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Claude Codeは仕様駆動の夢を見ない
 Gota (@gota_bara)
 
 2025/8/8 : Claude Code Meetup Japan #2 


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Claude Code / Windsurf / Cursor / Devinも先⽇契約! 自己紹介
 Gota (@gota_bara) 所属 株式会社フェズ データアナリスト & エージェントエンジニア やってること ⼩売向けデータプロダクト / AIエージェント開発 / データ基盤構築 使ってる Coding Agent 興味 スマートグラス / ☕ / 🏕(夏以外) / アニメ Claude Codeで 仕様駆動開発できる ようにしてます バックエンドエンジニア‧ データエンジニア絶賛募集中

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今日話すことの元ネタ 
 「思春期症候群」: 理想とのギャップの⼼理状態が超常現象として現れる (超訳)

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Claude Code
 “Code”という名を冠した汎⽤CLIエージェント。コーディングによく使われる ● ⾃⾛⼒が⾼く、複雑なコードベースでも的確に実装できる ● Slash Commands, Hooks, Subagents等⾃由度が⾼いカスタマイズが可能 ● Claude Max 200ドルプランなら、Opus 4.1がたくさん使える!

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Claude Codeによるパラダイムシフト
 設計
 計画
 実装
 テスト
 デプロイ
 Claude Codeが巻き取れる領域の拡⼤ ● How(どのように実装) からWhat (何を実装するか)へシフトし、事業の価値 提供に向き合える構造になりつつある ● 個⼈レベルではなく、Claude Codeをチーム開発で利⽤する際の問題(思春 期症候群)が顕在化してきている

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チーム開発の思春期症候群


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File①: 存在忘却 / 桜島麻衣
 思春期症候群な現象 理想 ● プロダクトの意義や⽬的が共有されてい ないため、UXや将来を⾒越した設計がで きず、チームとユーザーの両⽅から使わ れないものが作られる ● 思いやこだわりはAIには読み取れない 周囲の記憶から⾃分の存在感が薄れ、誰にも気づかれなくなってしまう ステークホルダー間で顧客提供価値やプ ロダクトビジョンの共通認識がある

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File②: タイムループ / 古賀朋絵
 思春期症候群な現象 理想 ● PdMやビジネス側と隠れた要件やその受 け⼊れ基準が⾔語化できておらず、何度 も同じようなスプリントを繰り返す ● 後から⼤量の受け⼊れ基準が追加されて いく 同じ⼀⽇を何度も繰り返すかのように、終わらない“やり直し”に閉じ込められる 曖昧な中でも明確な仮説を⽴て、それら が詳細に⾔語化されている

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File③: 記憶リセット / 梓川花楓
 思春期症候群な現象 理想 ● ⼊社以前からの引き継ぎが⾏われずなぜ その決定に⾄ったかが残ってない ● プロジェクトのドキュメントが⾄るとこ ろに存在する ● プロジェクトルール‧コーディング規約 等が整備されていない ある⽇を境に過去の記憶がすべて消え、新しい⾃分としてやり直さざるを得なく なる プロジェクトのコンテキストが同じ場所 で永続的に管理されている

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Claude Codeを既存の開発に利⽤していくためには、⼈間が関わる計画段階や運 ⽤の開発プロセス⾃体を⾒直す必要がある 特にコンテキスト管理を徹底する必要があるが、⼈間が⾏うのは⾮常に難しい ● 理想像が描けていない、共通認識がない ● 要求を適切に⾔語化できていない ● プロジェクトに関わるコンテキストが⽋けている 既存開発プロセスの限界


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Kiroの登場!
 
 AWSが発表したプロトタイプから本番環境まで共創するAgentic IDE

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AI-Driven Development Lifecycle (AI-DLC)
 
 
 
 ⼤規模な複雑システム構築のためにツール、役割、セレモニーを調整することに 特化して設計されたAIネイティブな⽅法論 AWS DevSphere 2025

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ソフトウェア開発プロセスをAI中⼼に変⾰するためのIDE ● ⼈間の監視によるAIの実⾏ ○ AIが詳細な作業計画を体系的に作成し、⼈間が フィードバック‧意思決定を⾏う ● 動的なチームコラボレーション ○ 定型業務はAIに任せるが、チームは⼀箇所に集結して リアルタイムな問題解決、迅速な意思決定を⾏う チーム開発でのデリバリー速度をAI主導で数⽇‧数時間にする Kiroとは
 https://aws.amazon.com/jp/blogs/devops/ai-driven-development-life-cycle/

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Kiroの特徴
 Specs ● 仕様書を要求定義 → 詳細設計 → タスク分解で3層で⾃動⽣ 成 ● 各段階で⼈間の承認が必要 ● 仕様書は適宜更新される Steering ● プロジェクト全体の知識を永 続的に記録管理し、コード⽣ 成の⼀貫性を保つ ● CLAUDE.mdより構造化かつ コンテキスト管理がしやすい Agent Hooks ● 定型業務をバックグラウンド タスクとして実⾏。 ● イベント駆動のドキュメント ⽣成、ユニットテスト作成な どを任せられる ● AI-DLCの⽅法論が仕様駆動開発として誰でもIDE上で同じように使える ● 明確なワークフローかつ⼈間の承認点を最⼩限に設計されている 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装 Steering Specs

