Slide 1

Slide 1 text

理科と算数の平均の扱いに関する 教科横断的な指導法の開発 −推定値としての理解を⽬指して− ⻄ 東 京 市 ⽴ 栄 ⼩ 学 校 森川 ⼤地 中村 ⼤輝 宮 崎 ⼤ 学 教 育 学 部 2025.03.20 ⽇本理科教育学会 オンライン全国⼤会2025 G会場 第3セッション 11:40〜 G07 連絡先 メールアドレス 本研究は,公益財団法⼈未来教育研究所の助成を受けて⾏われたものである

Slide 2

Slide 2 text

理科で平均を扱う上での困難さ 1 • 単元「振り⼦の運動」の学習内容(⽂部科学省,2017) • 変える条件 :振り⼦の⻑さ,おもりの重さ,振れ幅 • 変えない条件:振り⼦が1往復する時間 • 教科書による記述 • 4社ではより正確な測定値を得るという⽬的で平均値が⽤いられている(⼤⾕,2024) • 10往復する時間 • 各測定時間 しかし,算出⽅法のみを想起 • 結果として,平均値を絶対的な値として捉える傾向( Konold & Pollatsek, 2004) • 平均値を⽤いる明確な理由は⽰されていない(⼤髙,2010) ⇨ 他教科(算数科)との教科横断的な学びを通して,平均という概念を適切に扱うが必要 『新しい理科 p.142』より

Slide 3

Slide 3 text

教科横断的な指導の必要性 2 平均という抽象的な概念を算数で学習した後,理科という別の具体的な⽂脈で⽤いることで 平均への理解の促進が期待される • 教科の枠を超えて,内容のつながりを重視した指導が求められる • 次期学習指導要領においても,重要視されている(⽂部科学省,2025) • 理科と算数科においても教科横断の重要性が指摘されている(e.g., 松原・⾼阪,2017) ⾼阪(2015)

Slide 4

Slide 4 text

平均の捉え⽅( Konold & Pollatsek, 2004) 3 データの削除 データを単純化させるために必要最低限の 情報(データ)を⽰す値としての意味 公平な分配 ある総量を均等に分配する上での 値としての意味 最頻値 典型的な値として 最も頻出回数が多い値としての意味 推定値 誤差が含まれる データの中⼼傾向としての意味 ⇨ 主として理科の学習⽂脈で ⽤いられる平均の意味

Slide 5

Slide 5 text

平均の指導に関する課題点 4 算数科 • 平均を求める計算⽅法の習得が単元全体の割合を多く占めている点 • 均しの意味が中⼼的に扱われている点 理科 • 推定値としての平均の意味を理解できていない点 • 算数で学んだ平均の算出⽅法のみが⽤いられている点 『新しい算数 5下 p.20』より 理科と算数科における平均の学習を有機的に関連づけた指導法の開発 ⇨ 学習者の平均の捉え⽅がどのように変容するのか 「均しの意味」と「推定値の意味」 を明⽰的に扱う

Slide 6

Slide 6 text

検証⽅法 5 対象者 • 東京都公⽴⼩学校 • 第5学年 3クラス(N=105) 単元 1. 算数科 「測定値の平均」 (授業者:算数専科,担任) 2. 理科 「振り⼦の運動」 (授業者:理科専科_第⼀著者) 実施時期 • 2025年1⽉(算数で平均の学習が終えた後,理科の学習を実施した) 分析対象 • 授業中の発話 / 児童のノート記述を中⼼に質的分析

Slide 7

Slide 7 text

研究デザイン(概要) 6 算数 理科 初期段階 平均がもつ 均しの意味と 推定値の意味を 明⽰的に扱った学習 中期段階 算数で学習した平均の意味 を想起させるとともに 誤差やデータのばらつき と関連付けた学習 児 童 の 平 均 の 捉 え ⽅ 学習者が捉える「平均」の変容を明らかにする 後期段階 平均値を⽤いた データ処理や解釈 について学習 算数科と理科の接続

