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業務改革がうまくいくかは、 "誰がどこにいるか"でだいたい決まる、って話 2025-08-02 タマコナ / @tamagawaconan ゆるOPS部#1

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業務改革の悩み、だいたいこの二つに集約される説 「上司がわかってくれない」 「現場が動いてくれない」

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理想の上司 ● すぐに意図を察してくれる ● やる前から「よく頑張ってるな」と褒めてくれ る ● 言わなくても予算と人を確保してくれる ● 外との調整は全部やってくれる ● 失敗してもぜんぶ責任を取ってくれる ● 「好きにやれ」と言いながら、 困ったときだけ手を差し伸べてくれる ● Slackで変な絵文字使わない 理想の職場 ● すぐに意図を察してくれる😊 ● 「いいですね🎉」と秒で共感してくれる ● 忙しくても改革の話にすぐ乗ってくる 😆 ● 根回しなしで全員一致👏 ● 全員、改善に意欲的で意識が高い 💪 ● 課題とアイデアを自発的に出してくる ● Slackが賞賛スタンプであふれかえる 🎊

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いや、それができたら苦労せんわ

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うまくいかないのは、関係性の構築に失敗しているため ● 一人ひとりは、自分の仕事をきちんとやっている ● それぞれに「違う言語」「違う役割」「違う前提」があるから ● 真面目にやるほどズレていく悲劇

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ある"役割"が必要

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リエゾン Liaison

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リエゾンとは 語源はフランス語 “liaison”(つなぐ・連結する・仲介する などの意味) 英語圏では以下のような意味で使われます: ● 「部門・組織間の調整役」(liaison officer) ● 「仲介・橋渡しの人」 ● 「軍事や外交における連絡将校」 ビジネス文脈では: ● 「現場と本部をつなぐ担当者」 ● 「ITと業務部門を橋渡しする存在」 ● 「プロジェクト内外の利害関係者の調整役」

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岡山弁との意外な関係 岡山弁には、日常的に“リエゾン(音のつながり)”が起きている (「連母音融合の長音化」と呼ばれてます) 「やっている」→「やりょーる」 「食べている」→「たびょーる」 「見ている」→「みょーる」

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リエゾンとは、 ステークホルダー間の関係性を 設計・調整できる人 会社・上司 リエゾン 現場

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リエゾン行動とその効果 シーン リエゾンの行動 効果 プロジェクト初期 関係者マップの作成。利害整理 想定外の利害対立を把握 仕様調整の局面 各部門の要求を噛み砕いて伝える 手戻り・炎上・目的のズレを防止 部門間の衝突発生 双方の前提や制約を開示し、納得解 を設計 対立を対話に変える プロジェクト進行中 課題・状況を定期的に報告 問題の早期発見・早期解決 プロジェクト終盤 成果とナレッジの横展開 他プロジェクトへの波及。定着

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関係者マップ(例) ステークホルダー 関心・懸念 影響すること 利用機能 主な利害 営業マネージャー 報告が面倒 進捗入力作業 案件入力・パイプライン 工数削減したい 営業メンバー モバイルで遅い 外回りでの操作性 顧客管理・ToDo スマホで使いたい 情シス 管理コスト データ移行負担 運用管理・API連携 工数増やしたくない マーケティング リード分析 データ構造 ダッシュボード 分析指標を変えたくな い 経営層 KPI可視化 投資計画・KGI設計 経営ダッシュボード 投資回収したい

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リエゾンが行う"翻訳"① - 経営メンバーへの翻訳 ● カスタマーサクセスからの声 ○ 「今の人数じゃオンボーディングできずにチャーンされます。人増やしてください」 ● 経営メンバーへの翻訳 ○ 目的を抽出・変換する ■ 「人を増やす」→手段 ■ 本質は「解約率の抑制」「オンボード率の改善」 ○ 経営言語への変換 ■ 現場:「3人ほしい」→ 経営:「顧客1社あたりオンボード工数 12時間。現在CS比率は1人あた り30社、限界」 ■ 現場:「チャーンが怖い」 → 経営:「1社あたり解約で失うMRRが○円、過去3件で○円。防げば ROIが出る」 ○ 投資対効果で再構成 ■ 追加1名の人件費400万円/年に対し、年間 MRR損失を○件×○円=○万円防げる見込み。 ■ 稼働改善では追いつかないため、人的リソース強化が妥当」

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リエゾンが行う"翻訳"② - 現場への翻訳 ● 経営メンバーの考え ○ 「人員追加は難しい。今のメンバーでなんとか回して欲しい」 ● 現場への翻訳 ○ 現場はこう受け取りがち ■ 「ただ無理しろってこと?」 ○ リエゾンの翻訳 ■ 投資余力が限られていることを説明 ■ 自動化など他の方法で工数削減の見通しを出すよう提案 ■ それでも削減できなかったら人員追加要望を根拠を持って提案

