Slide 1

Slide 1 text

「プロダクトエンジニア」とは ~ 名づけの価値と、⾔葉が動かす⼒ ~ Product Engineer Session #9 @ 株式会社RightTouch みきてぃ / きたはら (mkitahara) 2026-07-16

Slide 2

Slide 2 text

⾃⼰紹介 2 みきてぃ / きたはら (mkitahara) @mikity01985 所属 Fintech 企業 (約 3年) ● 元モバイルアプリチーム責任者 ● 現新規事業開発チーム責任者 ○ EM ○ テックリード 役割 ● Androidアプリエンジニア ● PjM / PdM ● EM ● テックリード / PM ● 採⽤‧広報⾒習い (⾮公式) 経歴 学⽣時代 ● 理学部化学 → 未経験でIT業界へ SES‧受託 (約6年) ● ソフトウェア開発全般 ● 10名未満の会社の社内環境整備 EdTech (約6年) ● 成⻑組織でのAndroid開発 ● CRE‧PM‧PO 等も経験

Slide 3

Slide 3 text

この発表におけるスタンス 3 ⼀個⼈としての『脳内の壁打ち』を共有し、 ⾔葉について皆さんと深く考える場にしたいと考えています ※ 所属組織や企業を代表する公式な⾒解ではなく、⼀個⼈の考察としてお聞きください。

Slide 4

Slide 4 text

プロダクトエンジニア誕⽣の背景 6 職能による切り分けの限界を感じ、期待や⽬的を⾔葉に宿すため ● 技術領域(How)による分節化の限界 ○ 「フロントエンド」「バックエンド」という従来の枠組みは、プログラムの構造に基づく分類 です。 ○ この名前の境界にとらわれすぎると、エンジニアの関⼼が「仕様通りにコードを書くこと」の 内側に閉じこもりがちになってしまう傾向がありました。 ● Output(作る)からOutcome(届ける)へ ○ 「完璧な仕様書をエンジニアがコードに機械的に翻訳する」という分業モデルは、 変化が激しく不確実な現代の開発プロセスでは機能しづらくなっています。 ○ 技術を⼿段とし、⾃律的に顧客の「Why(なぜ作るか)」に向き合い、課題解決に直接コミット するスタンスが必要です。

Slide 5

Slide 5 text

名前がもたらす効果 7 名づけるという⾏為が、混沌から「場」を切り出す ● 認知的必要性:混沌に境界線を引いて「輪郭」を与える ○ ⼈間は、名前のない曖昧なグラデーションを思考‧評価することが困難です。「名づけ」に よって輪郭が与えられ、初めてその価値を共通して認識できるようになります。 ● 社会的必要性:バラバラの「I(私)」を繋ぐ、コミュニティの旗印 ○ 孤⽴してモヤモヤしていた個⼈が、「名前」という旗印の下に集まることで、 「私たちは同じ志を持つ仲間だ」という強い結束(WEの誕⽣)が促されます。 ● 協働のショートカット:期待値を瞬時に同期させる「⾳叉」として ○ 「プロダクトエンジニアとして動こう」という⼀⾔のパッケージが、チームの期待値やスタン スを瞬時に同期させ、コミュニケーションの摩擦を減らします。

Slide 6

Slide 6 text

名前を個⼈または組織内で閉じること 8 ローカルな「閉じた場」がもたらす平穏 ● 「閉じた場(ローカル)」がもたらす安⼼感 ○ ⾃社内や特定のチーム内であれば、共通のコンテキスト(背景)がすでに共有されているため、⾔ 葉の認識の不⼀致が起こりにくい。 ● 「うちのチームにおけるプロダクトエンジニア」という調和 ○ メンバーの顔が⾒える範囲であれば、、「今、私たちが求めている役割はこれだよね」という期 待値の調整が、摩擦なく、⾼い精度ですり合わせることができます。。 ⾔葉をこの「⾝内の平穏」の中だけに閉じ込めておくだけで、本当に⼗分なのか。 私たちは⾔葉を外に開き、次のステップへと踏み出す必要があります。