Slide 8

Slide 8 text

指導介⼊の概要 7 1. 初期段階(算数科) • 2つの例題を中⼼とした学習展開 2. 中期段階(理科−導⼊場⾯) • 測定値の特徴と平均値の関係性に関する明⽰的な指導 3. 後期段階(理科−考察場⾯) • 測定値を可視化するツールを⽤いた指導 ⇨(誤差やデータのばらつき)

Slide 9

Slide 9 text

指導介⼊の概要 8 1. 初期段階(算数科) • 2つの例題を中⼼とした学習展開 2. 中期段階(理科−導⼊場⾯) • 測定値の特徴と平均値の関係性に関する明⽰的な指導 3. 後期段階(理科−考察場⾯) • 測定値を可視化するツールを⽤いた指導 ⇨(誤差やデータのばらつき)

Slide 10

Slide 10 text

初期:算数科での指導 9 • 単元全体を通して「均しの意味」と「推定値の意味」について明⽰的な指導 均しの意味の平均 推定値の意味の平均 平均の意味を 反復確認 単元導⼊時に2つの意味を明⽰的に扱うことで 算出⽅法の習得に偏ることなく,⽂脈を検討する機会が得られた 導⼊時,多くの児童が 平均の意味を「均し」で捉えていた

Slide 11

Slide 11 text

指導介⼊の概要 10 1. 初期段階(算数科) • 2つの例題を中⼼とした学習展開 2. 中期段階(理科−導⼊場⾯) • 測定値の特徴と平均値の関係性に関する明⽰的な指導 3. 後期段階(理科−考察場⾯) • 測定値を可視化するツールを⽤いた指導 ⇨(誤差やデータのばらつき)

Slide 12

Slide 12 text

中期:理科の導⼊場⾯における指導 11 算数科 ⇨ 理科への接続を⽬指して • 理科で扱う測定値の特徴について明⽰的な指導 • 誤差(系統誤差・偶然誤差) • データのばらつき • 教師からの問いかけ • 「何のために測定値を平均するのか」 • ⼀⽅的な教⽰ではなく,児童との対話を通して理解を促した

Slide 13

Slide 13 text

中期:誤差やデータのばらつきに関する指導 12 • 測定⽅法を確認する際(⼀部抜粋) ① ② ③ ④

Slide 14

Slide 14 text

中期:誤差やデータのばらつきに関する指導 13 • 測定⽅法を例に(⼀部抜粋) ① ② ③ ④ 単に「推定値の意味」を理科に取り⼊れるのではなく 具体的な操作や実験の⽂脈と対応させて平均の意味理解を促進 しかし,直ちに理解することは 困難さが伴った

Slide 15

Slide 15 text

指導介⼊の概要 14 1. 初期段階(算数科) • 2つの例題を中⼼とした学習展開 2. 中期段階(理科−導⼊場⾯) • 測定値の特徴と平均値の関係性に関する明⽰的な指導 3. 後期段階(理科−考察場⾯) • 測定値を可視化するツールを⽤いた指導 ⇨(誤差やデータのばらつき)

Slide 16

Slide 16 text

後期:考察場⾯における指導 15 • ⼀次 問い「振り⼦の⻑さによって,1往復する時間は変わるのだろうか」 各班で収集した個のデータ 学級全体で集約(スグラパを⽤いて) 箱ひげ図を⽤いた データの可視化

Slide 17

Slide 17 text

後期:箱ひげ図の扱い 16 平均値の表⽰ 外れ値の⾃動検出 (検出を無効にすることも可能) 学級全体のデータを可視化 • 個々のデータがばらつくことを実感で きる • データ全体に対して,平均値がどこに 位置しているのか視覚的に捉えられる 外れ値の⾃動検出 • 児童にとって外れ値の同定が困難 • 主観的なデータ排除が不要となる • 平均値が変動することを確認できる

