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Atsusuke Murata Scrum Fest Kanazawa 2024 ゾンビスクラム先生が 語る過ちと教訓! 俺みたいになるな!

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About Atusuke Murata (もやし丸) Cybozu / kintone開発チーム Scrum Master / Software Engineer @kuroppe1819 金沢出身です ✌️ おすすめのお土産は 加賀棒茶プリンです

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製 品 紹 介

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Agenda 01 新しいチームに入って暴れ回った 5日間の軌跡 02 チームもスクラムマスターも ゾンビだった?診断チェック リストをやってみた! 03 ゾンビスクラムサバイバルガイド 片手に健全なチームを目指す! 04 ゾンビスクラム先生が語る教訓! 俺みたいになるな!

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Target Audience チームへの適切なアプローチが分からず悩んでいる方 チーム作りのアンチパターンを知って教訓にしたい方 Learning Outcome チームに悪影響をもたらすスクラムマスターのマインド ゾンビスクラムに血を通わせる方法の一例

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新しいチームに入って 暴れ回った5日間の軌跡 01

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遡ること1年前、kintoneの新規機能を開発する チームに専任スクラムマスター(※以降SM)として 入ることになった 🎉🎉🎉 専任スクラムマスター よろしくー

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マネージャーから、チームを安定させてほしいと お願いされたことがきっかけでチームに入った

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新しく入ったチームはスクラムをやっていた でも、成果に繋がっていなかった 😢 ※個人の見解です

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さて、何から始めようか...。

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最初はチームの観察から始めよう... と考えていたけど、ティーチングから始めた

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なぜ?

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今の状況を一刻も早く改善してほしいという期待 をチームの内からも外からも強く感じたから

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とにかくチームに余裕がなかった

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前のチームで上手くいったやり方を取り入れて、 SMがチームをリードして余裕を作ろうとした

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ただ、本当にこの介入の仕方でいいのか悩んでいた

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1on1で上司に相談した Yusuke Amano (@ama_ch) ※1on1でのやりとりの一部を抜粋しています

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よっしゃ!!! 俺に任せろ!!! バイブスアゲて 行くぜェ!!! 🤘

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余裕を作るためにやったこと カンバンを整備する スクラムイベントのファシリを巻き取る コミュニケーションツールの運用方針を決める ふりかえりを再設計する 1つのプロダクトバックログアイテム(PBI)に集中 するフローを作る チーム活動のメトリクスをとる基盤を作る

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結果どうなったか

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大怪我した

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メンバーが大きな変化に対して抵抗感を 感じてしまい、何も変わらなかった

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チームメンバーからのフィードバック せっかく主体性のあるチームだから、もう少し チームメンバーを頼った方がいいんじゃない? メンバーの意見を引き出して、 みんなで考えら れる仕組みを整えたほうがいいんじゃない?

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俺、チームを掻き乱しているだけだった

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前のチームのやり方が前のチームでうまくいって いたのは、うまくいくやり方を全員で探索して 学習しながら作り上げてきたから

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前のチームでうまくいっていたやり方をコピーして きても、問題を解決するために不可欠な学習能力が 育っていないからうまくいかない。一部の案は受け 入れてもらえたが、すぐに形骸化した。

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俺の考えた最強の健全なチームへの道のり はメンバーへの謝罪で幕を下ろした ごめんねー 😭

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チームもスクラムマスターも ゾンビだった? 診断チェックリストをやってみた! 02

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謝罪した翌日にスクラムフェス仙台に参加した

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ラスボスゾンビが持つべき重要な要素 チェックリストというものが紹介されていた ラスボスゾンビのチェックリスト⁉️ -これであなたも立派なラスボスゾンビ!- https://speakerdeck.com/ohnoeight/rasubosuzonbinotietukurisuto-koredeanatamoli-pai-narasubosuzonbi?slide=19

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試しにチェックしてみた 組織でのスクラムの第一人者である スクラムを広めたいという強い欲求がある ✅ スクラムチームを育てるのは私しかいない、という責任感がある ✅ 継続的改善を私がしてあげる必要があると考える ✅ 自己組織化できるようにチームをサポートする必要があると考える ✅ チームメンバーはプロ意識を持っている必要があると考えている

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うわっ…チェック入りすぎ…? 私ラスボスゾンビ かも〜?

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そもそもラスボスゾンビって何?

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ラスボスゾンビのチェックリスト⁉️ -これであなたも立派なラスボスゾンビ!- https://speakerdeck.com/ohnoeight/rasubosuzonbinotietukurisuto-koredeanatamoli-pai-narasubosuzonbi?slide=9

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ゾンビスクラムとは ゾンビスクラムチームはステークホルダーのニーズを知らない ゾンビスクラムチームは速く出荷しない ゾンビスクラムチームは継続的に改善しない ゾンビスクラムチームは障害を克服するために自己組織化しない ゾ ン ビ ス ク ラ ム サ バ イ バ ル ガ イ ド に よ る 定 義 ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022)

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ゾンビスクラム診断チェックリスト ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022) p. 6 ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022)

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チームのプロダクトオーナー(※以降PO)に診断してもらった

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うわっ…チェック入りすぎ…? 私ラスボスゾンビ かも〜? ゾンビスクラム チームかも〜?

