Slide 1

Slide 1 text

プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 2025.02.27 EMConf JP 2025 すずけん / @szk3 令和時代のプレイングマネージャーを戦略的にハックする

Slide 2

Slide 2 text

1. 自己紹介 2. 本日お話すること / しないこと 3. プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 4. プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 5. プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと 6. プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 7. まとめ プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 本日の流れ 1

Slide 3

Slide 3 text

はじめに

Slide 4

Slide 4 text

本日の登壇者 自己紹介 1 経歴 前職にてフロント・バックエンド・インフラ・ネイティブ アプリ・EMなど一通り経験した後に、パブリッククラウド 活用のスペシャリストとして、AWS移行やCCoEの組成など を牽引。2022年10月にカミナシに入社。 カミナシでの仕事 クラウド・インフラロールのICとして、技術負債解消や サービスチームでの開発に従事した後、2024年5月より新規 事業「カミナシ 設備保全」にて、プレイングマネージャー 型のEMを実践中。 株式会社カミナシ エンジニアリングマネージャー 鈴木 健太郎 (すずけん) szk3

Slide 5

Slide 5 text

プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 本日お話すること / しないこと 1 本日お話すること 新規事業のプロダクト開発を担当するサービスチームのEMとして、約半年間の 経験をもとに、 \ 意志を持って選択的にプレイングマネージャーを実践する / という新しい可能性を提案します。 本日お話しないこと プレイングマネージャーとして行った、技術的な判断や振る舞いの具体は割愛 します。

Slide 6

Slide 6 text

プレイングマネージャーは 本当に悪なのか?

Slide 7

Slide 7 text

プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 質問です 1 🤔 「プレイングマネージャー」と聞いて、まず最初に何を思い浮かべますか?

Slide 8

Slide 8 text

プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 質問です 1 「プレイングマネージャー」と聞いて、まず最初に何を思い浮かべますか? こう思いませんでした? プレイングマネージャー = アンチパターン

Slide 9

Slide 9 text

プレイングに気を取られ、マネジメントが疎かになる という印象がありませんか? 例えば: プレイングマネージャーは本当に悪なのか? プレイングマネージャーに対する印象の背景 1 組織課題を見失う プレイヤー業務に集中することで、組織課題の発見や解決が後手に回る マネジメント業務の質が低下する 育成・採用・チーム組成などのEM業務が疎かになりがち 意思決定が歪みやすい 自身の開発タスクを優先し、チーム全体の最適化を見失いやすい

Slide 10

Slide 10 text

マネージャーがプレイヤー業務をすることが、 何か悪い事をしているような 気さえしてきます。。。 プレイングマネージャーは本当に悪なのか? プレイングマネージャーって悪いことなの? 1 「プレイングしているようじゃ無理か、EMはね、マネジメントに集中しとかないと」

Slide 11

Slide 11 text

世の中の CTO, VPoE, EM を見渡すと自身で手を動かしていそうな人がいませんか? 弊社 CTO も その一人だけど 「マネジメントが疎かになっている」 という印象はない。 では、こういう例は「プレイングマネージャー」とは言わないのでしょうか? プレイングマネージャーは本当に悪なのか? でも、ちょっと待って。それって本当? 1

Slide 12

Slide 12 text

プレイングマネージャーについて語られる時、 できない理由からスタートしがちじゃないですか? そもそも「プレイング」の背景や、必要性・有益性の検討から始めるべき じゃないでしょうか? プレイングマネージャーは本当に悪なのか? 一度、立ち止まって考えてみる 1

Slide 13

Slide 13 text

プレイングマネージャーは本当に悪なのか? では、改めて 1 プレイングマネージャーは本当に悪なのでしょうか?

Slide 14

Slide 14 text

プレイングマネージャーに 挑戦することになった経緯

Slide 15

Slide 15 text

入社して約半年位経った頃、当時 ICだった自分はチームやプロダクト開発それらにまつ わる物事の進みの遅さに、スタートアップなのに なぜチームのアジリティがあがらない んだろう と感じていました。 原因はひとつではないものの、その課題の背景のひとつとして 慢性的なEM不足 がある のでは?ということを考えていました。 プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 プレイングマネージャーを再考するきっかけ 1

Slide 16

Slide 16 text

当時、EMは圧倒的に不足していました。採用活動は行っているものの、EM採用は難易 度が高く、すぐに増員できるわけではありませんでした。 プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 慢性的なEM不足 1 採用の壁 ● EMはそもそも転職市場に人が少ない ● チームを任せるとなると、ビジョンフィットが求められる

Slide 17

Slide 17 text

そしてEMの不足を補う為に、ICをEMにトランジショ ンすることでEMの数を増やすことになります。 カミナシにおけるEMの主な責務はピープルマネジメ ントであり、EMになると実装タスクに着手すること は、ほぼありません。 (ただし実装タスクに着手しないで!とは言ってない) プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 IC→EM登用により、手を動かすメンバーが減る 1 EM EM IC IC IC IC IC IC IC ピープルマネジメント を主な責務とする 実質のプレイヤー減 つまり、実質的には現場で手を動かすメンバーが 減ることになりました。

