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深センで見つけた面白いハードウェアと 協力しイノベーションする方法 高須正和 スイッチサイエンス国際事業開発 ニコ技深圳コミュニティ共同発起人 开源社(中国オープンソースアライアンス) 早稲田ビジネススクール 大公坊創客基地(iMakerBase) 羲融善道創投(Heroad) ガレージスミダ研究所

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高須正和 3つの役割 深圳ほか世界各地のパートナーを開拓し、先進的な開発ツールを輸出入・共同開発、投資,企業間 提携などを行う。 事業:スイッチサイエンス グローバルビジネスデベロップメント 研究/布教:早稲田ビジネススクール招聘研究員/非常勤講師 「深圳の産業集積とマスイノベーション」 ニコ技深圳コミュニティ Co-founder,開源社ほか、様々なコミュニティ 事業=仕組みになっていて利益を生むもの 事業開発=事業を作ること 研究や布教=講演や執筆などで少しはお金になるけど、 基本的には仕組みになりづらいもの 2008~11年間で39都市107回のメイカーイベント参加 ほか、浜野製作所のガレージスミダ研究所 主任研究員、 中国のiMakerBase,Heroad Fundの顧問など コミュニティ=社会的な価値が生まれる前、 事業や研究でもできないところをやる 面白ければ仲間が増えるし、熱が冷めると終わる

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深圳で手掛けているプロジェクト M5Stackシリーズ ESP32シリーズを採用しているIoTプロトタイプツールキット この分野のデファクトスタンダートになる勢いで普及中 myCobot, DirectDriveTechモーターなど 深圳Elephant Robotics社のmyCobotロボットアーム、 Feetech社, DirectDriveTech社などのアクチュエータ類など Intelligentなアクチュエータ、センサー類の進化が激しい SpinQ社 デスクトップの量子コンピュータ NMR(磁気共鳴)方式により、常温動作が可能なオールインワンの量 子コンピュータ。日本での販売価格は118万円 世界で一般販売している量子コンピュータは同社のシリーズのみ

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深圳/日本でのハードウェア製品開発

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原則みたいなもの 多くのものを自分の目で見る 展示会参加、全ブース見る、オフィス訪問する オープンにする・集合知化する 見たものはなるべくSNSにアップする 自分の判断より優れたエンジニアの判断を優先する なるべく早く商売にする 規模の大きさ、小ささ、特殊さを意識したポジション取り 世界最大級のメイカー/開発者マーケット アカデミア・大学の価値

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僕の世界観 世の中/技術/ハードウェア/深センを どう見ているか Part1.ムーアの法則と製造業

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コンピュータ的じゃない産業はコンピュータに置き換わる 要因1:ほとんどの電化製品はコンピュータに置き換わる。 すでに置き換わったもの:カメラ/音楽プレイヤー/テレビ/ビデオ/電話機 要因2:ほとんどの産業は「コンピュータシステム」に置き換わる すでに置き換わったもの:流通/広告/マーケティング/金融 深圳は「コンピュータを中心にしたいろいろな機器」を作り続けてきた 世界の他の場所にない、独自の製造業とエコシステムがある デジタルが主になる社会に向けての話をします Source:藤岡淳一 (ニコ技深圳コミュニティ)

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コンピュータが中心の製造業は、どう違う? コンピュータ特有の要素=ムーアの法則 (18ヶ月ごとに半導体の集積率が倍 =能力が倍か価格が半分になる) →結果、系列を作りながらゆっくり発展でなく 深センのどの会社も最終製品を作る (amazon.co.jp等で見られるよく似たイヤホンなど)

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設計を早くモノに変えて売らなければ、ムーアの法則に巻き込まれて、アイデアの 価値がなくなる コンピュータとは? 「中央にCPUがあって、周りにInput/Outputがあり、他に記憶媒体などがある」 スマホ、デジカメ、ドローン、掃除ロボ、配膳ロボなど、 コンピュータサイエンス的には「同じもの」といえる これまでコンピュータがくっついていなかったものにコンピュータ化することで 多くのイノベーションが生まれている ムーアの法則=プラットフォーム全体が進化するので、 同じ製品で何十年も稼ぐのが難しい (10年使えたアナログカメラと2年で買い替えるiPhone) 性能が上がったからできることで、(音声認識、常時接続) 新しいサービスや製品が(音楽ストリーミングや自動運転)

