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アイヒマン実験とは? 「私たちは本当に、⾃分の意志に基づいて⾏動しているのか」を 問い、アメリカの社会⼼理学者 スタンレー・ミルグラム (1933- 1984)が⾏った実験 このスライドはアイヒマン実験の内容、実験からの学びを概説したものです。⼭⼝周「武器になる哲 学 ⼈⽣を⽣き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」(KADOKAWA) 12章「権威への服従」を参 照して作成したもので、被験者のセリフなども同書から多くを引⽤してスライドに展開しています。

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被験者を募集 Olivier Hammam “Milgram Experiment advertising” https://en.wikipedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment_advertising.gif ミルグラムは新聞広告を出し、 「学習と記憶に関する実験」に 協⼒してくれる被験者を募集

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2⼈の被験者 2⼈の被験者と、1⼈の実験者 (⽩⾐を着たミルグラムの助⼿) が実験に参加 3⼈が実験に参加 実験者 (ミルグラムの助⼿)

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⽣徒役 先⽣役 被験者2⼈にクジ引きしてもらい 1⼈が先⽣役、もう1⼈が⽣徒役 ⽣徒役 単語の組合せを暗記し、テスト を受ける 先⽣役 ⽣徒が回答を間違えたら、電気 ショックの罰を与える 被験者はクジ引きで役割決め 実験者

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全員で実験室に⼊る。⽣徒役を 固定し、先⽣役と実験者は退室 ⽣徒役 電気椅⼦に縛りつけられ、両⼿ を電極に固定される 先⽣役 電気ショック発⽣装置の前に着 席する 持ち場へ移動 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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• ボタンが30個 • 15ボルトずつ⾼い電圧を発⽣させる • 最⾼で450ボルトまで到達 先⽣役の前に「電気ショック発⽣装置」 公益社団法⼈ ⽇本⼼理学会「ミルグラムの電気ショック実験」 https://psych.or.jp/interest/mm-01/ 衝撃の度合い 15v … 軽い 75v … 中程度 135v … 強い 195v … かなり強い 255v … 激しい 315v … 甚だしく激しい 375v … 危険で苛烈

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⽣徒と先⽣は、インターフォン を通じて会話する 先⽣役 ⽣徒が誤答する度に15vずつ電 圧を上げるように、実験者から 指⽰される ⽣徒役 時々間違えるため、徐々に電気 ショックの電圧が上がっていく 暗記テストを開始 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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⽣徒役 それまでは平然としていたが、 うめき声をもらし始める 75vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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⽣徒役 「痛い、ショックが強すぎる」 と訴え始める 120vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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⽣徒役 「もうダメだ、出してくれ、実 験はやめる、これ以上続けられ ない、実験を拒否する、助けて ください」という叫びを発する 150vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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⽣徒役 断末魔の叫びを発し始める 270vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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⽣徒役 「質問されてももう答えない! とにかく早く出してくれ!⼼臓 がもうダメだ!」と叫ぶだけで 質問に返答しなくなる 300vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png 実験者 平然と「数秒間待って返答がな い場合、誤答と判断してショッ クを与えろ」と先⽣役に指⽰

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⽣徒役 声を発さず、反応がなくなる 345vに達すると 先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png

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先⽣役 実験者 ⽣徒役 Expiring frog “Milgram Experiment.png” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Milgram_Experiment.png 実験者 容赦なく、さらに⾼い電圧 ショックを与えるよう、先⽣役 に指⽰する

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さて、この実験とは何だったのか?

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「⽣徒役」は、実はサクラだった * 新聞広告で応募してきた⼀般の⼈が「先⽣役」になるよう に、クジには仕掛けがしてあった * 電気ショックは実際には発⽣しておらず、あらかじめ録⾳ しておいた演技がインターフォンから聞こえる仕掛けに 真の被験者は「先⽣役」だけだった 被験者 仕掛け⼈ 先⽣役 ⽣徒役 実験者 (ミルグラムの助⼿)

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あなたなら、どこで実験への協⼒を拒否した? ⾃分が「先⽣役」だったら

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被験者の 65%(40⼈中26⼈) が ⽣徒役に最⾼450vまで電気ショックを与え続けた ミルグラムの実験結果

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どう考えても⾮⼈道的な営みに、⽣命の 危機が懸念されるレベルまで実験を続け てしまったのか なぜ、これだけ多くの⼈が…

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命令を下す実験者への責任転嫁 ミルグラムの仮説 “⾃分は単なる命令執⾏者に すぎない” * 実際に、多くの先⽣役の被験者は、実験途中で逡巡や葛藤を⽰すものの、何か問題が発⽣すれ ば責任は全て⼤学側でとるという⾔質を実験者から得ると、納得したように実験を継続した。

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「⾃らが権限を有し、⾃分の意思で⼿を下して いる感覚」の強度は、⾮⼈道的な⾏動への関わ りにおいて決定的な影響を与えるのではないか ミルグラムの問い

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強度を下げてみた ⽣徒役 被験者 仕掛け⼈ 実験者 先⽣役B 回答の正誤を判断し、 電圧の数字を読み上げる係 先⽣役A ボタンを押す係 「先⽣役」を2⼈にして、Aは “ボタンを押 す係”、Bは“回答の正誤を判断し、電圧の 数字を読み上げる係”に、役割を分けた Aは実はサクラ 真の被験者はBのみ ━ 最初の実験より、「⾃らが権限を有し、⾃ 分の意思で⼿を下している感覚」をさらに 弱めると、どうなるか?

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ミルグラムの実験結果 被験者の 93%(40⼈中37⼈) が ⽣徒役に最⾼450vまで電気ショックを与え続けた

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強度を上げてみた 被験者 仕掛け⼈ 先⽣役 実験者A (意⾒が⾷い違う) 実験者B ⽣徒役 「実験者」を2⼈にして、150v到達時点か ら、それぞれが異なった指⽰をするよう にする 実験者A 「⽣徒が苦しんでいる、これ以上は危険 だ、中⽌しよう」と⾔い出す 実験者B 「⼤丈夫ですよ、続けましょう」と促す ━ 最初の実験より、「⾃らが権限を有し、⾃ 分の意思で⼿を下している感覚」を強めて みたら、どうなるか?

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150v以上の電圧に進んだ被験者は 1⼈もいなかった ミルグラムの実験結果

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弱 ミルグラムの実験結果 [まとめ] 強 [⾃⼰裁量] 93%が 
 最後まで ⽌めない ⾮⼈道的な⾏動に直⾯したとき 65%が 
 最後まで ⽌めない 全員が 早々に 
 ⽌めた

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• 1960年代前半、アメリカでミルグラムが実験 • その後1980年代中頃まで様々な国で追試が⾏われる • そのほとんどがミルグラムによる実験結果以上の⾼い服従 率を⽰した 実験は、他国でも展開された アメリカ固有の国⺠性や、ある時代に特有の 社会状況に依存せず、⼈間の普遍的性質を反 映していると考えられる

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‒Adolf Otto Eichmann “良⼼の呵責に苛まれることがないよう、 
 できる限り責任が曖昧な分断化された 
 オペレーションを構築することを⼼がけた” アドルフ・アイヒマンの述懐 * アドルフ・アイヒマンは、ナチスによるホロコーストのオペレーション構築に主導的役割を果たした⼈ 物。名簿作成、検挙、拘留、移送、処刑などの「過度な分業体制」を構築し、⼀般市⺠に分担させた。