Slide 1

Slide 1 text

『リクルートダイレクトスカウト』 のリニューアルから振り返る: ビジョンドリブンの可能性 株式会社リクルート​ デザインマネジメント1部(HR) 梁 一誠 2024.09.25

Slide 2

Slide 2 text

梁 一誠 Liang Yicheng リャン 所属​ デザインマネジメント1部(HR)  役割 UI/UXデザイン、デザインディレクション、チーム運営 経歴 中央美術学院 プロダクトデザイン専攻を卒業 2019 Tencent Beijing 広告platform領域で UX デザイナーインターン 2020 多摩美術大学大学院 情報デザイン領域修了​ 2020-2021 リクルートに新卒入社 『ゼクシィ縁結び』を担当 2021-今 『リクルートダイレクトスカウト』『レジュメ』を担当 2

Slide 3

Slide 3 text

3 転職 採用管理 アルバイト・派遣・副業 横断職務経歴書機能 就職 業界特化就職・転職 リクルートが展開する求職活動 ・ 採用活動支援サービス

Slide 4

Slide 4 text

すべての人に、 心が躍る スカウトを。 希望にマッチしたスカウトが届く リクルートの転職スカウトサービス

Slide 5

Slide 5 text

5 ハイクラス人材に特化した ヘッドハンティングサイト 企業からも直接スカウトを受けられる サービスを新たに開始 各種機能、UIの全面的な刷新 レジュメ、AIによるレコメンド機能の導入 2014年にサービスを開始 『リクルートダイレクトスカウト』に名称変更 全面リニューアル 2014年 2021年11月 2023年12月 サービスの変遷 「求職者と企業それぞれの希望に合ったスカウトが届く」 「スカウトから始まる求職者と企業の相互理解のコミュニケーションを後押しする」の2点を 抜本的に改善するサービスの刷新に取り組み

Slide 6

Slide 6 text

6 リニューアルの概要 レジュメ 求職者 求 職 者 キーワード登録 企業 ・ 転職エージェント 企業 ・ 転職エージェント 求人票 キーワード登録 AI分析 ・ レコメンド 企業と求職者の アクションログ 候補者を探す ・ スカウト送信 「気になる」 ・ スカウト返信 マッチ度の高い 候補者をレコメンド マッチ度の高い 求人票をレコメンド リクルートダイレクトスカウトのサービス概要

Slide 7

Slide 7 text

7 Before 旧デザイン After 新デザイン

Slide 8

Slide 8 text

Vision Driven VS Issue Driven

Slide 9

Slide 9 text

9 引用元:『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』 「直感」 を駆動力にしたビジョン思考 ②インプットする ビジョンの解像度を上げる ①ビジョンを描く 自分の理想をカタチにする ③組替する 自分なりの切り口を与える ④表現する 自分・サービスらしい 表現に落とす ビジョンを具現化するデザインサイクル

Slide 10

Slide 10 text

10 引用元:『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』 Issue-Driven Vision-Driven 0→1 創造 ビジョン思考 妄想を駆動力にして創造 妄想 表現 組替 インプット デザイン思考 創造的に問題解決 課題設定 プロトタイプ 発想 共感 カイゼン思考 PDCAによる効率化 計画 改善 検証 実行 戦略思考 論理に基づき勝利を追求 目標設定 検証 選択集中 資源棚卸 1→ 効率 ビジョン思考と他との違い

Slide 11

Slide 11 text

11 ①何について、どうビジョンを描くのか? 自分の興味や関心を基に、想像を広げる

Slide 12

Slide 12 text

12 ボタンを押すのと同じくらい簡単に、速く、仕事に就けるようにする

Slide 13

Slide 13 text

13 もしあなたがリクルートHDの社長だったら 引用元:Recruit Holdings Investor Update FY2023

Slide 14

Slide 14 text

14 Jobseeker resume Job Post Candidate Management & Scout HR Future Product Ownerが考えているビジョンを中 心に、PdM, Designer, Engineerが集まって 議論しました。 『リクルートダイレクトスカウト』 一つのサービスの体験ではなく、 HR※ サービスにおいて、求職者側と企業側 の全体のあるべき体験を定義し、 共通言語として複数のプロトタイプを作 りました。 ※こちらの「HR」は求職・採用サービスのことを指し ます リニューアルプロジェクト スタート時のビジョン

Slide 15

Slide 15 text

7 Jobseeker resume Job Post Candidate Management & Scout HR Future Product Ownerが考えているビジョンを中 心に、PdM, Designer, Engineerが集まって 議論、 リクルートダイレクトスカウト一つの サービスの体験ではなく、 HRサービスにおいて、求職者側と採用側 の全体のあるべき体験を定義し、 共通言語として複数のプロトタイプを作 りました。 こちらの「HR」は求職・採用サービスのことを指します プロジェクト スタート時のビジョン もし質問に答えるだけで、レジュメが完成できたら? もし5分で、求人を作成して配信できたら? もし配信した後、すぐ候補者とマッチングできて会話できたら? What if ... ?