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日本と深圳の「製造業」という概念の違い Source:[Guerilla Production Tactics] by ‘bunnie’ Huang 深圳では、川上・川下や系列という考えがなく、大企業でも下請けや、社員5人でも最終製品という企 業が多く存在する。 同じビデオ録画機を開発するのでも、「フルスタックな大企業」が1社系列ですべてを賄った時代から、 設計・ツール・量産・OS・開発ボードを別々のプレイヤーが担う時代へ。 ムーアの法則下では、個別の分野に特化して開発を高速化しないと、半導体の進化速度に置いて 行かれる

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タブレットをくっつけるとなんでもロボットになる (多くのコミュニケーションロボットがそう) コモディティ化された技 術でも、市場投入され、 フィードバックを受ける ことで進化していく Version1 = 猿真似 Version1.1 Version1.2・・・・ Version10は?

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コモディティ化された部品を組み合わせて起こるイノベーション タブレット+ホバーボード(セグウェイもどき)+スマートスピーカー =ロボット この受付ロボットMandyは銀行など に数千台販売され、 今は第6世代目になっている。 -受付用の大きいスピーカー -目の前の人間を特定するための 超音波センサー など、やってみて必要になった機能 が付加されて洗練されていく

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そして、その完成品も他人のビジネスの商材として売られる =別のイノベーションの材料になる これをMITのバニー・ファンは「公开(GongKai)」と呼んだ

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HuaweiやXiaomiも公开(GongKai)の一部 IDHと連携することで高速に開発を行うエコシステム IDH=「高コスパ」のミドルレンジ製品を Oppo,Vivo,Huawei,Xiaomi等複数メーカーに向 けて開発 Xiaomi等のメーカー=研究開発費をすべてハ イエンド製品に割り振り、一芸ある製品を 「オープンソースのモジュールをダウンロー ドしてシステムを作るように、深圳の若者は 新しいハードウェアを作る」 (MIT 伊藤穰一) 図版出所:高口康太 https://gemba-pi.jp/post-179927

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公开(GongKai)から开源(KaiYuan) 中国オープンソース開発の盛り上がり そして製品の高度化 公开=ムーアの法則を背景に自然発生的に始まった知財公開が、 开源=イノベーションのために設計された世界共通のオープンソースに 半導体チップやそれを統合した製品も深圳で開発され、高度化が進む 中国の半導体エコシステムを 「自分の目でちゃんと」見てみよう

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ニセAirpodsこと「华强北4代」イヤホンとは 67元(1300円)程度 (ホンモノは27,800円) Airpodsの発売以後何度もバージョ ンアップしてこれで4代目 淘宝や华强北の電気屋などで販 売中 「イヤホン」などの製品名で Aliexpressやamazonなども

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ホンモノそっくりの外観や外箱 DesIgned by in California の文字(ホンモノはDesigned by Apple in California)

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こいつ 動くぞ

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分解してみる:チップはわずか4つ(AirPodsは21個) スピーカー 接触センサのかわり 銅板で静電気を感知 マイコンを使わない イヤホンをケースに接続 させるマグネット イヤホンをケースに接続 させるマグネット バッテリ 充電接点 タッチ制御IC クロックジェネレータ タッチ検出ボタン MEMSマイク 裏面:メインSoC

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Engineering的な工夫 イヤホンのなかみは 左右でまったく同じPCB, まったく同じBOM(部品) 唯一、2つセットの 充電端子部分を 入れ替えることで 左右の違いを出している。 (ファームウェアも別) 部品調達や製造をラクに する工夫 ちゃんと、値段と性能を織り合わせる 設計ができている 「人件費が安いから安い」ではない! 2つセットの部品を、AB/BAで入れ替える

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マーキングの消されたメインチップ 山崎さん(解析仲間)がサイズとピンで チップ候補特定 AD6973Dかも?

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中国の方案公司がAD6973Dチップデータシート公開中 Comfidencialと書いてあるけど公開URLにおいてあるからこの会社が Jieliから許可されたんだろうそうだろう ・ワンチップでBT5.1、マイク接続、AACデコードなどができる ・バッテリ制御、ボタン制御機能もある ・GPIOによる接触センサなどもワンチップで可能、部品点数 を減らせる ・製品にBT5.3とあったのはウソ? > BT5.1だけど、Macや iPhoneが5.1しか対応してないから関係ない ・空間オーディオないぞ > イコライザを適当に変えてそ れっぽく見せてる ブランドでごまかせる!

