Slide 1

Slide 1 text

AXIES2022 企画セッション 15AM2A 大学における改正著作権法第35条運用の実際 広島大学 隅谷孝洋 学術・教育コンテンツ共有流通部会 (CSD) AXIES2022 15AM2A 教育コンテンツ共有の課題と将来:OERと授業目的公衆送信補償金制度 (2022/12/15) https://speakerdeck.com/gnutar/2022-axies-csd-2

Slide 2

Slide 2 text

35条の改正 → 授業目的公衆送信補償金制度の導入 2 旧35条 第1項 要件を満たせば、 授業目的の複製は 無許諾で可 第2項 遠隔合同授業等の場合、 授業目的の公衆送信は 無許諾で可 改正35条 第1項 要件を満たせば、授業目的の 複製・公衆送信・公の伝達は 無許諾で可 第2項 上記の公衆送信を行う場合は、 「教育機関の設置者」が 補償金を著作権者に支払う 第3項 遠隔合同授業等の場合、 授業目的の公衆送信は 補償金不要 2015年から議論 2018年5月25日公布 2020年4月28日施行 補償金(授業目的公衆送信補償金)の扱いについては104条の11〜17 要件? 補償金? 不要な場合?

Slide 3

Slide 3 text

35条適用の要件について 「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」で、35条解釈のガイドラインを策定。 3 改正著作権法第35条運用指針 (令和3(2021)年度版) https://forum.sartras.or.jp/info/005/ ① 複製 ② 公衆送信 ③ 学校その他の教育機関 ④ 授業 ⑤ 教育を担任するもの ⑥ 授業を受けるもの ⑦ 必要と認められる限度 ⑧ 公に伝達 ⑨ 著作権者の利益を不当に害する こととなる場合 「用語定義」+事例

Slide 4

Slide 4 text

35条適用の要件について 運用指針の主な内容 4 用語 授業目的公衆送信補償金制度の対象の例 授業目的公衆送信補償金制度の対象外の例 公衆送信 サーバへの掲載/電子メールでの一括送信 (履修生以外にもアクセスできるようなもの) 授業 単位の出る授業/教員免許状更新講習/公開講座 (規模の制限あり)/履修証明プログラム ※予習,復習は「授業の過程」とする 大学説明会,オープンキャンパスでの模擬授業など /FD,SD/サークル活動/自主的なボランティア 活動 教育を担任する /授業を受ける者 教授,講師など(名称,雇用形態は問わない)/学 生,科目等履修生など(実際に学習するもの)/事務 職員など教育支援者,補助者 (支援業者に依頼するもの) 必要と認められる限度 例示なし ※必要性は授業担当者が判断,主観のみ でなく客観的に説明できること 文献情報を示せば足りるような参考資料の複製・ 公衆送信 著作権者の利益を不 当に害する場合 ※ 多くの記述がある ので「運用指針」を参 照のこと 不当に害する可能性が低い例 受信者の数は履修生の数まで/新聞の一つの記事 /テレビ番組を投影しているところを録画して送信 /一報の論文全部。ただし,発行後相当期間が経っ ているなどいくつかの条件あり 不当に害する可能性が高い例 放送から録画した映画や番組の全体/授業を履修 する学生の数を超える利用/試験対策問題集など 学生購入を前提としたもの/小部分の複製を繰り 返し,結果として大部分になる 括弧書きは,運用指針には直接の記載がないもの 「教育のDXを加速する著作権制度」(文化庁) p.14 を改変, 2021/01/29, オンライン説明会 https://sartras.or.jp/educationcopyright/

Slide 5

Slide 5 text

35条適用の要件について 著作権者の利益を不当に害することとなる場合(但し書き) 5 第35条第1項 (略) 、当該著作物 種類及 ⽤途並 当該複製 部数及 当該複製、 公衆送信⼜ 伝達 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限 。 初等中等教育と高等教育に分け、条文下線部に関連の ある以下の項目について考え方と例を挙げている。 • 著作物の種類 • 著作物の用途 • 複製の部数・公衆送信の受信者の数 • 複製・公衆送信・伝達の態様 利用契約におけるオーバーライド条項と、コピープロテ クトコンテンツの利用については、検討中。