Slide 16

Slide 16 text

16 Vision DrivenとIssue Drivenとの問いの設定の違い 引用元:『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』 + 0 - VISION-DRIVEN  「もし……なら、どうなるだろうか?」
 (What if...?) ゼロからプラスを 生み出そうとする ドライブ
 (想像駆動) ISSUE-DRIVEN  「どうすれば……できるだろうか?」
 (How might we...?) マイナスからゼロへと 引き上げようとする ドライブ
 (問題解決)

Slide 17

Slide 17 text

夢で終わらせず、 ビジョンを具体的なソリュー ションへとつなげるために、 必要なのは大量の インプットとアウトプットです。

Slide 18

Slide 18 text

18 ②インプットする ビジョンの解像度を上げる ①ビジョンを 描く 自分の理想をカタチにする ③組み替える 自分なりの切り口を与える ④表現する 自分・サービスらしい 表現に落とす ビジョンを具現化するデザインサイクル (再掲) ビジョンを描く - Motivation 自分が興味を持っていることを出発点に、自由にアイデアを広げていく。 インプットする - Input 自分の目指すビジョンに合った情報を集め、それに意味を見出す。 組み替える - Restructure 違和感を感じる部分を見つけ、メタファーを使ってその問題を解決するために アイデアを分解・再構築する。 表現する - Output プロトタイ プを 実際に 作り、 他者からのフ ィー ドバックを もらって 改善する。

Slide 19

Slide 19 text

19 ②インプット ユーザーのニーズ、 CA※1 ・ RA※2 の現場のオペレーション、 サービスのリサーチや海外のトレンドといった 多様な情報を取り入れる。 ※1 CA:キャリアアドバイザー ※2 RA:リクルーティングアドバイザー

Slide 20

Slide 20 text

20 ③組み替える ビジョン ソース 類似性 ビジョンに関連する アイデアを連想しな がら書き出す。 それらの情報やアイデア の中から、ビジョンに組 み込むことで面白くなる 要素を探し出す。 面白くなる要素 現場のオペレーションをAIで再現する?海外サービスを参考する?

Slide 21

Slide 21 text

21 YouTube, TikTokの体験をHR領域で再発明 採用担当者が候補者の検索条件を細かく設定 求人票をセットするだけで候補者をレコメンド 例えば、 今回のリニューアルは Search から Recommend へシフト Before After

Slide 22

Slide 22 text

22 ‘ 10年先の大きな変革にはビジョンドリブンが有効 だが、3年先の具体的な課題解決にはISSUEドリブ ンが適している4 ‘ ビジョンドリブンは、長い準備期間を経てから一 気に受け入れられることが多い(例:AI技術の普 及)4 ‘ ビジョンがまだ広く理解されない段階では、小さ なステップで着実に進めていく必要がある。 ビジョンを駆動力にしないと、 長期的なイノーベーションが起こらない 引用元:『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』 ア ウ ト プ ッ ト の イ ン パ ク ト 「妄想」から はじめる プロトタイピングと フィードバックの すばやい「反復」 長い失望の期間 期待を 超えた爆発

Slide 23

Slide 23 text

23 ④アウトプットに落とす Lean UXの手法で検証を行い、蓋然性を高める。

Slide 24

Slide 24 text

思い込みや仮説 デザイン MVPの構築 リサーチと学習 24 理想像を描く PdMにもFigmaの編集権限を発行し、仮説に向 けての理想像を描く。上位層・周りへのプレゼ ンなどにも使われている。 価値検証を高速で回す プロトタイピングを通して価値提供できている のかを検証。 MVP段階でUXを磨く リリース後のABテスト改善よりも、MVP段階で 解決できる課題を識別して磨きこむ。 Lean UXのフロー図 ビジョンを実現可能にするため、 Lean UXで検証 引用元:Lean UX 第2版 ―アジャイ ルなチームによるプロダクト開発 (THE LEAN SERIES)

Slide 25

Slide 25 text

25 プロトタイピングと検証を繰り返し、 失敗を重ねることでビジョンに一歩ずつ近づける 引用元:Lean UX 第2版 ―アジャ イルなチームによるプロダクト開発 (THE LEAN SERIES) 間違ったものを 作ってしまうリスク ものを作るための時間 未検証のまま進めると リスクは上がり続ける 頻繁に検証することでリスクは あまり上がらない(リスク回避) 反復学習

Slide 26

Slide 26 text

26 求職者側と企業側のそれぞれにとって重要なフローや機能の検証を繰り 返し行い、 提供する価値と体験をさらに磨き上げる。

Slide 27

Slide 27 text

27 d 初期段階でHRサービスのビジョンを描いたことで、大規模開発で も、軸を持った意思決定がしやすくなったx d デザイナーが検証ポイントの設定に関与することで、精度の高い仮 説検証をスピード感を持って進めることができたD d エンジニアと初期段階からMVP検証に参加することで、プロジェク ト開始時に描いたビジョンに基づき、実現可能かどうかを早い段階 で確認できました。その結果、最終的に提供したい価値を確実に実 現することができました。 ビジョンドリブンで良かったこと

Slide 28

Slide 28 text

まとめ

Slide 29

Slide 29 text

29 ビジョンを描く "What if...?" という問いからスタートし、未来の可能性を広げながらサービスの理想像を描く。 インプットする ユーザーの声や市場のトレンド、最新情報を取り入れ、ビジョンを実現するためのヒントを集める。 組み替える 集めた情報を基に、新たな価値を見出し、ビジョンに合ったアイデアを再構築する。 アウトプットする プロトタイプを通じてビジョンを形にし、フィードバックを受けながら、一歩一歩夢を現実に近づけていく。

Slide 30

Slide 30 text

ご清聴ありがとうございました