PHPの ガベージコレクション を深掘りしよう PHPer Kaigi 2025 Day 2 LT Rinchoku

アジェンダ ● ガベージコレクションとは ● PHPのガベージコレクションについて ● まとめ

最初に PHPで開発をしていてメモリ関連で下記経験したことあります か？

最初に PHPで開発をしていてメモリ関連で下記経験したことあります か？ ● PHP Fatal error: Allowed memory size of ******bytes exhausted (tried to allocate XXXXbytes) ○ memory_get_usage(true)でメモリ使用量を見たり

最初に PHPで開発をしていてメモリ関連で下記経験したことあります か？ ● PHP Fatal error: Allowed memory size of ******bytes exhausted (tried to allocate XXXXbytes) ○ memory_get_usage(true)でメモリ使用量を見たり ● 古いPHPバージョン環境で謎のunset

最初に なぜPHPerがメモリの管理・解放を気にしなくていいのか

最初に なぜPHPerがメモリの管理・解放を気にしなくていいのか 「PHPは勝手にメモリ管理してくれるよ」という 教えされた人もいるかも？

最初に なぜPHPerがメモリの管理・解放を気にしなくていいのか ガベージコレクションが実装されてるから

最初に ただ、 ガベージコレクション聞いたことあっても よく知らない

最初に たとえば、 ● どういうロジックで メモリを開放しているのか ○ 未使用ってどうやって決めているの？ ● どのタイミング で呼び出されるのか

ガベージコレクションとは ● 動的に確保したメモリ領域から、不要となったメモリ領域を 解放し空き領域として再利用できる ための機能 ○ よく掃除のおばちゃんに例えられる ● メモリの再配置は行わない ● C/C++、Rustはガベージコレクションがない ● 主に下記手法が存在する ○ reference counting(参照カウント) ○ mark-and-sweep

PHPのガベージコレクションについて ● PHP5.3(2009年6月30日)から追加された機能 ○ 循環参照のバグなどはあったものの ● PHPはReference Counting(参照カウント )を採用 ○ 深さ優先探索を利用 ○ Concurrent Cycle Collection in Reference Counted Systemsを 採用 ● ガベージコレクションのロジックは下記に記載 ○ php-src/Zend/zend_gc.c ○ php-src/Zend/zend_gc.h ● 参照カウントやフラグの管理は php-src/Zend/zend_types.h

Reference Countingとは ● PHPの変数(zval)は下記4つの情報を持つ ○ 型 ○ 値 ○ is_ref ■ 「参照集合」の一部かどうかを示すブール値 ○ refcount ■ 1つの zval コンテナをどれだけ多くの 変数名が指すか ■ 「変数名」を「シンボル」とも呼ばれる ● 各スコープ単位にシンボルテーブルが 1つ作られ、変数名はこの シンボルテーブルに保管される

実際に見てみる

実際に見てみる refcountじゃない？

インターン化 ● PHP5.4以降に追加された文字列のインターン化 ● 同一の文字列を参照する場合に値を共有するための機能

実際に見てみる

Reference Countingとは ● ガベージコレクションが動く条件 ○ refcountが減少した時 ■ refcountが0であれば解放 が可能 ■ refcountが減少した時はゴミ候補 入り ● 詳しくは「ガベージコレクション > 循環の収集」を参照 ○ root_bufferが保有する値が一定値を超える

Reference Countingとは ● 内部的に色でRoot Zvalの状態を管理 している ○ BLACK：ベース。使用中か解放可能かは不明 ○ GREY：探査をして、refcountを1減少させたもの ○ WHITE：探査をした結果、解放できる ○ PURPLE：GC対象のRoot Zval ■ 変更のたびに各zvalを確認するのを防ぐ目的 ● 他にもGREEN、RED、ORANGEがあるが、PHPでは利用していな い

Reference Countingとは

PHPのガベージコレクションの動き 1. Root ZvalからGrayにマークをつける ○ GrayではなかったzvalをStackしておく ○ refcountを-1する 2. Root Zvalを探査する ○ GrayのRoot Zvalに対して i. refcountが正→Blackに変更 ii. GrayのzvalをWhiteに変更 3. Whiteにマークされたものを収集し、解放 ○ 収集時、White-> Blackに変更