Slide 18

Slide 18 text

後期:データ処理の場⾯(⼀次) 17 T この平均値は,何を表しているのかな? # 平均値の意味を班で検討する姿 C1 算数でやった推測の意味ってことかな。 C2 たしかに,均した⽅の意味ではないね。 C3 この平均値って,バラバラしているみんなの結果から出ているよね。 C4 40cmの下の⽅にあるデータを含めると,平均値が⼤きく変わるよ。 だから外れ値って機械が判断したのか。 C5 もっと結果を集めたら平均値も変わりそう。 C6 だから今回の平均の意味って「次出るかもしれない,けど確実ではない」っていう意味があ ると思う。 均しの意味と推定値の意味を⽂脈に応じて区別する姿 推定値としての 意味を理解 平均を絶対的な値 として捉えず

Slide 19

Slide 19 text

後期:考察の記述(⼆次・三次) 18 児童A 測定値を平均した際の平均値を理解した上で 解釈を導き出している様⼦

Slide 20

Slide 20 text

後期:考察の記述(⼆次・三次) 19 児童B データのばらつき⽅から 平均値そのものの信頼性を検討する様⼦ 均

Slide 21

Slide 21 text

まとめ 20 算数 理科 初期段階 • 多くの児童が 「均しの意味」として 平均を捉えていた 中期段階 • 「推定値」の意味が 理科の学習⽂脈に関係 することを実感 • 測定値の特徴と関連づけ て考えることは困難 児 童 の 平 均 の 捉 え ⽅ 後期段階 • 均しの意味と推定値の意味を ⽂脈に応じて区別する姿 • 平均値が推定値として⽤いる ことが妥当か吟味する姿 平均を学習する上で,理科と算数科を有機的に関連付けた 本指導法の有効性を確認

Slide 22

Slide 22 text

参考・引⽤⽂献 21 Konold, C., & Pollatsek, A. (2004). Conceptualizing an Average as a Stable Feature of a Noisy Process. In D. Ben-Zvi, &J. Garfield (Eds.), The Challenge of Developing Statistical Literacy, Reasoning and Thinking. Kluwer Academic Publishers, 169-199. ⾼阪将⼈(2015)「理科と数学を関連付けるカリキュラム開発のための理論的枠組みの構築―関連付ける⽅法とその意義に焦点を当 てて―」『全国数学教育学会誌 数学教育学会』第21巻,第2号,103-112. 松原憲治・⾼阪将⼈(2005)「資質・能⼒の育成を重視する教科横断的な学習としてのSTEM教育」『科学教育研究』第41巻,第2号, 150-160. ⽂部科学省(2017)『⼩学校学習指導要領(平成29年告⽰)解説 理科編』東洋館. ⽂部科学省(2025)「初等中等教育における教育課程の基準等の在り⽅について(諮問)参考資料」Retrieved from https://www.mext.go.jp/content/20250130-mext_kyoiku01-000040050_06.pdf (accessed 2025.03.18) ⼤島まり・⼭崎直⼦ら(2024)『新しい理科5年』東京書籍. ⼤髙泉(2010)「理科教育、科学教育の教科課程からみた統計的思考の育成(科学教育における統計的思考の育成」『⽇本科学教育学 会年会論⽂集』第34巻,29-90. ⼤⾕洋貴(2024)「⼩学校理科第5学年単元「振り⼦の運動」における統計の取り扱いとその問題―2種類の誤差とその処理⽅法を観 点とした教科書分析を通して―」『科学教育研究』第48巻,第4号,426-441. 清⽔美憲・真島秀⾏ら(2024)『新しい算数5下』東京書籍.

Slide 23

Slide 23 text

理科と算数の平均の扱いに関する 教科横断的な指導法の開発 −推定値としての理解を⽬指して− ⻄ 東 京 市 ⽴ 栄 ⼩ 学 校 森川 ⼤地 中村 ⼤輝 宮 崎 ⼤ 学 教 育 学 部 2025.03.20 ⽇本理科教育学会 オンライン全国⼤会2025 G会場 第3セッション 11:40〜 G07 連絡先 メールアドレス 本研究は,公益財団法⼈未来教育研究所の助成を受けて⾏われたものである