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深センの解析屋の力を借りて、 マーキング消されたチップを開封しよう タオバオにはチップ開封、FIP(チップ内断線の 修理)、ファームウェア抜き出しなどをやる専門 の解析屋が何軒もいる (住所聞くと深圳华强北とか龙岗とか) チャット機能で見積もりとって発注 300元(6000円)、失敗したらカネ は返す (日本だと数十万かかるし、 そもそも初見では頼めない)

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300元を払って中3日、チップ写真が届く ボンディングのパッド やトランジスタが少な すぎる SiP(System in Package) の小さいほうのチッ プ? 「もうちょい調べてくれ、 これはメモリっぽいが、 MCUのはずだ」と依頼

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←パーフェクトな研磨でSoCの中身を分析 届いた写真 SoCの上にフラッシュメモリ ワイヤーボンディングも 想像できる (これで成功報酬で6000円)

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テカナリエレポート517号 JIELI PB08576とMCUは完全に一致 (フラッシュメモリは違う)これはドンキで2000円で売ってる

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テカナリエレポート517では多くの100円ショップTWSイヤホン (2000円程度)が分解され、今回はドンキのFUGU TWEに搭載され ているJIELI BP08576と同じマイコンだが、フラッシュメモリは違うの で、SoCとしては別物

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ニセAirpodsからわかること -ドンキで2000円で売ってるTWSイヤホンとニセAirpodsは親 戚のようなもの -中国の設計力と深センのエコシステムは「数万円のものを数 千円に」することができた(ムーアの法則を正しく作用させ ている) -設計屋、解析屋、製造屋などの厚みから、この分野ではまだ 先がありそう

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バブル的な投資とイノベーション 余ったお金がPoCを加速させる Part2.投資とスタートアップと イノベーション

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コピー品づくりとイノベイティブな製品づくりの関係 コピー品,後追い品=マーケットがすでにある製品 -売れることはわかっている -ゴールが見えるぶん、開発しやすい -ホンモノほど高くは売れないが、黒字を出しやすい 合理的な意思決定が可能 イノベイティブな製品=マーケットがない -ゴールが見えない -当たると大きい -ハズレを覚悟した意思決定が必要

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ビジネスモデルとしてのスタートアップ投資 ハズレを見込んで、分野(バイオ、モバイル、ハードウェアなど) ごとに毎年一定数のスタートアップに決まった額を投資 ほとんどのスタートアップは倒産するが、大当たりが全体を救う 出版社/メディアとマンガ家のモデルはそっくり -なるたけ多くの色んな作品をデビューさせる -どれが大ヒット、少ヒット、ハズレかはデビューするまで わからない -結果として日本のマンガの投資モデルは、質量ともに 世界1で、海外では想像もつかない/企画書では判断つかない ような作品が次々に出てきている (そういう奇想天外な作品も、ヒットすると後追いがでる)

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Fake it till you make it 中国人件費の上昇から、ビジネスが「より安く」でなく 「ほかにないものを」に変わる 他にないものは売れづらいが、投資ブームにより 売上でなく時価総額でも会社がまわるようになる →よくわからない、イノベーションの種があふれる場所に JST調査 2017年9月 丁可 2016年、世界のVC投資の7割が中国

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掃除ロボとタブレット=配膳ロボ 深セン普度pudu社 ガストなどに入ってる配膳ロボ LiDARなどセンサー類の低価格化と、 深センのベンチャー投資ブームで生 まれた (高須はここにangelで入れてる Heroad Fundの顧問やってます)

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深圳SpinQ / 量旋科技 2018年創業 2022年9月、Pre-Bとして1億RMB調達 (もともとの深圳高新投+金景衡巽,东海など) https://spinq.cn/ 社員50名ほど 香港科技大、清華大 MITなどから 量子力学の他、 化学、電子工学など の社員が集まる

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深圳SpinQビジネスの特徴 1.デスクトップ用の安価なモデルと、 超電導主体の高性能なモデルの両方をビジネスにしている 2.ハードウェア製造全体とアルゴリズム開発、ビジネス化の 3方面を1社で手掛けている デスクトップモデルGemini-mini 118万円(2022年販売開始 初回入荷分完売) 超電導環境で駆動する 高性能モデル 内部のチップも自作している 量子コンピュータの クラウドサービス

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日本でも販売開始

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ビジネス,コミュニティづくり, 日本の価値 Part3.具体的に高須がやっている ビジネス

