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時間知覚の勉強ノート #1

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はじめに:言葉の整理

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● 「マルチスケール」の時間哲学の提示 ● 意識・心の問題へのマルチタイムスケール からのアプローチの例示 ● 「未完了」現在のメカニズム ● 純粋記憶の解釈 ● 運動記憶による空間の構成 ● 時間と決定論との関係 タネ本

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主観的な時間とは

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主観的な時間とは 客観的な 時間 主観的な 時間 個人が感じる時間のこと その人の感情や記憶、個人的な視点に影響されます。 時計が計測する時間や、天体の動きなど物理法則で記述される時間など、科学的 ・数学的な時間の捉え方。 個人の認識とは無関係に、固定された測定可能なものであると考えられている。

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客観的な時間 - 「1秒」の定義 天文学的定義(初期) 1秒はもともと「1/86,400(=1日)」と定義されていました。 これは1日を24時間、1時間を60分、1分を60秒として計算されたもの 国際単位系(SI)(1967年) セシウム原子の特定のエネルギー遷移による振動数を基にした秒の定義が提案されました。 1967年には、秒は「セシウム133原子が基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対して 9,192,631,770回振動する時間」と定義されました。

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客観的な時間 - 社会的なニーズ https://www.youtube.com/watch?v=LLOH7Bpm46c

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客観的な時間 - 社会的なニーズ ● 調整と同期 ○ 多数の人々や機械、システムが同時に動作するための基礎を提供します。 例:鉄道スケジュール、ストックマーケットの取引時間 ● 予測と計画 ○ 経済活動やプロジェクトマネジメントでは、精確な時間の計測が必要です。 予測と計画は、絶対時間に依存して高度に最適化されます。 ● 法的・契約的な問題 ○ 締切りや有効期限は、絶対時間に基づいて設定されます。 これは法的な証拠や契約遵守の判断基準となります。 ● 歴史的・文化的記録 ○ 歴史的な出来事や文化的な瞬間を客観的に記録する手段を提供します。 ● 科学的研究 ○ 客観的なデータ収集や実験設計は、時間定義に依存しています。 特に、時間に敏感な現象(例:速度、加速度)の研究に不可欠です。 客観的な時間定義は、ひろく社会を同期するのに、便利

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時間の定義 - 物理学 ニュートンの時代(17世紀) 絶対時間(Absolute Time)は、ニュートンによって提唱された概念で、時間が一定の流れを持 ち、観測者に依存しないとする考え方です。 絶対時間は、物体が動く空間(絶対空間)とは独立に存在するとされました。 アインシュタインと特殊相対性理論(1905年) 時間と空間は相対的なものであり、観測者に依存するとされました。 これにより、絶対時間の概念は古典的な意味での妥当性を失いました。

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主観的な時間とは 客観的な 時間 主観的な 時間 個人が感じる時間のこと その人の感情や記憶、個人的な視点に影響されます。 時計が計測する時間や、天体の動きなど物理法則で記述される時間など、科学的 ・数学的な時間の捉え方。 個人の認識とは無関係に、固定された測定可能なものであると考えられている。

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主観的な時間 - 3つの分類 1/時間知覚  現在進行形で事象が発生する際に感じる知覚   ・例えば、鳥が飛ぶ様子を眺めたり、音楽が流れるのを聴いたりする時の感覚    ・「心理的現在」とも呼ばれ、特別な努力をせずとも記憶される比較的短い時間の幅での体験のこと 2/時間展望  過ぎ去った過去の出来事を振り返ることや、未来の予測を考える際に体験するもの   ・現在を超えて、数日前や数年前、または数日後や数年後の出来事に対するもの   ・この過程では、知覚よりも記憶や想像力が中心的な役割を担う 3/時間概念  出来事が相互にどのように関連し合いどれだけの期間続くかを考慮して、整合性のある連続体 を形成することで理解されるもの ・自意識の連続性についてのもの

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瞬間 と 持続

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瞬間とは 瞬間 = 1個体が、内在的に弁別可能な最小の時間幅 直接的な経験や感覚によって捉えられる、断片的で一時的な時間の点を指す。 個体ごとの知覚には、それぞれの「時間の最小単位」 がある。

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時間分解能とは 時間分解能 = どれだけ細かく時間を捉えられるかの能力 個体ごとの知覚には、それぞれの「時間の最小単位」 がある。 時間分解能を超えるものは、別々の要素として識別することができなくなる 例.人間の視覚は20ミリ秒の 時間分解能を持っている。