Slide 7

Slide 7 text

パブリックな場で定義することのメリットと問題 9 ⾔葉を「開かれた場(外)」に放ったときに⽣じる葛藤 ● パブリックに放つことのメリット ○ 個⼈の内的なモヤモヤを社会的に救い出し、キャリアパスを明確にできる。 ○ 新たなトレンドや市場としての認知を創り出し、業界全体を次のステップへ進める。 ● パブリックに放つことで⽣じる「問題」 ○ コンテキストを持たない⼈々によって、⾔葉が「トレンド」として⼀⼈歩きを始める。 ○ 「都合の良い解釈の乱⽴」「バズワード化」「実体を伴わない形骸化(陳腐化)」という リスクに直⾯する。 ○ 定義のズレによる健全でないコンフリクト(「何でも屋さんのようになってしまう」等の懸念 や⼾惑いが多発する。

Slide 8

Slide 8 text

「プロダクトエンジニア」の正体 10 この名前を利⽤して、私たちは何を⽬的としているのか? ● 【能⼒】(Skills)の定義 ○ ビジネス、デザイン、開発を越境して⾼い推進⼒を持つ「越境できる技術者」としての優れた能⼒ やスキルを識別し、適切に評価したい。 ● 【役割】(Role)の割り当て ○ 仕様書の⾏間を埋め、多忙なPMと役割を補完し合いながら、開発全体の推進スピードと効率を 最⼤化する「具体的な職務」として配置したいという⽬的。 ● 【成⻑期待】(Growth Expectation)の提⽰ ○ 今はコード記述に集中しているエンジニアに対して、「将来的に顧客やビジネス領域に視野を広げ てほしい」という、マインドセットの拡張を促すための⽬的。

Slide 9

Slide 9 text

「プロダクトエンジニア」の正体 11 「コンテキストのズレ」が発⽣する根本原因 ● 無⾃覚な⽬的の混同が引き起こすもの ○ 発信者と受け⼿が、それぞれ「能⼒」「役割」「成⻑期待」の異なるレイヤーをイメージしたま ま、同じ⾔葉で対話をしているケース。 ● 議論のすれ違い ○ 「成⻑期待(マインド)」として語られたはずの⾔葉が、時に過剰な「採⽤基準(能⼒)」や 「何でも屋の押しつけ(役割)」のように受け⽌められてしまうことがあります。 多様な議論や⾒解の相違は、本質的な悪意によるものではありませんが これらコンテキストが無⾃覚に混ざり合う‧ズレることで⽣まれる、⾔葉の持つ多義性が原因 と考えられます。

Slide 10

Slide 10 text

そもそも、「プロダクト」という⾔葉が内包する巨⼤な混沌 12 ⼟台にある概念そのものが、常に広がり、変化し続けている ● ⽴場によって全く異なるプロダクトの意味(例) ○ エンジニアにとって ■ ⾃分たちの書いたコードやアーキテクチャが具現化され、実際に誰かの課題をリアルに解決 して動き続けている「⽣きたシステム‧実装」そのもの。 ○ 顧客にとって ■ ⾃分の不快や悩みが解消され、より良い⾃⼰実現や⽇々の⽣活の利便性を助けてくれる 「体験」や「価値の⼿段」。 ○ 企業にとって ■ 提供した価値の対価として、売上や競争優位性をもたらし、中⻑期的に収益を⽣み出し 続ける「事業資産」 「プロダクト」という定義そのものが多元的であり、技術や社会の変化に伴い、 そこで開発に求められる能⼒や役割の幅も⽇々移り変わり、拡張し続けています。