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ラスボスゾンビがゾンビスクラムチームを 作っている状態だと気付いた

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ラスボスゾンビがゾンビスクラムチームにいる 状況でスプリント回しても、より良いチームには ならない

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変わろう!!! 他者を変えたいならまず自分から!

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回復への道のりを考える ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022) 一度きりの経験にもとづく過度の一般化(認知の ゆがみ)を捨てる ゾンビスクラムサバイバルガイドを読み込んで、 症状を回復させる戦略を学ぶ 戦略をチームメンバーと一緒に実践していく

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ゾンビスクラムサバイバルガイド 片手に 健全なチームを目指す! 03

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Col umi ni tyを使ってチームを診断する ※Columinity の旧名称は Scrum Team Survey ゾンビスクラムサバイバルガイドの 「実験:一緒にチームを診断する」 で紹介されているツール アンケートによって自分たちのチー ムを診断し、回答し終えると、詳し い結果とエビデンスに基づいたフィ ードバックを受け取ることができる A snapshot of how the Agi l e Team Effectiveness model i s i ntegrated i nto Col umi ni ty. ※1 ※1 A Gui de To Study The Underl yi ng Research Of Col uminity https: //medi um. com/the-l i berators/a-guide-to-study-the-underl ying-research-of-columinity-d44dc168fce4

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チ ー ム を 効 果 的 に 導 く 鍵 と 理 論 を 知 り た い 方 向 け の 日 本 語 資 料 【徹底解説】研究論文に基づいた効果的な スクラムチームを決定づける6つの要因と5つの発見 https://www.servantworks.co.jp/posts/what-makes-scrum-teams-effective/ A Theory of Scrum Team Effectiveness 〜『ゾンビスクラムサバイバルガイド』の裏側にある科学〜 https://www.servantworks.co.jp/posts/what-makes-scrum-teams-effective/

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Columinityを使ってチームを診断しつつ、 メンバーと頻繁にコミュニケーションしたり、 日々のチームの活動を俯瞰的に観察した

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観察してわかった3つの事実 ステークホルダーへの関心が低い 200日経過してもリリースできていない機能がある プロダクトオーナーの役割が曖昧

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なぜ?

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プロダクト マネージャー PO SM PG QA SM PG QA デザイナー 2023年度ki ntoneの新規機能の開発体制( 簡易版) 開発チームA 開発チームD … テクニカル ライター プロダクトバックログ PBIを追加 PBIに着手

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プロダクト マネージャー 開発チーム プロダクト マネージャー 考える人、作る人の分業体制 仕様を考える人 仕様通りに作る人 実装の依頼 PdMがこれだけ考えてくれて いるのだから我々が提案する ことは考慮済みだろう BizとDevの状況を考慮し た受け入れ条件を考えて きた! ❌ 仕様変更の提案

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プロダクト マネージャー 開発チーム プロダクト マネージャー 何をどこまで変えていいのかチームが判断できない そこは顧客目線で考える と作り込まなくてもいい んだよな...。代案を提案 して欲しい...。 技術的に難しくて時間が かかってます 😰 判断を仰ぐ 仕様を考える人 仕様通りに作る人

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POが実際にプロダクトのオーナーになることを 許されていない ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022) “ゾンビスクラムが蔓延している組織では、プロダクト オーナーはやりたいことや順番をほとんど話すことな く、要件をプロダクトバックログアイテムに変換するだ けだ。彼らは、実際のオーナーシップや権限を持たない 「御用聞き」 としての役割を果たす” ゾンビスクラムサバイバルガイド (p.61)

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チームはプロダクトのオーナーシップを持ちたいと思っていた しかし、宣言するだけではオーナーシップを獲得できない ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道 丸善出版(2022) “問題は、チームが自分で判断する許可を与えられた からといって、自己組織化が起こるわけではないとい うことだ。チームは自分たちの自律性をコントロール するためのスキルを身につけなければならない。その 結果、チームや部署を超えた組織と協調できるように なり、またその支援を受けられるようになる。 ” ゾンビスクラムサバイバルガイド (p.24)

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プロダクトオーナーシップを持つために必要なビジネス 知識を少しずつ獲得できるスプリントを設計する ki ntoneを取り巻くビジネスについては、一朝一夕で理解できるもの ではない。これまでの積み重ねがあるプロダクトマネージャー(PdM) との協力が不可欠。 PdMとの接点を増やして、相互理解が進むように働きかける プロダクト マネージャー 開発チーム