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時間分解能の例.1 速すぎる時間変化は認識できない 蛍光灯は、毎秒100回点滅 (10ms) 時間分解能 7ms ->点滅 時間分解能 20ms ->点灯

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人間の感覚器ごとの時間分解能 聴覚 音の区別:約2 - 5ms 音の方向感知:約10ms 視覚 点滅の認識:約13 - 100ms フレーム認識(動画、ゲーム):16.7ms(60FPS) 触覚 バイブレーション感知:約10ms 痛みの反応:約500ms 味覚・嗅覚 一般的には 100msから数秒(具体的なms単位のデータは少ない) = 感覚器ごとに「瞬間」が異なる

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持続とは 持続 = 1個人が、内在的に連続量として知覚する時間幅 「瞬間」を超えた連続体を意味するもの。 時間が内部からの質的な変化として経験される流れのこと。 静的な時間の「スナップショット」とは異なり、動的で非可逆的なもの。 時間の知覚経験は、単なる事象の連続ではなく、経験者の意識の中で統合された、内的な変化の プロセス 時間知覚とは=「持続」のことであり、個々の瞬間はこの持続の中でのみ理解されるべきもの

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持続とは 体験 = 意識する流れ のこと ある現象が「一瞬の出来事」なのか「時間発展する系列」なのかは、個体がもつ時間スケールに 異存する。 ・私たちの知覚は、ある特定の スケールにはっきりと制約されている

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時間分解能の例.2 遅すぎる時間変化は認識できない 星の動き 時間分解能 (露光時間) 30,000ms ->認識できる 時間分解能 20ms ->認識できない

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まとめ 持続 = 1個人が、内在的に連続量として知覚する時間幅 体験できる時間スケールには、下限、上限がある。  ・蛍光灯が毎秒100回以上点滅していることは気づかない  ・夜空を見上げた時に天体が回転してるようには気づけない スケール外レベルの時間発展は、時間発展として体験できない ようになっている。 体験 = スケールに相対的である “人間にとって” 、速すぎる変化も遅すぎる変化も、流れとして体験できない ・生物種が異なれば、人間が知覚できないスケールでの流れを体験できる 持続 = 固有時間スケールの内的な体験 である

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時間スケールのギャップ ・クオリア

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時間スケールギャップとは スケールギャップがないケース 光と光同士がぶつかるケース 2つ以上の波が同じ場所で重なり合うことによって波の振幅の 変化が生じる。(干渉) 赤色光線(400兆Hz)が別な光線とぶつかる時、 数フェムト秒の周期のズレでも結果 (干渉)に反映される。  → 時間的に粗視化が起きない スケールギャップがあるケース 光が身体とぶつかるケース ヒト視覚の時間分解能 (50Hz:20ミリ秒)では量的識別が不足  → 時間的粗視化が起きる    粗視化 = 微小な時間的変動や差異を無視 /解釈する 光 光 時間スケール:共通 光 身体 時間スケール:小 時間スケール:大 ギャップ=クオリア

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ギャップへの対処:識別可能性空間の変形 時間的粗視化 ・人間の視覚系はおよそ50Hz(20ミリ秒)の時間分解能を持っているため、それ以上の速い変化を捉えることができない ・20ミリ秒より短い時間で起こる現象は識別できず、継続的な光の流れとして認識される   質的識別次元の展開 ・光の波長(色)、強度(明るさ)、偏光など、視覚によって識別できる光の質的特性がある ・高速で動く物体や変化する光景は、時間分解能の限界により正確に識別できない可能性がある ・質的な側面(色の変化や明るさなど)は捉えることができる ・これは、たとえ個々の瞬間を区別できなくても、変化のパターンや全体の動きを理解するための情報となる   => つまり、識別可能性空間の変形させることで、事象の認識をしている 光 身体 時間スケール:小 時間スケール:大 ギャップ =クオリア 400兆Hz 50Hz

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凝縮説 知覚が物質刺激に比べて粗雑すぎるために下位の特徴が潰れてしまう。 その潰れに際して引き換えに新しい質が成立する。 世界は時間でできている: ベルクソン時間哲学入門

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つまり 時間的 粗視化 質的識別 次元の展開 セット (生物進化の副作用みたいなもの)

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主観的な体験 = クオリアとは

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クオリアとは クオリア (Qualia) 個人の主観的な経験や感覚の「質」を指す言葉。 これらの経験がどのようなものであるかを表現するための概念。 たとえば、赤色を見る感じやリンゴの味、痛みを感じる体験など。 特徴: クオリアは主観的であり、他人や外部の機器で直接測定することができない。

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なにが起きているか?