Slide 18

Slide 18 text

やりたいことが膨らむ中で、様々な場面でチームのアジリティが足りないと感じます。 しかし、簡単には解決できそうもないという焦りが募っていきました。 EMも足りない、ICも足りない。 では、この課題をどのように解くのか? プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 とはいえ、外部環境の変化は待ってくれない 1

Slide 19

Slide 19 text

加速するビジネス環境の変化に対応するため、AIの実用化が進む現代において、「プレイング マネージャー型のEM」というアプローチは今だからこそ有効になるうるのではないか? プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 一つの仮説にたどり着く 1 ① 意思決定と実行の一体化 ピープルマネジメント主体のEMはとても大事だと理解している一方で、スタートアッ プとして最も必要なのはプロダクト開発の最前線でスピード感のある直接的な意思決定 と実行をセットで推進するEMなのでは? ② AIによる業務効率化の可能性 GitHub Copilotに代表されるAIのアシストを積極的に活用し、プレイヤー業務を効率化 することで、マネジメントに使う可処分時間を確保できるのでは?

Slide 20

Slide 20 text

当時のEMに、これらの提案を打診したが却下されました。 プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 プレイングマネージャー型のEMをやれないか? を提案するが... 1 却下の理由 ● 既存プロダクトへのプレイングマネージャー適用は機能しないイメージがある ● 今は、ICとして成果を追求してほしい いま思えば「自分の思う優先度」と「組織が追うべき優先度」が整合していなかった 自分の思う優先度 価値提供のアジリティを高くしたい 組織が追うべき優先度 プロダクト開発を安定させる

Slide 21

Slide 21 text

そこから約半年後、仮説検証していた一つのビジネス案を新規事業として正式に立ち上 げることが経営判断されます。 プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 そして、月日は流れ... 1

Slide 22

Slide 22 text

このタイミングで、CTOから「プレイングマネージャー型のEM」としてオファー をもらいま した。ここで「自分の思う優先度」と「組織が追うべき優先度」が整合したと実感します。 プレイングマネージャーに挑戦することになった経緯 機会が訪れる 1 自分の思う優先度 価値提供のアジリティを高くしたい 組織が追うべき優先度 プロダクト開発を安定させる 組織が追うべき優先度 マルチプロダクト構想をスピード感 をもって実現する

Slide 23

Slide 23 text

プレイングマネージャーを 機能させるために、 考えたこと・行動したこと

Slide 24

Slide 24 text

プレイングマネージャーとしてのふるまいは、チームによい結果をもたらしました。 CTOが実現したかった「カミナシらしさ」の一例と評価される程に、チーム自体が機能 しており、プロダクト開発に対してチームとしてアジリティが高い状態を保てています。 プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと まず、最初に結果から 1 ※ サービスチーム名

Slide 25

Slide 25 text

プレイングマネージャーとして実際に動き出す前に、 自分の中で考えたこと・行動したことを3つ紹介します。 プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと 機能させるために、考えたこと・行動したこと3選 1 考えたこと・行動したこと3選 1. 組織的なサポートへの期待を伝える 2. プレイングを、アカウンタビリティ(責務)として捉える 3. テックリードではなく、EMであることを忘れない

Slide 26

Slide 26 text

自分ではコントロールできないことへの、期待を明らかにしました。 当然全部叶うわけではありませんが、将来のリスク顕在化を未然に抑制するために、 組織にサポートしてほしいと思っていることを包み隠さず正直に伝えました。 プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと 1. 組織的なサポートへの期待を伝える 1 e.g.) 伝えたこと ● 教育にかけている時間は取りづらそうなので、自立し自走できるメンバーだと嬉しい ● 評価対象メンバーは2-3名が限界。それ以上だと妥当性のある評価が難しい ● チームの技術カバレッジを上げる為にフロントに強いメンバーをアサインしてほしい ● 組織が大きくなるまでの、期間限定運用としたい

Slide 27

Slide 27 text

プレイングを責務と捉えることで、行動に対する迷いを減らし、今のプロダクト開発に必 要なふるまいに集中することができました。 マネジメントの4つの領域に対して、弱いEM定義の集合として設計するイメージです。 プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと 2. プレイングを、アカウンタビリティ(責務)として捉える 1 引用:https://qiita.com/hirokidaichi/items/95678bb1cef32629c317 プレイングマネージャーとして 選択した責務

Slide 28

Slide 28 text

プレイングマネージャーは、あくまでもEMの型のひとつ。 重要な技術的判断や実装をリードするふるまいのみを責務とするなら、 テックリードであるべきです。 EMとして、プレイングでチームに貢献するだけでなく、 採用・評価・成長支援を行うための学習と、仕事を通じての実践も合わせて行っていくこ とを意識した結果、インプットする情報が変化しました。(読む本が変わった) プレイングマネージャーを機能させるために、考えたこと・行動したこと 3. テックリードではなく、EMであることを忘れない 1