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Claude Codeで仕様駆動開発を行えるようにしました!
 Claude Code Spec 作りました! ‧claude-code-specのGithub: https://github.com/gotalab/claude-code-spec ‧AWSの中の⼈が考える現時点でのAIネイティブの開発ライフサイクルのため、忠実なリバースエンジニアリングにチャレンジしている ● KiroのSpecsとSteeringのフローをCustom Slash Commandsで再現 ● Kiroの出⼒に忠実になるようコンテキストエンジニアリング ● Kiroと同じドキュメント構成を再現しているためKiroと互換性あり 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装 Steering Specs

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要求定義 (requirements.md)
 複雑な業務知識や曖昧な要求でも明確な⾔語化できる記法が定められている 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装 ユーザーストーリー ● Why/ Who / Whatの明確化 ● 記法: As a [role], I want [function], so that [business value] ユニット 受⼊基準 ● 具体的な振る舞いの⾔語化 ● 記法: EARS記法 ○ 航空‧半導体等の厳密性が求められる ドメインで採⽤実績 ○ 曖昧さを排除できる ○ 6種類の決まったパターンで記載 ● 備考 ○ 番号付きリストで作成することでテス ト⽣成やタスクとマッチさせる ‧記法が厳密に定められており、LLMが読みやすく‧出⼒しやすい

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Claude Codeで出力をさらに良くするためにやっていること
 ● 要求定義書は最上級の推論モデル(Opus 4.1 thinking mode, GPT-5)を使う ○ Slash Commands内に`think`⼊れているので、気にしなくてもOK claude-code-specの/kiro:spec-requirementsの⼀部

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ちなみに...
 ● GPT-5はコード探索と計画で⾮常に強く複雑なコード理解のタスクに向く ● 性能評価 + Claude CodeでGPT-5の推論⼒を使うことも兼ねて gpt5-mcp-server 作成 ・引用: https://x.com/cognition/status/1953521663196508453 ・gpt5-mcp-server: https://github.com/gotalab/gpt5-mcp-server

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詳細設計 (design.md)
 詳細設計の特徴は「技術調査フェーズ」 そのスタックにした理由を説明できる必要がある 1. Steeringファイル群の調査 ○ プロジェクトの技術制約‧アーキテクチャの理解 ○ 既存の技術スタック‧コーディング規約の把握 2. 既存コードベースの詳細調査 ○ 実際の実装パターン‧アーキテクチャの分析 ○ 類似機能の実装を参考 3. 依存関係とインフラ調査 ○ 既存の依存関係‧ライブラリバージョンの調査 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装 ‧項⽬: アーキテクチャ、スタック、Data Flow、インターフェイス、データモデル、エラーハンドリング、テスト戦略、ドメインモデル

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Claude Codeで出力をさらに良くするためにやっていること
 ● 新規仕様は最新情報を取得した上で、技術スタックを決められるようにする ○ WebSearchツールで最新の情報をWeb調査させる ● Web調査はSubagentsで並列化し、コンテキスト消費を最⼩限にする ○ SubagentsでsearchAgentを作って、タスクを委任する ● (やりはじめ) Web調査をo3/gpt-5 + web searchに任せる ○ よしこ⽒(@yoshiko_pg)のo3-search-mcpを使う ○ gpt5-mcp-serverは今⽇の朝作りました (動きはする) ‧o3-search-mcp: https://github.com/yoshiko-pg/o3-search-mcp ‧gpt5-mcp-server: https://github.com/gotalab/gpt5-mcp-server

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タスク分解 (tasks.md)
 要求、詳細設計からコードの記述、修正、テストに関するタスクに分解する 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装 タスク ● Markdownのcheck list単位で1タスク ● 各段階で複雑性を抑える形でタスク分解 ● Check list形式でファイル作成すれば、Kiro でStart taskが表⽰され、実⾏もできる笑 要件 ● requirements.mdの受け⼊れ基準の番号と マッチするように記載 ● 境界が明確になるため、レビュー負荷が⼤幅 に低減

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Claude Codeで出力をさらに良くするためにやっていること
 ● タスク分解も最上級の推論モデル(Opus 4.1 thinking mode)を使う ○ Slash Commands内に`ultrathink`⼊れているので、気にしなくてもOK claude-code-specの/kiro:spec-tasksの⼀部

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実装フェーズ
 Kiroではタスクを⼀つずつ⾏うことが推奨されている 要求定義 詳細設計 タスク分解 実装

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Claude Codeで実装をどうやっているか
 現在の⽅針: タスクごとに/compactを⾏わないように実装する 1. Subagents (kent-beck-tdd-developer)に委任して実装 2. イシュー化Slash Commands → Claude Code Github Actionsで実装 ‧claude-code-specではどっちも未リリースです。Subagentsは要望多ければもう少しちゃんと検証してリポジトリにあげるかも

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まとめ
 ● 思いのこもった仕様は⼈間の中にしかないが、それを⾔語化して落とし込む のは難しい ● Claude Codeは爆速で実装できるが、何を作るかを適切に設計する必要があ る ● 価値提供を迅速にするには既存の開発プロセス⾃体をAI中⼼に再設計する必 要がある。AI-DLCと仕様駆動開発が⼀つの考え⽅のベースとして良い ● Claude CodeだとOpus4.1、推論、Web調査がデフォルトで組み込まれてい るため、⾼品質な仕様駆動開発が実現出来る Claude Codeの爆速開発の夢を⾒るなら開発プロセスも変⾰しようぜ!

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ありがとうございました!
 質問等あればお気軽に連絡ください! 
 X: @gota_bara