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感染症の数理 セミナー(10) Dec 6, 2024 @NIID 国立感染症研究所 第12室長 米岡 大輔

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目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5. 人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48

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はじめに 本セミナーシリーズは数理重めです。 簡単な微分/積分、線形代数が出てきます。 なるべく平易に解説しますが、完全に数学アレルギーの方はここ で終わられることをおすすめします。 セミナー終了時にはある程度次のパンデミックに向けて、 (ある程度) 数理モデリングができるようになることを目標としてます。 自由参加なので、もし無理そうならお気軽に休んでください。 3/20

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MERSの致死率は文献と有意差ありか? 64 • Mizumoto et al. (2015)の致死率の推定は文献値(40%)と異なるのか? • 二項検定 (binomial test) • n人のうちk人死亡 • H0: π=π0 • 二項分布のpdf • H1: π<π0 (簡単) H1: π≠π0 (両側検定は難しい) ↓普通の正規性を仮定した検定だと片側pをに倍す るだけでいいけど、二項分布は対称性がないため まぁ、ある程度サンプルサ イズが大きければ正規近似 しちゃってZ検定でいいんで すけどね!

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結局致死率は20%程度 • 流行初期のover-estimateは何? • 流行初期の感染者にはハイリスク患者が集まっていた • 60歳以上は39.5%、60歳未満は6.6% • 全患者を一斉に検討する必要ある? • 流行途中からの診断基準の変化 • リスクグループ毎の検討の方がいいかもね! 65 この辺

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サバイバル分析の基礎 • 発症後t時間後の生存確率S(t)(または、死亡確率F(t)=1-S(t)) • Hazard function • 致命割合(CFR)pは流行の最終状態 t→∞であるので • またS(t)はpが与えられた元で • したがって尤度は、τは発症日、uは死亡日として 66 死亡のpdf これ統計やってる人からしたら、めちゃくちゃ気持 ち悪いですよね。実際gは死亡が決定してるという 条件付き確率になってます。感染症なんで最後に全 員死ぬわけではないという暗黙の了解。

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【復習】生存関数のノンパラ推定:Kaplan-Meier曲線 • 死亡した時間を並べる: • t (j) の死亡人数: • t (j) の直前の生存者数 (risk set): • t (j) の生存確率: • 生存関数は 67 6 6 6 6(cen) 7 9(cen) 10 10(cen) 11(cen) 13 16 17(cen) 19(cen) 20(cen) 22 23 25(cen) 32(cen) 32(cen) 34(cen) 35(cen)

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pにモデルいれてもいいじゃないか (Mizumoto et al. 2015, BMC Medicine) • pにロジット変換をかまして共変量をいれる 68

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IFR: Infection fatality risk (Wong et al. 2009, AJE ) • CFRは分母も分子も観測に依存している(サーベイランスの限界) • 感染者数(分母)も死亡者数(分子)も推定値で置き換えればいいのでは?→結構robustらしい • 感染者数は血清疫学調査から推定 (Wu et al. 2011, PLoS Med ) 【IFRの定義】:分母は2パターン 1. IFRc = Dc/感染者数 (ただし、 Dcは確定診断された人の中での死亡者数) 2. IFRe = De/感染者数 (ただし、 Deは超過死亡数) • 超過死亡数の推定について • 一旦、共変量付きの死亡数の推定モデルを作る (ex. ポワソン回帰) • その上で、predicteなD t とFlu activitを0と仮に置いた場合のD t の差を超過死亡とする 69