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及部敬雄 (@TAKAKING22) ユーザーの声を聞くとはどういうことか

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https://www.cbinsights.com/research/startup-failure-reasons-top/

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NO MARKET NEEDS マーケットニーズがない=欲しい人がいない

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ソフトウェアプロダクトにおける機能利用状況     ͍ͭ΋࢖͏ Α͘࢖͏ ΄ͱΜͲ࢖Θͳ͍ ·ͬͨ͘࢖Θͳ͍ Pendo社によるプロダクトマネジメントに関する調査(2019)

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よく聞く話 スタートアップの失敗事例のよくある要因の一つが、
 NO MARKET NEEDS=誰も欲しくない プロフェッショナルが作っているはずのソフトウェア
 プロダクトでも、大半の機能はほとんど使われていない ※プロダクトには使う頻度が少ないけど必要な機能もあったりするので、
  必ずしも使われない機能が悪いわけではない

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ユーザーの声を 聞くぞ!

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スプリントレビューやユーザーテストにて 「こんなプロダクトになりました!」 「どうでしょう?」 ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、プロダクトのデモを通して、
 フィードバックを受けながら仕事を進めていくことは増えてきた。

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スプリントレビューやユーザーテストにて 「こんなプロダクトになりました!」 「どうでしょう?」 「ボタンはもっとこういうデザインの方がいい」 「ソート機能があると嬉しいな」 「◯◯の情報があったほうが選びやすいです」 ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、プロダクトのデモを通して、
 フィードバックを受けながら仕事を進めていくことは増えてきた。

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スプリントレビューやユーザーテスト後 「たくさんフィードバックもらえたね」 「いい感じだったんじゃない?」

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スプリントレビューやユーザーテスト後 「たくさんフィードバックもらえたね」 「いい感じだったんじゃない?」 「もらった要望をリストに追加しよう」 「さっそくとりかかるぞ」

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スプリントレビューやユーザーテスト後 「たくさんフィードバックもらえたね」 「いい感じだったんじゃない?」 「もらった要望をリストに追加しよう」 「さっそくとりかかるぞ」 (開発・・・開発・・・)

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1週間後・・・

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スプリントレビューやユーザーテストにて 「いただいたフィードバックをもとに
  機能追加やデザイン変更をしてきました!」 「大変だったけど、全部対応できました」 「どうでしょう?よくなりましたか?」

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スプリントレビューやユーザーテストにて 「いただいたフィードバックをもとに
  機能追加やデザイン変更をしてきました!」 「大変だったけど、全部対応できました」 「どうでしょう?よくなりましたか?」 「あ、ありがとうございます」
 (そんなこと言ったっけ?)

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これを繰り返していくと・・・ 「ついにリリースだ!!」
 「ユーザーの声をたくさん聞いて対応してきたし
  きっとたくさんの人が使ってくれるぞ」

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これを繰り返していくと・・・ 「ついにリリースだ!!」
 「ユーザーの声をたくさん聞いて対応してきたし
  きっとたくさんの人が使ってくれるぞ」 「あれ、ユーザー数が全然増えない・・・」
 「ユーザーテストでフィードバックをもらって
  きたユーザーもあんまり登録してくれてない?」

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「言われた通りつくったのに・・・」

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理 解

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なぜ誰も欲しくないプロダクトができたり、
 使われない機能がつくられてしまうのか ユーザーはそのとき思ったことを話している そのときはそう思っていたけど今はそうではないかもしれない 言ったことを実現したからといって買ってくれる・使ってくれるとは限らない ユーザーは自分の真に欲しいものを言葉にできない ユーザーはプロダクトづくりのプロではない

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物理的にユーザーの声を聞いただけで
 満足していないか

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「オレゴン大学の実験」/Alexander C.

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“もし顧客に望むものを聞いていたら、 「もっと速い馬が欲しい」と言われただろう” ヘンリー・フォード Photo by Thomas M on Unsplash

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ユーザーは真に欲しいものを言葉にできない 「もっと速い馬が欲しい」背景にはなにがあるのだろうか 次の予定があるのでもっと短い時間で移動したい 食べ物を運んでいるので時間がかかると鮮度が落ちてしまって売れない ライバルに勝つためにいちはやく相手に情報を伝えたい