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クオリア:感覚的な体験(に伴う質感) 現実のバラを前にしたときに、その色、匂いなどについて、学習した生成モデルでは再構成しようとしてもしきれ ない誤差が残り、それがポトムアップし潜在変数に働きかけ、そこに意識が生まれる。 現実 認識 現実の感覚 感覚予測 誤差修正 潜在変数

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クオリア:感覚的な体験(に伴う質感) ・現実の情報量は特大。毎ms 全てを認識するのはコスト効率が悪い(=生物生存に不利な戦略) ・そのため、多くを感覚予測によって補う( =脳の計算コストを抑えている) ・現実と予測には、当然 “予測誤差” は生まれる。この誤差を逐次毎ms段階的に修正する  ・ただし、誤差をゼロにすべく修正をするのではなく、生存に利く段階までの誤差修正が行われる  ・よって、誤差は残り続ける。   知覚が物質刺激に比べて粗雑すぎるために下位の特徴が潰れてしまう。その潰れに際して引き換えに新しい質が    が成立する。=個体差のある主観的な体験 = クオリア  現実 認識 現実の感覚 感覚予測 誤差修正 潜在変数 現実の情報量: 特大 処理できる情報量: 少

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まとめ:クオリアとは 1. 現実のモデルと学習によって得られた生成モデルとの間では、再構成を試みても完全には補えない 誤差が生まれる 2. この誤差がボトムアップのプロセスを介して潜在変数に影響を及ぼす つまり、 - 決して完璧には再構成することのできない現実を模索する試み と - その試みと現実との間のギャップにおいて、対象に対する「現実「感」」という主観 が生じる - ここに すなわち 感覚経験の質 が発生する つまり、クオリアとは、   完全には再構成できない現実を再構成しようとする探索的な動的プロセスの経験 のこと。

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つまり 時間的 粗視化 質的識別 次元の展開 = クオリアの源 1条件 (と言っても良いでのは..)

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意識の遅延

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意識の遅延テーゼとは ベルクソンの哲学を心の構成論的モデルとして読んだ場合、以下の特徴があります 〈意識の遅延テーゼ〉 進化論的スケールで生物システムの時間的変形から心の発生を説明。 〈心は過去でできている〉 蓄積された過去を素材として、心が経験を通じて構築される。 〈記憶イメージ投射による認知〉 変化する内部状態を保ちながら世界を再構成し、認知や行動の多様化を可能にする 〈記憶の多次元的ダイナミクス〉 柔軟な記憶の使用が知的創造性を生み出す

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遅延 遅延がない 基本的な生物が受け取った刺激を即座に特定の行動に変換する決定論的な「システム」として機能し ていると考えられる これらの生物においては、刺激はただ反応を引き起こすトリガーとして機能し、知覚は有用な機能と してのみ存在する これに対して、 遅延がある 人間を含む高等生物では、刺激が直接的な反応に変換されるのではなく、内部で滞留し、内的な再構 成を経て意識の対象として認識されます

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生命の発達段階 核酸 (RNA) 細胞 (cell) 神経系 物質 高分子(=遺伝子)の自己触媒 による自己複製能の出現 個体性の出現 外界への反応の 能動的選択性 生命の本質を一言でいえば、情報高分子が自分を維持するための生体膜をもったということにある


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遅延

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進化の段階における時間的余白 生物の脳と認知の複雑性が増すにつれて、時間的余白が拡大し、より洗練された行動が可能になった

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階層間の相互作用によって生じる「遅延」

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階層間の相互作用によって生じる「遅延」 階層間の相互作用によって生じる「遅延」とは 上位階層(構想)が、下位の階層の複数のイメージ(要素)との間で新しい調和を徐々に見出さなければならない過程 で発生する時間的なズレのこと。 これは、 ・単純なボトムアップ(下位から上位への一方通行の影響)やトップダウン(上位から下位への一方通行の指示)のプロセスではなく、 ・相互に影響を及ぼし合うダイナミックなプロセスを通じて、自然が新しい解決策を生み出す様子を表す。 「数々の手探り」という表現は、階層間で行われる試行錯誤のプロセスを示唆しており、 「数々の順応」というのは、異なる階層の要素が互いに適応していく過程を指しています。 また、「数々の干渉」と「重ね合わせ」は、異なる要素や階層間で起こる相互作用が複雑に絡み合いながら全体のシス テムを形成していく過程を意味しています。