Slide 6

Slide 6 text

補償金のいらない公衆送信 条文を見ると… 6 第35条第3項 前項 規定 、公表 著作物 、第⼀項 教育機関 授業 過 程 、当該授業 直接受 者 対 当該著作物 原作品若 複製物 提供 、若 提⽰ 利⽤ 場合⼜ 当該著作物 第三⼗⼋条第 ⼀項 規定 上演 、演奏 、上映 、若 ⼝述 利⽤ 場合 、当該授業 ⾏ 場所以外 場所 当該授業 同時 受 者 対 公衆送信 ⾏ 、適⽤ 。 「遠隔合同授業等」 ←改正前から無許諾無償でできていた部分

Slide 7

Slide 7 text

補償金のいらない公衆送信 遠隔合同授業等って?→(著作権法を考慮した)遠隔授業の分類 7 すごくわかる著作権と授業/AXIES/CCBY4.0 p.38 遠隔合同授業等

Slide 8

Slide 8 text

補償金のいらない公衆送信 授業形態ごとの権利制限状況 8 遠隔合同授業等 すごくわかる著作権と授業/AXIES/CCBY4.0 p.38 運用指針 p.25 の文化庁作成参考資料 からだが、ややこしすぎはしないか…?

Slide 9

Slide 9 text

補償金制度の現状 授業目的公衆送信補償金制度の現状 9 SARTRAS 教育機関 著作権管理団体 補 償 金 支 払 分配 分配 所属 \ \ \ 著作権者 教員/学生 利用調査 \ 国 \ 支援 (運営費交付金、地方財政措置など)* 分配 委託 2018年5月: 35条を含む改正著作権法が国会で成立,25日に公布 2018年11月: 「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」設置 2019年1月: 「授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」発足 2020年4月: 改正著作権法35条と104条関連部分の施行、補償金0円 2021年12月: 授業目的講習送信補償金規定が文化庁により認可 2021年4月: 補償金制度本格運用開始(大学生720円/1人1年) 2021年7月: 利用報告の依頼を開始 2022年6月: SARTRASからも直接分配する業務開始 2022年x月: 補償金分配開始 * https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/bunkachoshiryo_20220608.pdf

Slide 10

Slide 10 text

補償金制度の現状 補償金申請・支払い状況(2021年度) 10 * https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/bunkachoshiryo_20220608.pdf 申請率54% 60.3億円 49.0億円 = 81% 人数、補償金額 を考慮すると 補償金分配 (70%) 共通目的基金 (20%) 管理手数料 (10%) SARTRASの2021年度事業報告より作成されている https://sartras.or.jp/disclosure/

Slide 11

Slide 11 text

補償金制度の現状 SARTRASから教育機関への利用調査依頼 ‣ 2022年度は全国1200校 ‣ 大学では部局単位、1ヶ月を指定。その間に ✓ テレビ会議、メール一括送付などで公衆送信したもの ✓ Moodleなどで、公衆送信を開始したもの(アクセス可能にしたもの) ‣ 入力項目(実際はもっと項目数多いです) ‣ 利用報告(だけ?)を元に補償金分配が行われています 11 SARTRAS 「『利用報告』への入力の手引き」 https://sartras.or.jp/hokoku/2021_hokoku/ 確実な利用報告を! 備えあれば憂いなし!

Slide 12

Slide 12 text

補償金制度の現状 共通目的事業 ‣ 収受した補償金の2割を「著作権及び著作隣接権の保護に関する事 業並びに著作物の創作の振興及び普及に資する事業」(共通目的事 業)に支出 ‣ 2023年度事業計画を募集中(2023/2/28締切) ‣ 2022年度採択済み助成事業:37事業 4.1億円* ✓ AXIES採択 「教育現場で正しく著作権法を運用するための教材開発」 ✓ ITE部会とCSD部会が中心となって応募 ✓ 今回配布の小冊子のほか、動画教材を再配布可能なライセンスで開発 12 https://sartras.or.jp/kyotsumokuteki/ * 助成事業のほかにSARTRAS自体が実施するもの(自主事業・委託事業)もあります すごくわかる著作権と授業/AXIES/CCBY4.0