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デジタル/コンピュータが社会をどう変えていくか 人間はハードウェア(生き物)なので、多くのサー ビスはフィジカル(物理材)が必要 コンピュータと物理材をつなぐ、 モータやセンサー、統合する様々なコンピュータ 新しい中国ビジネスはそこから生まれる

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自分がコミットしている中国でのビジネス (中国に限らないけど) バーチャルとフィジカルを繋ぐ部分の ハードウェア/研究開発ツール

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バーチャルとフィジカルをつなげていく インターネット クラウド (情報) 物理的な社会、モノ、人間、工場 IoT, カメラ、センサー IoT, ロボット コンピュータの力が、現実社会を変えていく。 人間はコミュニティーやコードでそのエコシステムを作っていく

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M5Stack(2018年日本発売開始) ・社長ジミー・ライは、もと中国南方電網のエンジニア ・しょっちゅうスマートメーターを開発している間に、 「多くのメーターに共通する機能を製品にしよう」と思 いついて起業 ・社長室に専用の部品ボックスと作業台を起き、プロト タイプを自分で作る。いつも身の回りには試作品が転 がっている ・Arduino IDEが利用可能で、IoT開発に必要なwifi/BTをあらかじめ備えたESP32シリーズの CPUを採用した開発ボード。日本でもArduinoを置き換える勢いで普及が進んでいる ・画面、バッテリ、ボタン、Grove,GPIOなどを備え、安価(1500-5000円程度) ・毎週1つ以上の新ハードウェア/センサー類を発表し、拡張性が高い オープンソースハードウェア(部品リスト,ピン番号などの 開発に必要な情報があらかじめ公開されているハードウェア) 買ってくれば使える。ソリューションを開発する上でM5Stack社の取引開始稟 議書、審査や許可が要らない。必要な情報はオンラインで公開されている

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クローズアップ現代 「ものづくりxAI」特集 2021年10月20日放送 これらの開発ボードは 深圳M5Stack社(社員50名,日本発売開始2018年)の製品 弊社スイッチサイエンスは日本での販売責任代理店 ソリューションを販売しているのが日本の高専発startup

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NTT研究所のIbuki 山口大の 密回避システム NHK研の 触覚デバイス 全日本学生児童発明くふう 展で特許庁長官賞(11歳) 企業の研究所から小学生の発明まで、 2018年の発売開始からわずか5年で、 深圳M5Stackは多くの発明家に使われている

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M5Stack成功の原因 ■何よりも、安心して使えるオープンなハードウェアであること -ソリューションを開発する上でM5Stack社の取引開始稟議書、審査や許可が要らない -必要な情報はオンラインで公開されている ■現役エンジニアならではの優れた製品企画 -プロトタイプ開発を圧倒的に早くするオールインワン(バッテリ,LCD,ボタン,無線) ■深圳ならではの開発・製造力 -プロトタイプから工場のDXまで、様々な用途に対応するセンサー、周辺機器 -1000個単位のフレキシブルな自社製造ラインと、深圳で設計開発することによる サプライチェーンが可能にする超高速な製品開発(毎週1つ以上新製品発売) ■それらが組み合わさった魅力的な製品と、ユーザーの支持やフィードバックが生んだ コミュニティ M5Stackユーザのコミュニティは、日本のユーザが中心になって作り上げた

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1ロット1000個程度の製品をしょっちゅう変更しながら作る ラインや工作機械の精度は雑だがフレキシブル iPhoneの製造ラインのように「日本製部品を使って300ラインをまった く同じ精度で作る」のとは別の製造方式 M5シリーズの製造ライン(自社スタッフ・自社ライン) ほとんどの工程は人間,検査装置などでM5Stackシリーズが使われる アジャイルな製造ライン M5シリーズの良さは、モノの良さだけではない

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M5シリーズのアイデア→PoC→DFM→生産は6週間といわれている 製造と設計を同時並行するようなアジャイルな製造をどう実現するか? 今稼働してる 「ネジ止めだけやります」的な シンプルだけど安くて使いやすい 工作機械 自分たちでラインを立ち上げられる、 M5Stackの工業用シリーズ Keep It Simple Stupid, but Collaborative and Connected.