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遅いメリット ヒトはサルよりも頭の回転が遅い? 霊長類4種の脳で音の処理速度を比較 - ITmedia NEWS

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時間的余白の拡大 時間的余白の拡大には、ヒトにおいて飛躍が見られる。 この飛躍の主要な要因は、ヒトの脳、特に前頭葉の発達にある。 前頭葉 ・抽象的思考、問題解決、計画、意思決定といった高度な認知機能を司る ・これらの能力が時間的余白を大幅に拡張します。ヒトは、即座に反応するだけでなく、過去の経験から学び、未来の 出来事を予測し、長期的な目標に向けて計画を立てることができる その他にも、言語能力の発達が時間的余白の拡大に大きく寄与している。 言語 ・言語によって、ヒトは経験を記号化し、情報を蓄積・伝達することができるようになった ・これによって、個人や集団の学習が蓄積され、社会や文化を通じて伝承されるようになりました

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時間的余白の拡大 つまり、時間的余白は神経伝達の遅延だけに限定される概念ではない 情報処理の複雑さ 生物がより高度な認知機能を獲得するにつれて、環境からの情報を解析し、適応的な反応を選択するための内部処理が複雑になる これは単なる反応時間の長さではなく、情報を内省し、考慮し、計画するための時間である 記憶と予測 過去の経験から学習し、それを元に未来の出来事を予測する能力も、時間的余白の拡大に寄与している 記憶を活用することで、即座の反応だけでなく、長期的な視点から最適な行動を選択することが可能になった 意識と自己認識 自己の行動や選択を意識的に把握し、自己の意志に基づいて決定する能力も、時間的余白を拡大する要素 自己の内面的状態を反映し、意識的な選択を行うことで、行動の柔軟性が増した 社会的・文化的次元 社会や文化の文脈における学習や伝承も、時間的余白に影響を与える重要な要素 言語を通じて蓄積された知識や、社会的な規範や価値観が行動の選択に反映される

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意識の機能まとめ 意識の出現 =   生物の反応遅延によって生じた時間的延長とそれによる情報圧縮の効果 である ・身体の複雑化と機能分化によって生じたスループットが「遅延」を生んだ ・それにより生体システムに「時間的な内部」(=主観的な時間) が生まれた ・それが 感覚質、時間経験、焦点化などの意識の基礎的な現象の発生条件になった ・感覚質  色や音などの感覚的な体験 ・時間経験 過去、現在、未来の認識 ・焦点化  注意を特定の刺激や事象に集中させること

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時間的変形 時間的変形 = 生物が環境に応じて反応する時間が伸びること この遅延が情報処理のための余裕を生み出し、結果としてより複雑な認知活動や記憶の形成が可能になる つまり、 反応の遅延が生物にとって有利な進化をもたらし、それが心の発生に必要な内部構造を形成する これは、生物が生存のために即時反応するだけでなく、過去の経験を反映し、未来を予測し、より柔軟で適応的な行動 をとる能力を発達させたという進化の過程を説明する。 心や意識といった抽象的な現象が、このような進化の結果として生じたとベルクソンは考えていた。

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記憶の仕組みを考える

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もしここに、まったく記憶をもたない生物があったとすれば、 その生物が向き合うものは現在という瞬間のみとなろう。 瞬間はたえず消え去っていき、そこに流れる時間はない。おそらく「現在」すらもっていないという べきであろう。 しかし、記憶が成立すると状況は一変する。 瞬間のみに生きていた生物は、記憶によってはじめて過去をもったからである。 過去が堆積していくとは、そこに時間が降り積もることにほかならない。 こうして記憶は「時間」を刻みはじめる。 記憶の成立があってはじめて時間は流れはじめた。 これが生物にとっての時間の誕生である。

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記憶のエンコードとデコード デコード エンコード 感覚入力や外部の情報を脳が理解しやすい形式に変換するプロセス 具体的な手段 ● 意味のエンコード:情報に意味をつける ● 視覚的エンコード:情報を視覚的な形で記憶 ● 音響的エンコード:情報を音として記憶 エンコードされた情報を記憶から取り出すプロセス 具体的な手段 ● 再認(Recognition):選択肢の中から正しい情報を選ぶ ● 再生(Recall):何も手がかりがない状態で情報を思い出す ● 再学習(Relearning):以前に学習した情報を速やかに再学習する

