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あなたの「仮説検証」、 ゆがんでいませんか? 2025/03/24 EMConf Expansion! –EM Oasis特別会- Shu Oogawara (@expajp)

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• Shu Oogawara(@expajp ) • 「えくすぱ」と読みます • リンカーズ株式会社 EM • ビジネスマッチングの会社です • EM Meetup コアスタッフ • 次回は04/25金 • 趣味は秘境駅めぐり と深夜ラジオ 7 自己紹介

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• 「エンジニアリング」とは関係ない話をします • 4つのPだと最も関係があるのはProduct Management 8 注意

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9 今日のテーマ① 認知バイアス

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10 認知バイアス 認知バイアスという言葉は、 心の働きの偏り、歪みを指す。 “ 鈴木宏昭, “認知バイアス – 心に潜むふしぎな働き”, 2020, 講談社, p. 4 画像引用:講談社, “『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』(鈴木 宏昭):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部”, https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348086, 2025/03/14閲覧

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聞いたことある人? 11

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12 認知バイアス 2020年4月 最初の緊急事態宣言 画像引用:Google Trends, https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=all&geo=JP&q=認知バイアス&hl=ja, 2025/03/14閲覧

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13 今日のテーマ② 仮説検証

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14 今日のテーマ② 仮説検証→科学的方法の中核

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15 科学的方法の一例 Efbrazil, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

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16 科学的方法の一例 Efbrazil, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons 仮説 実験による 検証 データの 分析 観察/疑問 専門領域の 調査 報告

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17 仮説検証をマネジメントに用いた代表例 画像引用:日経BP, “リーン・スタートアップ | 日経BOOKプラス”, https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/12/P48970/, 2025/03/14閲覧

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18 仮説検証をマネジメントに用いた代表例 画像引用:電通, “リーン・スタートアップ | ウェブ電通報”, https://dentsu-ho.com/articles/2824, 2025/03/23閲覧

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19 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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20 本日のテーマ 仮説検証の過程に認知バイアスが 入り込んでいるのでは?

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この発表では 架空のサービスを例に仮説検証に どのように認知バイアスが入り込むかを示す 21

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• 現在の課金形式は成果報酬型 • ユーザは登録時・成約時にお金を払う • 売上改善のため課金形態を見直す • これを仮説検証によって行う 22 設定:婚活サービス

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23 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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24 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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• 安易に流行りの手法を導入する 25 仮説構築のよくある失敗パターン サブスクを導入しよう!!!

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• 代表制ヒューリスティック • 確証バイアス 26 失敗の裏にある主な認知バイアス

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• 典型的なイメージに引っ張られ、 統計的な確率よりも重視してしまうバイアス • 例)東京でたこ焼き好きな人に会った→大阪出身? • 都民は半分以上が東京出身。人口流入も主に近郊から • 東京には「関東出身のたこ焼き好き」の方が恐らく多い 27 代表制ヒューリスティック

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• 自分の意見に沿うデータばかりを集め、 反証する情報を無視してしまうバイアス • 例)「犯罪が増え続けている」と思い込む • 国内犯罪は2002年をピークにコロナ禍まで一貫して減少 • 犯罪が増えているイメージを抱くと 「犯罪が減っている」ニュースは無視してしまう 28 確証バイアス

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• サブスクで成功した企業が盛んに報道される • 「成功してる企業はみんなサブスク」と思い込む • 代表性ヒューリスティック • サブスクが成功した情報ばかり集めて確信を深める • 確証バイアス • それ以外の要因や、別の課金形態で成功している企業は無視する 29 安易に流行りの手法を導入する流れ

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• 個人の思い込みを検討なしに採用している 30 課題と対処法 課題

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• 個人の思い込みを検討なしに採用している 31 課題と対処法 課題 対処法 • 複数人から、複数の意見を別々に集める • 個人の思い込みの影響を薄める • 自社に適応したときのメリデメを検討する • 代表性ヒューリスティックで捨象してしまった要素を 再度検討する

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32 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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33 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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• 一部のユーザに対してサブスクを採用して 効果を検証することになった 34 設定:婚活サービス

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• 何の基準もなく「成功」と判断する 35 仮説検証のよくある失敗パターン 売上は良い感じだし これは検証成功ということだな

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• 確証バイアス • 現状維持バイアス 36 失敗の裏にある主な認知バイアス