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次のテーマ「バーチャルとフィジカルの連携」をアップグレード M5Stackをコントローラにした安価なロボットアーム「myCobot」シリーズ (深圳Elephant Robotics社)

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バーチャルな空間とフィジカルな空間をロボットで連携させる myCobotシリーズはROS(Robot Operating System)をサポート これから日本のROSコミュニティにも貢献していく予定 さらにSLAM,AGVと組み合わせる

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Minipupper,myCobotなどに搭載されているFeetechのサーボ 安価で高性能、スタートアップ向けカスタマイズ 3740円(税込) フィードバック ポテンショメータ有 40kg/cmトルク 24Vサーボ 左は85kg,右は120kgト ルク

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Minipupper,myCobotなどに搭載されているFeetechのサーボ 安価で高性能、スタートアップ向けカスタマイズ 深圳のサーボ企業 数百個単位からカスタムサーボ作ってくれる ロット小(ソフトや付属品) -MCU内のファーム変更 (速度とトルク、アラートなど のバランス) -色、ケーブル長さなどの変更 ロット中(金型変更を伴わない) -サーボ内ギア変更 -軸の長さ変更 ロット大 -軸の場所やコネクタの変更

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Direct Drive Techのモーター 高トルク、静音、多くの日本のスタートアップやロボット研究者に 使われている(日本にもロボット開発ブームが来ている)

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深センの価値、日本(僕)との関係 ■深セン=開発ツール、開発のためのHackableなモーター、センサー等 「エンジニアのためのハードウェア」(量産のため、ではない)を続々生み出す土地。 ■日本=新しい開発ツールでは世界最大の市場(M5の日本シェアは35%が日本) 米中が「有名にならないと買わない」のに対して、日本は積極的にいろんなハードウェアを 試すエンジニアが、BでもCでも世界一多い ■エンジニアフレンドリーなハードウェアを、手軽に買える状態 -国内総代理=法規制クリアした製品しか輸入しない(短期売り抜けをやらない) -積極的に代理店開拓、アルファユーザの声をメーカーに届ける -深いパートナーシップ(少額投資,OEMでの協力とか) ■日本を、日本市場を、よりエンジニアフレンドリーに そんなに大儲けではないが、成長できるモデル

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コミュニティベースの製品開発 Part4.アイデアからプロダクトまで

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クラウド ファンディング 開始 2022/10/27

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No content

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予備知識: 「なんでもぜんまい」を発明したTOKYO FLIP-FLOPとは 変わったモノづくりや、その紹介イベントをやる趣味ものづ くりサークル(会社ではない) コミケなどで頒布することもある

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相談があったのは2021年9月1日 ほぼ1年かけて量産プロジェクトスタート

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予備知識: 「なんでもぜんまい」をプロデュースするMakerNetとは -中国深圳の会社 -社⾧Kevinと妻ほか数人のスタッフ、多くのネットワーク -「アーティストのプロデュース」が仕事 -展示会の売り込み、企画運営 -アーティストのアイデアを製品に落とす、販売 -実際の製品製造 -アンテナショップとしての直営店(上海) -日本の京都にもオフィスあり -オンライン販売、マーケティング

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プロジェクト進行 2021/09 会議 最初の会議 顔合わせ、プロダクトの情報(メカ,3Dデータ,BoM) 2021/10 粗見積もり(金型8000USD,3000個製造の場合の単価xxxUSD程度)、 最小3000から、ビジネスモデル検討(半数をMakerNetプロデュース) 以後、2週間~1ヶ月に1度程度ミーティング、改変のたびにサンプルを日本に 送るなどしながら、量産に向けた細部の変更や、パッケージ、日本向け輸送など を打ち合わせ 打ち合わせ内容: -外観の変更(乾電池にしたので少し⾧くなる) -材質、手触りの検討 -バッテリーホルダーの改良/落ちにくく -実用新案とってるか?

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どういう製品にしなければならないか 製造数3000=価格は割高 なので、「高くても売れる」ようにする必要がある -きちんとした見た目、パッケージ、web site -きちんとした販路,インフルエンサーの紹介 モノだけでなく、ストーリーや雰囲気を売らなければならない -ふさわしいお店に、ふさわしい製品と一緒に置く -バッタ屋で売らない 大量販売がしづらいぶん、⾧く広く売れるものを作る -ムーアの法則に載らない -言語に依存しないでコンセプトが伝わる メイカーネット全体のコンセプト -クリエイティブ(超常識)な製品類 对外合作版-超常识创造力工厂 · 明和电机学艺展的.pdf

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Produce Promotion Prototype 何を作る どう売る どう作る DesignerとPlannerとMarketerの綱引き/連携 西欧ではデザイナーと工場は対立するが、深圳ではデザイナーの中に工場が あり、工場の中にデザイナーがある(bunnie huang, Joi Ito)