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記憶のエンコードとデコード デコード エンコード 体験の(痕跡)を残す 体験を(想起) する

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記憶と自己回帰 記憶として格納されていた情報は、照合のためによび出されるが、照合によって得られた結果は、新しい記憶としてあらため て格納され直し、つぎに照合がおこなわれるときには、過去の記憶ともどもよび出されて照合の場におかれることになるので、 ふたたび複雑な照合がおこなわれ、さらに新しい記憶を生ずるという循環がはじまる。
 
 こうして記憶はしだいに成長しつつ、 堆積し、重層化し、複雑化していく。これが自己回帰の生みだす結果である


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記憶と照合の相互作用 記憶と照合の相互作用: - 記憶:過去の情報を保持するプロセス - 照合:この保持された情報を新しい情報や状況と比較するプロセス この相互作用により、心は経験を更新し、新しい認識を形成する 情報の自己回帰の開始: - 記憶と照合の過程は、情報の自己回帰的なサイクルを開始する - 過去のデータが現在の経験に統合され、新たな理解が生まれることで、情報は進化をし続ける 時空、論理、感情の特性の発生: - 時空の特性:記憶を通じて過去、現在、未来という時間の流れと空間的な関係を認識する能力 - 論理の特性:情報の分析、推論、結論を導く過程で重要 - 感情の特性:経験や情報に対する個人的な反応や価値判断を反映

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Appendix

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時間が過ぎるのが 速い /遅い 時間が過ぎるのが「速い」と感じるシチュエーション 楽しい時: 友人たちとの楽しい会話やパーティー、趣味の時間など 没頭している時: 仕事や学習、ゲームなどに集中しているとき 忙しい時: 締め切りに追われる仕事や連続的なミーティングなど スポーツ: エキサイティングな試合やアクティビティ中 映画鑑賞: エンゲージするストーリーの映画を見ている時 時間が過ぎるのが「遅い」と感じるシチュエーション 待ち時間: 医者の待合室や飛行機の遅延など。 退屈な時: 興味を持たない講義やミーティング中。 不快な状況: 痛みや苦しみを伴う状況。 焦りや不安: 重要な結果を待っている時や、大切な人が遅れて来る時。 瞑想: 深い瞑想の中で時間の感覚が失われることがある。

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なにが起きているか?

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時間感覚の神経メカニズム 時間感覚を司るメカニズムには、脳の特定の領域の活動が深く関与しています。 補足運動野(SMA)と前頭弁蓋部は、時間に関する刺激に対して活動することが知られており、時間の知覚にお いてパルスを発生させ、それを蓄積する役割を担っているとされます。 パルス発生 補足運動野は運動計画と実行の調整に関与することが知られています。 時間知覚においても内部時計として機能し、一定間隔でパルスを発生させることが示唆されています。 パルス蓄積 前頭弁蓋部(特に前頭前野の一部)は、発生したパルスの数を蓄積し、時間の長さを評価するプロセスに関与し ています。つまり、時間の経過を計測し、その情報を意識的な知覚に変換しています。 注意と時間知覚 注意が時間刺激に集中している場合、これらのパルスの発生や蓄積がより活発になります。 結果として、より多くのパルスが感知され、時間が長く感じられるという現象が生じます。

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時間への注意度合い :変わる体感時間 時間への注意度合いが 小 = 他に集中しているものがある状態

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情動的タイムワープ 強い感情を伴う出来事が記憶される際に、その時間が実際よりも長くまたは短く感じられる現象を指します。 強い感情を伴う出来事は長く感じられる: 恐怖や喜びなどの感情が高い際には、出来事が実際に起こった時間よりも長く感じられることがあります。この 時、感情的な arousal が記憶における情報のエンコーディングを強化し、より多くの詳細が記録されるため、想 起する際にもより長い時間をかけて処理されます。 感情の強度による時間の伸縮: 非常に強い感情を伴う出来事は、記憶の中で時間が拡張されることがある一方で、ある種の強い感情は、例え ば、緊急事態の際には時間が短縮されて感じられることもあります。これは、脳がその瞬間に極めて集中するこ とで、事後にそれをより短い時間で経験したように感じるためです。 後からの解釈: 感情的な出来事を振り返るとき、人はしばしばその出来事の持続時間を、実際の時間よりも歪めて記憶すること があります。これは、記憶における意味付けや解釈が時間知覚に影響を与えるためです。