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• 「現状維持」の選択肢を過大評価してしまうバイアス • 例)ブラック企業からの転職をためらう • 低賃金や長時間労働が解消する期待よりも、 転職が失敗するリスクを過大評価してしまう 37 現状維持バイアス

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• 仮説を「仮説」と捉えられていない • いくら丁寧に構築したとしても仮説は仮説 • 都合の良いデータだけ見る • 確証バイアス • 一度始めた施策をやめるリスクを過大評価する • 現状維持バイアス • 失敗に厳しい組織はこれが起こりやすい 38 何の基準もなく「成功」と判断する流れ

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• 定義してない「成功」ありきで検証している 39 課題と対処法 課題

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• 定義してない「成功」ありきで検証している 40 課題と対処法 課題 対処法 • 検証前に施策の目的を明らかにする • それに従って、検証対象データと判定基準 を決めておく • 「成功」と「失敗」を同時に定義する • 反証可能性を担保する

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41 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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42 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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• サブスクを全顧客に展開するかを チームで意思決定することになった 43 設定:婚活サービス

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• 会議を主導する人の意見に引っ張られる 44 意思決定のよくある失敗パターン こんなデータが出て自分はこう思う 皆の意見を聞きたい。そうだろ?

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• フレーミング効果 • アンカリング効果 45 失敗の裏にある認知バイアス

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• 同じ情報でも表現に意思決定が引っ張られる効果 • 例)当籤確率「1%」というより「100人に1人」と 言った方が宝くじが売れる • もちろん確率的には全く同じ • 代表的ヒューリスティック・確証バイアスと 合わさって短絡的な意思決定を生みやすい 46 フレーミング効果

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• 先に受け取った情報に判断が引っ張られる効果 • 例)レストランで、最初に頼んだ人と同じものを 頼んでしまう 47 アンカリング効果

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• データを誰かが取りまとめて意見を添える • フレーミング効果 • 報告者の表現に無意識に意見が引っ張られる • 出席者が順に意見を言う • アンカリング効果 • 最初の意見に他が引っ張られる • 全員の意見が引っ張られて「全会一致」で可決 48 意見が引っ張られる流れ

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• 誰かの意見を聞いてから各々が意見している 49 課題と対処法 課題

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• 誰かの意見を聞いてから各々が意見している 50 課題と対処法 課題 対処法 • データを事前提示する • 話すのは各々が意見をまとめてからにする • 「資料見といて」もなるべく避ける • 読まずに参加する人がいると、やはり偏るため • 会議の冒頭に時間を作ると良い

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51 仮説検証のプロセス 構築 検証 意思 決定

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このように仮説検証には さまざまな認知バイアスが潜んでいる 52

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みなさん 「自分はこんな馬鹿なことはしない」 なんて思っていませんか? 53

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みなさん 「自分はこんな馬鹿なことはしない」 なんて思っていませんか? 54 それもバイアスなんです

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•他人の認知バイアスは認識できるが、 自分自身へのバイアスの影響は認識しづらい 55 “バイアスの盲点”

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人間はバイアスの影響から 逃れられない 56

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それでも認知バイアスを学ぶ意義はある 57

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58 認知バイアスを学ぶ意義 「どれくらい妥協するか」を自覚的に行える

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• 複数の人から複数の意見を集める • 「成功・失敗」の基準を作ってからデータを取る • データを事前に共有し、皆が咀嚼してから議論 59 今日紹介した施策

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• 複数の人から複数の意見を集める • 「成功・失敗」の基準を作ってからデータを取る • データを事前に共有し、皆が咀嚼してから議論 60 今日紹介した施策 コストのかかる施策が多い

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61 仮説検証はコストの制約のもと行う 妥協せざるを得ない

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62 仮説検証はコストの制約のもと行う 妥協せざるを得ない 認知バイアスを学ぶことで どこを妥協すればどんなリスクがあるか 分かるようになる

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63 認知バイアスを克服することはできない 人の知性は、人の住む環境の中で、そして人の生物学的な 条件の下で作り出されたものである。 (中略) だから、それを度外視した状況を勝手に設定して、 そこで人間の知性を論じたりしても意味がない。 “ 鈴木宏昭, “認知バイアス – 心に潜むふしぎな働き”, 2020, 講談社, pp. 252-253 画像引用:講談社, “『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』(鈴木 宏昭):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部”, https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348086, 2025/03/14閲覧

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できるのは、完璧に近づこうとする努力だけ 64

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バイアスを学び、受け容れつつ よりよい仮説検証を 目指し続けていきましょう 65