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・何を作る(製品企画,値段設定やマーケティング含む) ・どう作る(製造がわからないと原価もわからない) ・どう売る(売れ行きが予想できないと製造数がわからない) 何を作る どう売る どう作る

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なんで「今」 オリジナル製品を つくるべきなのか? メイカーズの時代

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発明品を多くの人に届けるには、たくさんのお金が かかる。 なので、モノをつくる前にお金を確保する会議をた くさんしていた。 それができない人は発明を人々に届けられなかった

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インターネットができて、 コンピュータや開発ツールもすごく安くなった 面白いものはお金なしで広がるようになった

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昔は、何を作るにも先にお金集めをしていた。 今は、手に入るもので「まずつくってみる」よう になった。 モノのまえにお金の話をすると、 「今より安いです」「今より早いです」 のように、数字でわかりやすいものしか のこらない 先に何か作ると、 「おもしろいじゃん!」 が、先に来て、あとでお金の話ができるよ うになる

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はじめるのは、一人でできる。 大きくしていくのはたくさんの人が必要。 IchigoJamのように安いツール、無料のプロ グラミング環境やソフトウェアがたくさんあ る。 3Dプリンタを使わせてくれる場所もある。 デザインの専門家、音楽の専門家、製造 の専門家などたくさんの専門家がいる。 イベントを開いたりもしなければ。 オフィスの家賃や掃除も、、 仕事がうまくいくと、人は増え続けて、 お金もかかる。

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移り変わる技術、 ⾧持ちする製品

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技術やイノベーションの民主化 特に近年はコンピュータがもたらしたもの カメラの写真:カメラ修理屋日記 CAMERA DAYS https://kawazudorepair.ti-da.net/c376563.html カセットレコーダーの写真:檜垣万理子さん提供 カメラ カセットレコーダ コンピュータ以前の製品は物理学、工学の世界、 製品ごとに別々の内部構造、それぞれの習得は大変 たとえばカメラとカセットレコーダーと電話機は別々のチームと会社とノウハウで作られる。

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コンピュータ以後の製品 すべてはコンピュータ+入力+出力 入力がコントローラで出力がテレビ画面だとゲーム機 入力がキーボードで出力がモニタだとノートパソコン 入力が大きなセンサーで出力がSDカードだとデジタルカメラ 入力がマイクで出力が携帯電話網だと携帯電話、出力がモーターだとロボット コンピュータ以前は全然別の製品、 コンピュータ以後はほぼ同じ製品 すべてにムーアの法則が適用される。高い機械でも数年で買い換えられる。 10年前のスパコンを使う人はいない。10年間同じ使い方をされる機械もない。

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ムーブメントの起こし方

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ムーブメントの起こし方(Derek Sivers) -ムーブメントそのものに意味はないかもしれない。適当に踊るだけでもムーブメントは起こる -2人目がいないと永遠にその向こうはない。2人目が他の人を連れてくる指導者だ。 -人が集まると参加するリスクが下がる。人が人を連れてくる。 -ムーブメントの誕生だ。そのうちむしろ、乗り遅れるとダサいようになる。

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MakerNet 他の製品 明和電機 -Otama Tone -バウガン -SUSHI BEAT バイバイワールド -パチパチクラッピー Teenage Engineering

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今の世の中、製品はどこでヒットするかわからない。 Otamatoneの思わぬところで大ヒット スペインのGod talent テレビ番組 https://www.youtube.com/watch?v=CIkZEU2XwnM&t=279s

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今後はコミュニティベースの製品開発、ビジネス開発を 例.Atom Mate for toio - M5Stackとtoioを組み合わ せて使ってるユーザが多い ことから、 SONY田中章愛さんからの オファー - toioのUIFlow対応 - toio上にM5 Matrixを載せる ハードウェア開発 - (今のところ)日本限定

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xDiversity(JST科学技術振興機構のプロジェクト)に発展

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今後はコミュニティベースの製品開発、ビジネス開発を 例2.ATOMFLY 2.0 M5Stackでお蔵入りになっていたプロジェク ト(ファームウェアなし販売だった)が、日本の エンジニアの力で復活 -日本で飛ばせる、100g未満の室内向け,技 適等Okのドローン -国際高専の伊藤恒平教授が、飛行制御の 授業で使えるように -ファームウェアはオープンソース(ほぼ伊藤 先生が開発)