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営業と開発の戦い - リエゾン不在の場合(例) 営業「この機能がないと案件が取れません!」 開発「要件も曖昧だし工数も足りない。そもそもプロダクトの思想に合わない」 結果: ● 激論になる(感情論) ● 開発「営業はなんでも言えば通ると思ってる」 ● 営業「開発はわかってない」 ● 空中分解、または突貫で作って炎上

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営業と開発の戦い - リエゾンがいる場合(例) シーン:営業が急ぎの機能を開発に要望 リエゾンの行動: 1. 要望の構造を整理(案件規模・締切・代替案・ビジネスインパクト) 2. 開発へ“判断材料”として提示(工数・代替案・リスク) 3. 経営には意思決定に必要な情報を再構成して報告

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営業と開発の戦い - リエゾンの翻訳 観点 営業 開発 リエゾンの翻訳 表現 至急機能を追加して欲しい 要件が曖昧、工数足りない 要望背景 ビジネスインパクト 代替案に変換 目的 競合に勝ちたい。売上欲しい 品質とプロダクト思想守りたい 成果と実現性の接点を作 る 評価軸 商談成功、顧客満足 技術的妥当性、安定性 経営視点でのリスク、投資 対効果

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翻訳の実務作業 ● 視点変換 ○ 「困ってる」→「数字にする」「代替案を確認」 ● 情報変換 ○ 会話の中で出てきたワードを KPI、コスト、ROIに置き換える ● 期待値変換 ○ 現場はサービスの質を上げたい。経営は投資対効果で判断する ● 文脈の圧縮・展開 ○ 経営には1枚の紙 ○ 現場には経緯や背景を見せる

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リエゾンに必要な資質 ● 違和感をスルーできない人 ○ 「これ、なんかおかしくない?」に気づく感覚がある ● 物事を対立軸で捉えない ○ 上司 vs 現場 ではなく、「両方がうまくいく道」を探せる ● 他人の言いたいことを翻訳できる人 ○ 「〇〇さんが言いたいのは、つまりこういうことだよね」と代弁できる ● 怒りよりも問いが湧く人 ○ →「なんでそうなってるの?」と落ち着いて掘り下げる ● 関係性や構造に意識が向く人 ○ 「誰がキーパーソンか」「自分がどう動けばいいか」を自然に気にする

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間違ったリエゾンのアサイン ● 自分の考えを押し通す人 ○ 一見、突破力があってよさそうだが、軋轢を生みやすい ● 専門スキルの高さだけでアサイン ○ リエゾンの適性とは別物 ● とりあえず空いてる人をアサイン ○ 論外。会社のやる気のなさが周囲にも伝わる

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規模 特徴 リエゾン必要度 説明 〜20人程度 フラットで全員の顔が見える 不要 誤解が起きてもすぐ直接会話で修 正できる 30〜50人規模 チームが複数に分かれ、役割が縦割り化 必要性が出始める チーム間の暗黙の境界線が生ま れ、目的の齟齬が増える 50〜100人規模 「業務部門vs開発」「本部vs現場」など 構造的な断絶 必要 対話では埋まらない分断が常態化 し、翻訳役が必須になる 100人超 多層的な利害関係が絡み始める 必要 複数の利害調整を並行して行わな いと何も決まらなくなる 組織規模とリエゾンの必要性

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リエゾンは組織のエンジンオイル ● 関係性の構築は、個人任せでは限界。組織的な取り組みが必要 ● 組織作りと人材育成 ● 人事評価 ● KPI設計

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リエゾンの配置戦略 ● 各部門にリエゾン的素養を持つ人材を配置する ● 横断組織としてリエゾン機能を束ね、専任でプロジェクトや課題に対応 ● 両者のハイブリッド ○ 各部門に「現場リエゾン」を配置 ○ 全社横断で「リエゾン本部」として専任組織を設置 ○ 現場と本部が双方向で支援・育成・共有を行う

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現場リエゾンとリエゾン本部 ● 現場リエゾン(各部門に配置) ○ 現場に密着した信頼感 ○ 継続的なサポート ● リエゾン本部(社内横断の専任組織) ○ 専門性 ○ 全社横断プロジェクトで機能させやすい ○ KPIレポーティングなど、投資対効果が見えやすい

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リエゾンのキャリアパス ● 便利屋として扱われて疲弊しがち ● 経営への貢献を定量化(人事評価基準にも反映) ● キャリアパスの明示 ● 育成の型化・再現性の確保

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まとめ ● 業務変革がうまく進まないのは、ステークホルダーの関係性設計の不在 ● 関係性を整える役割として、「リエゾン」という役割がある ● リエゾンの適性は、ものごとを構造的にとらえる力 ● 企業が生き残るには、リエゾン的役割が必要 ● リエゾンのキャリアパスを考えていきたいな(ゆるOPS部で) ご清聴ありがとうございました!