Slide 29

Slide 29 text

プレイングマネージャーとしての 実践から得た気づき・学び

Slide 30

Slide 30 text

生々しい話をすると、メンバーにハードワークはNGと言いつつも、自身はハードワークし てました。とはいえ、辛いより楽しいが上回っていたのと、自身のキャリアにおいて次の ステップへの仕込みであるとも感じていたので、苦ではなかったです。 プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び ぶっちゃけ、どうだった? 1 自分本位の観点 ● 手を動かすの \ めっちゃ楽しい! / ● 実装に関わっているので、見積もりの妥当性を判断しやすい ● 結果が出ると、マネジメントが楽しくなってくる! ● 価値提供に対して、直接的な意思決定と実行を一致させるの楽しい!

Slide 31

Slide 31 text

プレイングマネージャーは 制約と誓約 の上に成り立つ もの。 「組織的なサポート」と「責務への当事者意識」なしには成立しない と感じました。 プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び プレイングマネージャーは、制約と誓約ありき 1 制約 ● 各メンバーが自立したスモールチームであること ● チーム全体で見た時にプロダクト開発に必要な技術力のカバレッジが高いこと etc... 誓約 ● プレイングとマネジメントを両立させて、スピード感のあるプロダクト開発を行う ● チームにインクリメントをもたらし、モメンタムを作る

Slide 32

Slide 32 text

未来を想像しながら意思決定をする必要があり、その困難な経験が視座を高くする プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 扱う情報と決断する機会が増えると、視座が上がる 1 情報の集約と抽象化 ● 情報流入量の変化   EMという役割により、他部署からの情報流入量が劇的に増加 ● 一段上の視野   組織を俯瞰する必要性から、自組織の1階層上で情報を整理・抽象化 決断力の育成 完全な情報を待つことなく決断する場面の増加

Slide 33

Slide 33 text

EMとしての役割を明確にすることで、周囲の期待が自然と揃っていくのを感じました。   役割の可視化 ● 何をしているか見えづらいEM業務の中で、プレイヤーとしての貢献が具体的に見える ● 「カレンダー埋まりすぎ」「1on1ばかり」という、EMあるあるが起きにくい プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 1 プレイングマネージャーを表明することが、周りの期待を整える   評価の信頼性向上 ● 実装レベルでの協働を通じ、メンバーの貢献や力量を正確に把握できる ● 評価への妥当性と納得感が自然と生まれる

Slide 34

Slide 34 text

プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 1 EMキャリアの試金石にちょうどいい 自身がEMを楽しいと思えるか見極めるための期間として捉えることができる ● ICとは別の楽しさが、EMに見いだせるか? ● 得意なスキルで貢献しやすいので、自己効力感を落としにくい 仮にやっぱり向いてなかったと感じても ICに戻るという選択肢は残っているし、EMの経験は無駄にならない

Slide 35

Slide 35 text

プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 1 ① EMのロードマップでも最初はテクニカルリーダーシップ ピープルマネジメントの帽子をかぶる練習になる 引用: https://roadmap.sh/engineering-manager ピープルマネジメントにパラシュートしない ② ピープルマネジメントの帽子をかぶる時間を伸ばす 徐々に、EMらしくなればよい

Slide 36

Slide 36 text

プレイングマネージャーとしての実践から得た気づき・学び 1 ぶっちゃけハードワークになりがちなので、気が付かないうちにリスクを抱えている 発生しやすいリスクと対応策 ① ワーカホリックになるリスク 優先順位を決める練習と考える 人に頼る練習と考える ② 単一障害点になるリスク メンバーに右腕になってもらう(あとは頼んだ!といえる人を作る) プロダクト開発に関わる大事なことはドキュメンテーションしておく

Slide 37

Slide 37 text

まとめ

Slide 38

Slide 38 text

まとめ - 意志を持って選択的にプレイングマネージャーを実践する 1 プレイングマネージャーとは、 責務に対して オーナーシップ を体現 するひとつのEMの型 である プレイング: アカウンタビリティ(成果責任)に対する 行動   + エンジニアリングマネージャー: レスポンシビリティ(実行責任)に対する 役割 「プレイングマネージャー」の新しい解釈

Slide 39

Slide 39 text

まとめ - 意志を持って選択的にプレイングマネージャーを実践する 1 プレイングマネージャーは、組織的なサポート(制約)と、選択的な責務を果たす行動 (誓約)があってこそ機能する。 それらの前提を理解した上で活用できるのであれば、 課題解決、組織設計、キャリア形成にゲームチェンジをもたらす選択肢となり得る。 「プレイングマネージャー」の新しい解釈

Slide 40

Slide 40 text

最後に もう一度だけ 1 プレイングマネージャーは本当に悪なのでしょうか?

Slide 41

Slide 41 text

ご清聴ありがとうございました!