Slide 11

Slide 11 text

不変の特性と、動詞への昇華 ── プロダクトエンジニアリング(動詞) 13 名詞の「型」にハメるのをやめ、動詞の「振る舞い」で語ってみる ● 変わらないプロダクトエンジニアの特性 ○ たとえプロダクトの定義が変わっても、「技術を⽤いて、⽬の前の⼈間や事業の本質的な課題を 解決したい」という姿勢‧マインドセットは不変だと考えています。。 ● 「プロダクトエンジニア(名詞)」という記号の罠 ○ 固定化された「型」を作ってしまうと、そこから外れた⼈を排除したり、⾃らの可能性を狭めて しまう可能性があります。 ● 「プロダクトエンジニアリング(動詞)」への昇華 ○ 我々が本当に⼤切にするべきものは、個々の具体的な「挑戦や振る舞い(動詞)」そのものです。 動詞として捉えることで、時代の変化に揺るがないスタンスを確⽴できると考えてます。

Slide 12

Slide 12 text

私はプロポーザル出せませんでしたが......伺います! 14 Product Engineering Conference 2026

Slide 13

Slide 13 text

外に発信し、交わらせることの真価 15 Outputが、社会のOutcomeに変わるプロセス ● パブリックな場での異なる認知の交差 ○ ⾔葉を外(パブリック)へ放てば、当然多様な「解釈のズレ」や「疑問の提⽰」が⽣まれます。 「役割の境界線が曖昧になる」といった懸念の声もその⼀部です。 ○ しかし、これこそが、⾔葉を外に放つ最⼤の価値です。衝突を避けて内に閉じこもるのではなく、 外へと開くことで初めて、真の対話が始まります。

Slide 14

Slide 14 text

異なる視点の交差が、業界を前進させる 16 Outputが、社会のOutcomeに変わるプロセス ● 内に閉じた平穏 (現状維持) ○ ⾃分たちだけで⾔葉を閉じ、居⼼地の良い「ローカルな合⾔葉」として運⽤する。 ○ 摩擦は起きませんが、新しい視点の獲得や業界全体としての職能の成熟には繋がりません。 ● 外に開いた対話 (変⾰のエンジン) ○ あえて⾔葉をパブリックな場にアウトプットする。異なる認知が交差することで、私たちは「本当 に良い開発‧協働とは何か」を深く問い直すきっかけ(アウトカム)を得ることができます。

Slide 15

Slide 15 text

まとめ ── 共に遠くへ進むために 17 ⾔葉をアウトプット、対話して、「プロダクトエンジニア」を育てる ● 異なる認知を歓迎する ○ パブリックな場での解釈のズレは、私たちが新しい時代の『⾔葉の使い⽅』を模索している、 健全な歩みの証拠です。 ● 「Output」が、社会の「Outcome」に変わる瞬間 ○ ⼀⼈ひとりが⾔葉を外に放った(Output)からこそ、今、業界全体で開発のあり⽅を前向きに 問う豊かな議論(Outcome)が始まっています。 ● 未来を耕す変⾰のエンジン ○ 内に閉じた維持に留まるのではなく、外に開かれた健全な対話こそが、私たちのエンジニアリング の未来を新しく耕していきます。

Slide 16

Slide 16 text

まとめ ── 共に遠くへ進むために 18 ● 「意味とは、⾔語におけるその使い⽅である」 ── ルートヴィヒ‧ウィトゲンシュタイン(⾔語哲学) ○ ⾔葉の正しさは、固定された辞書のテキストではなく、私たちの⽣きた「実践」の中に宿ります ● 「名前は、⽣きものである」 ── ⼩藥元『なまえデザイン そのネーミングでビジネスが動き出す』 ○ 名づけとは、思考を停⽌させるゴールではなく、⾔葉を社会に放ち、みんなで対話を育て始める スタートラインです。 ● 「早く⾏きたければ⼀⼈で⾏け、遠くへ⾏きたければみんなで⾏け」 ── アフリカの諺(『コミュニティの原則』より) ○ 定義をコントロールすれば、ローカルな場では早く進めるかもしれない。 ○ けれど、変化し続けるプロダクトの未来という遙か遠くへ⾏くためには、異なる認知を持つ仲間 と対話を重ね、名前を共に育て続ける必要があります。 ○ 名前は、そのための「はじまりの羅針盤」です。

Slide 17

Slide 17 text

ご静聴ありがとうございました 19