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エンジニアとしての キャリアを支える 自宅サーバー

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Kazuto Kusama @jacopen Product Evangelist @PagerDuty Japan Organizer @Platform Engineering Meetup Founder @Cloud Native Innovators Association

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Platform Engineeringのイベントやります 一般社団法人 クラウドネイティブイノベーターズ協会 Platform Engineering Kaigi 2024 7/9開催!

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今日話す内容 ● エンジニアとしてのキャリアを歩む中で、自宅サーバーが常に役立った話 ● テクニカルな内容は少なめ ● 既に自宅サーバーをやっている人よりも、 「これからやりたい人」や「特にやろうと思っていなかった人」向け

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Jacopenおうちクラウド - Pygoscelis Platform vSphere Cluster vSAN TKG Synology DS1823xs+ 構築・管理 最近買い換えた! 今の自宅サーバーはこんな環境です

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これまでのキャリア 2007-2008 カスタマーエンジニア @大手会計システムベンダー 2008-2012 ITなんでも屋 @国内スタートアップ 2012-2017 PaaS開発エンジニア @NTT Communications 2017-2021 プロフェッショナルサービス @Pivotal, VMware 2021-2023 プリセールスエンジニア @HashiCorp 2023- プロダクトエバンジェリスト @PagerDuty これまでいろんな会社、いろんなロール で仕事をしてきました。

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みなさんはいつ自宅サーバーをはじめましたか? どうやってはじめましたか?

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自宅サーバーとの出会い 気づいたらそこにサーバーがあった。

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自宅サーバーとの出会い 気づいたらそこにサーバーがあった。 自分が高校生のころはドットコムバブルの真っ最中。自分 のウェブサイトに広告を載せるだけでそこそこの収入に なった。(月数万円) 毎月稼いだ分をPCのパーツ購入に充てていたら、余りパー ツでもう一台組めるみたいな感じ。 その2台目で何をしよう? とりあえずOS入れて、「ずっと 動かしっぱなし」にしたいものを入れよう、となった。 それってすなわちサーバー。 ▲ 2002年ごろ。 このとき既に2台あって片方が サーバー

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自宅サーバーとの出会い ▲ Celeron 533A - 2000年ごろ 簡単に800MHzくらいまでオー バークロックできてコスパ最強 ▲ Celeron 1.3GHz - 2001年ごろ Tualatinコア、通称鱈セレ。 Pentium4と比べて電力効率が良 くコスパが良かった ▲ Athlon 1700+ - 2003年ごろ。 通称苺皿。 オーバークロック耐性が高くコス パが良かった 当時の写真を漁ったらコスパの良いCPUを渡り歩いている様子が出てきた

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自宅サーバーとの出会い 大学の専攻は経営学だったのでCSとは遠 い世界にいた。 が、趣味やバイトでサーバーに触れま くっていた。 経済学部キャンパスよりも工学部キャン パスに居る時間の方が長かった 中古で買ったパーツやバイト先で不要になったもの を並べている図。ES品をもらったりした。 ビデオカードにヒートシンクすらないの、隔世の 感。MatroxのG200とかnVIDIAのRIVA128あたり。

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最初の就職 新卒で入社したのは、某会計事務所向けシステムを販売し ているベンダー。 顧客のトラブルに駆けつけて修復を行う カスタマーエンジニアとして就職。 会計システムはWindows ServerもしくはLinuxだったが、 自宅サーバーでどちらも経験があったのでその話をしたら あっさりと内定取れた。

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2社目 次に入社したのは20人くらいのスタートアップ。 プロダクトが.NETなのでWindows Serverが多かった が、インフラに強いメンバーが居なかったので自分が全 て担当することに。 自宅サーバーたちに、今は無きTechnet Subscription でWindows Serverをセットアップ。 SQL ServerやActive Directoryを稼働させて検証しま くっていた。 ▲ NTT-Xで安いサーバー(鼻毛鯖 など)を買うようになった

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3社目 2社目の途中でWindows Azureが登場。 インフラのお守りが不要なPaaSに感銘を受ける。 友人から、NTT ComがPaaS開発メンバーを求めている という話を聞き、転職を決意。 中途入社は珍しい会社だったが、趣味でWindows Serverを飼っている話をしたらウケて面談を突破でき た。 PaaSの開発メンバーとしてジョイン。1年後からは開発 チームリーダーに ▲ ZFS/RAIDZでNASを自作した

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3社目 NTT ComのクラウドはCloudStackやOpenStackを 使っており、PaaSはその上にカスタマイズされた Cloud Foundryをデプロイする形で提供していた。 なので、自宅サーバーにOpenStackの環境を作り、そ の上にCloud Foundryを動かして遊んでいた。 TripleOを使わずNested OpenStackを実現するために NeutronネットワークやVXLANを調べまくった経験が その後のコンテナ時代にも生きた

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Q. 何で会社の検証環境じゃなくて自前なの? もちろん会社の検証環境も使う。 ただ、検証環境作るための社内調整をして、調達をして、構築をして・・・ 平行して手続きは進めるものの、自前環境で検証した方が早いことも多い。 あと、自前環境で検証して感覚を掴んだ後に調整する方が説得力があった。

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4社目 & 5社目 Cloud Foundryの本家本元であるPivotalに転職。 導入支援やプラットフォームチームビルディングを行う プロフェッショナルサービスを担当。 Pivotal Cloud Foundry(現Tanzu Application Service) はクラウドだけでなくVMwareやOpenStackでも動くの が特徴。 クラウド環境は会社のものを使ったが、VMwareや OpenStackでの検証は自宅環境でやっていた。 オンプレのお客さんに実際の環境を見せながら話ができ るのは大いに役立った。 PivotalがVMwareに買収されて以降は、自宅環境も完全 にVMwareに置き換えた

