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コンパートメントモデル 2021/4/20 Ver. 1.0

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薬物動態モデル(PKモデル)とは? 血中・体内での薬物濃度・量を数式モデルで示したもの 吸収、血中分布、組織分布、排泄を数式モデルで表現する http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat14/stat1401.html

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PKモデルを解く(1) 単純な静注1コンパートメントモデルから考える (q 0 : 投与量、V d : 血液の体積、 C: 血中濃度、k: 排出定数) • 測定からわかるのは、q 0 、Cだけ • 排出速度は血中濃度に比例する • Cの時間変化から、vが知りたい

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PKモデルを解く(2) Cの時間関数を解く (q 0 : 投与量、V d : 血液の体積、 C: 血中濃度、k: 排出定数) • 時間t a におけるC(t)は排出速度vの積分 𝐶 𝑡𝑎 = න 0 𝑡𝑎 𝑣 𝑑𝑡

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PKモデルを解く(3) Cの時間関数を微分する (q 0 : 投与量、V d : 血液の体積、 C: 血中濃度、k: 排出定数) • C(t)の時間微分はvになる 𝑑𝐶(𝑡) 𝑑𝑡 = 𝑣 = −𝑘 ∙ 𝐶(𝑡) C(t)とC’(t)の方程式=微分方程式 になる

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微分方程式を解く 𝑑𝐶(𝑡) 𝑑𝑡 = −𝑘 ∙ 𝐶(𝑡) 微分方程式は比較的に簡単に解けて、 𝐶 𝑡 = 𝐶(0) ∙ 𝑒−𝑘𝑡 C(0)=q0/Vd(既知の定数)なので、回帰から-kが求まる 薬物の排出速度についての知識が得られる

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経口製剤の1-コンパートメントモデル 吸収区画が加わる • 吸収区画から血液区画への移行を考慮する • C(t)の時間微分は、吸収速度と排出速度の差になる 𝑑𝐶(𝑡) 𝑑𝑡 = 𝑣𝑎 − 𝑣𝑒 = −𝑘𝑎 ∙ 𝐶𝑎 (𝑡) +𝑘𝑒 ∙ 𝐶𝑐 (𝑡) C c (t)とC c ’(t)の方程式=微分方程式 になる

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微分方程式を解く 𝑑𝐶(𝑡) 𝑑𝑡 = 𝑣𝑎 − 𝑣𝑒 = −𝑘𝑎 ∙ 𝐶𝑎 (𝑡) +𝑘𝑒 ∙ 𝐶𝑐 (𝑡) 複雑ではあるが、微分方程式は解けて、 𝐶𝑐 𝑡 = 𝑞0 𝑘𝑎 𝑣𝑐 𝑘𝑎 − 𝑘𝑒 (𝑒−𝑘𝑎𝑡 − 𝑒−𝑘𝑒𝑡) 定数をまとめてしまうと、 𝐶𝑐 𝑡 = 𝐴(𝑒−𝛼𝑡 − 𝑒−𝛽𝑡) A、α、βが求まれば、血中濃度を回帰できる

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溶解を含めた補正 溶解のために吸収区画の薬物量と吸収速度にラグが生じる場合 𝑇 = 𝑡 − 𝑡𝑑𝑖𝑠 (t: 投与後時間、t dis : 薬物溶解にかかる時間) として、C(t)の代わりにC(T)で回帰する 𝐶𝑐 𝑇 = 𝐴(𝑒−𝛼𝑇 − 𝑒−𝛽𝑇)

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経口製剤の2-コンパートメントモデル 組織区画が加わる • 血液区画から組織区画への移行を考慮する • C(t)の時間微分は、吸収/分布/排出速度の関数になる

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経口製剤の2-コンパートメントモデル 2-コンパートメントモデルにおける微分方程式 https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/lmsr/pdf/2020-5.pdf X0は前ページのCa、X2はC2、Cp,poはC1となる。Cp,poが血中濃度 これは連立微分方程式で、解が複雑になる

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微分方程式を解く 2-コンパートメントモデルにおける微分方程式の解 https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/lmsr/pdf/2020-5.pdf 四角で囲った部分が血中濃度

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数式モデルで線形回帰する 回帰して、定数(A3, A4, A5, α, β, k a )を求めればよい が、この式は解ける形ではないので、解けない

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なぜ解けない? 単純化のため、A5=0とすると、 • A3=1, α=1, A4=2, β=2とすると、 𝐶 𝑡 = 𝑒−𝑡 + 2𝑒−2𝑡 • A3=2, α=2, A4=1, β=1とすると、 𝐶 𝑡 = 2𝑒−2𝑡 + 𝑒−𝑡 必ず解を2セット持ってしまう(どちらかに特定できない) 同じ!

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なぜ解けない? A 3 とα, A 4 とβ, A 5 とk a がセットで入れ替え可能 3 C 2 =3通り以上の答えを持つので、現実的に解けなさそう

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近似解を用いる 最後の項の係数を置き換える https://biostat.jp/archive_teireikai_2_download.php?id=146 1コンポーネントモデルのExcelソルバーについてもココに記載 これも解を2つ持つが、まだ解ける可能性がある この数式で回帰ができれば、血中濃度曲線を書ける