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ユーザーは真に欲しいものを言葉にできない 「もっと速い馬が欲しい」背景にはなにがあるのだろうか 次の予定があるのでもっと短い時間で移動したい 食べ物を運んでいるので時間がかかると鮮度が落ちてしまって売れない ライバルに勝つためにいちはやく相手に情報を伝えたい 背景までわかると解決策が変わってくる可能性がある 次の予定があるのでもっと短い時間で移動したい ⇒自動車、飛行機 食べ物を運んでいるので時間がかかると鮮度が落ちてしまって売れない ⇒冷蔵庫 ライバルに勝つためにいちはやく相手に情報を伝えたい ⇒電話、メール

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顕在的意識 潜在的意識 無意識 人が自ら言葉にできる 問いかけることで言語化することができる 引き出すことで言葉にできる 聞き方によって意識を刺激して 引き出すことができる 自分では気づいておらず、言葉にできない 無意識のため言葉として引き出すことは難しい ○○が欲しい! △△が使いにくい! なぜその機能が欲しいのか なぜ使いにくいのか なにを解決するのか 真のニーズ 原体験

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我々がやるべきことはなにか ユーザーの潜在的意識や無意識を探索する 表面的な言葉や行動だけではなく、その背景を洞察する 聞くのではなく「聴く」、見るのではなく「観る」 ターゲットとなるユーザーや業務自体の情報が乏しければ、
 洞察することはできないので、理解を深めることも重要 現状どのように問題に対応をしているのか実際に見に行ったり、
 現在の業務を観察しに行く

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"でも、宮本さんと仕事するようになってからだんだん
 わかっていくんです。なにが自分に足りなかったかというと、 ひと言でいえば、自分は、「ものをつくる側からしか
 見てなかった」んですね。 宮本さんって、「こうやったら、こうなるはずや」っていう
 ふうにつくって、もちろんその時点で、ほかの人よりは
 はるかに打率が高いんですけど、神様じゃないので、
 それなりに間違うんです。 それをどうやって補正してるかというと、社内から、その
 ゲーム触ったことのない人をひとり、さらってくるんですよ。 さらってきて、なにも説明せずに、いきなりポンと
 コントローラーを握らせて「さあ、やれ」って言うんですよ。 それはまだ、宮本さんがいまみたいに世界的なゲームデザイナ ーとして評価される前、係長とか課長だったころから。" https://www.1101.com/iwata/2007-09-03.html

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肩越しの視線 ユーザーがプロダクトを使っているところを実際に見せてもらう 最低限となる前提情報のみ伝え、あとはユーザーに使ってもらう 頭の中で考えていることや思っていることをできるだけ
 声に出してもらう 操作している画面やユーザーのふるまいを観察して記録する 「事実」と「意見」は分けておく 終わったあとにユーザーに気になったことを質問をする

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とあるチームの肩越しの視線の実践例 検索画面に遷移した 検索条件項目を全部入力している ⇒必須項目マークに気づいていない? 検索と検索結果の画面を行き来している ⇒欲しい結果にスムーズにたどり着けてない? ⇒詳細検索に気づいていないのでは? ⇒詳細検索ボタンに気づいてない? 手が止まった ⇒どうすればいいかわからないのでは? ⇒ヘルプボタンがあるけど気づいてない?

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とあるチームの肩越しの視線の実践例 検索画面に遷移した 検索条件項目を全部入力している ⇒必須項目マークに気づいていない? 検索と検索結果の画面を行き来している ⇒欲しい結果にスムーズにたどり着けてない? ⇒詳細検索に気づいていないのでは? ⇒詳細検索ボタンに気づいてない? 手が止まった ⇒どうすればいいかわからないのでは? ⇒ヘルプボタンがあるけど気づいてない? ࣄ࣮ ҙݟ

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なにを「聴く」「観る」のか 結果だけでなくプロセスに注目する ユーザーは期待する結果を得られたのか 得られたとしてスムーズにたどり着いたのか、どこかでつまっていなかったか 得られなかったとして具体的にどこで行き詰まったのか 自分たちの意図通りに使ってもらえたのか 声、表情、仕草、リアクション

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レビューやユーザーインタビューも基本は同じ レビューやユーザーインタビューは答えを得るものではなく、
 洞察を得るために行うもの ユーザーからヒントやアドバイスをもらうことはあるが、
 それを鵜呑みにはしないこと

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ユーザーの声を聞くとはどういうことか ユーザーの声を鵜呑みにすることではない ユーザーの心の声を聴く・観ること ユーザーになにが必要なのか判断をするのは、
 ユーザーではなく私たちの仕事 より適切な判断をできるようになるために、
 ユーザーや業務について詳しくなる必要がある

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参考書籍