーリエ変換の関係にある

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10 二つの確率変数X, Yの、ある場所 r1, r2における相関 1 , 2 = 1 (2 ) 相関が二点間距離にのみ依存するなら = 1 (2 ) 自分自身との相関(相関関数) = 1 (2 ) = 1 − 2

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11 ≈ −/ 相関関数は指数関数的に減衰することが多い 相関長 概ねλの距離まで影響が届く 相関関数:自分の状態が周りにどれくらい影響を及ぼすか 相関長:「影響の薄れやすさ」を特徴づける長さスケール

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12 一次転移 連続転移 ※必ずしも上記に該当しない場合もある 自由エネルギーの 一階微分が不連続 自由エネルギーの 高階微分が不連続 転移点で相関長が有限 転移点で相関長が発散

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13 p=0.40 (臨界点から遠い) クラスターサイズ〜相関長 • 臨界点に近づくとクラスターサイズが成長 • 臨界点でクラスターサイズが無限大に→相関長が発散 p=0.48 (臨界点に近い) 正方格子上のボンドパーコレーション

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14 圧力 自由エネルギー 液体状態 気体状態 相転移点 自由エネルギーの低い方へ乗り換える→一階微分不連続 相転移点で、二つの相の自由エネルギーが等しい→共存できる

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15 液相 気相 密度 位置 相関長 界面の厚み〜相関長 「液相がある」という情報が どこまで気相に染み出すか

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16 三重点 温度 圧力 固相 液相 気相 O • 気体と液体は相転移を経ずに移り変わることができる • 線をまたぐと一次転移 • 相境界線直上で相共存 • 臨界点に近づくと相関長が発散→連続転移 臨界点

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17 相関とは「影響がどこまで届くか」を調べる指標 緩和時間と相関長は「系に特徴的なスケール」 相転移には一次転移と連続転移があり、転移点に おける相関長の振る舞いが異なる 緩和時間:ある時刻の状態を忘れるまでの時間 相関長:ある場所の状態の影響が届く距離