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4社目 & 5社目 PivotalがVMwareに買収されて以降は、自宅環境も完全 にVMwareに置き換えた。 2021年にはTUNAメンバーと一緒にSoftware Design に「はじめよう、おうちクラウド」を連載

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6社目 Terraformで有名なHashiCorpにプリセールスエンジニ アとして転職。 技術に深く触れる機会が減ることを危惧して、 より自宅サーバーに熱を入れることになった。 10GbE、オールフラッシュNAS、Unifiの導入などなど

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6社目 HashiCorpはどのクラウド、オンプレでも抽象化できる Cloud Operation Modelを標榜していたが、多くの ユーザーがクラウドで利用していた。 でもオンプレ環境こそHashiCorpプロダクトが便利なん だよというデモに、自宅環境が大いに役立った。 クラウドより速く、小回りが効き、好きにカスタマイズ できる環境の存在は、他の人にマネできないプレゼンス タイルを実現した。 ▲ デモで使いまくった結果更新の 多いTerraform Cloud上のState

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Q. クラウドは使わないの? もちろん使う。 従量課金なので、大々的なデモで費用がかかるときは仕事のアカウントを使う。 仕事に直結しないちょっとしたもの & グローバルIPが欲しい場合はクラウドや VPSを使う。アプリを動かすのにはVercelやHeroku、CloudFlare Workers ここ数年はVisual Studio Professional Subscriptionに課金しているので、 付与されるAzureのクレジットも活用している。 クラウドはクラウドで最高に楽しいが、 自宅サーバーでしか摂取できない栄養素は確実にある。

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7社目 現職であるPagerDutyにプロダクトエバンジェリストと して参加。 これまで自鯖系エンジニアとしてクラウドネイティブ技 術を中心に趣味で発信していた点が買われ、 情報発信を専門とする職業に。

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7社目 デモで使うのはもちろん自宅サーバー。 自宅サーバーの電源をバチンと引っこ抜くと PagerDutyによって携帯が鳴るみたいなデモが出来 る。 最近は電源引っこ抜いてもいい(最悪壊れてもいい)、 安いデモ用ESXiを用意するようになった(2万ちょいで 買ったN100マシン) 普段の運用にも使っているので、稀にリアルな障害で デモができる。 「これPagerDuty赤くなってますけどねぇ、ガチの障 害でしてね・・・今朝ストレージ壊れまして」

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自宅サーバーやってなかったら今のキャリアはなかった

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Q. 何でそんなに転職してるの?

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Q. 何でそんなに転職してるの? 仕事と自宅サーバーで経験を積む

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Q. 何でそんなに転職してるの? 仕事と自宅サーバーで経験を積む ⇩ 市場価値が上がる

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Q. 何でそんなに転職してるの? 仕事と自宅サーバーで経験を積む ⇩ 市場価値が上がる ⇩ 転職したら給料が上がる

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何を言うかではなく、誰が言っているかが重要な時代 AIの時代になり、情報の収集も発信も飛躍的にコストが下がりつつある ● 技術に関する情報も、AIに聞けばだいたい合っている情報が素早く得られる ● 複数サイトから情報収集する作業はPerplexityに任せれば良い どこからか借りてきた言葉を使うだけでは、刺さらない時代になってくる 今後重要になってくるのが、言葉に質感があるかどうか

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言葉の質感はどうやれば得られるか 知識として持っているだけではなく、ちゃんと経験をして、それが生まれた背景ま で含めて理解をすること。自宅サーバーの運用はその助けになる 携わった仕事に対する責任が重ければ重いほど、単位時間に得られる経験が多くな る。 ただ、本業と比べると自宅サーバーには責任がない。なので本職のデータセンター 運営に比べれば得られる経験は少ない (そりゃそうだ)

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意外とある自宅サーバーの責任 とはいえ、自宅サーバーが無責任でいいかというと、そうではない。 自宅サーバーをやるということは、自宅サーバーを運用し続けるということ。作っ て終わりではない。 降りかかる全てのトラブル(技術的なものから家庭の都合まで)を自分一人で解決す るという責任がある。仕事と違って、誰も助けてはくれないので。 なので、年単位で自宅サーバーの運用を続けると、 意外と「質感」をもたらす経験が得られる。 なので、是非自宅サーバーにチャレンジして欲しい

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注 インフラレイヤーへの知識がないとエンジニアとしてダメ  なんて言うつもりは全く無いのでご留意いただきたい。 たまにそういう言説を取る人がいるが、本当に良くない。 (『アプリ屋はなんも分かって無い』『クラウドから入る新人は知識が足りて無く てダメ』 みたいなやつ) 限られた人生の中で、時間というパラメータをどう扱うかは人それぞれ。異なる分 野の人にはリスペクトを。

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悩み(未解決) これまで話したように、できるだけ自宅サーバーで経験を 積んでいきたいと思っている。 でも自分の最近の仕事は半分くらいこれ ⇒

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悩み(未解決) これまで話したように、できるだけ自宅サーバーで経験を 積んでいきたいと思っている。 でも自分の最近の仕事は半分くらいこれ ⇒ 自宅LLM…. _人人人人人人人_ > 超しんどい <  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

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おわり 自宅クラスタ 楽しいので 是非やりましょう