PHPのガベージコレクションの動き 1. Root ZvalからGrayにマークをつける ○ GrayではなかったzvalをStackしておく ○ refcountを-1する 2. Root Zvalを探査する ○ GrayのRoot Zvalに対して i. refcountが正→Blackに変更 ii. GrayのzvalをWhiteに変更 3. Whiteにマークされたものを収集し、解放 ○ 収集時、White-> Blackに変更

PHPのガベージコレクションの動き 1. Root ZvalからGrayにマークをつける ○ GrayではなかったzvalをStackしておく ○ refcountを-1する 2. Root Zvalを探査する ○ GrayのRoot Zvalに対して i. refcountが正→Blackに変更 ii. GrayのzvalをWhiteに変更 3. Whiteにマークされたものを収集し、解放 ○ 収集時、White-> Blackに変更 削除のシミュレーション 循環参照により、未使用変数を見つけ る布石

PHPのガベージコレクションの動き 1. Root ZvalからGrayにマークをつける ○ GrayではなかったzvalをStackしておく ○ refcountを-1する 2. Root Zvalを探査する ○ GrayのRoot Zvalに対して i. refcountが正→Blackに変更 ii. GrayのzvalをWhiteに変更 3. Whiteにマークされたものを収集し、解放 ○ 収集時、White-> Blackに変更 循環参照を考慮して無限ループを回避 変更前に削除対象として収集済み

PHPのガベージコレクションの動き どういう動きをするかは分かった

PHPのガベージコレクションの動き どのタイミングで呼び出されているのか？

ガベージコレクションが実行されるまで (RootBuffer) 1. zend_assign_to_variable 2. GC_DTOR_NO_REF 3. gc_check_possible_root 4. gc_possible_root 5. gc_possible_root_when_full 6. gc_collect_cycles

zend_assign_to_variable(zend_execute.h)

zend_assign_to_variable(zend_execute.h)

GC_DTOR_NO_REF(zend_types.h)

GC_DTOR_NO_REF(zend_types.h)

gc_check_possible_root(zend_gc.h)

gc_check_possible_root(zend_gc.h)

gc_possible_root(zend_gc.c)

gc_possible_root(zend_gc.c)

gc_possible_root_when_full(zend_gc.c)

gc_possible_root_when_full(zend_gc.c)

至る所でgc_collect_cycleは呼ばれている ● returnを行う ○ ZEND_RETURN_SPEC_CONST_HANDLER ○ ZEND_RETURN_SPEC_TMP_HANDLER ● 代入を行う ○ zend_assign_XXXX

まとめ ● PHPにはガベージコレクションが存在する ○ ガベージコレクションがメモリの解放を行っている ● PHPのガベージコレクションとして参照カウント を採用 ● ガベージコレクション関連のコードはPHPのソース上に色んな 所にある ● ガベージコレクションを調べるだけで、PHPの他の機能につい て軽く知れるので、皆さんもやってみよう

自己紹介 ● 氏名：Rinchoku (リンチョク) ● 所属：eForce株式会社(近々…) ● X：@stupid_owl ● コミュニティ ○ SRE NEXT 2025 コアスタッフ ○ SRE Kaigi 2025 コアスタッフ ● 趣味 ○ ハンドメイド ○ 宝石鑑賞

参考 ● https://github.com/php/php-src ● https://www.php.net/manual/ja/features.gc.php ● https://qiita.com/hinako_n/items/8a7b366a3fe09f43dce8 ● https://www.php.net/manual/ja/features.gc.performance-considerations.php ● https://qiita.com/genie-oh/items/e6dfc49fb9899f931271 ● https://fortee.jp/phpcon-2022/proposal/1addf51d-6f72-4c96-9337-034ec6c c0643 ● https://qiita.com/pseudo_foxkeh/items/a15e4a5fd6ba679d4841 ● https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%99%E3%83%BC%E3%8 2%B8%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3 %83%B3

ご清聴ありがとうございました