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今後はコミュニティベースの製品開発、ビジネス開発を 例4.MSX0 Stack もちろんMSX(西さん)の プロジェクトだが、 M5Stackとしてもシナジー だせるようにしたい BasicでIoTというのは意 味がある どちらのユーザも増える 方向に行くとうれしい

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今後はコミュニティベースの製品開発、ビジネス開発を 例5.中国のVCふたつで顧問など iMakerbase 深センのVC 自前の工場があり、サプライチェーンとの関係 が深い 高須はイギリスの会社と一緒にタイヤの空気圧 を測る製品を量産中 Heroad 深センのVC 「善投資」はSGDs投資ではなく、「いい会社は儲 かる」という考え方 社会的に価値ある事業で、かつ社内の意思決 定が明確で、得意先の評価も高い会社は儲か る。IPOして銭ゲバ化する会社は長期では駄目

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今後はコミュニティベースの製品開発、ビジネス開発を 例6.オープンソース運動への貢献 2022年、中国オープンソース運動リーダー33人(外国人は僕だけ)

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現在の中国は、「日本みたいな製造業」と 別の製造大国を目指しているので面白そうなイノベーショ ンがでてきそう 第14次五か年計画15章 「デジタル経済で新しい優位性をつくろう」 完善开源知识产权和法律体系,鼓 励企业开放软件源代码、硬件设计 和应用服务 オープンソースの知財管理を完全 なものにし、 企業がソフトウェアのソースコー ド、ハードウェアの設計をオープ ンにすることを奨励する

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中国のオープンソースについて、GitHub上で 共同翻訳などの研究をしています #中国オープンソース でtwitter等で検索ください 工業やロボット関係の資料 レビューしてくれる方など おまちしてます。 共同翻訳、 中国語の勉強にもなるよ!

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3300人を超えるメンバーのいるニコ技深圳コミュニティ 経済・経営研究者など -木村公一郎 (JETROアジア経済研究所) -伊藤亜聖 (東京大学准教授) -牧兼充 (UCサンディエゴ、 早稲田ビジネススクール) -梶谷懐(神戸大学) -山形浩生(翻訳家・評論家) -高口康太(翻訳家・ライター) 起業家・経営者 -藤岡淳一 (JENESIS代表 ニコ技深圳コミュニティ 共同創業者) -澤田翔 (インターネットプラス 研究所) -金本茂 (スイッチサイエンス) コンピュータ科学者/技術者 -秋田純一 (金沢大学教授/NT金沢) -GOROman (VRエバンジェリスト) -Andrew bunnie Huang (ハードウェアハッカー) コミュニティマネージャー 茂田カツノリ(エンジニア深圳ツアー) 伊予柑(ドワンゴ・自作ゲーム) 中野しほ(ギーク中国語講座) 高須正和(AkiParty,メイカーフェア深圳,SG) 初期:深圳のイノベーター ギークと助け合えるクリエイター 中期:深圳情報を発信できる専門化たち 後期:起業家・経営者たち

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ニコ技深圳コミュニティ 現在Facebook上で3300人を超えるメンバーを集める技術コミュニティ エンジニア・起業家・研究者などがオープンにプロジェクトや意見交換を行い、 これまでに紹介したような提携や投資、研究活動を行っています。 2015年時点で、「英語圏含めて、もっとも詳細な深圳のイノベーション解説」 (野村総研総合研究所)と言われています

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The future is already here – it's just not evenly distributed. 未来はすでに来ている。ただ、充分に分配されていないだけ。 ただし、科学がないと、ペテンと夢を間違える (さらに日本語/日本語翻訳の海外ニュースとスタートアップ/ テックニュースはゴミの山で、僕は「絶対見ない」ためにかなり 努力している)

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事業とそのジレンマ 競合がいない 自社にしかできない 競合がいない 自社にしかできない 利益をゴールにする 組織で利益を挙げる 属人化しない 利益をゴールにする 組織で利益を挙げる 属人化しない ・僕の属人的な活動が、組織としての利益に繋がる=事業 ・ブルーオーシャンでも利益が出るところは? ・競合が参入できず、自分たちはできるものは? ・弊社は中小企業なので、短期で大きな利益にならなくてもよい ・僕個人の人件費や経費は空振りしてもかまわない=多産多死前提 ブルーオーシャン なかなか利益が出 ない 資本力で決まらな い 利益が出るけど 競合も増え 規模とディテールの勝負 に レッドオーシャン化 資本力で勝負が決まる 利益が上がるほどレッドオーシャンになっていく 僕が関心あるのはこちら 今は仕事になっていないのに、すごい人がすごい労力を注い でいるところ=可能性ある