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プロダクトオーナーの役割を明確にする PdMは製品ビジョンを考え、POはPdMが描く製品ビジョンをどのように実現 するか戦術を考える役割分担が理想的だと考えた PdMが「ビジョン」も「実現方法」も考えている。実現方法をPOが考えられる 状態をいかにして作るか。 いきなりPdMと同等のクオリティの成果は出せない。信頼も実績もない状況で 実現方法の検討を任せてもらうことは難しい。スプリントを走る毎にビジネス 理解が進むスプリントを設計して、少しずつ信頼と実績を積み重ねて理想の状 態に近づく目標を立てた。 参考:Product Manager vs. Product Owner https://www.productplan.com/learn/product-manager-vs-product-owner/

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プロダクトオーナーシップを持つために必要なビジネス 知識を少しずつ獲得できるスプリントを回す スプリントの中でPOと一緒に顧客理解を深める時間を設ける リファインメントでユーザーストーリーへの質問を促す PdMをチームに素早く呼べるようにチームとの距離を近づける 開発チームでPBIを作る PdMが作るPBIの受け入れ条件の粒度を粗くしてもらって、チーム が How を考える機会を増やす

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結果どうなったか

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価値のある小さい単位のリリースを狙うようになる ステークホルダーへの関心が高まる はやくフィードバックを得ようとする動きが活発になる プロダクトオーナーシップを高めようとする 200日かかっていたデスクトップ通知機能をリリース 🎉 ユーザー情報ポップアップ機能を10日でリリース 🎉 スコープを小さくして

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メンバーの士気も高まった プランニングでのメンバーの会話 「攻めたゴールを設定しようぜ!」 「できるかわからんけどギリギリを攻めてみますか」 「いや今週の予定見ると現実的に難しいんじゃないかな?」 「隣のレーン/QA/PGで協力できることないです?」 「PGが手伝ってくれるなら間に合うかも」 「リリースするならいつまでにマージ目指さないとダメです?」 より高いゴールを目指す発言が増えた

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改めてチームのPOにゾンビスクラム診断をしてもらった

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診断結果が変化した理由をPOに聞いてみた スプリント中、チームメ ンバー はたいて い自分 のアイ テム に取 り組むだけ 前は自分のタスク( モブのタ スク)以 外あま り見 えてな か ったかも? 今は職能の境界をな くす動き も出てき てる プロダクトオーナーは、 プロダ クトバックログの内容 や順 序に ついて、ほ とんど 何も言うことができない 徐々に言える範囲が 拡大して る認識 スクラムチームに楽しさ やワク ワク感が ない 前のことはあまり覚 えていな い。楽し さと表 現す るのか や りがいと表現 するか は分からないが、少 なくとも 退屈感は 無い

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診断結果が変化した理由をPOに聞いてみた デイリースクラムはスク ラムマ スターが 議長を 務める 進捗 報告 会にすぎな い SMが議長かはと もか く、前 は進捗報 告だ けの場 だっ たか も 短時間で済むなら課 題を話し 合うとか 、Nex t Acti on(ス ケジュール 作成) する場としても今は 機能して る 管理職はスクラムチーム がどれ だけの作 業がで きるか にし か興 味がない 今はチームメンバー の成長や 中長期の 目標を 検討 してい る ので、目先の どれだけ作業できる か以外も 見てると 感じる

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診断結果が変化しなかった項目の所感をPOに聞いてみた スプリントの終わりに検 査する 動くプロ ダクト がない 今も昔もあったりな かったり ... スプリントレビューにス テーク ホルダー がめっ たに参 加し ない スプリントレビュー にステー クホルダ ーが参 加し ている か どうかは 分からないという意 味でのチ ェック あなたの組織は「ビジネ ス」と 「I T 」を 別物と 考えている 一緒に考えようとし ている人 はいるも のの、 全体 として は まだ十分浸透 できていないと感じ る

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ゾンビスクラムの症状は徐々に回復しつつある

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この調子で開発チームの自己組織化を進めて タスクに関する成果と人に関する成果を両立した 健全なチームを目指したい!

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ゾンビスクラム先生が語る教訓! 俺みたいになるな! 04

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教訓その1 他者を変えたいならまず自分が変わる 変わらないことを他者のせいにしても何も変わらない 過去の成功体験を捨てて、チームメンバーと一緒にチームを より良くする方法を考えよう

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教訓その2 上手くいくやり方を一緒に探索する 他で上手くいったやり方をコピーするだけでは、チームは複雑 な課題を解決するための能力が育たない 探索の過程でチームは学習し、複雑な課題を解決できる能力を 獲得できる

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教訓その3 小さくて漸進的な変化から始める 大きな変化には抵抗感を感じる スプリント を回す度にチームメンバーの学習が進んで、 少しずつ理想に近づく状態を作ろう

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ゾンビスクラム先生が語る教訓! 小さくて漸進的な変化から始める 上手くいくやり方を一緒に探索する 他者を変えたいならまず自分が変わる