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ブルーオーシャンをどうやって事業に繋げるか ・仕事じゃないのにすごいスカラーがあるところ ・自分以外面白がってないことを見つけ、面白さをシェアする ・コミュニティができれば事業になる(かもしれない) 自分しか わからない 自分しか わからない 一部の人は面 白がる 一部の人は面 白がる 世の中みんなが知っ ている(お金にもなって いる) 世の中みんなが知っ ている(お金にもなって いる) ここのキャズムをどう越えていくか ググったら出てくる, 有名Youtuberが解説している, Amazonで本が何冊も出ている →コミュニティ,集合知

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アカデミアとの距離、アカデミズムの使い方 ・研究者は面白さドリブンで動く専門職 ・そこにはインフルエンサーやライターが持っていない価値がある(それら の職業は、結局は世間のウケを気にしている) ・研究者が何をどう面白がっているかは参考にすべき (学会の仕組み、評 価..アカデミズムの専門家になれなくても同じ言葉が話せる必要がある) まだ小さい分野なら、有名な研究者と一緒に活動ができる 強いアマチュアの価値(by山形浩生) -分野の垣根を越えられる(分野を超える問題はますます大事になっている) -熱量 「ジェイコブズの教訓:強いアマチュアと専門家の共闘とは」←ググると出てくる。オススメ 新しい分野をプロ研究者が追いかけてくるなら、その活動には意味がある (メイカー,初音ミク,ニコニコ動画等SNS..)

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面白さとどう向き合うか ・たとえばドクターとは何か →その分野で新発見をし、共有できた人。 未知の一つを既知にした人。 ・その分野でのドクターみたいな感じになれるか なれてるなら可能性はある 大事なのは、実務家と現場の話ができて、研究者と抽象的な話が できること たいていの人が間違って、実務家の書いたわかりやすいビジネス 書やPPTをありがたがる。 そこには「誰でもわかること」しか書いてない 自分たちにしかわからない希少な面白さが大事 かつ、10年ぐらいでもっと大衆性を持ち得るもの 1-2年では短い

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研究は常に、「扱えるものを広くする」ように発展してきた 論文や学位、技術や発明だけがラボではない。 アートや人文や商売も含めた、もっと広いものだ 社会実装 Deploy 社会実装 Deploy デモ デモ 論文 Publish or Perish 論文 Publish or Perish 論文:査読で信頼性を担保 Pro:ロジカルなもの、自然科学と相性がいい 世界中に等しく届く Con:アートや好き嫌い、またその相互作用で起こる複雑 な事象と相性が悪い MITのニコラス・ネグロポンテが80年代に提唱 デモ:動くもの、目に見えて体感できるもの Pro:アートほか、論文で表現できない発見を表現できる Con:論文より実現が大変 Con: 社会実装:クラウドファンディングで売るなどして、多くの ユーザを巻き込む Pro:人間同士の相互作用によって起こるものを表現でき る Con:デモより実現が大変で、多くは商売になる

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中国に欠けがちなものと我々(≒日本)の価値 -ビジネスが盛り上がってるので、お金にならないこと への動きが鈍い (だから、オープンソースや先鋭的な開発ボード等、イノベーティブな分野での 僕らの活動が重宝されている) -だいたいの仕事が中国人で片付くため、グローバルさ、ダイバーシティに欠ける (アメリカの企業や大学は世界一が集まるが、中国の大学はそうならない ただし、この点では日本はもっと悪くて日本人で固まりがち) (だから国際的なコミュニティである僕らの活動が重宝されている) 日本の多くの組織が 「オールジャパンで予算つけて中国に対抗」のように、 さらにアンチイノベーションでドメスティックな戦略をとりがち それで良いことはなにもない。 手を動かす人はみな、人類を前進させるための仲間です。

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どうもありがとうございました。 今日話したことの詳細はこちら 「プロトタイプシティ」 「メイカーズのエコシステム」 「ハードウェアのシリコンバレー深圳に学ぶ」 「ハードウェアハッカー」にて。 連絡先: 高須正和 [email protected] Twitter: @tks Facebook: https://fb.me/takasuinfo WeChat:takasumasakazu